好きな気持ちが隠せない

維月

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第三話

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車イスに板を載せて、現れた時には笑顔を見せた。
「脚、上げられる?」と聞かれ、装具を持ち上げながら上げて見せる。
「痛みない?ここまで移動出来る?」
そう言われて、腕の力でベッドサイドに移動する。脚を椅子に乗せたまま、反対の足を床に下ろす。
「気分悪くない?」と覗き込む。そのまま血圧を測って
「大丈夫そうだね。車イスに移動するよ」と美波ちゃんはくっついてくる。僅かにパニックになる。
「まずは私に捕まって立つよ」と間近で言われて戸惑いながら嬉しくて、小さな肩に腕を回した。いい香りがして、鼻を近づける。
「フワッとかしない?」と聞かれ
「この状態がやばい」と言うと
「気分悪い?」と視線を向ける。
「気分良すぎてヤバイ」
突然のこの状況に嬉しくてつい本音を漏らす。
「じゃ、座るよ」と言って車イスに移動された。体から離れて
「右足は絶対荷重かけないように、こうやって移動するようにね」と視線を合わせず言いながら足台を下ろした。小さな溜息をついて
「車イスこげるかな?」
車イスを押して廊下に出る。操作方法を話ながらリハビリに付き添ってくれる美波ちゃんを見上げる。
「彼氏いるの?」と聞くと
「いるから」と返ってきて淡い期待が萎んでいく。
「迷惑だよな」と呟くと、聞こえなかったのか美波ちゃんは黙っている。それとも困っていて返せないのかと思案する。困らせてるのかと申し訳ないと思うが、この気持ちが消せるものではないと気づいていた。どうしたらいいのかと混乱する。諦めなければと思うが、体に触れられると期待して何とかなるのではないか考えてしまう。
「そろそろ、ベッドに戻ろうか?」車イスから立ち上がる際に、また美波ちゃんの体に捕まるように言われる。つい立ち上がってから強く抱きしめてしまった。細い肩に触れる。
「ちょっと、苦しいから」と手で押し返される。
「ゴメン。どうしたらいいか分からない」
「まずはベッドに戻って」
ゆっくり力を緩めるとベッドに座らせて、黙って出て行った。しばらく病棟で美波ちゃんを見かけても、部屋担当になることがなかった。リハビリに行く際の車イスの移乗も、来てくれなかった。夕方、中庭にいると私服の美波ちゃんの姿を見つけた。車から降りると運転席の男に、手を振った。明らかに彼氏と思われる男に見せる美波ちゃんの表情に悔しくて夕焼けに染まる空に見上げる。大人の男で余裕のある佇まいを見せていた。なんだか、泣きたくなった。
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