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第三章・新しい生活
17・噂話
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私達は宿屋でもう一泊して、体力を少しでも回復してから再出発する。もう一度飛ぶ?って思ってたけど、心配したスチワートはゆっくり移動することを提案してくる。隣の領まで来ていることで、ルードアまではあと少し…だから御者付きの馬車を借りて安全に移動することにしようって。心配し過ぎ?
飛んだ時のあの何とも言えない嫌な感覚を思うと、申し訳ないけどその方がいいとは思う。それでその提案に乗った私は今、のんびりと車窓の景色を見ている。余計なお金を使わせちゃったかな?
「アハハ、そんなに申し訳なさそうにしなくて大丈夫だって。俺だってこっちの方が楽なんだよ?あの独特の感覚は何度やっても慣れないからね。でもさ、近くだったら本当に平気なんだ。クラッともしないし、もちろん気も失わない。帰ったら練習してみよう?」
戯けたように私をチラリと見て、それから我慢出来なかったのか大笑いする。私の表情がどうも嫌そうだったらしくて…
「ええーっ、分かったわ。だけどね、不思議な感覚があるの。それに前に経験したような気がして…。それが何なのかは分からないんだけどね…うん?」
そんな私の言葉に、どうしてかスチワートは真顔になる。何かおかしなことを言ったかしら?流石に死に戻りのことは口に出せずに濁しておいたんだけど…どうかした?
「あ、ああ!そうだね、そういう人もいるっていうよ?やっぱり身体に影響があるから…ね」
どうにも歯切れが悪いスチワート。私があんなことになったことで、責任を感じているのかも知れない。そうだったら変なことを言っちゃって悪かったかもね。
そんなことを言い合っているうちに、馬車は領地の境界に差し掛かる。そしてちょうどお昼時間になったことで、ルードアに入る前に馬車を一旦停めて、食事をすることになった。御者はお弁当を持って来たと言うので、二人で何軒かある食堂から適当に決めて店内に入る。それが当たりの店だったようで、とっても美味しそうな匂いが漂ってきて…
「わあ、お客さんが大勢いるわね?きっと美味しい店に違いないわ!あっ、あのテーブルに座りましょう」
奥のテーブルが、偶然一つだけ空いていた。それで幸運にも席に着くことが出来た私達。それから辺りを見渡すと、殆どの人達が同じメニューを頼んでいることに気付く。それで私達も同じ物を頼むことにした。
「この辺りの特産はカブなんだ。辺境に近くて寒いから、甘みが増して美味いんだってよ?おまけにライシックという土地は農業全般盛んだからね。みんなが食べてる料理は、魚とトマトや根菜、そしてカブを入れて煮込んだ郷土料理のようだよ」
そんな博識ぶりを披露するスチワート。それには驚いて大いに感心することに。
「郷土料理?だったらきっと美味しいわね。早く食べたい!」
直ぐに運ばれてきた料理は、机にポンと大鍋ごと置かれる。二人で食べきれるかしら?と心配だったけど、美味しくてペロリと食べてしまう。それからデザートのアップルパイを待っていると、何やら偶然耳に入る会話が…
「そういえばさ、ルードアで新しいエメラルド鉱山が見つかったんだって?」
「ええっ!そうなのか?あそこで採れるエメラルドは良質で有名だからな。それならここの鉱山でなく、そこで雇ってもらえねぇかな?こっちの鉱山はもう枯渇してるって噂だしなぁ」
隣のテーブルでは鉱夫らしき人達がそう話しているのが聞こえてくる。ルードアのエメラルド鉱山が…もしかしたらそのことが関係している?
辺境伯家といえば、鉱物を主な収入源としている。山々に囲まれた土地で、作物が育ちにくい代わりに、資源には恵まれているのだ。その中でもエメラルド鉱山は特別!ノーヒート状態でも素晴らしい発色が特徴で、この帝国で一番の品質を誇っている。ルードア産のエメラルドを『天使の瞳』だなんて呼ばれるほどの…
「なあ、聞いた?何だか俺、辺境伯様がフレデリカと連絡を取りたかった理由と、関係がある気がするんだけど…違うのかな?」
私は口を開かず黙ったままでいたけど、それと全く同意見だった。きっと関係がある!そしてルードアのエメラルド鉱山といえば…
私が以前、ノートン家の女主人は私だと主張した時、それでも認めて貰えなかったとしたら、奥の手として考えていたことがある。
十五年前に一度だけ辺境伯領を訪れた目的は、当時のフラウ辺境伯家の当主、私にとってはお祖父様が亡くなられたこと。その場で明らかにされた遺言は、伯母様が辺境伯を継ぐことと、お母様がエメラルド鉱山の一つを受け継ぐことだった。そして一番肝心なことは、お母様がもしもの時は私が引き継ぐこと。
お兄様にはノートン家を継ぐという立場があるし、何の財産もない私をお祖父様は不憫に思ったのだと思う。当時子供だった私はその価値も分からず、ただそうなんだと漠然と思っていただけ。そしてお母様が亡くなり、今はその鉱山のことは分からないまま。きっとお父様が管理している?って思ってるんだけど…
とにかくその件を何も聞いていない私は、あの時もしもお父様に断固として反対されたら、そのことを持ち出すつもりだった。今更その鉱山を貰おうなんて思ってないけど、私の望みを叶える材料としてなら使っていいんじゃないか…って。そのことと関係があるの?
「私もそう思うわ!恐らくお母様が受け継いだもののことなんだと思う。それならきっと安全ね?それほど気負うこともないのかも」
「俺もそう思うけど…だけど油断は禁物!念のため用心しよう」
コックリと頷きあった私達は、アップルパイをさっさと平らげそれから直ぐに出発することにする。いよいよここからは辺境伯領ルードア!何が待っているのかしら?
馬車は静かに走り出し、お腹が膨れたことで少し眠くなった私。それを笑うスチワートは、今のうちに寝たほうがいいとアドバイスしてくれる。それで窓にもたれかかり、そのまま車窓から景色を眺めていると…息が止まりそうになる!
見知った人物が通りを歩いている。どんなにか落ち込んでいるだろうと思っていたけど、あの頃と変わらない足取りで前を向いていて。あ、あれは…ロリー?
嘘でしょう?そんなの信じられない!元とはいえ、シンシアの専属メイドだった人が…よりによってこの場に居るなんて。それもここは、私達が今から行こうとしているルードアの隣地。どういうこと?どうしてここにいるのかしら…
飛んだ時のあの何とも言えない嫌な感覚を思うと、申し訳ないけどその方がいいとは思う。それでその提案に乗った私は今、のんびりと車窓の景色を見ている。余計なお金を使わせちゃったかな?
「アハハ、そんなに申し訳なさそうにしなくて大丈夫だって。俺だってこっちの方が楽なんだよ?あの独特の感覚は何度やっても慣れないからね。でもさ、近くだったら本当に平気なんだ。クラッともしないし、もちろん気も失わない。帰ったら練習してみよう?」
戯けたように私をチラリと見て、それから我慢出来なかったのか大笑いする。私の表情がどうも嫌そうだったらしくて…
「ええーっ、分かったわ。だけどね、不思議な感覚があるの。それに前に経験したような気がして…。それが何なのかは分からないんだけどね…うん?」
そんな私の言葉に、どうしてかスチワートは真顔になる。何かおかしなことを言ったかしら?流石に死に戻りのことは口に出せずに濁しておいたんだけど…どうかした?
「あ、ああ!そうだね、そういう人もいるっていうよ?やっぱり身体に影響があるから…ね」
どうにも歯切れが悪いスチワート。私があんなことになったことで、責任を感じているのかも知れない。そうだったら変なことを言っちゃって悪かったかもね。
そんなことを言い合っているうちに、馬車は領地の境界に差し掛かる。そしてちょうどお昼時間になったことで、ルードアに入る前に馬車を一旦停めて、食事をすることになった。御者はお弁当を持って来たと言うので、二人で何軒かある食堂から適当に決めて店内に入る。それが当たりの店だったようで、とっても美味しそうな匂いが漂ってきて…
「わあ、お客さんが大勢いるわね?きっと美味しい店に違いないわ!あっ、あのテーブルに座りましょう」
奥のテーブルが、偶然一つだけ空いていた。それで幸運にも席に着くことが出来た私達。それから辺りを見渡すと、殆どの人達が同じメニューを頼んでいることに気付く。それで私達も同じ物を頼むことにした。
「この辺りの特産はカブなんだ。辺境に近くて寒いから、甘みが増して美味いんだってよ?おまけにライシックという土地は農業全般盛んだからね。みんなが食べてる料理は、魚とトマトや根菜、そしてカブを入れて煮込んだ郷土料理のようだよ」
そんな博識ぶりを披露するスチワート。それには驚いて大いに感心することに。
「郷土料理?だったらきっと美味しいわね。早く食べたい!」
直ぐに運ばれてきた料理は、机にポンと大鍋ごと置かれる。二人で食べきれるかしら?と心配だったけど、美味しくてペロリと食べてしまう。それからデザートのアップルパイを待っていると、何やら偶然耳に入る会話が…
「そういえばさ、ルードアで新しいエメラルド鉱山が見つかったんだって?」
「ええっ!そうなのか?あそこで採れるエメラルドは良質で有名だからな。それならここの鉱山でなく、そこで雇ってもらえねぇかな?こっちの鉱山はもう枯渇してるって噂だしなぁ」
隣のテーブルでは鉱夫らしき人達がそう話しているのが聞こえてくる。ルードアのエメラルド鉱山が…もしかしたらそのことが関係している?
辺境伯家といえば、鉱物を主な収入源としている。山々に囲まれた土地で、作物が育ちにくい代わりに、資源には恵まれているのだ。その中でもエメラルド鉱山は特別!ノーヒート状態でも素晴らしい発色が特徴で、この帝国で一番の品質を誇っている。ルードア産のエメラルドを『天使の瞳』だなんて呼ばれるほどの…
「なあ、聞いた?何だか俺、辺境伯様がフレデリカと連絡を取りたかった理由と、関係がある気がするんだけど…違うのかな?」
私は口を開かず黙ったままでいたけど、それと全く同意見だった。きっと関係がある!そしてルードアのエメラルド鉱山といえば…
私が以前、ノートン家の女主人は私だと主張した時、それでも認めて貰えなかったとしたら、奥の手として考えていたことがある。
十五年前に一度だけ辺境伯領を訪れた目的は、当時のフラウ辺境伯家の当主、私にとってはお祖父様が亡くなられたこと。その場で明らかにされた遺言は、伯母様が辺境伯を継ぐことと、お母様がエメラルド鉱山の一つを受け継ぐことだった。そして一番肝心なことは、お母様がもしもの時は私が引き継ぐこと。
お兄様にはノートン家を継ぐという立場があるし、何の財産もない私をお祖父様は不憫に思ったのだと思う。当時子供だった私はその価値も分からず、ただそうなんだと漠然と思っていただけ。そしてお母様が亡くなり、今はその鉱山のことは分からないまま。きっとお父様が管理している?って思ってるんだけど…
とにかくその件を何も聞いていない私は、あの時もしもお父様に断固として反対されたら、そのことを持ち出すつもりだった。今更その鉱山を貰おうなんて思ってないけど、私の望みを叶える材料としてなら使っていいんじゃないか…って。そのことと関係があるの?
「私もそう思うわ!恐らくお母様が受け継いだもののことなんだと思う。それならきっと安全ね?それほど気負うこともないのかも」
「俺もそう思うけど…だけど油断は禁物!念のため用心しよう」
コックリと頷きあった私達は、アップルパイをさっさと平らげそれから直ぐに出発することにする。いよいよここからは辺境伯領ルードア!何が待っているのかしら?
馬車は静かに走り出し、お腹が膨れたことで少し眠くなった私。それを笑うスチワートは、今のうちに寝たほうがいいとアドバイスしてくれる。それで窓にもたれかかり、そのまま車窓から景色を眺めていると…息が止まりそうになる!
見知った人物が通りを歩いている。どんなにか落ち込んでいるだろうと思っていたけど、あの頃と変わらない足取りで前を向いていて。あ、あれは…ロリー?
嘘でしょう?そんなの信じられない!元とはいえ、シンシアの専属メイドだった人が…よりによってこの場に居るなんて。それもここは、私達が今から行こうとしているルードアの隣地。どういうこと?どうしてここにいるのかしら…
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