【完結】シルビア・アノンは悔恨の念を抱く。この結婚は失敗だったと…

MEIKO

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第五章・不穏な足音

37・愛の告白

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 レセプションパーティーを一週間後に控え、もう準備は完璧で後は行くだけ!って思っていたんだけど…何とここへ来て問題発生!

 「ずるい~僕もお父様やお母様とお出掛けしたいよー!僕だけお留守番だなんて酷い~」
  
 エリックがそう言って、真っ赤なほっぺはパンパン!ぷくーぅと膨れっ面になっている。それも今にも泣きださんばかりになって…

 ──こ、これは困ったことになったわ!

 夕方からのパーティーだから、問題はないと思っていた。夕食を一緒に食べられないことは残念だけど、その日一晩だけだし大丈夫よね?って。全然大丈夫じゃなかったみたいだわ…

 「エリック、一晩だけ二人でのお出掛けを許してくれないか?それにララはすっかり身体の怪我は治っているけど、だけど心はどうだろう。たまには息抜きが必要だとは思わない?」

 そう言って説得しようとするアレックス。だけどエリックは相変わらずの仏頂面で。これは手強い!

 だけどそうよね…最近ずっと夜の寝かし付けまでしていた…それがなくも寝られる?そう思うと、途端に心配になってくる。

 「坊ちゃま、たまにはスーザンとご一緒していただけませんか?以前は二人でお泊りしたことだってありましたのに…淋しいですねぇ」

 すっかり困り顔の私達を見兼ねて、スーザンはそう助太刀する。私がここに来る前までは、ずっとスーザンが世話をしてきた。だから本当のお祖母様のように良く懐いている。そんな人から淋しいと言われて、少し可哀想に思ったよう。膨れた頬がどんどん萎んでいって…

 「一晩だけだからね?スーザンが可哀想だし、一晩だけ僕が一緒に寝てあげる。それで大丈夫だよね?」

 それには笑いを堪えるのに必死!エリックがスーザンを寝かし付けてあげるかのように言っている。なんて可愛いんだろう?今夜寝る時は、好きなだけ本を読んであげなきゃ!

 取り敢えずはスーザンの機転で何とかなったと、ホッと胸を撫で下ろす。衣裳も準備出来ているし、エリックからの許可も得た…今度こそ本当に待つだけよね?そう一安心した。それからあっという間に六日が過ぎ、いよいよ明日にパーティーが迫った夜…


 ──コン、コン…コン。

 エリックを寝かし付けた後入浴を済ませ、それから明日の衣裳の準備をした。アレックスに恥をかかせる訳にはいかないと、念には念を入れて最終チェック。それが終わってからは自室で一人寛いでいた…すると、遠慮がちにノックされる音が響いて…

 ──誰かしら?もうかなり遅い時間だけど…

 そう思いながらも何か緊急だったらと、「はいっ」と上ずった声で返事をする。一体何だろうと隙間から覗くと…アレックス?一瞬目が合った後、ちょっと挙動不審に視線を彷徨わせて、極力私を見ないようにしている。
 
 今まではこんな遅くに来たことはない…どうかしたのかしら?そう思ってからハッと気付く…薄い寝着一枚きりだわ!

 「少し待っていてちょうだい!」

 そう叫んでから、ドキドキしながら部屋の中に戻る。そしてこれでいいかな?とカーディガンを一枚羽織って再び扉まで戻る。相変わらずアレックスはこちらを見ようとしないし、どんな用事で?と途方に暮れていると…

 「ごめん!どうしても今夜中に渡したいものがあって。明日渡そうかと思っていたんだが、朝から準備で忙しいって聞いたから…今いいかい?」

 アレックスは申し訳なさそうにそう伝え、了承を求めてくる。それからチラッと横目で見て、恥ずかしそうにしていて…そう分かると可笑しくなる。

 「フフッ、大丈夫よ?どうぞ入って!」

 さっきまでの緊張とは一転、そんなふうに笑う私にアレックスは、ホッとしたように笑顔を見せる。何を渡したいのかは知らないけど、こんな時間に悪いと思ったんでしょう。だけど…それ程に大切なものを渡そうとしているってこと?

 どうも思い立ってここまで来たようで、アレックスも随分リラックスした格好をしている。まだ寝着ではないものの、ゆったりとしたシャツにタックの入っていないズボン。見たこともないようなラフな姿で、胸元が大きく開いていてドキッとする…

 それから二人でソファに座り、寝る前に飲もうと用意していたハーブティーを淹れる。そしてアレックスの前に差し出すと…

 「ありがとう。こんな時間に手間を掛けさせてしまってすまない。実は…」

 先程からずっと、遠慮しているというか、躊躇している様子のアレックス。一体どうしたんだろう?と見つめていると…シャツの胸ポケットから取り出したものにハッと息を呑む!

 大きな宝石の付いたネックレス…青い石?と思うけど、角度によっては赤くも見える。これは希少な多色性がある石のようだわ…

 「これは母の形見のネックレスだ。この石はアレキサンドライトと言って、代々辺境伯夫人に受け継がれている。母はラウラが亡くなってから、すっかり意気消沈してしまって…だから呆気なく病気に負けてしまってね。もう逝って三年になる。そこでララ、明日のパーティーはこれを着けて出席してくれないか?」

 それにはえっ…と言い淀む。お母様の形見…そのような大切なものを、私が使うわけにはいかない!

 「いいえ!そのような大切なものを、私などが着けていい筈ありません。決してそのような立場では…」

 先程までとは違って、真っ直ぐに私を見つめるアレックス。そして「立場だって…?」とボソリと呟く。それからハァーッと大きく息を吐いたかと思うと、怒ったように眉間にシワを寄せる。それには、えっ?と…

 「使う立場ではないだと?俺は以前から、君が好きだと言っている。もう離れられないほどに…それなのに着けちゃいけない?君の他に誰がいるっていうんだ!」

 「ア、アレックス…だけど…」

 そう戸惑う私にアレックスは、膝の上でぎゅっと握る私の拳に、自分の大きな手を重ねる。そして…

 「ララを愛してる!生半可な気持ちなんかじゃなくて、君を心から愛しているんだ。だから是非このネックレスを受け取って欲しい。母だってきっと喜んでくれているよ…」

 ──あ、愛してる…私を?

 その瞬間頬に涙が流れる。ポロ、ポロ…と大粒の涙が止め処なく溢れ落ちる。どうしてかは分からないけれど…私がずっと渇望していたものなんだと感じる。手を伸ばしても届かない!そんな苦しみの末に、辿り着いたようなその言葉…

 ──これはララとしての感情?それとも…

 そんな私に優しい笑顔を見せるアレックス。そして立ち上がると、そのネックレスを私に付けようとしてくる。寝着よ?と思うけど、その気持ちが嬉しくて、長い髪を片側に寄せ、うなじを露わにする。
 
 そして首元に重みのある冷たい感触が…だけど直ぐに体温に馴染んで落ち着く。まるで最初から自分の物だったようにしっとりと馴染み、室内の照明でキラキラと赤く煌めいている。

 慣れない手付きで、一生懸命私に着けてくれたアレックス。それにふと思い返すと、こんなに高価なものをポケットに入れてなかった?と笑ってしまう。だけどこういうところがアレックスらしい。そう微笑ましく思っていると…

 「チュッ…」

 突然背後から、うなじに温かいものが押し当てられる…こ、これって?
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