47 / 68
最終章・私の願い
47・私の決断
しおりを挟む
あれから私達は、馬車に揺られて住み慣れたルリド邸へと帰った。話したいことも、聞きたいことも沢山あったけど、帰り着いた頃にはもう疲労困憊で…それで明日、全て話しますと約束して自室に入る。
「ケイトや、あの時の御者…そしてお父様達は元気かしら?それに妊娠中だったプリシラはもう出産を終えているわね…私きっと、伯母さんになったんだわ!」
一人そう呟くと…涙が溢れる。会いたい!きっと物凄く心配をかけただろう。そしてクリスティンのことだから、今頃はノートン家に、私の生存を知らせてくれている筈。次に会った時はきっと、叱られちゃうわね…
そして考える…私はどうするべきなの?アノン侯爵家に帰るのか、それともこのまま…色んな感情が渦巻いて、直ぐには答えが出ない!考えないと…そう思うけど、眠たくて考えが纏まらない。そしていつの間にか眠りについて…
+++++
翌日、私は大切な人達を集めた。もう記憶が戻った以上、全てを話さない訳にはいかない。記憶を失い、そしてどこの誰とも知れない私を、家族のように…いえ、家族以上に面倒を見てくれた。どこまでも温かな愛情で包んでくれた人達…
「今日は集まっていただき、ありがとうございます」
まずはそうお礼を言う。ここに集まってくれたのは、アレックスにエリック。そしてスーザンにボードウィン。正直言うと、エリックはまだ幼い。だから子供に話すべきことではないのでは?と悩んだけれど、どうしても一つ聞きたいことがあって…
そして私が皆をリビングに集めた理由を知っているアレックス以外は、何を?とキョトンとしている。それにはちょっとだけ微笑んで、意を決して話し出す。
「どうか、落ち着いて聞いて下さい。昨日私は突然、記憶を取り戻しました。実は…私はアノン侯爵夫人のシルビア・アノンです」
それにボードウィンとスーザン夫婦は、ハッ!と息を呑む。誰よりも私とアレックスの仲を近くで見ていた二人。きっと私が結婚していた事実に、絶望したに違いない。それも名門貴族家といえるアノン侯爵家の…
「それでは?ララ…いえ、シルビア様は、アノン家に戻られるのですか!?」
するとスーザンは、青い顔をして私に問いかける。シルビア様…そう初めて呼ばれて、何だか淋しく感じる。そして…
「実は私、離婚を夫に申し出ていました。詳しくは言えませんが、あの時私は限界を感じていたのです。それであの日…父や弟夫婦にそれを伝えなければならないと、実家のノートン伯爵家に行くことになって…その帰りに事故に」
それには神妙な面持ちで俯いていたアレックスがバッと顔を上げる。そして「離婚…」と呟いている。
あの時、クリスティンには離婚の手続きを進めて欲しいと言ったけど、アレックスはしっかりとは聞き取れていなかったよう。半信半疑だったのかも知れないわね…。それでボードウィン達と同じく、ここを出て行くのではないかと、気が気じゃなかったようで。それにほんの少し、ホッとした顔になっている。するとその時…
「嫌だ!お母様がこの家を出て行くなんてー!」
そう大声を出したのはエリック。分からないなりにも話を聞いて、すっかり心配になってしまったよう。見ると、目にいっぱい涙を溜めている。それで私は…
「エリック…お母様のところへおいで!」
そう微笑みながら声を掛ける。私は敢えて、お母様…と言った。そしてそんな私の胸へと泣きながら飛び込んで来るエリック。その小さな身体を、愛しさではち切れんばかりになってぎゅっと抱き締める。そしてヒッ、ヒッ…と咽び泣く背中を、撫でながら優しく問いかける。
「エリックとは、ずっと以前に会ったことがあったわよね?思い出したの…孤児院で一度だけ一緒に過ごして」
それにアレックスを始めとする三人は、驚いたようにこちらを見る!
「エリック、もしかして…知ってたのか?」
三人は、まさか!と驚き、信じられない…といった顔をしている。それにエリックは…
「ご、ごめんなさい!孤児院で初めて会った時、この人が僕の、お、お母様だったら…って。ヒッ、ど、どんなにいいかってー!さ、淋しかったんだ…僕」
そんなエリックの悲痛な叫びに私達は声もなくて、抱く腕により力を込める。それから咽び泣いて真っ赤になるエリックのオデコに自分の額をコツン!とつけて…
「聞いて、エリック。怒ってなんてないのよ?だって大好きなエリックが、私をお母様に選んでくれたんですもの!とっても嬉しいの」
「ほ、ホント?じゃあ、ずっと僕のお母様でいてくれる?」
それにオデコをくっつけたままスリスリと額を擦って、ニッコリと笑う。
するとポロポロと滴のように頬を濡らすエリックの顔が、喜びで輝いてきて…
ここにいる全員が泣き笑いの表情になって、そして安堵した空気が漂う。すると…
「少しだけお母様と二人にしてくれないか?エリック。二人だけでお話があるんだが…」
それにエリックは大きく頷いて、さっきまでの不安そうな顔から嬉しそうな笑顔に変わり、スーザンとボードウィンに連れられてリビングを出て行く。それから真面目な表情をしたアレックスが…
「シルビア…それは、俺の都合の良いように取ってもいいってこと?このまま俺の側にいてもいいと…そう解釈してもいいのだろうか?」
まだ涙が滲むアレックスの瞳…まるでこの地の美しい景色のよう!
整然と整えられてはいないが、花々が咲き乱れ野趣溢れる庭に、澄み切った池に静かに敷地を流れる小川。そしてこの辺り一帯を眺めることが出来る丘…そんな私の大好きな景色があなたの中にあるのね?そして…だからきっと好きなんだわ!
そう確信して、不安そうに眉を下げるアレックスにそっと口付ける…あっ、私から口付けるのは初めてかも?そう気付くと…
驚いて目を見開くアレックスの瞳からは、一筋の涙が零れ落ちる。そして温かな懐に抱かれて、安心したように目を閉じた。その時、何故か浮かぶのはクリスティンの顔…
──ごめんなさい、クリスティン。あなたの複雑な想いを知ったけど、やはり私は…それを共に背負わせて欲しかったわ!良いことも悪いことも全部…
三年も一緒にいたんだもの…それが出来なかったということは、それだけの関係にしかなれなかったということ…
ずっとあなたに焦がれて、苦しんできたけど、私ではあなたの唯一にはなれなかったのね?だけどそれはあなただけのせいじゃない!
そしてアレックスの腕の中で私は思う。私が与えてあげられなかった幸せを…
──どうかクリスティン。いつの日か、幸せになれますように…
そして数日後、そんな私達の気持ちなど無視したような重大な問題が湧き起こる。どうしてそうなったんだろうか?そう憤ったけど、そんな声は届かない!
そして…そのことが私の命よりも大切なあの人達との別れに繋がるとは…
「ケイトや、あの時の御者…そしてお父様達は元気かしら?それに妊娠中だったプリシラはもう出産を終えているわね…私きっと、伯母さんになったんだわ!」
一人そう呟くと…涙が溢れる。会いたい!きっと物凄く心配をかけただろう。そしてクリスティンのことだから、今頃はノートン家に、私の生存を知らせてくれている筈。次に会った時はきっと、叱られちゃうわね…
そして考える…私はどうするべきなの?アノン侯爵家に帰るのか、それともこのまま…色んな感情が渦巻いて、直ぐには答えが出ない!考えないと…そう思うけど、眠たくて考えが纏まらない。そしていつの間にか眠りについて…
+++++
翌日、私は大切な人達を集めた。もう記憶が戻った以上、全てを話さない訳にはいかない。記憶を失い、そしてどこの誰とも知れない私を、家族のように…いえ、家族以上に面倒を見てくれた。どこまでも温かな愛情で包んでくれた人達…
「今日は集まっていただき、ありがとうございます」
まずはそうお礼を言う。ここに集まってくれたのは、アレックスにエリック。そしてスーザンにボードウィン。正直言うと、エリックはまだ幼い。だから子供に話すべきことではないのでは?と悩んだけれど、どうしても一つ聞きたいことがあって…
そして私が皆をリビングに集めた理由を知っているアレックス以外は、何を?とキョトンとしている。それにはちょっとだけ微笑んで、意を決して話し出す。
「どうか、落ち着いて聞いて下さい。昨日私は突然、記憶を取り戻しました。実は…私はアノン侯爵夫人のシルビア・アノンです」
それにボードウィンとスーザン夫婦は、ハッ!と息を呑む。誰よりも私とアレックスの仲を近くで見ていた二人。きっと私が結婚していた事実に、絶望したに違いない。それも名門貴族家といえるアノン侯爵家の…
「それでは?ララ…いえ、シルビア様は、アノン家に戻られるのですか!?」
するとスーザンは、青い顔をして私に問いかける。シルビア様…そう初めて呼ばれて、何だか淋しく感じる。そして…
「実は私、離婚を夫に申し出ていました。詳しくは言えませんが、あの時私は限界を感じていたのです。それであの日…父や弟夫婦にそれを伝えなければならないと、実家のノートン伯爵家に行くことになって…その帰りに事故に」
それには神妙な面持ちで俯いていたアレックスがバッと顔を上げる。そして「離婚…」と呟いている。
あの時、クリスティンには離婚の手続きを進めて欲しいと言ったけど、アレックスはしっかりとは聞き取れていなかったよう。半信半疑だったのかも知れないわね…。それでボードウィン達と同じく、ここを出て行くのではないかと、気が気じゃなかったようで。それにほんの少し、ホッとした顔になっている。するとその時…
「嫌だ!お母様がこの家を出て行くなんてー!」
そう大声を出したのはエリック。分からないなりにも話を聞いて、すっかり心配になってしまったよう。見ると、目にいっぱい涙を溜めている。それで私は…
「エリック…お母様のところへおいで!」
そう微笑みながら声を掛ける。私は敢えて、お母様…と言った。そしてそんな私の胸へと泣きながら飛び込んで来るエリック。その小さな身体を、愛しさではち切れんばかりになってぎゅっと抱き締める。そしてヒッ、ヒッ…と咽び泣く背中を、撫でながら優しく問いかける。
「エリックとは、ずっと以前に会ったことがあったわよね?思い出したの…孤児院で一度だけ一緒に過ごして」
それにアレックスを始めとする三人は、驚いたようにこちらを見る!
「エリック、もしかして…知ってたのか?」
三人は、まさか!と驚き、信じられない…といった顔をしている。それにエリックは…
「ご、ごめんなさい!孤児院で初めて会った時、この人が僕の、お、お母様だったら…って。ヒッ、ど、どんなにいいかってー!さ、淋しかったんだ…僕」
そんなエリックの悲痛な叫びに私達は声もなくて、抱く腕により力を込める。それから咽び泣いて真っ赤になるエリックのオデコに自分の額をコツン!とつけて…
「聞いて、エリック。怒ってなんてないのよ?だって大好きなエリックが、私をお母様に選んでくれたんですもの!とっても嬉しいの」
「ほ、ホント?じゃあ、ずっと僕のお母様でいてくれる?」
それにオデコをくっつけたままスリスリと額を擦って、ニッコリと笑う。
するとポロポロと滴のように頬を濡らすエリックの顔が、喜びで輝いてきて…
ここにいる全員が泣き笑いの表情になって、そして安堵した空気が漂う。すると…
「少しだけお母様と二人にしてくれないか?エリック。二人だけでお話があるんだが…」
それにエリックは大きく頷いて、さっきまでの不安そうな顔から嬉しそうな笑顔に変わり、スーザンとボードウィンに連れられてリビングを出て行く。それから真面目な表情をしたアレックスが…
「シルビア…それは、俺の都合の良いように取ってもいいってこと?このまま俺の側にいてもいいと…そう解釈してもいいのだろうか?」
まだ涙が滲むアレックスの瞳…まるでこの地の美しい景色のよう!
整然と整えられてはいないが、花々が咲き乱れ野趣溢れる庭に、澄み切った池に静かに敷地を流れる小川。そしてこの辺り一帯を眺めることが出来る丘…そんな私の大好きな景色があなたの中にあるのね?そして…だからきっと好きなんだわ!
そう確信して、不安そうに眉を下げるアレックスにそっと口付ける…あっ、私から口付けるのは初めてかも?そう気付くと…
驚いて目を見開くアレックスの瞳からは、一筋の涙が零れ落ちる。そして温かな懐に抱かれて、安心したように目を閉じた。その時、何故か浮かぶのはクリスティンの顔…
──ごめんなさい、クリスティン。あなたの複雑な想いを知ったけど、やはり私は…それを共に背負わせて欲しかったわ!良いことも悪いことも全部…
三年も一緒にいたんだもの…それが出来なかったということは、それだけの関係にしかなれなかったということ…
ずっとあなたに焦がれて、苦しんできたけど、私ではあなたの唯一にはなれなかったのね?だけどそれはあなただけのせいじゃない!
そしてアレックスの腕の中で私は思う。私が与えてあげられなかった幸せを…
──どうかクリスティン。いつの日か、幸せになれますように…
そして数日後、そんな私達の気持ちなど無視したような重大な問題が湧き起こる。どうしてそうなったんだろうか?そう憤ったけど、そんな声は届かない!
そして…そのことが私の命よりも大切なあの人達との別れに繋がるとは…
1,376
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
【完結】探さないでください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
私は、貴方と共にした一夜を後悔した事はない。
貴方は私に尊いこの子を与えてくれた。
あの一夜を境に、私の環境は正反対に変わってしまった。
冷たく厳しい人々の中から、温かく優しい人々の中へ私は飛び込んだ。
複雑で高級な物に囲まれる暮らしから、質素で簡素な物に囲まれる暮らしへ移ろいだ。
無関心で疎遠な沢山の親族を捨てて、誰よりも私を必要としてくれる尊いこの子だけを選んだ。
風の噂で貴方が私を探しているという話を聞く。
だけど、誰も私が貴方が探している人物とは思わないはず。
今、私は幸せを感じている。
貴方が側にいなくても、私はこの子と生きていける。
だから、、、
もう、、、
私を、、、
探さないでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる