【完結】私が一人で死んだ夜。だからあなたを、捨てることにしますね?

MEIKO

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最終章・私を呼ぶ声

40・懐かしい瞳

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 シンシアの手紙のことは、敢えてスチワートには話さなかった。話せなかったのではなく、話す必要がないんだと判断した。シンシアはあの子なりの葛藤があり、私の思っていたものとは少し違っていたのかも知れない。だけど結局は全ては起こってしまったこと。
 どうせなら、私がもっと早くに死に戻っていたとしたら違ったの?それこそ子供の頃だったなら…あの子の孤独な魂に気付いてあげられたのかも知れない。初めて出会ったあの頃に…

 そうは思うけど、今のシンシアは罪を背負っている。私が出来ることなんて、密かにあの子の平穏を祈ることくらい。反省すべきことは反省して、もう二度と心を乱されることがないようにと願う。半分血の繋がりがある『姉』として…

 「どうかした?体調が悪いってことはないんだよね。最近少し寒くなってきたから気を付けないと」

 あっという間に夏が過ぎゆき、もうすっかりと秋になっている。どういうシステムなのか知らないけど、リビングから見える仮想の景色も秋仕様に。冬になったら雪を降らせるのかしら?

 「ううん、大丈夫よ。ごめんなさい!ちょっと勉強し過ぎちゃったみたい。疲れているのかもね?」

 そう言って笑う私の顔を覗き込むスチワート。いつもながらとっても綺麗な瞳。海のような碧に…あれっ、待って!少し薄くなってる?

 「違ったらごめんなさい…光の加減なのかしら。スチワートの瞳の色が薄くなったように感じるんだけど…そんなのあるはずないわよね?やっぱり忘れて!」

 いくら何でも目の色が変わるなんてと、有り得ないことを口に出してしまった私。恥ずかしいことを言っちゃったと赤面していると…スチワート?

 スチワートは目の上を手で覆っている。どうしたのかしら…私が言ったから気になってしまったの?申し訳ないことをしてしまったと、スチワートの顔をマジマジと見ると、バッと手を外した。そして…

 「やっぱりそうか…最近力を使い過ぎてしまったようだ。錬金術師ってね、どんどん瞳の色が薄くなってしまうんだ」

 「ええーっ!そんな馬鹿な…」

 そんな事実には面食らってしまい、思わず驚きの声を上げてしまう。するとスチワートは可笑しそうに笑い出す。

 「心配しないでいいよ?真っ白になったりはしないから!俺だって子供の頃は兄さんのように蒼かったんだ。歳は二歳違うけど、背丈もそれほど違いはなかったから双子みたいだって言われてさ」
 
 双子?そこまで似ていたのだと驚く。二人の子供の頃は見たことはないけど、今でも明らかな違いといえば、体格の差くらい。きっとスチワートも鍛えれば同じようになるんじゃないかと思われる。そして一番の違いだった瞳の色が実は一緒で、錬金術の力のせいで変わっていたなんて!

 「それならきっと、ロウレン家の特徴が黒髪と蒼い瞳なのね?エズラとはお母様が違うのに、相当に血筋の影響が強いんだわ。産まれる男の子は全てそうなるくらいに」

 自分でそう言ってしまってから、途端に目を伏せる。それなら…と、どうしても考えてしまって…
 私があの子を産んであげられたとしたら、エズラとそっくりだったのかも。そう思ってしまって胸の奥がズキリと痛む。

 きっと私を死に戻りさせるくらいに力の強い子だったから、スチワートと同じように瞳が薄くなっていったと思う。私はそれを見ながら、息子を心配する未来もあったのかも知れない。すると、急にあることが気になってくる。今の私には関係ないのだろうけど、スチワートを愛していることに気が付いた今ならそうとも言えない。大切なことだわ…

 「スチワート、聞いていい?答えるのが嫌だったら黙っていていいからね。あの…ロウレン家は錬金術の力が発現しやすい家系だって聞いたけど、そうなった全ての者が研究所に行くことになるの?」

 思い切ってそう尋ねてみる。もしもそうだったら、子供と離れて暮らすことになってしまう。それに私は耐えられるのかと思ってしまって…そんなの何よりも耐え難いことだわ。
 スチワートは、少し悲しそうな表情をしている。きっと自分の経験を思い出してしまっているのでしょう。聞いて悪かったかと心配になる。

 「いいや、そうじゃない。研究所に行くのは、同じ家門で一人のみ…そう国で決められている。力の強弱ではなく、に発現した者が行くことになるんだ。そうじゃないとロウレン家の存続にも関わるからね」

 それにはなるほど…と納得する。そして前の人生の時、もしも私があの子を産んでいたなら…スチワートが研究所にいる間は、力を発現したとしても行かなくて良かったことになる。何とも複雑な気持ちに…
 
 スチワートはそれで大丈夫なのかと、その瞳をジッと見つめる。少し切れ長の美しい瞳…力のせいで薄くなったという碧い瞳が煌めいている。すると…懐かしいような不思議な感覚が突如湧き起こる。私はこの目を知っている…深い湖のような静かなる蒼を。えっ…蒼?

 当たり前だけど当たり前じゃない…どういうこと?私は以前のスチワートを知らない。死に戻って再び会えたあの日以来、片時も離れず過ごしてきたけど。二人で大きな口を開けて笑って、時には励まし合って…それがずっと続くって思っていた。あれって、本当にの記憶?

 何かが可怪しい…二つの人生の数々のピースを繋ぎ合わせて、どうにも上手く嵌まらないところが存在する。それって、私の気のせいなの?
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