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ホテル セレスト
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(なんだろう、嵐が去ったあとみたい)
会議室を片づけながら、花穂は先ほどまでのことを思い返していた。
4年越しの再会を果たした感動はどこへやら、打ち合わせもあっという間に終わってしまった。
(浅倉さんは、私と一度会ったことがあるなんて思いもしてないだろうな)
正直なところ、この4年間ドラマチックな再会を夢見ていたせいか、また会えた喜びよりも今は落胆の方が大きい。
(そりゃあね、別にそこからどうにかなるとは思ってなかったけども。『やあ、あの時の君か!』『はい、おかげさまでこの会社に入れました』くらいの楽しげな会話はできると思ってたのに)
ブツブツと心の中で呟きながら、手元の資料をまとめる。
「じゃあオフィスに戻りましょうか。ん? どうかしたの、花穂」
「いえ、なんでもありません」
慌てて首を振ると、目の前にニョキッと大森が顔を出した。
「花穂ちゃん、悩みがあったらいつでも相談に乗るからね」
「あ、はい。ありがとうございます。プロジェクションマッピングの投影や光る絨毯についても、追々相談させてください」
「もちろーん! 恋の悩みもいつでもどうぞ」
ガシッと織江が大森の頭を掴んで押し退ける。
「じゃあ戻るわよ、花穂」
「はい。それでは大森さん、失礼いたします」
お辞儀をすると、大森は「まったねー! 花穂ちゃん」とヒラヒラ手を振った。
◇
その後の大地の行動は早かった。
「先方から演出の案、OKもらえた。現地下見は来週の水曜日、16時からだ」
打ち合わせした日の夕方にはそう連絡が来て、花穂は驚く。
(下見の日までにチェック項目を決めておかないと!)
急いで準備に取りかかった。
今回の演出の中で花穂が一番気がかりなのは、歩く度に光るマイクロファイバーの絨毯だ。
圧力センサーを絨毯の下に敷き、踏まれた部分と連動してLEDライトが発光する。
それを少し工夫して、歩いたあとに光が流れるような残光を設計したかった。
その為、下見の時に実際の照明でテストし、絨毯の色味を決めたい。
また電源の配線や絨毯の面積、つまずきや漏電防止などの安全面もチェックしなければならない。
花穂はとにかく準備に追われた。
「織江さん、下見のToDoリスト、確認していただけますか?」
何度も織江にチェックしてもらい、頭の中でシミュレーションして当日に備えた。
下見の日はあっという間にやって来る。
「花穂、そろそろ行くわよ」
「はい!」
「わっ、すごい荷物ね。そっちの紙袋は私が持つわ」
「ありがとうございます」
大量の資料と絨毯のサンプルで、花穂は両手いっぱいに荷物を抱えていた。
エレベーターで1階に下り、ロビーで大地や大森と落ち合う。
「ええ!? 花穂ちゃん、大丈夫?」
大森がすぐさま花穂の荷物を半分持ってくれた。
「ありがとうございます、大森さん」
それを見て、大地がジャケットの内ポケットからキーを取り出す。
「電車はやめて、俺の車で行こう」
「お? 大地、車で来てたんだ」
「ああ。最近残業で終電逃すことが多いから」
そう言って大地はエレベーターホールに向かって歩き始めた。
(浅倉さん、終電なくなるまで残業してるんだ。契約件数トップの人は、それだけ努力してるんだなあ)
花穂は大地の背中を見ながら、改めてすごい人だと感心する。
地下駐車場へ行くと、大地は黒のSUVのロックをリモコンで解除してから、花穂が持っている荷物をスッと受け取った。
「あっ……、ありがとうございます」
大森が持っていた荷物も全てトランクに積むと、大地は後部ドアを開けて花穂と織江を促した。
「どうぞ」
「はい、失礼します」
男の人の車に乗るなんて初めてかも、と花穂は緊張の面持ちで乗り込む。
内装もブラックで統一され、なめらかなレザーシートは座り心地もいい。
ふわりとウッディな香りがして、思わず息を吸い込んだ。
「ん? 花穂、そんなに姿勢正しく座ってないで、背中もたれたら?」
「いえ、心して乗せていただくので」
後部シートに並んで座った織江とそんなやり取りをしていると、助手席に乗り込んだ大森が振り返る。
「花穂ちゃんって今どき珍しく、すれてない感じがいいよね」
するとすぐさま織江が口を挟んだ。
「ちょっと、大森。花穂には手を出さないでよね、汚らわしい」
「け、汚らわしい!? 織江、いったい俺をなんだと思ってるんだ?」
「薄っぺらい中身の遊び人。人呼んで、軽薄チャラ男」
「そうそう。名字は軽薄、名はチャラオ……って、大森 弘和だっつーの!」
声を張る大森に、運転席の大地が「うるさい」と一蹴する。
「大森、車のあとを走ってついて来るか?」
「いえいえ、滅相もございません。拙者、足軽ではございませぬゆえ」
「なら、黙ってろ」
「御意!」
大地は小さくため息をついてから車を発進させた。
カーオーディオからかすかに洋楽が流れてきて、花穂は耳を澄ませる。
(なんだか大人の雰囲気だなあ。自分がすごく子どもっぽく思えてくる。浅倉さんって、織江さんと同期だから31歳よね? 銀座で初めて会ったのは4年前だから……27歳だったのか。あの時は親しみやすい印象だったけど、男性って30代になるとこんなに近寄り難い雰囲気になるのかな。あ、でも大森さんは違うし……)
そんなことを考えていると、ふとバックミラー越しに大地と目が合ってしまった。
花穂はドキッとして目を見開き、慌ててうつむく。
「花穂? どうかした?」
「いえ、なにも。えっと、このあとの段取りを考えてまして」
とっさに織江に言い繕った。
「花穂、今度のプロジェクト張り切ってるもんね。私も安心して任せられるわ。よかった、これで心置きなく……」
そこまで言うと、織江は言葉を止める。
「織江さん?」
「あ、ううん。なんでもないの。気にしないで」
「……はい」
なんだろうと思っていると、今度は大地がミラー越しにさり気なく織江の様子をうかがっているのが分かった。
(え? 浅倉さんと織江さん、なにかあるのかな?)
妙な雰囲気を感じつつ、だからと言って口に出して尋ねる勇気もなく、花穂は黙ったまま車に揺られていた。
20分ほどで無事にホテル セレストに到着する。
駐車場に車を停めると、大地は後部ドアを開けてさり気なく花穂の手を取った。
「えっ、ありがとうございます」
あまりに自然でスマートな振る舞いに、花穂は気づけば大地の手を借りて車を降りていた。
触れ合った手の温もりに、花穂の顔が赤くなる。
大地は何事もなかったようにトランクから荷物を取り出し、リモコンでピッと車をロックしてから歩き始めた。
花穂は急いであとを追う。
「あの、浅倉さん。私の荷物ですから私が持ちます」
「なんで? 触られると困るの?」
「いえ、そういう訳ではないですが」
すると大地はそのまま無言で歩き続ける。
花穂はどうしたものかと困り顔で、ひたすら大地の背中を追いかけた。
エレベーターで55階に上がると、ふかふかの絨毯が敷き詰められた廊下を進み、バンケットホールに向かう。
重厚な扉の前で、50代くらいの黒いスーツ姿の男性がにこやかに出迎えてくれた。
「浅倉さん、お待ちしておりました」
「須崎さん、本日もよろしくお願いいたします」
大地は男性にお辞儀をしたあと、花穂たちを振り返る。
「紹介させていただきます。弊社テクニカル部の大森と、クリエイティブ部の川島、それから青山です」
大地の口から「青山」と自分の名前が出たことに、花穂はドキッとした。
「初めまして。ホテル セレスト副支配人の須崎と申します。どうぞよろしくお願いいたします」
丁寧に名刺を差し出され、花穂たちも自己紹介して名刺を交換する。
「なるほど。川島さんと青山さんがあの演出を考えてくださったのですね。想像しただけでわくわくしました。実際にどんな空間に仕上がるのか、今からとても楽しみです」
「ありがたいお言葉、恐れ入ります。精いっぱい尽力いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします」
そしていよいよバンケットホールに足を踏み入れた。
(わあ、なんて素敵!)
花穂は目を輝かせてホールを見渡す。
天井にはきらびやかなシャンデリア。
壁には惜しげもなく使われた高級なカーテン。
装飾や絵画も目を見張るものばかりで、なんともゴージャスな雰囲気だった。
そしてとにかく広い。
丸テーブルがいくつも並べられているが、それでも空間はかなりゆとりがあった。
(ホテルのホームページで調べてはいたけれど、ここまで広いなんて。天井をドーム状にして映像を投影するのも、光る絨毯の演出も、かなり大がかりになる)
花穂は思わずゴクリと喉を鳴らした。
「だいたいですが、記念式典当日のテーブル配置にしてあります。なにかご質問がありましたら、お気軽にどうぞ」
須崎に言われて、花穂は早速平面図を見ながらチェックを始める。
マイクロファイバーの絨毯を実際に光らせて、照明と絨毯の色味を大森と確認した。
オーロラの布も、背面からライトを当てつつヒダを調節する。
次に天井から吊るす黒幕だが、予想よりもはるかに困難なことが判明する。
「ここまで広いと、幕を綺麗なドーム状に張るのはほぼ不可能ですね」
そう言って花穂が頭を悩ませていると、大地が隣に並んで上を見上げた。
「ドーム状にこだわるな。夜空をイメージさせるのは、プロジェクションマッピングの映像で補える」
え?と、花穂は大地の横顔を見つめた。
「逆にカーブしてない方が映像を投影しやすい。任せろ、俺が最高の夜空を生み出してやる」
不敵な笑みで言い切ってみせる大地に、花穂は思わず言葉を失くす。
大地は小さくポンポンと花穂の頭に手を置いてから歩き出し、大森と相談を始めた。
その場に残された花穂の胸に、4年前の出来事が蘇る。
『じゃあね、デザイナーのひよこちゃん』
その言葉と共に、頭に置かれた大きな手のひらの温もり。
(やっぱりあの人は浅倉さんだったんだ)
花穂はそのことを改めて実感した。
会議室を片づけながら、花穂は先ほどまでのことを思い返していた。
4年越しの再会を果たした感動はどこへやら、打ち合わせもあっという間に終わってしまった。
(浅倉さんは、私と一度会ったことがあるなんて思いもしてないだろうな)
正直なところ、この4年間ドラマチックな再会を夢見ていたせいか、また会えた喜びよりも今は落胆の方が大きい。
(そりゃあね、別にそこからどうにかなるとは思ってなかったけども。『やあ、あの時の君か!』『はい、おかげさまでこの会社に入れました』くらいの楽しげな会話はできると思ってたのに)
ブツブツと心の中で呟きながら、手元の資料をまとめる。
「じゃあオフィスに戻りましょうか。ん? どうかしたの、花穂」
「いえ、なんでもありません」
慌てて首を振ると、目の前にニョキッと大森が顔を出した。
「花穂ちゃん、悩みがあったらいつでも相談に乗るからね」
「あ、はい。ありがとうございます。プロジェクションマッピングの投影や光る絨毯についても、追々相談させてください」
「もちろーん! 恋の悩みもいつでもどうぞ」
ガシッと織江が大森の頭を掴んで押し退ける。
「じゃあ戻るわよ、花穂」
「はい。それでは大森さん、失礼いたします」
お辞儀をすると、大森は「まったねー! 花穂ちゃん」とヒラヒラ手を振った。
◇
その後の大地の行動は早かった。
「先方から演出の案、OKもらえた。現地下見は来週の水曜日、16時からだ」
打ち合わせした日の夕方にはそう連絡が来て、花穂は驚く。
(下見の日までにチェック項目を決めておかないと!)
急いで準備に取りかかった。
今回の演出の中で花穂が一番気がかりなのは、歩く度に光るマイクロファイバーの絨毯だ。
圧力センサーを絨毯の下に敷き、踏まれた部分と連動してLEDライトが発光する。
それを少し工夫して、歩いたあとに光が流れるような残光を設計したかった。
その為、下見の時に実際の照明でテストし、絨毯の色味を決めたい。
また電源の配線や絨毯の面積、つまずきや漏電防止などの安全面もチェックしなければならない。
花穂はとにかく準備に追われた。
「織江さん、下見のToDoリスト、確認していただけますか?」
何度も織江にチェックしてもらい、頭の中でシミュレーションして当日に備えた。
下見の日はあっという間にやって来る。
「花穂、そろそろ行くわよ」
「はい!」
「わっ、すごい荷物ね。そっちの紙袋は私が持つわ」
「ありがとうございます」
大量の資料と絨毯のサンプルで、花穂は両手いっぱいに荷物を抱えていた。
エレベーターで1階に下り、ロビーで大地や大森と落ち合う。
「ええ!? 花穂ちゃん、大丈夫?」
大森がすぐさま花穂の荷物を半分持ってくれた。
「ありがとうございます、大森さん」
それを見て、大地がジャケットの内ポケットからキーを取り出す。
「電車はやめて、俺の車で行こう」
「お? 大地、車で来てたんだ」
「ああ。最近残業で終電逃すことが多いから」
そう言って大地はエレベーターホールに向かって歩き始めた。
(浅倉さん、終電なくなるまで残業してるんだ。契約件数トップの人は、それだけ努力してるんだなあ)
花穂は大地の背中を見ながら、改めてすごい人だと感心する。
地下駐車場へ行くと、大地は黒のSUVのロックをリモコンで解除してから、花穂が持っている荷物をスッと受け取った。
「あっ……、ありがとうございます」
大森が持っていた荷物も全てトランクに積むと、大地は後部ドアを開けて花穂と織江を促した。
「どうぞ」
「はい、失礼します」
男の人の車に乗るなんて初めてかも、と花穂は緊張の面持ちで乗り込む。
内装もブラックで統一され、なめらかなレザーシートは座り心地もいい。
ふわりとウッディな香りがして、思わず息を吸い込んだ。
「ん? 花穂、そんなに姿勢正しく座ってないで、背中もたれたら?」
「いえ、心して乗せていただくので」
後部シートに並んで座った織江とそんなやり取りをしていると、助手席に乗り込んだ大森が振り返る。
「花穂ちゃんって今どき珍しく、すれてない感じがいいよね」
するとすぐさま織江が口を挟んだ。
「ちょっと、大森。花穂には手を出さないでよね、汚らわしい」
「け、汚らわしい!? 織江、いったい俺をなんだと思ってるんだ?」
「薄っぺらい中身の遊び人。人呼んで、軽薄チャラ男」
「そうそう。名字は軽薄、名はチャラオ……って、大森 弘和だっつーの!」
声を張る大森に、運転席の大地が「うるさい」と一蹴する。
「大森、車のあとを走ってついて来るか?」
「いえいえ、滅相もございません。拙者、足軽ではございませぬゆえ」
「なら、黙ってろ」
「御意!」
大地は小さくため息をついてから車を発進させた。
カーオーディオからかすかに洋楽が流れてきて、花穂は耳を澄ませる。
(なんだか大人の雰囲気だなあ。自分がすごく子どもっぽく思えてくる。浅倉さんって、織江さんと同期だから31歳よね? 銀座で初めて会ったのは4年前だから……27歳だったのか。あの時は親しみやすい印象だったけど、男性って30代になるとこんなに近寄り難い雰囲気になるのかな。あ、でも大森さんは違うし……)
そんなことを考えていると、ふとバックミラー越しに大地と目が合ってしまった。
花穂はドキッとして目を見開き、慌ててうつむく。
「花穂? どうかした?」
「いえ、なにも。えっと、このあとの段取りを考えてまして」
とっさに織江に言い繕った。
「花穂、今度のプロジェクト張り切ってるもんね。私も安心して任せられるわ。よかった、これで心置きなく……」
そこまで言うと、織江は言葉を止める。
「織江さん?」
「あ、ううん。なんでもないの。気にしないで」
「……はい」
なんだろうと思っていると、今度は大地がミラー越しにさり気なく織江の様子をうかがっているのが分かった。
(え? 浅倉さんと織江さん、なにかあるのかな?)
妙な雰囲気を感じつつ、だからと言って口に出して尋ねる勇気もなく、花穂は黙ったまま車に揺られていた。
20分ほどで無事にホテル セレストに到着する。
駐車場に車を停めると、大地は後部ドアを開けてさり気なく花穂の手を取った。
「えっ、ありがとうございます」
あまりに自然でスマートな振る舞いに、花穂は気づけば大地の手を借りて車を降りていた。
触れ合った手の温もりに、花穂の顔が赤くなる。
大地は何事もなかったようにトランクから荷物を取り出し、リモコンでピッと車をロックしてから歩き始めた。
花穂は急いであとを追う。
「あの、浅倉さん。私の荷物ですから私が持ちます」
「なんで? 触られると困るの?」
「いえ、そういう訳ではないですが」
すると大地はそのまま無言で歩き続ける。
花穂はどうしたものかと困り顔で、ひたすら大地の背中を追いかけた。
エレベーターで55階に上がると、ふかふかの絨毯が敷き詰められた廊下を進み、バンケットホールに向かう。
重厚な扉の前で、50代くらいの黒いスーツ姿の男性がにこやかに出迎えてくれた。
「浅倉さん、お待ちしておりました」
「須崎さん、本日もよろしくお願いいたします」
大地は男性にお辞儀をしたあと、花穂たちを振り返る。
「紹介させていただきます。弊社テクニカル部の大森と、クリエイティブ部の川島、それから青山です」
大地の口から「青山」と自分の名前が出たことに、花穂はドキッとした。
「初めまして。ホテル セレスト副支配人の須崎と申します。どうぞよろしくお願いいたします」
丁寧に名刺を差し出され、花穂たちも自己紹介して名刺を交換する。
「なるほど。川島さんと青山さんがあの演出を考えてくださったのですね。想像しただけでわくわくしました。実際にどんな空間に仕上がるのか、今からとても楽しみです」
「ありがたいお言葉、恐れ入ります。精いっぱい尽力いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします」
そしていよいよバンケットホールに足を踏み入れた。
(わあ、なんて素敵!)
花穂は目を輝かせてホールを見渡す。
天井にはきらびやかなシャンデリア。
壁には惜しげもなく使われた高級なカーテン。
装飾や絵画も目を見張るものばかりで、なんともゴージャスな雰囲気だった。
そしてとにかく広い。
丸テーブルがいくつも並べられているが、それでも空間はかなりゆとりがあった。
(ホテルのホームページで調べてはいたけれど、ここまで広いなんて。天井をドーム状にして映像を投影するのも、光る絨毯の演出も、かなり大がかりになる)
花穂は思わずゴクリと喉を鳴らした。
「だいたいですが、記念式典当日のテーブル配置にしてあります。なにかご質問がありましたら、お気軽にどうぞ」
須崎に言われて、花穂は早速平面図を見ながらチェックを始める。
マイクロファイバーの絨毯を実際に光らせて、照明と絨毯の色味を大森と確認した。
オーロラの布も、背面からライトを当てつつヒダを調節する。
次に天井から吊るす黒幕だが、予想よりもはるかに困難なことが判明する。
「ここまで広いと、幕を綺麗なドーム状に張るのはほぼ不可能ですね」
そう言って花穂が頭を悩ませていると、大地が隣に並んで上を見上げた。
「ドーム状にこだわるな。夜空をイメージさせるのは、プロジェクションマッピングの映像で補える」
え?と、花穂は大地の横顔を見つめた。
「逆にカーブしてない方が映像を投影しやすい。任せろ、俺が最高の夜空を生み出してやる」
不敵な笑みで言い切ってみせる大地に、花穂は思わず言葉を失くす。
大地は小さくポンポンと花穂の頭に手を置いてから歩き出し、大森と相談を始めた。
その場に残された花穂の胸に、4年前の出来事が蘇る。
『じゃあね、デザイナーのひよこちゃん』
その言葉と共に、頭に置かれた大きな手のひらの温もり。
(やっぱりあの人は浅倉さんだったんだ)
花穂はそのことを改めて実感した。
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