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第五章
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宛がわれた王宮の一室に篭り、リディアは王家に纏わる奇妙な偶然について考えていた。
(まず分かっていることを整理しなければ)
机に向かい、引き出しに入っていた白い紙に羽ペンのペン先を置いた。
(まず始まりは……)
第一王妃アイダが産んだ第一子、リディアの腹違いの長兄が死んだのが二十七年前の秋。
原因不明の病に倒れたカリム王たっての願いにより、弱冠八歳にして王位に着く。しかし戴冠式を終えた翌日、突然に死亡。原因は王宮付きの医師にも解明できないまま今に至る。
次に王位に着くことになるのは、またもアイダ王妃の産んだ王子。
満を持したように二十歳の青年となってから王位を継いだ彼は、文武両道の希代の若者だったが、第一王子と同じく戴冠式を終えた一週間後、カリム王の退位式を目前とした冬の夜に死亡した。原因はやはり分からない。七年前のことだ。
力を入れすぎてペン先を取られながらそこまで書き、不意にリディアは自分をよく叱った侍女を思い出した。
(この時、ラーラも死んでしまったんだ)
悲しい気分になりながら、リディアはラーラの名を紙面に付け加える。
関係はないのだろうが、それでもここで彼女の名前を刻まないのは、姉や母のようにも思って慕っていたラーラへの冒涜のようにリディアは感じたのだ。
最後は第二王妃マイラが産んだ王子。リディアの同母兄の第三王子だ。
本来は第二王子にかかるたくさんの期待の陰に潜まざるを得なかったのが、十七の時に第二王子が死んだために表舞台に出ることが叶った。しかし彼もまた二十歳の祝賀会と戴冠式を合わせたパーティーを終えた翌日に死亡。
可笑しいほどに相次ぐ原因不明の病によって、それは起こったことになっている。これが四年前のことだ。
(亡くなる年に共通点は無いようだが……)
インクで書かれた文字の列の中、
いやがおうにも視界に飛び込んで来る一つの単語がある。
(戴冠式)
何となく空寒いものを感じ、リディアは体を竦めた。
別に侍女達の噂話を頭から信じた訳ではない。呪いや魔法等と言った不可思議なものを彼女は信じていなかったから。
それでもこの不気味な一致は気味が悪い。
(呪い。虚飾城で城の誰かが家から持ってきてた本の中に、呪われた男の話があったような気がするな)
信じてはいないし、読書は嫌いだったが、リディアはその手の話は好きだった。
「よし! 直接確かめよう!」
リディアは決心して霊廟と紙面に走り書きしたが、インクが乾く前に触れてしまい、手の横をインクで黒く染めてしまった。
「ああ! 汚れてしまった!」
ハンカチなどという文明的なものを身に着けていなかったリディアだったが、流石に綺麗な服で拭うのはいけないことだと分かっていたので、新しい紙を取り出し、それに自分の手を擦り付け、インクを拭い取る。
真っ黒になったそれも走り書きした紙も机の上に放って、彼女はいそいそと部屋から出て行った。
(まず分かっていることを整理しなければ)
机に向かい、引き出しに入っていた白い紙に羽ペンのペン先を置いた。
(まず始まりは……)
第一王妃アイダが産んだ第一子、リディアの腹違いの長兄が死んだのが二十七年前の秋。
原因不明の病に倒れたカリム王たっての願いにより、弱冠八歳にして王位に着く。しかし戴冠式を終えた翌日、突然に死亡。原因は王宮付きの医師にも解明できないまま今に至る。
次に王位に着くことになるのは、またもアイダ王妃の産んだ王子。
満を持したように二十歳の青年となってから王位を継いだ彼は、文武両道の希代の若者だったが、第一王子と同じく戴冠式を終えた一週間後、カリム王の退位式を目前とした冬の夜に死亡した。原因はやはり分からない。七年前のことだ。
力を入れすぎてペン先を取られながらそこまで書き、不意にリディアは自分をよく叱った侍女を思い出した。
(この時、ラーラも死んでしまったんだ)
悲しい気分になりながら、リディアはラーラの名を紙面に付け加える。
関係はないのだろうが、それでもここで彼女の名前を刻まないのは、姉や母のようにも思って慕っていたラーラへの冒涜のようにリディアは感じたのだ。
最後は第二王妃マイラが産んだ王子。リディアの同母兄の第三王子だ。
本来は第二王子にかかるたくさんの期待の陰に潜まざるを得なかったのが、十七の時に第二王子が死んだために表舞台に出ることが叶った。しかし彼もまた二十歳の祝賀会と戴冠式を合わせたパーティーを終えた翌日に死亡。
可笑しいほどに相次ぐ原因不明の病によって、それは起こったことになっている。これが四年前のことだ。
(亡くなる年に共通点は無いようだが……)
インクで書かれた文字の列の中、
いやがおうにも視界に飛び込んで来る一つの単語がある。
(戴冠式)
何となく空寒いものを感じ、リディアは体を竦めた。
別に侍女達の噂話を頭から信じた訳ではない。呪いや魔法等と言った不可思議なものを彼女は信じていなかったから。
それでもこの不気味な一致は気味が悪い。
(呪い。虚飾城で城の誰かが家から持ってきてた本の中に、呪われた男の話があったような気がするな)
信じてはいないし、読書は嫌いだったが、リディアはその手の話は好きだった。
「よし! 直接確かめよう!」
リディアは決心して霊廟と紙面に走り書きしたが、インクが乾く前に触れてしまい、手の横をインクで黒く染めてしまった。
「ああ! 汚れてしまった!」
ハンカチなどという文明的なものを身に着けていなかったリディアだったが、流石に綺麗な服で拭うのはいけないことだと分かっていたので、新しい紙を取り出し、それに自分の手を擦り付け、インクを拭い取る。
真っ黒になったそれも走り書きした紙も机の上に放って、彼女はいそいそと部屋から出て行った。
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