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第三章・ラシアの王宮にて
17・アルジェとアスバル
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「んで?ヒゲを見に来たんでしたっけ?」
アルジェがその輝く緑の瞳で睨みつけながらそう言う。
「ちょ、ちょっと!怖いなぁ~」
ラシア王国近衛騎士団副団長アスバル・グルシアは、アルジェの迫力ある睨みにタジタジになっていた…
◇◇◇◇
スリジャとアルジェがこの国に来て二週間が過ぎた。
正直まだまだ城内はわからない所だらけで…このままではいけないと、アルジェは時間を見つけては覚える為に見て回っていた。
スリ様といえば、この国の歴史や情勢を学ぶ為に今日から先生が来られて、午前中の二時間みっちりお勉強に励まれる。
その間は私なんかが居たら邪魔だよね?とばかりに、チャンスとみて出掛けて来たのだ。
──今日はどの辺を見て回ろうかなぁ~
どこへ行ってもアルジェは声を掛けられる。
最初は、こんな異国の服装をした男がブラブラしていたら捕まるかもしれない!と心配だったが、自分が思っている以上に私達の事は知られているようだった。
だから城で働いている人達が皆、親切に案内してくれたし、その後も気さくに付き合いをしてくれている。
──ホント有り難いなぁ~
この根底にあるのは、それだけ王家の皆様がスリジャ様を気に掛けてくださっているからに他ならない。
他国から来た人間が城内を好きに見て回れるなんて、通常ではあり得ない事だから!
私自身もきっとその恩恵を受けて、仲良くして貰っているんだろうなって思う。
──あれ…?先に見える大きな建物はなんだろう?まだ行ったことが無いぞ!
そう思って近づくと、丁度その建物から見知った人物が出て来る所だった。あのバカでかい身体は…確か使者として来られた方?
そう思ってじっと見ていると、視線を感じたのか向こうもそれに気付いてサッと手を上げ笑顔で近づいて来る。騎士様なのに、あんな気安い感じでいいのかな?
そんな姿を見ると、ラシアの方々って本当に友好的だなって感心する。熊のような大男が爽やかな笑顔で駆け寄ってくるのがだんだんと可笑しくなってきてしまって、思わずハハハッ!と笑ってしまった。
そんな私を不思議そうに見ている騎士様に、気を引き締め直して挨拶をする。
「確か近衛騎士団副団長のアスバル・グルシア様ですよね?その節は大変お世話になりありがとうございました。」
先程とは違って、余所行きの笑顔を向けてすましてみる。それを見たアスバルは何故か豪快に笑って…
「それヤメてくれよ!さっきの遠慮なしに笑った姿の方が何倍もいいぜ!それに俺の事はアスバルと気軽に呼んで欲しいな」
ちょっとそれに躊躇したけれど、どうもこの人は貴族や騎士だといっても偉ぶった所がないと判断した。
「ではそうさせていただきますね!私の事はアルジェと呼んで下さい」
この再会以来すっかり仲良くなった二人。今日も時間を見つけてアスバルの居る近衛の副団長室に来ていた。
「だって酷すぎません?あのお美しいスリ様は、ヒゲなんてありません!その辺の男と一緒にしないで下さいね?まったく…」
アルジェはすっかりご機嫌ナナメだ。そんな様子にマズい…と焦るアスバルは、どう機嫌を取って良いものかと悩んでいる。
「まあまあ!ヒゲなんて例えだって~どんな方なのか気になって見に行った…ってのが正解だ!なぁ?」
国境の砦の話題になった二人は、ついアスバルが口を滑らせて実はあの時ロイ王子が来ていた事や、そうなった経緯を話してしまっていた…
「俺はもちろん言ったよ?スリジャ様がこの世の者とも思えぬ美しさだったと」
ついでにアルジェもお綺麗だったよなぁ~と軽口を言ったアスバルを、アルジェは遠慮などせずバシバシ叩く。
伯爵家嫡男の権威もアルジェの前では形無しだ…
だけどアルジェも良く分かっている。アスバルが身分で差別せず分け隔てなく接するが故だと。そんなアスバルとの関係性は、自分を偽る必要がなく心地よい。ずっとこのまま仲良くいられたらな!って思う。
アスバルが大袈裟に痛がるフリをするのを横目で見ながら、今一番気になる事を聞いてみた。
「それでどうなの?ロイ王子はスリジャ様をどう思っている訳…?」
アルジェがその輝く緑の瞳で睨みつけながらそう言う。
「ちょ、ちょっと!怖いなぁ~」
ラシア王国近衛騎士団副団長アスバル・グルシアは、アルジェの迫力ある睨みにタジタジになっていた…
◇◇◇◇
スリジャとアルジェがこの国に来て二週間が過ぎた。
正直まだまだ城内はわからない所だらけで…このままではいけないと、アルジェは時間を見つけては覚える為に見て回っていた。
スリ様といえば、この国の歴史や情勢を学ぶ為に今日から先生が来られて、午前中の二時間みっちりお勉強に励まれる。
その間は私なんかが居たら邪魔だよね?とばかりに、チャンスとみて出掛けて来たのだ。
──今日はどの辺を見て回ろうかなぁ~
どこへ行ってもアルジェは声を掛けられる。
最初は、こんな異国の服装をした男がブラブラしていたら捕まるかもしれない!と心配だったが、自分が思っている以上に私達の事は知られているようだった。
だから城で働いている人達が皆、親切に案内してくれたし、その後も気さくに付き合いをしてくれている。
──ホント有り難いなぁ~
この根底にあるのは、それだけ王家の皆様がスリジャ様を気に掛けてくださっているからに他ならない。
他国から来た人間が城内を好きに見て回れるなんて、通常ではあり得ない事だから!
私自身もきっとその恩恵を受けて、仲良くして貰っているんだろうなって思う。
──あれ…?先に見える大きな建物はなんだろう?まだ行ったことが無いぞ!
そう思って近づくと、丁度その建物から見知った人物が出て来る所だった。あのバカでかい身体は…確か使者として来られた方?
そう思ってじっと見ていると、視線を感じたのか向こうもそれに気付いてサッと手を上げ笑顔で近づいて来る。騎士様なのに、あんな気安い感じでいいのかな?
そんな姿を見ると、ラシアの方々って本当に友好的だなって感心する。熊のような大男が爽やかな笑顔で駆け寄ってくるのがだんだんと可笑しくなってきてしまって、思わずハハハッ!と笑ってしまった。
そんな私を不思議そうに見ている騎士様に、気を引き締め直して挨拶をする。
「確か近衛騎士団副団長のアスバル・グルシア様ですよね?その節は大変お世話になりありがとうございました。」
先程とは違って、余所行きの笑顔を向けてすましてみる。それを見たアスバルは何故か豪快に笑って…
「それヤメてくれよ!さっきの遠慮なしに笑った姿の方が何倍もいいぜ!それに俺の事はアスバルと気軽に呼んで欲しいな」
ちょっとそれに躊躇したけれど、どうもこの人は貴族や騎士だといっても偉ぶった所がないと判断した。
「ではそうさせていただきますね!私の事はアルジェと呼んで下さい」
この再会以来すっかり仲良くなった二人。今日も時間を見つけてアスバルの居る近衛の副団長室に来ていた。
「だって酷すぎません?あのお美しいスリ様は、ヒゲなんてありません!その辺の男と一緒にしないで下さいね?まったく…」
アルジェはすっかりご機嫌ナナメだ。そんな様子にマズい…と焦るアスバルは、どう機嫌を取って良いものかと悩んでいる。
「まあまあ!ヒゲなんて例えだって~どんな方なのか気になって見に行った…ってのが正解だ!なぁ?」
国境の砦の話題になった二人は、ついアスバルが口を滑らせて実はあの時ロイ王子が来ていた事や、そうなった経緯を話してしまっていた…
「俺はもちろん言ったよ?スリジャ様がこの世の者とも思えぬ美しさだったと」
ついでにアルジェもお綺麗だったよなぁ~と軽口を言ったアスバルを、アルジェは遠慮などせずバシバシ叩く。
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だけどアルジェも良く分かっている。アスバルが身分で差別せず分け隔てなく接するが故だと。そんなアスバルとの関係性は、自分を偽る必要がなく心地よい。ずっとこのまま仲良くいられたらな!って思う。
アスバルが大袈裟に痛がるフリをするのを横目で見ながら、今一番気になる事を聞いてみた。
「それでどうなの?ロイ王子はスリジャ様をどう思っている訳…?」
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