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拷問
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ダニールとヨクサルが邂逅した頃。
イーサンの硬化した翼に腹部を刺され、サミュエルは苦しみ悶える。
「次は手足を引き千切ってやろう!」
「ぐっ……! テ、オ……」
サミュエルの隣にいたテオは、ファロムの放った鋼鉄の矢によって胸部を貫かれた。
ローブに隠し持っていた天使の涙も破壊されたのだろう。
テオは口から大量の血を吐くと地上に落下し、ぐったりとしたまま動かなくなってしまった。
「ふん、ゆっくり嬲り殺しにすればいいものを」
「あいにく私は嗜虐趣味には少しも興味がない」
「あるのは死んだ紗南との新世界か。実に滑稽だな」
「天使を始末したらその心臓を抉り出してくれる!」
怒りと憎しみで人形のような顔を歪めるファロム。
イーサンはそんな彼を嘲弄するかのように、わざとらしく右の口角を上げてみせた。
「お互い天使狩りを楽しもうじゃないか」
そう告げ、翼で串刺しにしたサミュエルを冷酷な眼差しで見つめながら地上に降り立つ。
金糸雀色に輝く長い髪、青く澄んだ瑠璃色の瞳、陶器のように白く滑らかな肌。
美しさと清らかさで神々や人間に愛された天使。
だが今、目の前で呻き声を上げる天使の姿たるや、何と醜いのだろう!
イーサンはもう片方の翼でサミュエルの右手を刎ねた。
噴き出す鮮血とともに、百合の甘く濃厚な香りが辺りに立ち込める。
「ぐあっ!!」
「はは、お前たちが必死で守ろうとしていた人間が行う拷問は気持ちいいだろう?」
古の神が処されたように、生きたまま磔にするのもいい。
縄で縛り付けて火を放ち、熱さでのたうち回る姿をじっくりと眺めるのもいい。
それとも腹を引き裂いて内臓を抉り出し、八つ裂きにしてみようか。
残虐な殺し方を考えれば考える程、イーサンの魂の色は黒く深く澱んだ。
「さあ、手始めに目玉をくり抜いてやろう」
「くっ……!」
翼の先がサミュエルの眼球に突き刺さる直前、悪魔の気配に気づく。圧倒的なオーラ。
イーサンはサミュエルの腹部から翼を引き抜くと姿勢を正し、恭しく首を垂れた。
止めを刺そうとしていたファロムも振り返るが、すぐにテオへと向き直る。
「誰かと思えばご主人様ではないですか」
「不死鳥たちよ、私が恐ろしくないのか?」
ダニールから天使の居場所を知ったジョシュアが訝しむように、イーサンとファロムを睨め付ける。
だがイーサンは臆することなく、視線を交わす。
ファロムに至っては返事すらしない。
「ええ、忠誠心はありますのでどうかご安心を」
「まあ良い。その天使を私に寄越す――」
息も絶え絶えなサミュエルと目が合った瞬間、ジョシュアは言葉を失った。
頭を鈍器で殴られたような衝撃が走り、思わず蹌踉ける。
「ご主人様、大丈夫ですか?」
背中に乗っているヨクサルが急いで降りると、心配そうに顔を覗き込む。
しかしジョシュアは目を見開いたまま、両手で頭を押さえると地面に突っ伏し、奇声を上げた。
「うがあああああああああああ!!」
「ご主人様!?」
「おや、君はダニールの一番最後の子どもではないか」
イーサンの言葉にファロムはテオの首を刎ねんとする翼を止め、こちらを凝視する。
「ヨクサル……?」
不死鳥にしては色素が薄く、翼の炎も弱々しい。
まさしく双子の兄であるダニールの最後の子ども。
混血のため不吉の象徴と見なされ、本来ならば殺されるはずだった忌み子。
ファロムの脳裏にダニールとヨクサルが人目を盗んで愛し合う様子が浮かび上がり、狂おしい嫉妬心と紗南を想う気持ちが強くぶつかり合う。
「叔父と甥だろう? 再会の抱擁を交わさないのか?」
イーサンがほくそ笑む。
「叔父様……?」
「ああ、そうさ。ファロムは君の父親であるダニールの双子の弟なのだから」
「イーサン、君は黙っていろ!」
ファロムが憤怒の表情でイーサンを睨みつける。
と、サミュエルが弱々しく呟いた。
「ジョシュア……なの、か……?」
その声にジョシュアは我に帰る。
「あ……兄、上?」
地頭がいいイーサンは状況を瞬時に把握し、どうすればより残酷かつ皆が不幸になるかを思いつく。
こんなに楽しいと感じたのは久しぶりだ。
イーサンは左手を胸に当て、慇懃に腰を曲げる。
「我らがご主人様。この憎き天使をどうか御身の力で滅してくださいませ。まさかできない――なんて事は仰られませんよね?」
イーサンの硬化した翼に腹部を刺され、サミュエルは苦しみ悶える。
「次は手足を引き千切ってやろう!」
「ぐっ……! テ、オ……」
サミュエルの隣にいたテオは、ファロムの放った鋼鉄の矢によって胸部を貫かれた。
ローブに隠し持っていた天使の涙も破壊されたのだろう。
テオは口から大量の血を吐くと地上に落下し、ぐったりとしたまま動かなくなってしまった。
「ふん、ゆっくり嬲り殺しにすればいいものを」
「あいにく私は嗜虐趣味には少しも興味がない」
「あるのは死んだ紗南との新世界か。実に滑稽だな」
「天使を始末したらその心臓を抉り出してくれる!」
怒りと憎しみで人形のような顔を歪めるファロム。
イーサンはそんな彼を嘲弄するかのように、わざとらしく右の口角を上げてみせた。
「お互い天使狩りを楽しもうじゃないか」
そう告げ、翼で串刺しにしたサミュエルを冷酷な眼差しで見つめながら地上に降り立つ。
金糸雀色に輝く長い髪、青く澄んだ瑠璃色の瞳、陶器のように白く滑らかな肌。
美しさと清らかさで神々や人間に愛された天使。
だが今、目の前で呻き声を上げる天使の姿たるや、何と醜いのだろう!
イーサンはもう片方の翼でサミュエルの右手を刎ねた。
噴き出す鮮血とともに、百合の甘く濃厚な香りが辺りに立ち込める。
「ぐあっ!!」
「はは、お前たちが必死で守ろうとしていた人間が行う拷問は気持ちいいだろう?」
古の神が処されたように、生きたまま磔にするのもいい。
縄で縛り付けて火を放ち、熱さでのたうち回る姿をじっくりと眺めるのもいい。
それとも腹を引き裂いて内臓を抉り出し、八つ裂きにしてみようか。
残虐な殺し方を考えれば考える程、イーサンの魂の色は黒く深く澱んだ。
「さあ、手始めに目玉をくり抜いてやろう」
「くっ……!」
翼の先がサミュエルの眼球に突き刺さる直前、悪魔の気配に気づく。圧倒的なオーラ。
イーサンはサミュエルの腹部から翼を引き抜くと姿勢を正し、恭しく首を垂れた。
止めを刺そうとしていたファロムも振り返るが、すぐにテオへと向き直る。
「誰かと思えばご主人様ではないですか」
「不死鳥たちよ、私が恐ろしくないのか?」
ダニールから天使の居場所を知ったジョシュアが訝しむように、イーサンとファロムを睨め付ける。
だがイーサンは臆することなく、視線を交わす。
ファロムに至っては返事すらしない。
「ええ、忠誠心はありますのでどうかご安心を」
「まあ良い。その天使を私に寄越す――」
息も絶え絶えなサミュエルと目が合った瞬間、ジョシュアは言葉を失った。
頭を鈍器で殴られたような衝撃が走り、思わず蹌踉ける。
「ご主人様、大丈夫ですか?」
背中に乗っているヨクサルが急いで降りると、心配そうに顔を覗き込む。
しかしジョシュアは目を見開いたまま、両手で頭を押さえると地面に突っ伏し、奇声を上げた。
「うがあああああああああああ!!」
「ご主人様!?」
「おや、君はダニールの一番最後の子どもではないか」
イーサンの言葉にファロムはテオの首を刎ねんとする翼を止め、こちらを凝視する。
「ヨクサル……?」
不死鳥にしては色素が薄く、翼の炎も弱々しい。
まさしく双子の兄であるダニールの最後の子ども。
混血のため不吉の象徴と見なされ、本来ならば殺されるはずだった忌み子。
ファロムの脳裏にダニールとヨクサルが人目を盗んで愛し合う様子が浮かび上がり、狂おしい嫉妬心と紗南を想う気持ちが強くぶつかり合う。
「叔父と甥だろう? 再会の抱擁を交わさないのか?」
イーサンがほくそ笑む。
「叔父様……?」
「ああ、そうさ。ファロムは君の父親であるダニールの双子の弟なのだから」
「イーサン、君は黙っていろ!」
ファロムが憤怒の表情でイーサンを睨みつける。
と、サミュエルが弱々しく呟いた。
「ジョシュア……なの、か……?」
その声にジョシュアは我に帰る。
「あ……兄、上?」
地頭がいいイーサンは状況を瞬時に把握し、どうすればより残酷かつ皆が不幸になるかを思いつく。
こんなに楽しいと感じたのは久しぶりだ。
イーサンは左手を胸に当て、慇懃に腰を曲げる。
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