【完結】私が一人で死んだ夜。だからあなたを、捨てることにしますね?

MEIKO

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第三章・新しい生活

16・辺境伯領への旅路

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 あれから案外早く釈放されたスチワート。だけどその前から仕事で無理が祟っており、部屋に帰ってくるなりぐったりとしている。それで早く寝るように伝え、聞きたいことはそのままうやむやに。
 
 それから朝になって聞こうとするけど、同時に聞いちゃいけない気もしていた。やはりその件を口に出すとはぐらかされて…
 だから今は…黙っていることにした。前の人生では夫だったエズラのこと…気にならないと言ったら嘘になる。だけどそれよりも今はスチワートの方が大事!言いたくないことは聞かないことにする。

 「やっと体調が戻ってきた。心配かけてごめん!それでさ、辺境伯様のことなんだけど…やっぱり行ってみないか?危ないから一人でって思ったんだけどさ、よく考えたら俺は事情をまるで知らないんだ。だからいっそ、二人で行ったらどうかって思うんだけど…」

 「ええっ、私も?だけどそうね…その方がいいのかも。もしもこの前みたいにスチワートが捕らえられたりしたら、絶対私もいた方がいいから!」

 ちょっと酷いな…と呟きながら頭を掻くスチワート。だけど本当にそうじゃないと安心出来ない。そして今回のことは私のことでもあるから…どうせ時間だけはたっぷりある。
 およそ十五年ぶりの辺境伯領になるけど、もう一度だけ行ってみたいと思っていた。あの懐かしいお母様の故郷を…

 それからスチワートの行動は素早かった。休暇届を出して即刻長期休暇をもぎ取ったスチワートは、その条件として出された依頼を徹夜でやり遂げる。終わった後、フラフラとしながら作業場から出て来たスチワートが、腕を高く振り上げた姿を私は一生忘れない!「おお~」って思わず声を上げてしまったもの。

 それから旅の準備をして、小さな旅行用鞄を携えた私達は、お互いの手を力強く握る。この手の中には移動石なるものが握られていて、スチワートが念じれば発動するらしい。前は小箱のような物だったのに、ほんの少しの間に随分小型化された。こんな石一つで移動出来るなんて…初めてで緊張するわ!

 「いくよ、いいね?思ったよりは平気だと思うんだけどさ…」

 「は、はい!大丈夫っ」

 それから私達は青い光のようなものに包まれる。わわっ!と驚くけど、そのまま高速で移動する感じが!だけど、あれっ?これって…

 ──この感じは…経験したことがある気がする。そうだわ!私が死に戻った時の感覚に…どうしてかしら?

 そうは思うものの、どんどん上がるスピードに考えることも出来なくなって…
 するとどこかの土地に降り立った私達。なのにスチワートの焦った顔…それから思った以上に負荷がかかったのか、突然気が遠くなる。あっと思った時には既に遅い!そのまま意識を失って…


 +++++

 
 「フ…フレデリカ…おーい、大丈夫か?まだ辛いのかな…」

 そんな声にふと意識を取り戻した。それでも直ぐには目を開けられず、頭の中で何かがグルグル回っているような感覚。そのまま顔を顰めて耐える。すると…

 「フレデリカ、落ち着いてよく聞いて!頭の中で水をイメージするんだ。とても澄んでる水だよ?その水を心臓の辺りに染み込ませるように想像してみてくれ。すると…楽にならないかい?」

 ──水!水!水~!あれっ、不思議だわ…急に楽になったみたい。どうして?

 不思議と呼吸が楽になり、目を薄っすらと開けてみる。すると…心配して覗き込んでいるスチワートの顔が!

 「ああ…辛かったわ!全然平気なんかじゃないわよ」

 第一声文句を言って、それから徐に起き上がってみる。するとそこは見知らぬ部屋で、ベッドに寝かせられていた。ここはどこ?それにあの感覚は…偶然に似ていただけなのかしら?

 「ごめんね!俺だってまさか、こんな遠くまで飛ぶとは思わなかったんだよ。俺一人の能力で、普通はこんなに飛ぶはずないんだけどなぁ」
 
 こんなに遠く…ってどこなんだろう。説明では三カ所くらい飛んでからやっと着く…みたいなことを言っていたけど。おまけに能力?

 「私にはそんな能力ないけど…」
 
 そうだよねぇ…と不思議そうな顔をしているスチワート。そしてここはどこなのかを尋ねると、飛んだ先にあった宿なんだそうで…
 気を失った女を運び込むので犯罪絡みだと疑われて、それを説明するのに四苦八苦したらしい。そりゃそうよね…

 「それでここは一体どこなの?辺境伯領まで一気に来たのかしら」
 
 早速といった感じでそう聞くと、呆れるように溜め息を吐くスチワート。それから笑顔に変わり「まあ君が無事だったんだからいいとするか」なんて言っている。きっと私のことが心配だったのね?

 「辺境伯領ルードアまではあと一つだ。ここはその隣のライシックという街だよ。だからかなり遠くまで飛んだことになる。俺達錬金術師は、一人だったらいくら何でもここまで飛ぶ力はない。だから何人かの力を合わせて、以前このくらい飛んだことはあるんだけど…俺の能力が凄すぎるのかな?」

 「フフフ、そうみたいよ?」

 思わず軽口を叩きあったけど、着実に辺境伯領へと近付いて来ている。もしも伯母様の前に私が姿を現したとしたら、歓迎してくださるのかしら?それとも…少し怖いような気がする。
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