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第一章・望まない形で
2・繰り返しの人生
これは何?何が起こっているのかしら。もしかして…本当にもしかしてだけど、有り得ないことか起こっているような気がしてならない。
──この見覚えのあるブティックは…もしや?
「デビュタントの…」
思わずそう呟いてしまった。そして声が出ることを同時に驚く。どうも天国…じゃない!だけど本当に?この記憶が確かなら、これは三年前の出来事だった筈。それなのに…これって夢?もしかしてここはやっぱり天国なのかしら。ここは恐らく、ノートン伯爵家のお抱えのブティックの店内だわ。私がここに最後に来たのはデビュタントの衣裳の仮縫いの時。仮縫いだけは自ら店まで出向かないといけなかったから家族で出掛けた。そして忘れもしない…そこで私にとっては、重大な事が起こった。そう、こんなふうに…
「そうだ、デビュタントの衣裳のことを言ってるんだ。お前はこの色など似合うイメージがない。だからシンシアの青い衣裳と交換してはどうかと言っているんだが」
一言一句記憶と同じ言葉。それなのに…これが夢だとか天国だとか思えない。ということは、三年前に戻って来たってことなの?そんな馬鹿なことって…
「お父様!お姉様が困っています。私はいいのです…青いドレスで。私、青も似合っているでしょう?お姉様だってピンクのドレス、とってもお似合いですから。ですからもう、おやめになって」
そう言って困ったように笑うシンシア。この嘘くさい笑顔を見るのはきっと二度目。そしてこの後は恐らく…
「お前はシンシアの姉だぞ?それなら妹に譲るのが当然じゃないか。それなのにお前はそんな不貞腐れている態度で…恥ずかしいとは思わないのか。第一、そんな似合わないドレスでデビュタントに参加したら、相当笑われるだろう。俺達は親切で言ってやってるんだがな?」
お兄様からの一方的な叱責。これで間違いない…私は死に戻りしている。どうしてそうなったのかは分からない。神様が私を可哀想だからって?そんなの信じない!本当にそうだったとしたら、今日に戻るなんて有り得ない話だわ。よりによってこんな日に…
相当混乱しているけど、そんなことを考えたって状況は変わらない。それなら…私が出来る行動をしなきゃ。それに一番思うことは、あんな未来を二度も経験するようなことは御免だってこと。苦しくて寂しい…あんな人生を。それなら私が取るべき行動は一つ。前は落ち込んで、とてもじゃないけど言えなかったから…
「お兄様、私が何故ピンクのドレスにしたのか本当に分からないの?もしもそうだったなら、どっちが酷いのかしら。私にシンシアを気遣うようにいつも言うけど、それならお兄様は実の妹の私を気遣ったことなんてあったかしらね?」
「お、お前!その言い方は…」
いつもとは全く違う私の言動。それに驚く面々が…
一度目の人生の時は、シンシアに泣く泣くドレスを譲っている。私が生地選びからデザインまで、半年も考え抜いて仕上げた大切なドレスを。この人達、私がどんな思いでいたのか分かってる?知るはずもないし、考えたこともきっとないでしょうね。
「だけどそれはまた違う話ではないか?お互いが選んだドレスを、交換してデビュタントに参加するのも記念になって良いと思うんだが。そこまで拘らなくとも…」
お父様がお兄様を庇う発言をし、やっぱり二人共に私の気持ちなど何にも分かっていないのだと呆れる。そもそも私とシンシアは一つ違いで、本来なら私は前の年にデビュタントだった。それを記念になるとか言って説得され、一年遅らせたのがこの結果。前は諦めたけど…私がどうしてそうしなければならなかったの?
──全てを我慢してシンシアを優先してきた結果があんな未来なら、ドブに捨ててやるわ。
二度目の人生は、全てを取り戻そうと思う。誰にも縛られず、そして強制されることもない。そして一番肝心なのは、あの人に出会うことだって…
「私が拘るのは…お母様のドレスと同じだからです。お母様が昔経験したデビュタントで、着たのがピンクのドレスだと言っていたでしょう?肖像画にも残っているではないですか。まさか…そんな大事なことを忘れたなんて言わないわよね。だから私も同じ色が着たいんです。だからもう二度と、交換しろだなんて言わないで下さい!それとも私には、そんなことさえ許されないとでもおっしゃるの?」
厳しい調子で三人を見つめる。この人達は、どこまでも私を馬鹿にしている。前はこんな家族でも愛を求めていたから、言いたいことも我慢して言えなかった。だけどこれからは違うわ!
「そ、そうか…そうだったかな?分かった!このままでいこう。それがいいな、きっと。だから怒りを収めてくれ」
お父様は珍しく、しどろもどろになっている。だけどお兄様とシンシアはバツが悪いのか押し黙ったまま。そんな三人を見ていたら、ある思いが込み上げる。
──どうしてこれまで、こんな人達に愛されたかったのかしら?何の価値もないのに。死んだら全てが終わり…もうそんな感情に何も感じないわ。
シン…と静まり返る中、私は次の行動に出ることにした。これこそが本当にやるべきことの。
「それならもう用はありませんね?私は先に帰りますので、三人は仲良く買い物の続きをなさって下さい。靴だってアクセサリーだって、シンシアに新しく買ってあげたいでしょう?邪魔な私がいない方がいいでしょうから」
返事を待たずにソファからスクッと立ち上がって、端で遠慮がちに私達を見ていたブティックのオーナーに会釈をする。それから黙ったままの家族を残して、一人個室を出て行った。
「あんな人達に構ってられないわ…急いでここから出なきゃ」
焦る気持ちで足早に出入り口へと向かう。それには…理由があった。今肝心なのは、夫エズラと最初に出会ったのも今日だということ。
あの日シンシアにドレスを譲ったことで、ショックを隠せずに店の前に立っていた時に例の事件は起こった。だから…それを避けなきゃ!そうならエズラと知り合うこともないし、ましてや婚約を申し込むことだってないんだと思う。やり直しの人生はあの人に関わらない!もう二度と愛することもないわ…
──キイッ。
店のドアマンが扉を開けてくれる。その先には抜けるような青空…まるでそんな私の決心を祝福してくれているよう。前はこんな鮮やかな空は記憶にはなく、きっと私が違う行動をしたことでほんの少し未来が変わったのかも知れない。そうであって欲しいと願いながら、笑顔で店を出た。
本来ならこの辺りは、比較的治安が良い場所。だから引ったくりなど起きにくい筈だった。だけど前は夕暮れだったことで、運が悪かったのだと思う。
そんな心配がなくなり、足取り軽く馬車止めの方へと向かう。今日はお父様が後で合流したことで馬車が二台ある…だから一台私で使ってしまっても問題はない。そして部屋で一人になってこれからのことを考えたいから、一刻も早くノートン邸に帰り着きたいと思っていた。
ほんの少しだけど若返った身体は嘘のように軽く、そう考えると知らず知らずに病気になっていたのだと今更ながら気付く。夫から愛されていなくてもロウレン侯爵家の夫人として、やらないといけないことは山積みで、おまけに夫は騎士団のことで手一杯。勤務で時間が不規則で、家門のことまで手がまわらない…だから慣れないながら一手に引き受けていた。だからきっと…無理が祟っていたのね。そんなことを考えながら苦笑いしていると、突然目の前を人が横切る。ぶつかりそうになり身を引くと、バランスを崩して倒れそうになる。
「キャッ!」
腰の辺りにガッシリとした腕の感触。どうもその人が私を受け止めてくれたよう。そのおかげで怪我しなくて済んだと、ホッとするけど胸はドッキドキ。それでも焦りながらその人を見上げると…ええっ、嘘でしょう?
その人の顔を見て心臓が止まりそうになる。そこには有り得ない人が立っていて、私を見つめていたから…
──この見覚えのあるブティックは…もしや?
「デビュタントの…」
思わずそう呟いてしまった。そして声が出ることを同時に驚く。どうも天国…じゃない!だけど本当に?この記憶が確かなら、これは三年前の出来事だった筈。それなのに…これって夢?もしかしてここはやっぱり天国なのかしら。ここは恐らく、ノートン伯爵家のお抱えのブティックの店内だわ。私がここに最後に来たのはデビュタントの衣裳の仮縫いの時。仮縫いだけは自ら店まで出向かないといけなかったから家族で出掛けた。そして忘れもしない…そこで私にとっては、重大な事が起こった。そう、こんなふうに…
「そうだ、デビュタントの衣裳のことを言ってるんだ。お前はこの色など似合うイメージがない。だからシンシアの青い衣裳と交換してはどうかと言っているんだが」
一言一句記憶と同じ言葉。それなのに…これが夢だとか天国だとか思えない。ということは、三年前に戻って来たってことなの?そんな馬鹿なことって…
「お父様!お姉様が困っています。私はいいのです…青いドレスで。私、青も似合っているでしょう?お姉様だってピンクのドレス、とってもお似合いですから。ですからもう、おやめになって」
そう言って困ったように笑うシンシア。この嘘くさい笑顔を見るのはきっと二度目。そしてこの後は恐らく…
「お前はシンシアの姉だぞ?それなら妹に譲るのが当然じゃないか。それなのにお前はそんな不貞腐れている態度で…恥ずかしいとは思わないのか。第一、そんな似合わないドレスでデビュタントに参加したら、相当笑われるだろう。俺達は親切で言ってやってるんだがな?」
お兄様からの一方的な叱責。これで間違いない…私は死に戻りしている。どうしてそうなったのかは分からない。神様が私を可哀想だからって?そんなの信じない!本当にそうだったとしたら、今日に戻るなんて有り得ない話だわ。よりによってこんな日に…
相当混乱しているけど、そんなことを考えたって状況は変わらない。それなら…私が出来る行動をしなきゃ。それに一番思うことは、あんな未来を二度も経験するようなことは御免だってこと。苦しくて寂しい…あんな人生を。それなら私が取るべき行動は一つ。前は落ち込んで、とてもじゃないけど言えなかったから…
「お兄様、私が何故ピンクのドレスにしたのか本当に分からないの?もしもそうだったなら、どっちが酷いのかしら。私にシンシアを気遣うようにいつも言うけど、それならお兄様は実の妹の私を気遣ったことなんてあったかしらね?」
「お、お前!その言い方は…」
いつもとは全く違う私の言動。それに驚く面々が…
一度目の人生の時は、シンシアに泣く泣くドレスを譲っている。私が生地選びからデザインまで、半年も考え抜いて仕上げた大切なドレスを。この人達、私がどんな思いでいたのか分かってる?知るはずもないし、考えたこともきっとないでしょうね。
「だけどそれはまた違う話ではないか?お互いが選んだドレスを、交換してデビュタントに参加するのも記念になって良いと思うんだが。そこまで拘らなくとも…」
お父様がお兄様を庇う発言をし、やっぱり二人共に私の気持ちなど何にも分かっていないのだと呆れる。そもそも私とシンシアは一つ違いで、本来なら私は前の年にデビュタントだった。それを記念になるとか言って説得され、一年遅らせたのがこの結果。前は諦めたけど…私がどうしてそうしなければならなかったの?
──全てを我慢してシンシアを優先してきた結果があんな未来なら、ドブに捨ててやるわ。
二度目の人生は、全てを取り戻そうと思う。誰にも縛られず、そして強制されることもない。そして一番肝心なのは、あの人に出会うことだって…
「私が拘るのは…お母様のドレスと同じだからです。お母様が昔経験したデビュタントで、着たのがピンクのドレスだと言っていたでしょう?肖像画にも残っているではないですか。まさか…そんな大事なことを忘れたなんて言わないわよね。だから私も同じ色が着たいんです。だからもう二度と、交換しろだなんて言わないで下さい!それとも私には、そんなことさえ許されないとでもおっしゃるの?」
厳しい調子で三人を見つめる。この人達は、どこまでも私を馬鹿にしている。前はこんな家族でも愛を求めていたから、言いたいことも我慢して言えなかった。だけどこれからは違うわ!
「そ、そうか…そうだったかな?分かった!このままでいこう。それがいいな、きっと。だから怒りを収めてくれ」
お父様は珍しく、しどろもどろになっている。だけどお兄様とシンシアはバツが悪いのか押し黙ったまま。そんな三人を見ていたら、ある思いが込み上げる。
──どうしてこれまで、こんな人達に愛されたかったのかしら?何の価値もないのに。死んだら全てが終わり…もうそんな感情に何も感じないわ。
シン…と静まり返る中、私は次の行動に出ることにした。これこそが本当にやるべきことの。
「それならもう用はありませんね?私は先に帰りますので、三人は仲良く買い物の続きをなさって下さい。靴だってアクセサリーだって、シンシアに新しく買ってあげたいでしょう?邪魔な私がいない方がいいでしょうから」
返事を待たずにソファからスクッと立ち上がって、端で遠慮がちに私達を見ていたブティックのオーナーに会釈をする。それから黙ったままの家族を残して、一人個室を出て行った。
「あんな人達に構ってられないわ…急いでここから出なきゃ」
焦る気持ちで足早に出入り口へと向かう。それには…理由があった。今肝心なのは、夫エズラと最初に出会ったのも今日だということ。
あの日シンシアにドレスを譲ったことで、ショックを隠せずに店の前に立っていた時に例の事件は起こった。だから…それを避けなきゃ!そうならエズラと知り合うこともないし、ましてや婚約を申し込むことだってないんだと思う。やり直しの人生はあの人に関わらない!もう二度と愛することもないわ…
──キイッ。
店のドアマンが扉を開けてくれる。その先には抜けるような青空…まるでそんな私の決心を祝福してくれているよう。前はこんな鮮やかな空は記憶にはなく、きっと私が違う行動をしたことでほんの少し未来が変わったのかも知れない。そうであって欲しいと願いながら、笑顔で店を出た。
本来ならこの辺りは、比較的治安が良い場所。だから引ったくりなど起きにくい筈だった。だけど前は夕暮れだったことで、運が悪かったのだと思う。
そんな心配がなくなり、足取り軽く馬車止めの方へと向かう。今日はお父様が後で合流したことで馬車が二台ある…だから一台私で使ってしまっても問題はない。そして部屋で一人になってこれからのことを考えたいから、一刻も早くノートン邸に帰り着きたいと思っていた。
ほんの少しだけど若返った身体は嘘のように軽く、そう考えると知らず知らずに病気になっていたのだと今更ながら気付く。夫から愛されていなくてもロウレン侯爵家の夫人として、やらないといけないことは山積みで、おまけに夫は騎士団のことで手一杯。勤務で時間が不規則で、家門のことまで手がまわらない…だから慣れないながら一手に引き受けていた。だからきっと…無理が祟っていたのね。そんなことを考えながら苦笑いしていると、突然目の前を人が横切る。ぶつかりそうになり身を引くと、バランスを崩して倒れそうになる。
「キャッ!」
腰の辺りにガッシリとした腕の感触。どうもその人が私を受け止めてくれたよう。そのおかげで怪我しなくて済んだと、ホッとするけど胸はドッキドキ。それでも焦りながらその人を見上げると…ええっ、嘘でしょう?
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