21 / 68
第三章・偶然の連続
21・嫌な予感
しおりを挟む
翌日の早朝私が起きると、隣ではまだクリスティンが眠っていた。初めてだわ…朝の寝顔を見れるなんて。こうして眠る姿を見ると、ガセルダムスの時の面影がまだ残っていると感じる。前髪が下りてるからかしら…
その前髪にそっと手を伸ばし微笑みながら触れる。そして肩先にキスを一つ落として、それからそっとベッドから出る。
今日は離婚のことを伝えようと、実家のノートン伯爵家に行くことになっている。街の一等地にあるアノン邸とは違って、農産物を扱う事業をしている実家は農業地帯に屋敷があって…
ここから三時間ほどもかかるし、早朝から出発するとケイトと御者には伝えてある。離婚…その気持ちが昨夜、揺らがなかったかと言えば嘘になる。こんなにもクリスティンを愛している!そう思ったもの…
だけど今、離れなくてはもう二度とそれが叶わなくなるかも…そう感じている。そして私は、クリスティンを恨むことになるのが何より怖い!
きっとクリスティンは、そんな私の気持ちを知らないわね。気付くこともしない…私が女の意地や気まぐれで、離婚したいと言い出したと思っているの?そうじゃないのに…
そしてそんな感傷から、もう一度愛する人を振り返る。それから音を立てないようにして静かに寝室を出た。
「ふうっ…」
目の前のケイトが溜め息を吐く。まだ眠いの?と思ったけど、どうにも違うようだわ。私とクリスティンの離婚…そのことに一番ショックを受けたのは、間違いなくケイト。だから朝からずっと元気がない。それに申し訳ない気持ちで一杯だけど、どうしようもないし…
そしてケイトともお別れなんだと思うと、私だって淋しい!そんな私からの視線を受けたケイトは、ハッと姿勢を正して…
「すみません、溜め息など…ですがお願いがあります!アノン家を出る時は、どうぞ私もお連れ下さい」
それには驚いて目を見開く!まさか…と。
「本当に?だけど何の保証もないのよ。アノン侯爵家で働くよりも給金だって少ないかも知れないし…それにロッド様のことは?離婚したらアノン家と遠縁の立場の人とは、おいそれと会えなくなってしまうわよ!」
それにケイトは静かに目を閉じる。そしてフルフルと首を横に振っている。そして大きな目が再び開かれた時、大粒の涙がポロポロ溢れて…
「いいえ、シルビア様。私は再びお会いした時から、お側を離れないと決めているのです。それはシルビア様がアノン家の奥様でなくなったとしても同じです。ですから…お願いです!」
「つっ、ケイト…あなた!」
それから二人で、馬車の中で抱き合って泣いた。きっとノートン家に着く頃には目元が腫れているだろう。だけどそんなのどうでもいい!ケイトの私に対する思い遣りに、その温かさに涙が止まらなかった。ひとしきり泣いた後、笑顔で「こちらこそよろしくね」とケイトに伝えて…
私はこの時を一生忘れない。何も得られなかったアノン侯爵家での生活…だけどそうじゃなかった!こんなに心強い味方を得られたのだと。そう気付くと心の中は、すっかりと温かくなっていた…
そして馬車に揺られて着いた先には、3人の家族が家の前でウロウロしているのが見える。私はそれに、今しがたやっと引っ込んだ涙が再び流れ落ちて…
──私は決して一人ではない!それにまた気付かされる。
父は優しくここに帰ってくるように言い、弟は「相変わらず不器用なんだから!」と私を叱る…だけどその目には涙が光っていた。そして義妹のプリシラは何も言わずにそっと私の肩を抱き締める。
私が何かを伝える間もなく、家族達は離婚後のことを考えてくれたよう。それを心の底から有り難いと思う。理由も打ち明けていない離婚では、もしかして受け入れて貰えないかも?なんて思った時もあったけど、やはり家族…何も言わずとも、私の気持ちは分かってくれていたよう。だけど同時に私は思っていた…間違っても実家に戻ることは出来ないと。
侯爵家を追われた女が戻るとなると、どれだけ迷惑を掛けてしまうのか…
クリスティンはそんなことを望まないと思うが、他の貴族家はそうは思わない。きっとアノン家に睨まれたくなくて、ノートン家との取引を控えたり、悪くすれば取引中止ということも…
それでもきっと、この家族達は温かく迎えてくれる。だけどプリシラは今カインの子を妊娠していて、そして初めての出産。そんな大事な時に不安な気持ちにさせる訳にはいかない!
やはりクリスティンの言う通りにしなければならないの?城で行われる第二王子御誕生の御祝いパーティー。それにまるで見世物のように出席する…それに私は耐えられるかしら?
きっとフェリシアやその侍女のキャサリンは、そんな私を嘲笑うだろう。それを甘んじて受け入れるの?何とか今直ぐ離婚出来ないものだろうか…
そんな悩みはあるものの、それから久しぶりに家族との楽しい時間を過ごす。離婚のことは一切触れられずに、あれやこれやと取り留めのない話をした。それからもうこんな時間だと帰ろうとすると…
「姉さん、雨が強く降っているし、明日帰ったらどうだろう。それに今日からだってこの家に居ていいんだよ?」
いつもは憎まれ口ばかりのカインが、そんな優しいことを言ってくる。それに涙を堪えて微笑みながら「生意気なのよ!」と額をコツンとする。
それでもやはりアノン邸に帰らない訳にはいかないと「大丈夫だから。また来るわね!」と努めて明るく伝えてノートン邸を後にした。
「雨脚が強くなって来たわね…でもまだ明るいから大丈夫よね?」
心配になって御者にそう声を掛ける。熟練の腕の御者は「このくらいなら大丈夫ですよ!」と明るく言ってくれる。それなら大丈夫だと判断して馬車を走らせる。それが少し進んだ後、急に止まって…
「奥様、ここのところの雨で地盤が緩くなっていたようです。倒木が道を遮っていますし、違う道から帰らせていただきます」
そんなことを伝えられて、途端に不安になる。ノートン邸に引き返そうか?そう頭によぎる。だけど経験が豊富な御者の言う事…それがベストなんだろうと、それを了承して進んだ。
大きな河の近くの道で不安を感じるけど、綺麗に整備されている。だから滅多なことはないだろうと思っても、やはり心配になる…川際を通る時などは緊張して、車窓からそれをじっと見守る。それからやっと危ないところを通り過ぎ、安心してホッと息を吐く。
「緊張しましたね…シルビア様。ここを過ぎればあとは安心です。坊ちゃまも心配しているでしょうし、早く帰りましょう」
ずっと無言で緊張していたケイトも、ホッとした様子でそう言って微笑む。クリスティンが心配している?そうだったらいいけど…
そんな思いが込み上げて複雑な気持ちになるけど、心配くらいはしてくれるでしょうと思い直し帰路を急ぐ。
平坦な道になって少し行くと、突然足場が悪くなる。それにガタガタと馬車は揺れ、そしてゆっくりと車体が傾き始めて…
──あっ、危ない!!
そう思った直後、突然の衝撃!そして私は馬車の壁に嫌と言うほど打ち付けられた。
どれだけ時間が経ったのだろう…ほんの数分かしら?全身が痛んで、目も開けられない!それに身体が濡れているのか物凄く寒い。何とか動かせる指先で探ってみると…土?
ザラザラとしたものが指に触れギョッとする。それからチクッと何かが刺さり顔を顰めた。どうしたのだろう?何が起こったの!私は痛みに耐えながら、頭が働くようになるのを待った…
その前髪にそっと手を伸ばし微笑みながら触れる。そして肩先にキスを一つ落として、それからそっとベッドから出る。
今日は離婚のことを伝えようと、実家のノートン伯爵家に行くことになっている。街の一等地にあるアノン邸とは違って、農産物を扱う事業をしている実家は農業地帯に屋敷があって…
ここから三時間ほどもかかるし、早朝から出発するとケイトと御者には伝えてある。離婚…その気持ちが昨夜、揺らがなかったかと言えば嘘になる。こんなにもクリスティンを愛している!そう思ったもの…
だけど今、離れなくてはもう二度とそれが叶わなくなるかも…そう感じている。そして私は、クリスティンを恨むことになるのが何より怖い!
きっとクリスティンは、そんな私の気持ちを知らないわね。気付くこともしない…私が女の意地や気まぐれで、離婚したいと言い出したと思っているの?そうじゃないのに…
そしてそんな感傷から、もう一度愛する人を振り返る。それから音を立てないようにして静かに寝室を出た。
「ふうっ…」
目の前のケイトが溜め息を吐く。まだ眠いの?と思ったけど、どうにも違うようだわ。私とクリスティンの離婚…そのことに一番ショックを受けたのは、間違いなくケイト。だから朝からずっと元気がない。それに申し訳ない気持ちで一杯だけど、どうしようもないし…
そしてケイトともお別れなんだと思うと、私だって淋しい!そんな私からの視線を受けたケイトは、ハッと姿勢を正して…
「すみません、溜め息など…ですがお願いがあります!アノン家を出る時は、どうぞ私もお連れ下さい」
それには驚いて目を見開く!まさか…と。
「本当に?だけど何の保証もないのよ。アノン侯爵家で働くよりも給金だって少ないかも知れないし…それにロッド様のことは?離婚したらアノン家と遠縁の立場の人とは、おいそれと会えなくなってしまうわよ!」
それにケイトは静かに目を閉じる。そしてフルフルと首を横に振っている。そして大きな目が再び開かれた時、大粒の涙がポロポロ溢れて…
「いいえ、シルビア様。私は再びお会いした時から、お側を離れないと決めているのです。それはシルビア様がアノン家の奥様でなくなったとしても同じです。ですから…お願いです!」
「つっ、ケイト…あなた!」
それから二人で、馬車の中で抱き合って泣いた。きっとノートン家に着く頃には目元が腫れているだろう。だけどそんなのどうでもいい!ケイトの私に対する思い遣りに、その温かさに涙が止まらなかった。ひとしきり泣いた後、笑顔で「こちらこそよろしくね」とケイトに伝えて…
私はこの時を一生忘れない。何も得られなかったアノン侯爵家での生活…だけどそうじゃなかった!こんなに心強い味方を得られたのだと。そう気付くと心の中は、すっかりと温かくなっていた…
そして馬車に揺られて着いた先には、3人の家族が家の前でウロウロしているのが見える。私はそれに、今しがたやっと引っ込んだ涙が再び流れ落ちて…
──私は決して一人ではない!それにまた気付かされる。
父は優しくここに帰ってくるように言い、弟は「相変わらず不器用なんだから!」と私を叱る…だけどその目には涙が光っていた。そして義妹のプリシラは何も言わずにそっと私の肩を抱き締める。
私が何かを伝える間もなく、家族達は離婚後のことを考えてくれたよう。それを心の底から有り難いと思う。理由も打ち明けていない離婚では、もしかして受け入れて貰えないかも?なんて思った時もあったけど、やはり家族…何も言わずとも、私の気持ちは分かってくれていたよう。だけど同時に私は思っていた…間違っても実家に戻ることは出来ないと。
侯爵家を追われた女が戻るとなると、どれだけ迷惑を掛けてしまうのか…
クリスティンはそんなことを望まないと思うが、他の貴族家はそうは思わない。きっとアノン家に睨まれたくなくて、ノートン家との取引を控えたり、悪くすれば取引中止ということも…
それでもきっと、この家族達は温かく迎えてくれる。だけどプリシラは今カインの子を妊娠していて、そして初めての出産。そんな大事な時に不安な気持ちにさせる訳にはいかない!
やはりクリスティンの言う通りにしなければならないの?城で行われる第二王子御誕生の御祝いパーティー。それにまるで見世物のように出席する…それに私は耐えられるかしら?
きっとフェリシアやその侍女のキャサリンは、そんな私を嘲笑うだろう。それを甘んじて受け入れるの?何とか今直ぐ離婚出来ないものだろうか…
そんな悩みはあるものの、それから久しぶりに家族との楽しい時間を過ごす。離婚のことは一切触れられずに、あれやこれやと取り留めのない話をした。それからもうこんな時間だと帰ろうとすると…
「姉さん、雨が強く降っているし、明日帰ったらどうだろう。それに今日からだってこの家に居ていいんだよ?」
いつもは憎まれ口ばかりのカインが、そんな優しいことを言ってくる。それに涙を堪えて微笑みながら「生意気なのよ!」と額をコツンとする。
それでもやはりアノン邸に帰らない訳にはいかないと「大丈夫だから。また来るわね!」と努めて明るく伝えてノートン邸を後にした。
「雨脚が強くなって来たわね…でもまだ明るいから大丈夫よね?」
心配になって御者にそう声を掛ける。熟練の腕の御者は「このくらいなら大丈夫ですよ!」と明るく言ってくれる。それなら大丈夫だと判断して馬車を走らせる。それが少し進んだ後、急に止まって…
「奥様、ここのところの雨で地盤が緩くなっていたようです。倒木が道を遮っていますし、違う道から帰らせていただきます」
そんなことを伝えられて、途端に不安になる。ノートン邸に引き返そうか?そう頭によぎる。だけど経験が豊富な御者の言う事…それがベストなんだろうと、それを了承して進んだ。
大きな河の近くの道で不安を感じるけど、綺麗に整備されている。だから滅多なことはないだろうと思っても、やはり心配になる…川際を通る時などは緊張して、車窓からそれをじっと見守る。それからやっと危ないところを通り過ぎ、安心してホッと息を吐く。
「緊張しましたね…シルビア様。ここを過ぎればあとは安心です。坊ちゃまも心配しているでしょうし、早く帰りましょう」
ずっと無言で緊張していたケイトも、ホッとした様子でそう言って微笑む。クリスティンが心配している?そうだったらいいけど…
そんな思いが込み上げて複雑な気持ちになるけど、心配くらいはしてくれるでしょうと思い直し帰路を急ぐ。
平坦な道になって少し行くと、突然足場が悪くなる。それにガタガタと馬車は揺れ、そしてゆっくりと車体が傾き始めて…
──あっ、危ない!!
そう思った直後、突然の衝撃!そして私は馬車の壁に嫌と言うほど打ち付けられた。
どれだけ時間が経ったのだろう…ほんの数分かしら?全身が痛んで、目も開けられない!それに身体が濡れているのか物凄く寒い。何とか動かせる指先で探ってみると…土?
ザラザラとしたものが指に触れギョッとする。それからチクッと何かが刺さり顔を顰めた。どうしたのだろう?何が起こったの!私は痛みに耐えながら、頭が働くようになるのを待った…
967
あなたにおすすめの小説
あなたへの愛を捨てた日
柴田はつみ
恋愛
公爵夫人エステルは、冷徹な夫レオニスを心から愛していた。彼の好みを調べ、帰宅を待ちわび、献身的に尽くす毎日。
しかし、ある夜会の回廊で、エステルは残酷な真実を知る。
レオニスが、未亡人クラリスの手を取り囁いていたのだ。
「君のような(自立した)女性が、私の隣にいるべきだった」
エステルは悟る。自分の愛は彼にとって「重荷」であり、自分という人間は彼にとって「不足」だったのだと。その瞬間、彼女の中で何かが音を立てて砕け散る。
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜
くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。
味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。
――けれど、彼らは知らなかった。
彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。
すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、
復讐ではなく「関わらない」という選択。
だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました
ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。
ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。
王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。
そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。
「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。
邪魔者は消えますので、どうぞお幸せに 婚約者は私の死をお望みです
ごろごろみかん。
恋愛
旧題:ゼラニウムの花束をあなたに
リリネリア・ブライシフィックは八歳のあの日に死んだ。死んだこととされたのだ。リリネリアであった彼女はあの絶望を忘れはしない。
じわじわと壊れていったリリネリアはある日、自身の元婚約者だった王太子レジナルド・リームヴと再会した。
レジナルドは少し前に隣国の王女を娶ったと聞く。だけどもうリリネリアには何も関係の無い話だ。何もかもがどうでもいい。リリネリアは何も期待していない。誰にも、何にも。
二人は知らない。
国王夫妻と公爵夫妻が、良かれと思ってしたことがリリネリアを追い詰めたことに。レジナルドを絶望させたことを、彼らは知らない。
彼らが偶然再会したのは運命のいたずらなのか、ただ単純に偶然なのか。だけどリリネリアは何一つ望んでいなかったし、レジナルドは何一つ知らなかった。ただそれだけなのである。
※タイトル変更しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる