金なし道中竜殺し

しのはらかぐや

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3章 サマク商国

第29話 新メンバー

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タスク以外に機械に強いのは誰もいない。
リセットの意味がわからず全員が適当に頷いた。

「機械族は、体は人工物やけど心は魔力でできてるからナマモノなんや。ちゃんと性格があって…まぁ魔力の持ち主に似るけど」

タスクが何度か中をいじるとセバスチャンは意識を失ったように崩れ落ちる。
光を失ったセバスチャンを砂に埋まらないようにと寝泊まりしていた木陰の岩場に寝かせてタスクは内部をあれこれと設定しなおした。
中が気になる一行はタスクの後ろからそっと背中を覗き込む。
ネジや回線のようなもの、歯車やよくわからない部品の中に優しい光が漏れる頑丈そうな箱があった。

「この中に魔力が入ってる。言うたら心臓やな。これに設定や部品を追加して性格や機能を決めるんや」

その箱に纏わりついている部品や回線を外して繋ぎ直す。
手際よく作業しているタスクに一行は感嘆の声をあげた。

「ほな、リセットっていうのはそれを繋ぎなおして性格を設定し直すってこと?」

「いや、全部初期化して配線や設定を減らしてこいつ本来の性格にする。設定せえへんのや」

タスクはセバスチャンの背中を閉めると向きを変えて座らせる。
アルアスルは目に見えて嫌そうな顔をした。

「それ…魔力の持ち主がめちゃくちゃ嫌な人やったらめちゃくちゃ嫌な人になるってこと…?」

「そうやな。でもそれもこいつの性格やし、仲間になるなら設定とかで縛って奴隷にはしたくないやろ」

「それは…そうやけど」

タスクの真っ直ぐな視線にアルアスルは尻尾を下げる。

「いざとなったら俺が叩っ斬るから大丈夫だ」

たてのりが物騒なことを言い放った瞬間、排気音と共に手足が点灯しセバスチャンが目を開ける。

「とりあえず俺らのことは名前と外見が一致するように設定したけど。どうやろ。…セバスチャン?」

セバスチャンは岩場に座らされた姿勢のまま緩慢な動作でタスクを見上げた。
それから一行を舐めるように確認すると、明らかに人的な動きで滑らかに立ち上がった。

「…皆してそんなに見るな。タスク、油をくれ。再起動に結構エネルギーを使ってしまった」

セバスチャンは先程までの丁寧さを失い、機械的ではないものの随分と無機質で無愛想だった。

「え~っ!たてのんがひとり増えるみたいなもんやん!やだーっ!」

「おい」

アルアスルが悶絶するのをたてのりが尻尾を掴んで睨む。
莉音もおずおずとセバスチャンを見上げた。

「そんな顔せずとも、一緒に行く。心配はいらない」

セバスチャンはタスクから受け取った油を吸いながら一片の笑顔も見せず、ほんの少しだけ優しい声色で莉音に告げる。
青や赤に光っていた手足は落ち着いた翡翠色でゆらめいていた。

「助けてもらった礼に、望まれるのならば共に行こう。これから世話になる」

「やっぱこの方がええわ!よろしくなぁセバスチャン!」

タスクは嬉しそうにセバスチャンを抱きしめて頬擦りする。
砂漠の真っ只中で、歪なパーティにはさらに歪なメンバーを迎えたのだった。
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