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第三章・もう一つの人生
33・領主の居城
「わあ!領主様のお城って、こんなに大きかったの?」
私は一度も来ることはなかった領主城を見上げ驚く。よく童話とかで見るような空に向かって伸びていくタイプの城ではなく、堅牢でどっしりとした印象の巨大な建造物。それこそ御伽話のイメージとは違っていて、ここに現実があるという気がする…
──現実?ここだって非現実的な小説の中だけど…
城の前には参加者達の馬車の列が連なり、順番を待つ間にじっくりと眺める時間がある。ここにはかつてロベルトも来たことがある?と思うと、苦い思い出が蘇る。そして私が逃亡してからもうすぐ四ヶ月が経ち、私達を取り巻く状況も様変わりした。あの状況では私に離婚の意思があるとされ、貴族裁判所に申し立てれば、夫側の要求通り離婚が成立するはずだけど…そろそろなのかしら?
そうなった後、ロベルトとカレンが再婚しようがどうでもいい。勝手に幸せになって欲しいと…
だけど本当にそうなるのかしら?カレンの気持ちが全然分からない。何を考え、そして何を思って行動しているのか…
小説の中とは違い、ロベルトに殺されることはなかった私。あのままいけば確実に切られて絶命したでしょう。その前に私がカレンを殺そうとすることなんて決してないけど、どう転ぶかなんて誰にも分からないから。『冤罪』ということだって考えられる…
「クリスティーヌ、大丈夫?次降りるのは私達の番だよ」
それにハッと我に返り、慌てて領主城の前に降り立つ。するとオリヴァーが…
「今日は凄く綺麗だ。君をひと目見た時からそう思ってたんだけど…君が美し過ぎて言えなかった。だから遅ればせながら伝えておくよ」
そう言うオリヴァーは耳まで真っ赤!本当にこういうことは慣れてないのね?だけど私だってそうだったと気付いて…
「オリヴァーもとっても素敵!それにいつもと違って大人っぽくて、ドキドキしちゃうわよ?フフッ」
照れながらもお互いを褒めあって、それでちょっとだけ緊張が解れた二人は、他の参加者達と一緒に会場に入って行く。『城』というだけあって、入るなり目の前には広大なホール。その成人の門出を祝うように、豪華な花々で飾り付けられている。そして正面に飾られているのは、このノースブルグのものだと思われる壮大な風景画。今となってはそんな想像無意味だけれど、本来ならここが自分の家だったのかもと…
「デビュタント参加者の皆様とご同行の皆様は、迎賓の間にお集まり下さい」
そんな声が響いて、キョロキョロしながら歩き出す。それは私達だけでなく、ここにいる人全てがそのような状態になっている。こういう機会でもなければ、まず足を踏み入れる場所ではないのでしょうね。
会場の迎賓の間は、これまた見たこともないくらいの大きな広間。一体どれだけの人数が入れるのかも見当もつかないくらいの大きさを誇っている。私とオリヴァーはというと、何とかここまでやって来れたことにまず安堵して、やっと周りが見れるようになる。ホッとしたのも束の間、音楽隊が曲を奏で始めて…
「わあ、生のオーケストラなのね?なんだか私が思っていたよりもずっと大がかり!」
言っては悪いけれど、ここは田舎のいち領地。なのにこれだけの大勢の人達と規模には心底驚く。きっと私が思っている以上に、ノースブルグという領地は裕福な土地なんだわ…
「今回も大勢の参加者がいるみたいだね。お祖父様が言うには、ノースブルグだけでなく、近隣の領地からも参加者がいるらしいよ?なんでも結婚相手を見つける絶好の機会だからって」
「け、結婚の相手?」
──そうか…ここは首都とは違って、貴族同士が知り合おうとしても限りがある。だから領地外だとしても、積極的にこういう場に参加するんだわ!そしてそれが許されるのね?
「皆様、前方にお集まり下さいませ。開会の挨拶がございます」
それにプツッと音楽が止まり、皆は前の方へと移動する。そして私達も広間の中程の位置まで移動すると…衝撃が走る!
「今回は特別に領主様御臨席いただいております!まずはご挨拶を賜りたいと…」
──えっ、領主様…?
それにはこの場にどよめきが起こる!顔を見合わせざわざわとして、それからシンと静まり返って…
白髪交じりの白っぽい銀髪に、眉間に刻まれた深々とした皺。そしてロベルトとは違う海のような碧い瞳…それに真っ黒のマントを翻して威厳あるイェガー前公爵が登場する。それに私はブルッと身震いして…
──ま、待って…どうしてお義父様が?今まで一度も参加しなかったというのに…どうか私に気付きませんように!
そして私はオリヴァーの身体にぴったりと身を寄せて、お義父様に気付かれないように隠れようとする。オリヴァーのマントを強く握る手には汗が…
私は一度も来ることはなかった領主城を見上げ驚く。よく童話とかで見るような空に向かって伸びていくタイプの城ではなく、堅牢でどっしりとした印象の巨大な建造物。それこそ御伽話のイメージとは違っていて、ここに現実があるという気がする…
──現実?ここだって非現実的な小説の中だけど…
城の前には参加者達の馬車の列が連なり、順番を待つ間にじっくりと眺める時間がある。ここにはかつてロベルトも来たことがある?と思うと、苦い思い出が蘇る。そして私が逃亡してからもうすぐ四ヶ月が経ち、私達を取り巻く状況も様変わりした。あの状況では私に離婚の意思があるとされ、貴族裁判所に申し立てれば、夫側の要求通り離婚が成立するはずだけど…そろそろなのかしら?
そうなった後、ロベルトとカレンが再婚しようがどうでもいい。勝手に幸せになって欲しいと…
だけど本当にそうなるのかしら?カレンの気持ちが全然分からない。何を考え、そして何を思って行動しているのか…
小説の中とは違い、ロベルトに殺されることはなかった私。あのままいけば確実に切られて絶命したでしょう。その前に私がカレンを殺そうとすることなんて決してないけど、どう転ぶかなんて誰にも分からないから。『冤罪』ということだって考えられる…
「クリスティーヌ、大丈夫?次降りるのは私達の番だよ」
それにハッと我に返り、慌てて領主城の前に降り立つ。するとオリヴァーが…
「今日は凄く綺麗だ。君をひと目見た時からそう思ってたんだけど…君が美し過ぎて言えなかった。だから遅ればせながら伝えておくよ」
そう言うオリヴァーは耳まで真っ赤!本当にこういうことは慣れてないのね?だけど私だってそうだったと気付いて…
「オリヴァーもとっても素敵!それにいつもと違って大人っぽくて、ドキドキしちゃうわよ?フフッ」
照れながらもお互いを褒めあって、それでちょっとだけ緊張が解れた二人は、他の参加者達と一緒に会場に入って行く。『城』というだけあって、入るなり目の前には広大なホール。その成人の門出を祝うように、豪華な花々で飾り付けられている。そして正面に飾られているのは、このノースブルグのものだと思われる壮大な風景画。今となってはそんな想像無意味だけれど、本来ならここが自分の家だったのかもと…
「デビュタント参加者の皆様とご同行の皆様は、迎賓の間にお集まり下さい」
そんな声が響いて、キョロキョロしながら歩き出す。それは私達だけでなく、ここにいる人全てがそのような状態になっている。こういう機会でもなければ、まず足を踏み入れる場所ではないのでしょうね。
会場の迎賓の間は、これまた見たこともないくらいの大きな広間。一体どれだけの人数が入れるのかも見当もつかないくらいの大きさを誇っている。私とオリヴァーはというと、何とかここまでやって来れたことにまず安堵して、やっと周りが見れるようになる。ホッとしたのも束の間、音楽隊が曲を奏で始めて…
「わあ、生のオーケストラなのね?なんだか私が思っていたよりもずっと大がかり!」
言っては悪いけれど、ここは田舎のいち領地。なのにこれだけの大勢の人達と規模には心底驚く。きっと私が思っている以上に、ノースブルグという領地は裕福な土地なんだわ…
「今回も大勢の参加者がいるみたいだね。お祖父様が言うには、ノースブルグだけでなく、近隣の領地からも参加者がいるらしいよ?なんでも結婚相手を見つける絶好の機会だからって」
「け、結婚の相手?」
──そうか…ここは首都とは違って、貴族同士が知り合おうとしても限りがある。だから領地外だとしても、積極的にこういう場に参加するんだわ!そしてそれが許されるのね?
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「今回は特別に領主様御臨席いただいております!まずはご挨拶を賜りたいと…」
──えっ、領主様…?
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