聖女になる道を選んだので 自分で幸せを見つけますね[完]

風龍佳乃

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「はぁ、言わないとわからないのかい?
君と俺に愛など必要ないだろう
子を産めばそれでいい。余計な事を
考えるなよ」

ハワード・マスラン侯爵子息と
リディア・バレンスティン公爵令嬢が
政略結婚をしたのは半年前

マスラン侯爵がバレンスティンの血を
欲しがったからだ。

夫ハワードは侯爵家を継ぐ条件としての
義務を果たす為だけに夫婦の寝室へと
やってくる
事が終わればすぐに自室に戻って眠る
そう、それだけ

この日も義務を終えたハワードは
夫婦の寝室にリディアを残して
出て行った

さっきまで暖かいと感じていた寝室に
冷気が流れリディアは身体を起こすと
私室へと戻り冷たいベッドに入った

公爵令嬢として不自由無く生活してきた
楽しい時もあった。それなのに…
成人式を終えるとすぐに縁談がきた
侯爵子息との結婚は義務であり
父親からの命令だった…

ハワードには想い人が居て
仕事が無い時は屋敷を空けては
恋人ケイティの元で過ごしている

そんな中リディアに異変がおきた

「奥様、おめでとうございます
新しい命が芽生えましたよ
お大事になさってくださいね」

屋敷の皆は喜びを隠さなかった

リディアもようやく義務を果たし
ハワードからの冷ややかな視線を
向けられなくてすむ。と思っていた

リディアの妊娠を知ってから
ハワードはリディアの前にすら
現れなくなった

ふざけないでよ!たかが侯爵ごときが!
妻の妊娠を知って顔も出さず
言葉もかけないですって?!

リディアは日に日にハワードへの
怒りを露わにしていった。


ハワードの執務室

「ハワード様、奥様は大事な時です
もう少し気遣いを示してくださいませ」

「は!俺は清々しているぞ
好きでもない女を迎えた俺を褒めて
欲しい。お前達で面倒を見ればいい」

リディアは知っている
ケイティがハワードの子を生んだ事を…
女の子だった為 現侯爵が継子と認めず
婚外子として存在している

私が生んだ子が女の子だったら?
また、あの男と交わるの?
勘弁してよ…

リディアは陛下に女性の人権について
子産み道具としての異議を訴えた

つわりが落ち着いてきて
お腹もふっくらしてきた頃だった

陛下からの返事がようやく帰ってきた

「マスラン侯爵次期夫人無事の出産を願う」

え?これだけ?……

父も侯爵も…そして夫も…
女は子を産むだけの存在なの?

リディアは怒りで狂いそうなのを
必死に抑えていた。

リディアの体調がようやく落ち着いて
子の名前も考え始めた頃だ
珍しくハワードがリディアの部屋を
訪れた

「腹も目立つ様になったか」

冷たい態度、冷たい言葉
相変わらずね。
リディアは冷めた目でハワードを見た

執事が申し訳なさそうにリディアに
紙を渡した

離縁状

「お前も知っているだろう
ケイティが妊娠したんだよ
2人目の子だからな、彼女を迎える事に
したんだ。だから君は子を生んだら
出て行ってくれ」

リディアの頭が真っ白になっていく
必死に感情を抑えるが怒りで狂いそうだ
言葉が出てこない

「サインは生んでからでもいいが
早い方が喜ばしいかな。ケイティを
迎える準備も必要だから」

ハワードがリディアに背を向けた瞬間
リディアは椅子を高く持ち上げると
ハワードの頭に振り落とした

バギッ!! 

「うっ」 ハワードは頭を押さえて
しゃがみこんだ

「ふざけんじゃないわよ!
人の命を人生を何だと思ってるのよ!
お前みたいなクズが父親になって
誰が幸せになるんだよ!
人を馬鹿にするのもたいがいにしろ!」

リディアが感情を爆発させたのは
初めてだ
ハワードだけではなく
執事もメイド長も固まってしまった

執事は慌てた

「ハワード様…大丈夫ですか
奥様、落ち着いてくださいませ」

リディアの怒りは収まらない

「おい!馬鹿男!
父親の言いなり駒男の分際で
調子に乗ってんなよ!
お前は侯爵、私は公爵!
身分はあんたよりも上なんだよ!」

リディアが再び椅子を持ち上げた時
執事が抑えた

「奥様ー!お怒りはわかりますが
どうか、どうか鎮めてくださいませ」

頭から血を流したハワードは
ふらふらしながら廊下を歩き出した
執事はリディアに頭を下げると
ハワードを追った

メイド長は
「医師を呼びますので
横になっていてくださいませ。
興奮は良くありません」と言った

「はぁ?興奮させているのは
あなた達でしょう!! 黙りなさい!」

メイド長は驚きながらリディアに
頭を下げて出て行った

「ふざけんな!ふざけんな!
この結婚に意味なんて無いじゃない!
全員、まとめて地獄に落としてやる!」

廊下に向かって怒鳴り声を上げた

「うっ…い、痛い」

リディアはお腹を押さえながら
その場に倒れた

ベッドの上で数日間過ごした
リディアは決意した

もう、私を縛るものなんて何も無い
公爵家に戻ったところで意味も無い

リディアは知り合いの記者に手紙を書き
自分の経験を伝えた。

父親からの人権軽視
夫からの精神的、肉体的虐待
義理父からの女性差別
陛下からの女性軽視

メイドを呼び 手紙を至急に届ける様に
指示を出した

その後ハワードが持ってきた離縁状に
サインを記入して机に置くと
リディアは小さな箱を出した。
嫁いで来た時に持って来た箱だ
箱を空けると中の小瓶を開けて見つめた

もう、いいわよね?
私は頑張ったもの……
私は父や夫の道具じゃないもの…

リディアは小瓶の液体を一気に飲んだ

お母様…迎えに来てね
赤ちゃん…私の子供……ごめんなさい

でも後悔していないわ
もうこれ以上…あいつらの好きには
させないわ

リディアはそのまま目を閉じた。


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