存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃

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日々
誤魔化しながら変わらなく過ごすも
ずっと気にしている。

マークはまだ休みなんだ…
今頃は私が知らない令嬢と
カフェに行ったりしているのかなぁ

マークが連れて行ってくれた
カフェのケーキ美味しかったな…
2人でフードを被って身を隠して
楽しかったな…

マークは騎士だから隠れた店まで
知っていたし
連れて行ってくれたところは
どこもみんな楽しかったな…

もう、、その相手は私じゃないのね

ディアターナは祈りをやめると
早々に大聖堂を出た。

「どうされましたか」

護衛騎士はディアターナを心配した。

「ちょっと邪念が入っちゃって…
しばらく休むわ」

邸に戻ったディアターナは
この日も侍女を部屋から出した。

ポロポロと涙が頬をつたう

そうよ、楽しかったんだから
願いが叶ったんだから
マークは恩人なんだから
幸せを祝ってあげなくちゃ…

止まらない涙を流しながら
必死に言い聞かせていた。

ディアターナは1週間
自室に籠り気持ちに整理をつけていた。

部屋の外では侍女や騎士たちが
ディアターナを心配している。

そしてアベルの元に
ディアターナの近況報告が届いた。
アベルは報告を受けて
原因がマークだとすぐに察した。

「はぁ、
何をやっているんだあいつらは…
恋愛ごっこが本気だったと?
ディアターナよ俺に君のお守りは無理だ。
自分で頑張ってくれ」

ため息をつきながら窓の外を眺めた。


それから

ディアターナは高熱を出して眠っていた。
侍女たちが慌ただしく交互に
汗を拭き 無理やり解熱剤を口に流し
ディアターナを見守っている。

医師が言った

「本来なら薬が効くはずですが
効果が見られません…
聖女様のお身体は私たちとは
何か違うのかもしれません」

アベルは医師の話を聞きながら思う

王宮専任医師でも無理か…
そうだろうな
聖女様は失恋からくる「悲しい病」
なのだからな。
まぁ失恋は時間が解決すると
聞くからな…

アベルは医師に言った

「とりあえず薬は中止だ
様子をみよう。ご苦労だった」

医師は

「何かあればすぐに呼んでください」

と頭を下げて王宮へと戻って行った。
そしてアベルも侍女たちに
ディアターナを託して屋敷を後にした。



ディアターナは夢の中にいた

見た事がない地獄絵図

剣を持ち気持ちが悪い生き物と
向き合って戦っているようだ

返り血を浴び剣士たちは化け物を
切り倒している

「アンナ!! 後ろだ !!」

振り返った剣士はコリーアンナだ
化け物が後ろからアンナを襲って来た!

ザシュッ

コリーアンナを守るように化け物を
切った男性は化け物と同時に倒れた…

「フィル !!」

コリーアンナは倒れた男に叫んだ

「何をしているんだバカー!」

男の腹はざっくりと切れ
ドクドクと血が流れている

「大丈夫だ!私がすぐに傷を塞ぐからな」

コリーアンナは男性の腹部に手を当て
光を当てている

「アンナ…止めろ」

「バカ!喋るんじゃないよ!」

コリーアンナが放つ光が
強弱を繰り返している

「お前…も 限界だろう…止めろ」

「うるさい!黙れ !」

血は止まらない

男がコリーアンナの手首を握った

「無理だ…から……止め…ろ」

「うっ、、フィル、、黙れっ……」

その時
別の化け物がコリーアンナを狙った

「グアーッ」

仲間と思われる剣士がコリーアンナを
守った

ザシュッ!

「アンナ ここは危険だ」

けれどコリーアンナは男に治癒を
与え続けた

「アンナ…生きろ  お 前 は  いき ろ」

「逝くなぁー!フィルー!
助けるから諦めるなぁー! ! 」

ザシュッ!

ザシュッ!

ザシュッ!

どのくらい時間が過ぎたのだろう

仲間が言った

「終わったぞ!」

コリーアンナは男の隣に座ったまま
動かなかった

フィルと呼ばれていた男の手は
握っていたコリーアンナの手首から離れ
ポトリと落ちた。

「くっ…バカやろう…
なんで私を庇った……
ふざけんなぁー
私はこんな事を望んじゃいない!
なんでお前がぁーーーー!」

コリーアンナの叫びが森に響き
仲間たちは呆然と立ち尽くしていた。
暗くなっても日が昇っても
皆 その場から動かなかった。


深い眠りの中で
自分が知らないコリーアンナを
知った気がした。
熱が下がった頃にはマークが復帰していた。
起き上がったディアターナは
もう一度勇者を調べたくなり
石碑に行くと決めた。

夢 そう夢だ。
それが本当なのかどうなのかなんて
当時の、、そこに居た人にしか
わからない。
それでもディアターナは「フィル」
そう呼ばれていたのは
フィルーズ・スミスという名の人物だと
思った。

歩けるようになったディアターナは
石碑に向かいコリーアンナに話しかけた。

「夢を見ました。
とても悲しく辛い夢でした。
そうコリーアンナ 貴女の夢でした
フィルと呼ばれた貴女の恋人の夢…」

キラキラとした光がディアターナを包み
コリーアンナが姿を見せた。

「聖女ディアターナ
共鳴してしまいましたね…
あれは私の辛い記憶…
遠く忘れられない記憶…
今でも辛く悲しい記憶…」

「聖女コリーアンナ
今の私に出来る事は、、手伝える事は
ありますか」

「手伝い?無いわよ
この場所こそが私と彼の居場所なの
今はずっと一緒に居るんだもの」

「一緒?」

「ここはフィルが旅立った場所。
そして眠っている場所…
私の肉体は海だからもう無いけれど
仲間たちが私の魂をフィルと一緒に
してくれたのよ…
愛していたわフィルを…誰よりも
愛しているわ…今もずっとね」

勇者の武勇伝書に書いてあったのは
フィルーズは24歳の時に眠りについたと
あった。
そしてコリーアンナは26歳の時
行方不明になったとあった。

「コリーアンナ様……もしかして」

「言わないで。もう過ぎた事よ…
私ね、貴女には後悔しないで欲しいの」

コリーアンナは悲しそうに微笑んだ




続く

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