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最終章・私の願い
58・相応しい罰
「すまないね…疲れているだろうに。君には是非、聞いて欲しいことがあるのだ」
──聞いて欲しいこと?それも私になんて…
それには戸惑ってしまう。王太子殿下殿下と二人きりで会うなど初めてで、物凄く緊張する。二人といっても護衛の者や、私が不安だろうからという理由でケイトもこの場にいることを許されているけど…
ケイトは少し離れたところから心配そうに私を見つめていて、そのことが心強く感じる。
「失礼ですが…私になど、どんなお話なのでしょうか?」
意外なお誘い…フェリシアとはかつて親しくしていたけど、それでも面と向かって殿下とお会いするのは、片手にも満たないくらいだった。以前は殿下がクリスティンとフェリシアの仲を疑って、夫婦としても寄せ付けなかったこともあるけど…なのに?と不思議に思う。そして…
「話というのは、エリックのことなんだ。君はあの子を我が子のように思ってくれているだろう?」
そう言って、少しだけ寂しそうに微笑む殿下。殆ど会うことのないエリックを、だけど愛しく思っているのが分かるその表情。すっかりと親の顔になっている。
「はい。私はエリックを本当の子供のように思っています。そしてあの子の幸せを心から願っています。それは確かなことですが…どういうことでしょうか?エリックのこととは…」
エリックのことだとすると、もしかしてフェリシアの産んだ子供のことも関係あるんだろうか?そして何より、殿下が先程フェリシアに囁いていたことが気に掛かる。
「結果から言うと、フェリシアの産んだ子供は三人とも私の子では無かった…」
「さ、三人共!それは本当ですか?」
不敬だと思うが、予想外の真実に思わずそう言ってしまっていた。三人共だというと、王太子殿下の本当の子供はエリックだけになる…それは本当に?
「君も知っているだろうが、親子の鑑定にも限界がある。対象が兄弟の場合、より判定が難しくなるのは承知だろうね。ほぼ正確な結果が出ないと言ってもいい。それでは何故分かったのかだが…私には子種が無かった」
──ええっ?子種が…それではエリックもだということにならない?
「誤解しないで貰いたいのは、フェリシアと結婚してから後のことだ。結婚式から一ヶ月後、私は当時流行していた熱病に罹っている。そしてその後に囁かれていたのは、罹患した者達の不妊だ。それが噂程度であったが為に気にしてしなかったが、どこか頭の隅に引っ掛かってはいたのだ。だけど子供が生まれたことで、そんな事実はないのだと思い込んでいたんだが…そしてあれから検査して、初めてそれが分かった…」
それには絶句した。確かに何年か前、この大陸中に流行した風邪に似た病。物凄く高い熱が出るとかで長引き、後遺症で苦しむ人が続出して。だけどその後にそんな後遺症があったのは初耳だった。そしてその結果が…フェリシアの浮気の証拠!
「どうなさるおつもりなのです…それを公表されるのでしょうか?」
それに殿下は先程までとは違い、苦々しい顔をして苦しい胸の内を話し出す。
「ずっと自分の子だと思って育ててきた三人だ…おまけに一番下は、まだ一歳。そんな小さな子に、非情な通告をするのは無理だ!ただ、フェリシアのことを理由に王位継承権だけは与えないことにする。そして弟のアーロンは王族から除籍し、国外に出すつもりでいる…」
その措置は理解出来る。ずっと我が子だと思っていたのに、そうじゃなかったと分かった瞬間、何事も無かったように切り捨てるのは無理だわ!ましてや幼い子供を…だけど待って!それではこの先はもう殿下の子は望めないということ。それじゃあ、エリックが拒否した場合はどうなるの?王位を継ぐのは…
「心配しないでくれ。前にも言ったが、エリックに無理強いはしたくない。そして王位を継ぐのは、何も直系でなくとも構わないと思っている。そして私の身に起きたこと…全ては私がラウラを疑い、そして死なせてしまった罰だ。金の瞳を持っていないことで、ずっとコンプレックスを抱えていた…そんな私をそのままでいいのだと言ってくれた唯一の人がラウラだったのに。私は本当に馬鹿だ…これは相応しい罰なのだ」
どこか遠くを見るようにして、そう話す殿下。その目には確固たる意志が現れている。そして…
「だからな、余計なお世話かも知れないが、君にも後悔はして欲しくはない!そしてアレックスは私の兄のような人…だから幸せになって欲しいと思っている。きっとお互いが必要なんじゃないかと…」
一言一言、丁寧にそう伝えてくる殿下。それには…より淋しくなってくる。そして悩む、どうすれば良いのかと…
「だけど…もう受け入れて貰えないかも知れません。アレックスを相当に傷付けてしまいましたから。赦せないと思っているのかも…」
そう言って顔を曇らせる私に、殿下は大きく頷いて…
「だけどあれから酷い噂は聞かなくなった。それには君に戻って来て欲しい一心で、引き続き努力をしているアレックスがいるからじゃないんだろうか。それにクリスティンもそれに協力していると聞いている。新聞一面に抗議と訂正を求める一文を出していたぞ?」
──ええっ?クリスティンが…
一度は私だってそうして欲しいと願っていた。だけどそれを頼むには、アノン家としても影響が免れない…これ以上は迷惑を掛けられないと、頼み辛くなってしまったんだけど…本当に?
──聞いて欲しいこと?それも私になんて…
それには戸惑ってしまう。王太子殿下殿下と二人きりで会うなど初めてで、物凄く緊張する。二人といっても護衛の者や、私が不安だろうからという理由でケイトもこの場にいることを許されているけど…
ケイトは少し離れたところから心配そうに私を見つめていて、そのことが心強く感じる。
「失礼ですが…私になど、どんなお話なのでしょうか?」
意外なお誘い…フェリシアとはかつて親しくしていたけど、それでも面と向かって殿下とお会いするのは、片手にも満たないくらいだった。以前は殿下がクリスティンとフェリシアの仲を疑って、夫婦としても寄せ付けなかったこともあるけど…なのに?と不思議に思う。そして…
「話というのは、エリックのことなんだ。君はあの子を我が子のように思ってくれているだろう?」
そう言って、少しだけ寂しそうに微笑む殿下。殆ど会うことのないエリックを、だけど愛しく思っているのが分かるその表情。すっかりと親の顔になっている。
「はい。私はエリックを本当の子供のように思っています。そしてあの子の幸せを心から願っています。それは確かなことですが…どういうことでしょうか?エリックのこととは…」
エリックのことだとすると、もしかしてフェリシアの産んだ子供のことも関係あるんだろうか?そして何より、殿下が先程フェリシアに囁いていたことが気に掛かる。
「結果から言うと、フェリシアの産んだ子供は三人とも私の子では無かった…」
「さ、三人共!それは本当ですか?」
不敬だと思うが、予想外の真実に思わずそう言ってしまっていた。三人共だというと、王太子殿下の本当の子供はエリックだけになる…それは本当に?
「君も知っているだろうが、親子の鑑定にも限界がある。対象が兄弟の場合、より判定が難しくなるのは承知だろうね。ほぼ正確な結果が出ないと言ってもいい。それでは何故分かったのかだが…私には子種が無かった」
──ええっ?子種が…それではエリックもだということにならない?
「誤解しないで貰いたいのは、フェリシアと結婚してから後のことだ。結婚式から一ヶ月後、私は当時流行していた熱病に罹っている。そしてその後に囁かれていたのは、罹患した者達の不妊だ。それが噂程度であったが為に気にしてしなかったが、どこか頭の隅に引っ掛かってはいたのだ。だけど子供が生まれたことで、そんな事実はないのだと思い込んでいたんだが…そしてあれから検査して、初めてそれが分かった…」
それには絶句した。確かに何年か前、この大陸中に流行した風邪に似た病。物凄く高い熱が出るとかで長引き、後遺症で苦しむ人が続出して。だけどその後にそんな後遺症があったのは初耳だった。そしてその結果が…フェリシアの浮気の証拠!
「どうなさるおつもりなのです…それを公表されるのでしょうか?」
それに殿下は先程までとは違い、苦々しい顔をして苦しい胸の内を話し出す。
「ずっと自分の子だと思って育ててきた三人だ…おまけに一番下は、まだ一歳。そんな小さな子に、非情な通告をするのは無理だ!ただ、フェリシアのことを理由に王位継承権だけは与えないことにする。そして弟のアーロンは王族から除籍し、国外に出すつもりでいる…」
その措置は理解出来る。ずっと我が子だと思っていたのに、そうじゃなかったと分かった瞬間、何事も無かったように切り捨てるのは無理だわ!ましてや幼い子供を…だけど待って!それではこの先はもう殿下の子は望めないということ。それじゃあ、エリックが拒否した場合はどうなるの?王位を継ぐのは…
「心配しないでくれ。前にも言ったが、エリックに無理強いはしたくない。そして王位を継ぐのは、何も直系でなくとも構わないと思っている。そして私の身に起きたこと…全ては私がラウラを疑い、そして死なせてしまった罰だ。金の瞳を持っていないことで、ずっとコンプレックスを抱えていた…そんな私をそのままでいいのだと言ってくれた唯一の人がラウラだったのに。私は本当に馬鹿だ…これは相応しい罰なのだ」
どこか遠くを見るようにして、そう話す殿下。その目には確固たる意志が現れている。そして…
「だからな、余計なお世話かも知れないが、君にも後悔はして欲しくはない!そしてアレックスは私の兄のような人…だから幸せになって欲しいと思っている。きっとお互いが必要なんじゃないかと…」
一言一言、丁寧にそう伝えてくる殿下。それには…より淋しくなってくる。そして悩む、どうすれば良いのかと…
「だけど…もう受け入れて貰えないかも知れません。アレックスを相当に傷付けてしまいましたから。赦せないと思っているのかも…」
そう言って顔を曇らせる私に、殿下は大きく頷いて…
「だけどあれから酷い噂は聞かなくなった。それには君に戻って来て欲しい一心で、引き続き努力をしているアレックスがいるからじゃないんだろうか。それにクリスティンもそれに協力していると聞いている。新聞一面に抗議と訂正を求める一文を出していたぞ?」
──ええっ?クリスティンが…
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