悪役令嬢、現代日本に召喚されました!?召喚したのは私そっくりな女の子!

鈴菜

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古今東西、順番を間違えてはいけない

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私が悪魔でないことを必死に訴えたところ早苗ママは心当たりがあるような顔をされました。
それから伊里奈さんも連れて向かった先は彼女が私を召喚した、あの部屋。

「伊里奈ちゃん、アナタが使った悪魔召喚用の魔方陣を見せてもらっても良いかしら?」

早苗ママはそう告げるのとほぼ同時に机に置いてあるビンを手に取り、中身の液体を床にかけます。

すると、床が青白く光り出しました。
よく見ると、あの時も見た奇怪な文字が並んだ円陣が浮かび上がっているのが分かります。

「なるほど、そういうことね。」

早苗ママはその円陣を見て納得したようにうなずき、何かを呟くと光を霧散させました。

振り返った顔は…怒って、いらっしゃいます?
笑顔ではあるのですが先ほどまでの優しいそれと違い背筋が凍ってしまいそうな感覚を覚える笑顔です。

「ごめんなさいね、イーリスちゃん。今から少しだけ伊里奈ちゃんにお説教するから待っていてくれる?」

確認する形ではありますが、断るのは無理ですね。
私の袖をひしっと掴み、行かないでと言いたそうな顔で伊里奈さんが見てきますが、ごめんなさい。

私は急ぎ気味に2人から離れました。


それから時間が経つこと15分程度。

便利ですね、家庭用サイズの時計があるのは。
元いた世界では、時計なんて教会や王城に設置されている大型のものしか無くて不便でしたけど。

などと細かい時間の経過を把握できる恩恵を感じつつ視線を送った先には、説教が終わった様子の2人。
早苗ママが手を握っているのは伊里奈さんの逃亡防止のためなのかしら。

「ほら、伊里奈ちゃん。」

早苗ママは私の目の前で握っていた手を放すと、背中を押し伊里奈さんを私と対面させます。
すると伊里奈さんは深く頭を下げました。

「申し訳ありませんでした、イーリス様。私のミスでアナタを召喚し悪魔の力を与えてしまって。」

そう言えば、謝罪はまだ受けていなかったですね。

「その謝罪を受け入れます。今後は2度と同じ過ちを繰り返さぬよう、精進なさい。」

まずは形式通りの返答。
ただ、これだけだと冷たいわよね。

「異世界に召喚され悪魔の力を得るなんて普通に生きていたらまずあり得ない体験をさせてくれたのですしアナタを責める気は無いわ。」

うん、安心してもらえたみたいね。
自分と同じ顔をした女性の、泣きそうな顔なんて見ていて気分が良いものでは無いわ。

それから私は伊里奈さんが具体的にどういう間違えをしたのか簡単に説明してもらいました。

あの円陣を構成する奇怪な文字は魔術文字という特殊なものらしく、伊里奈さんは勉強中だったそうです。
失敗したのは彼女が未熟だったからでした。

本来であれば『私はここに悪魔私召喚し、私と同じ姿を与える』というのが正しい文章なのですが…

伊里奈さんは順番を間違え『私はここに私と同じ姿の者を召喚し、悪魔とする。』といった文章で悪魔召喚に挑んでしまったわけです。
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