存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃

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西帝国では
アベルが馬車を用意してディアターナを
迎えるために宮を出発した。

出張所ではディアターナは騎士たちと
話しをしていた。

「ねぇ、この近くに空き家は無いかな?
近くならば勇者の森にいつでも
行けるじゃない?」

「アハハっ、
聖女様は本当に楽しい方ですね」

「別に楽しくないけれど?
なんで笑ってるの?本気よ」

「いや、聖女様…
聖女が普通に一般民と同じように
生活しませんよ」

「だから聖女だって知られなければ
いいじゃない」

「は?無理ですよ」

「なんでよ。あなたたちが言わなきゃ
いいだけの事よ」

「無理ですよ」

「全く…せっかくここまで来たのに」

「聖女様って、貴族令嬢ですよね」

「そうよ。だったら何よ」

「ご家族は?大丈夫なのですか」

「えっ、と大丈夫じゃない?
だって私が聖女になった事で
国からそれなりにお金をもらってる
みたいだし…まぁ今は話す事も会う事も
なかったからね」

「ルイーズは許嫁だ」とか言って
勝手に婚約させたくせにルイーズが
嫌だと言ったら「はいOKです」って
意味わからないからね。
ふん、今どうしてるかなんて
知るもんか!

「あ、、聖女様…
たぶんですけど大聖堂に住まいを
移すと思いますよ
陛下判断ですけれど」

「やだ!大聖堂に住むなら
他の国に行くわ!もうのんびりしたいの。
縛りつけるなら逃げてやるから!
それと聖女様って呼ばないでね
私にはディアターナって名前があるの
ディアでもいいしターナでもいいわ」

「「「……」」」

騎士の1人が戸惑いながら言った

「我が国には聖女が存在しないので
わからないですけど
聖女様をあだ名で呼ぶのはちょっと」

「私、
この国で聖女と認められた訳じゃないし
認めてもらわなくていい。
聖女活動なんてしないもの
だから聖女様とか嫌なの」

あれだけの力を見せつけておきながら
聖女と呼ぶな。と?

石碑まで付き添っていた騎士たちは
ただただ困惑してしまった。

「じゃあディア様
陛下判断が出るまでは我々は
友人って事でいいですか」

「わお、良いわね!
今日から私たちは友人よ
よろしくお願いします友人の皆さま!」

うぉーっ!!

騎士たちとディアターナが
友人になれたのは一瞬だった。

「団長が戻りました」
出張所の見張り騎士が声をかけると
騎士たちは外に出て団長に敬礼した。

「ご苦労、変わった事はあったか」

「いえ」

「そうか」

アベルはディアターナを見て
ピクっとした。

彼女の聖力は国を支配する程の素晴らしさ。
ではなく、、

不法入国だと?
おい、こら、今ジャラス王国は
大変な事になっているんだぞ。
お前が勝手に西帝国に来たおかげで
我々は巻き込まれるところなんだぞ
わかっているのか?
このボンクラ聖女め!

だった。

「今日は君を王宮に連れて行く
したがってすぐに支度をするように」

「え、待ってくださいよ
王宮って何ですか?あれですよね、
地下牢に入れられて苦しむんでしょ?
嫌ですよ」

「……は?」

「すみませんでした。
ちゃんと検問所を通りますから
だから許してください」

「待て!どういう思考なんだ
確かに検問をすり抜けたのは犯罪だな。
ただ今日は皇帝陛下が君から直接
経緯を聞きたいそうだ」

「私、もう色々と話しましたよ」

アベルはディアターナを睨んだ

「あなたは緊張感が足りないようだな。
これは遊びでは無いんだ
皇帝命により身柄を宮に移す」

アベルの殺気とも思える気迫に
ディアターナも固まった。

怖いっ…どうしよう…逃げたい。

「早くしろ」

騎士たちにも緊張が伝わり
ディアターナを馬車に座らせた。
そしてディアターナの荷物を
足元に置いた。

「もし忘れ物があったら
宮に届けますから…えっとディア様
大丈夫ですよ。大丈夫です」

友人騎士が優しく話しかけると
ディアターナは馬車の中で下を向き
騎士の言葉に小さく頷いた。

ディアターナの前にアベルが座ると
馬車は王宮に向けて出発した。

重苦しい空気が馬車の中を支配した。
ディアターナはずっと頭を下げたまま
黙っている。

どうしよう…やっぱりジャラスに
帰されちゃうのかな?
逃げたいけれど西帝国の騎士は
強そうだからすぐに捕まりそうだな。
そうだ大聖堂に行くって言ってたから
大聖堂に行くフリをして
西帝国を出よう!
きっとコリーアンナ様が護って
くださるはずだわ…グッ!

そんな事を考えていた。

一方アベルは
景色を見るフリをしながらディアターナを
チラチラっと見ていた。
頭を下げたまま言葉を発しない
ディアターナに「やりすぎたかな」
そんな風に思っていた。

一 検問をすり抜けた密入国者
一 夜間立ち入り禁止区域で
     爆睡してた不審人物
一 自国から逃げ出した追われ人……

けれど初めて見た聖女の力は
本物のようだった
初代聖女コリーアンナについて
文献には無い何かがわかるかもしれない。
我が国にとって彼女は宝にも
なるかもしれないんだからな…

ふぅ、後で機嫌を取っておくか。

お互いに色々と思い考えていると
すぐに王都に入った。

アベルはディアターナに
王都の建物や歴史やらを聞かせるつもり
だったのだが
ずっと下を向いているディアターナに
声をかけられずにいた。

ディアターナは心地よい馬車に揺られ
爆睡していた。


続く
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