存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃

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ジャラスでは遂にビオンヌが倒れて
しまった。

「もう嫌、帰りたい…」
うわごとを繰り返しながら眠っていた。

王太子の元に小瓶を託した
研究室の所長が訪ねてきた。

「依頼されました薬の成分が
判明しましたよ。後でいらしてください」

昔から王宮で毒を中心に研究し
王族のために解毒を作り出す
スペシャリストだ。
伸ばした白髪の長髪に
少し腰が曲がった年齢…
知らない人がみたら少し怖いだろう

「ここでは言えないのか」

「お待ちしてます」

「今すぐに行く!」

研究室に到着し成分表を渡した

「これはどちらで手に入れたのですか」

「私の物ではないが
とある人物が隠し持っていた。とでも
言っておこう」

「なるほどですな。
これは大陸全土で危険薬物として
指定され今は使用どころか
持っていても罪に問われる物です」

「危険薬物?」

「はい。魅了の薬です」

その昔
異性に対し使用された魅了薬。
パーティーなどで使用され
流行ったという。

王族を振り向かせるために使用し
その薬の中毒になった王が
国の財産を女に捧げ破綻させる迄に
なってしまったのだ。
当然、その女と一族は処刑され
当時の王も廃人になったという。

その危険性から
数十年前に危険薬物として
製造、販売はもちろん中止になり
持っていれば反逆者として
罰せられる。

「魅了薬か…間違いないな」

「ホッホッホッ
私が間違えた事がありますか。
これは大規模な捜査が必要に
なってしまいましたな」

ビオンヌ、お前はこれをどこで
手に入れたのだ?
まさかこれを使用して
聖女という立場を手にしたのか?
まずは大神官からだな…

「わかった。助かったよ」

「何なりと申し付けてくださいませ」

王太子はすぐに神殿に向け伝達を出し
大神官を呼びつけたが
神殿にはおらず
彼は各地の教会や修道院を雨の中
探し回りディアターナに詫びていた。

「大変申し訳ございませんでした。
貴女様に全てを任せてしまいました
それなのに貴女様に耳を傾けず
貴女様に声をかけず
目配り、気遣いを怠った事は
許されないです
どうか今一度我らの前に姿を
お見せくださいませ」

大神官の思いは神にもディアターナにも
届いていなかった。

大神官が王太子からの呼び出しを
知ったのはだいぶ時間が過ぎてから
だった。


【西帝国】

皇帝陛下とディアターナが謁見する時が
来た。
案内されたのは面談室。
王宮で働く者が呼び出される部屋だった

コンコン 「失礼するよ」
2人の男性だ。
1人は王族だとわかる出で立ちで
1人は団長だった
ディアターナはすぐに席を立ち挨拶をする
「私は西帝国の皇太子ガーディルだ。
そして隣に居るのがアベルだ」

「はい団長様とは何度か話をさせて頂き
ました」

「あ、団長ね」

ガーディルはアベルがまだ自分の正体を
証していないんだな。とわかった

「もうすぐ父上が来るから…
父上からの質問には嘘なく答えてくれ」

「はい」

すぐに陛下が入ってくると
ディアターナとの話が始まった。

「そなたはジャラスの聖女らしいが
何故に我が国に密入国したのだ」

「密入国した理由はジャラスに…
西帝国に聖女だと知られたくなかったから
です」

「聖女だと知られたくない理由は何だ」

「自由に生きたい。それだけです
もう何かに縛られたくないのです」

「何故ここに来た」

「神託です。「西へ行け」と
地図を見ると帝国公園があり
そこには勇者の森という場所が
ある事を知りました。
初代聖女の誕生地、ここだ。と思い
西帝国に来ました」

「そうか
してだな今ジャラスでは雨が続き
民が生活をするにあたり心配事が
あるようだが その事をどう思う」

「ジャラスでですか……」

ディアターナは少し考えた後に
言った

「ジャラスに居る聖女は私だけでは
ありません。それに民を助け
知恵を出すのは貴族です。
そこに力を貸すのが国だと思います」

「なるほど
ではそなたは聖女がジャラスを出た事と
天災は別だという考えなのか」

「はい」

「どうしたら天災を鎮められると思う」

「わかりません」

皇帝はディアターナを見つめている

「我が国には数十年にわたり
聖女という者がいないがその役目とは
なんだと思う」

「聖女にはそれぞれに役目が違いますので
人により考え方は違うと思いますが
私は神託を通してより良い国作りを
手伝う役目です」

「もう1度 聞こう。
何故ジャラスを捨てたのだ」

ディアターナは皇帝が芯の部分を
知りたがっているのだと理解した。

「聖女に頼り自ら国作りを放棄した
傲慢な人達に嫌気がさしました」

「わかった。
話を聞けてよかった
ディアターナ西帝国での滞在を許そう
また機会あれば話を聞かせてくれ」

「はい」

陛下が席を立つとディアターナは
姿が見えなくなるまで頭を下げた。

ジャラスの国王とは違う…
滞在は許されたけれども
宮は出なくっちゃ

そう思った。

ガーディルはディアターナの話を聞いて
色々と考えさせられた気がした。

そして思い出した!

「ディアターナ嬢、食事の件だが、
パンとスープとは何かな」

「……?」

突然の質問にディアターナは固まった。

「あ、いや 肉とか魚とか
食べてはいけないのかと思ってだな」

「いいえ、食べてはいけないという事は
ありませんでしたが
パーティー以外では食べませんでした」

その言葉に
ガーディルとアベルは驚いた。


続く

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