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聖なる日のウェディング
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12月25日の聖なる日がやって来た。
聖の29歳の誕生日に、二人は結婚する。
「芽衣、すっごく綺麗!」
「ありがとう、弥生ちゃん。この間と立場が逆だね」
「ふふ、ようやく満を持して芽衣達の番だね」
花嫁の控え室で、少し前とは逆の立場で笑い合う芽衣と弥生。
「芽衣の言ってたこと分かる。試着の時とは比べものにならないくらい、今日の芽衣は美しさに溢れてるね。こんな芽衣、初めて。見惚れちゃう」
「えー、褒め過ぎだよ、弥生ちゃん」
「そんなことない。きっと如月さん、メロメロになるだろうな。芽衣にだけは甘ーい顔になる如月さんも、ようやく見慣れてきたけど、今日は最上級にトロントロンだろうな。はあー、甘い甘い」
なぜだかパタパタと手で顔を扇いでから、じゃあ、あとでねと弥生は部屋を出て行った。
一人残された芽衣は、鏡に映る自分にポツリと呟く。
「聖さん、綺麗って思ってくれるかな」
ドレスの試着は弥生と行って決め、その後聖が公平と一緒に試着に行き、スタッフがドレスとの相性を考えながら提案してくれたらしい。
つまり互いの衣装を知らないまま当日を迎えていた。
「芽衣は可愛らしい雰囲気だから、絶対プリンセスラインがいい!」と弥生が主張し、いくつか試着した中で、「これがいいよ!」と勧めてくれたドレスに決めた。
キュッと絞ったウエストからふんわりと柔らかく広がるドレスは、袖はパフスリーブ、胸元は鎖骨が綺麗に見えるデザイン。
髪はアップにまとめて前髪をサイドに流し、キラキラ輝くティアラを載せた。
「似合ってるかな?大丈夫かな」
少し心配になってきた時、コンコンとノックの音がしてアテンドのスタッフが入って来た。
「花嫁様、そろそろチャペルへお願いします」
「はい、分かりました」
芽衣はピンクと白のバラのブーケを手に、控え室をあとにした。
◇
ワーグナー作曲 歌劇「ローエングリン」より「エルザの大聖堂への入場」
如月フィルの弦楽四重奏が奏でる美しい調べが、チャペルの隅々まで響き渡る。
目を閉じてその美しさに耳を澄ませたあと、シルバーグレーの衣装に身を包んだ聖は、後方の扉に向き直った。
重厚な扉が左右に開き、明るい光が射し込む。
その輝きの中に芽衣の姿があった。
父と腕を組み、一歩一歩バージンロードを踏みしめて、自分のもとへと歩いて来る。
純白のウェディングドレスをまとった芽衣は息を呑むほど美しく、触れるのをためらうほど清らかさに溢れていた。
「聖くん。まだまだ半人前な娘だが、音楽と君への愛情だけは誰にも負けないと思う。どうか娘をよろしくお願いします」
「はい。私の芽衣さんへの想いも、誰にも負けません。必ず幸せにいたします」
男同士の約束をして、父は娘の手を聖に託した。
「芽衣」
そっと芽衣の手を取り、優しく自分の腕の中に引き寄せて聖がささやく。
「すごく綺麗だ、芽衣。こんなにも美しいなんて」
「ありがとう。聖さんも、とってもかっこいいです」
芽衣は聖を見上げて微笑んだ。
「やばっ、可愛い。綺麗で、可愛くて、たまんない。俺の芽衣、もう今すぐキスして……」
「ストップ!聖さん、心の声が漏れてます」
真顔で首を振りながら、芽衣はなんとか聖を止める。
弦楽四重奏の奏でる曲が壮大に盛り上がり、二人が祭壇に上がると美しい和音を響かせてからふっと消えた。
厳かな雰囲気のまま、式が始まる。
向かい合って指輪の交換をすると、芽衣は左手薬指にはめてもらったばかりの指輪にそっと触れてみた。
(これから先、私がピアノを弾く指にはいつもこの指輪があるんだ。ずっとずっと、いつも聖さんと一緒に音楽を奏でていく)
そう思い、顔を上げると、聖が優しく微笑んで頷く。
(聖さんがヴァイオリンを弾く指にも、いつもこの指輪がある)
そのことが嬉しくて、芽衣も聖に微笑み返した。
聖は少し切なそうな表情をしたあと、ゆっくりと芽衣のベールを上げる。
「芽衣」
「はい」
「芽衣の綺麗な心で奏でられる音が大好きだよ。俺にとって音楽のない日々が考えられないように、芽衣のいない人生は考えられない。これからも二人で一緒に音楽の世界を作っていこう。俺達にしか作れない、極上の音楽を」
「はい。私もあなたの真っ直ぐな音が大好きです。私から音楽を奪えないように、私の心の中からあなたを奪うことも出来ません。ずっと一緒に寄り添って、幸せな音を奏で続けたいです。いつもあなたと一緒に」
聖は嬉しそうに微笑むと、芽衣の肩に手を載せた。
そっと目を閉じると、触れ合った唇から幸せが溢れ出す。
音に感動して心が震えるように、互いの愛を感じて胸が震える。
大切に大切に、ずっと心の中にしまっておこう。
聖と芽衣は、同じ想いを胸に噛みしめていた。
◇
披露宴は、笑顔と音楽に溢れる楽しい時間だった。
如月フィルのメンバーが、次々と演奏を披露してくれる。
公平と弥生もピアノを連弾してくれた。
もてはやされて、聖と芽衣も演奏させられる。
そこにアドリブで参加するメンバー達。
クラシック、ポップス、ジャズ、アルゼンチンタンゴ……
途切れることなく次の曲へと移っていく。
もはやどういうジャンルで何の編成なのかも分からない。
それでもいい。
音楽は常に自由だ。
それぞれが今感じている思いを音にするだけでいいのだ。
鳴り止まない音楽とおしゃべり。
理事長はお酒を飲んで大きな声で笑い、「ひ孫はまだかー!」と叫ぶ始末。
皆で笑い、また楽器を奏でる。
いつまでも続く音楽と幸せな時間に、そこにいる誰もが酔いしれていた。
聖の29歳の誕生日に、二人は結婚する。
「芽衣、すっごく綺麗!」
「ありがとう、弥生ちゃん。この間と立場が逆だね」
「ふふ、ようやく満を持して芽衣達の番だね」
花嫁の控え室で、少し前とは逆の立場で笑い合う芽衣と弥生。
「芽衣の言ってたこと分かる。試着の時とは比べものにならないくらい、今日の芽衣は美しさに溢れてるね。こんな芽衣、初めて。見惚れちゃう」
「えー、褒め過ぎだよ、弥生ちゃん」
「そんなことない。きっと如月さん、メロメロになるだろうな。芽衣にだけは甘ーい顔になる如月さんも、ようやく見慣れてきたけど、今日は最上級にトロントロンだろうな。はあー、甘い甘い」
なぜだかパタパタと手で顔を扇いでから、じゃあ、あとでねと弥生は部屋を出て行った。
一人残された芽衣は、鏡に映る自分にポツリと呟く。
「聖さん、綺麗って思ってくれるかな」
ドレスの試着は弥生と行って決め、その後聖が公平と一緒に試着に行き、スタッフがドレスとの相性を考えながら提案してくれたらしい。
つまり互いの衣装を知らないまま当日を迎えていた。
「芽衣は可愛らしい雰囲気だから、絶対プリンセスラインがいい!」と弥生が主張し、いくつか試着した中で、「これがいいよ!」と勧めてくれたドレスに決めた。
キュッと絞ったウエストからふんわりと柔らかく広がるドレスは、袖はパフスリーブ、胸元は鎖骨が綺麗に見えるデザイン。
髪はアップにまとめて前髪をサイドに流し、キラキラ輝くティアラを載せた。
「似合ってるかな?大丈夫かな」
少し心配になってきた時、コンコンとノックの音がしてアテンドのスタッフが入って来た。
「花嫁様、そろそろチャペルへお願いします」
「はい、分かりました」
芽衣はピンクと白のバラのブーケを手に、控え室をあとにした。
◇
ワーグナー作曲 歌劇「ローエングリン」より「エルザの大聖堂への入場」
如月フィルの弦楽四重奏が奏でる美しい調べが、チャペルの隅々まで響き渡る。
目を閉じてその美しさに耳を澄ませたあと、シルバーグレーの衣装に身を包んだ聖は、後方の扉に向き直った。
重厚な扉が左右に開き、明るい光が射し込む。
その輝きの中に芽衣の姿があった。
父と腕を組み、一歩一歩バージンロードを踏みしめて、自分のもとへと歩いて来る。
純白のウェディングドレスをまとった芽衣は息を呑むほど美しく、触れるのをためらうほど清らかさに溢れていた。
「聖くん。まだまだ半人前な娘だが、音楽と君への愛情だけは誰にも負けないと思う。どうか娘をよろしくお願いします」
「はい。私の芽衣さんへの想いも、誰にも負けません。必ず幸せにいたします」
男同士の約束をして、父は娘の手を聖に託した。
「芽衣」
そっと芽衣の手を取り、優しく自分の腕の中に引き寄せて聖がささやく。
「すごく綺麗だ、芽衣。こんなにも美しいなんて」
「ありがとう。聖さんも、とってもかっこいいです」
芽衣は聖を見上げて微笑んだ。
「やばっ、可愛い。綺麗で、可愛くて、たまんない。俺の芽衣、もう今すぐキスして……」
「ストップ!聖さん、心の声が漏れてます」
真顔で首を振りながら、芽衣はなんとか聖を止める。
弦楽四重奏の奏でる曲が壮大に盛り上がり、二人が祭壇に上がると美しい和音を響かせてからふっと消えた。
厳かな雰囲気のまま、式が始まる。
向かい合って指輪の交換をすると、芽衣は左手薬指にはめてもらったばかりの指輪にそっと触れてみた。
(これから先、私がピアノを弾く指にはいつもこの指輪があるんだ。ずっとずっと、いつも聖さんと一緒に音楽を奏でていく)
そう思い、顔を上げると、聖が優しく微笑んで頷く。
(聖さんがヴァイオリンを弾く指にも、いつもこの指輪がある)
そのことが嬉しくて、芽衣も聖に微笑み返した。
聖は少し切なそうな表情をしたあと、ゆっくりと芽衣のベールを上げる。
「芽衣」
「はい」
「芽衣の綺麗な心で奏でられる音が大好きだよ。俺にとって音楽のない日々が考えられないように、芽衣のいない人生は考えられない。これからも二人で一緒に音楽の世界を作っていこう。俺達にしか作れない、極上の音楽を」
「はい。私もあなたの真っ直ぐな音が大好きです。私から音楽を奪えないように、私の心の中からあなたを奪うことも出来ません。ずっと一緒に寄り添って、幸せな音を奏で続けたいです。いつもあなたと一緒に」
聖は嬉しそうに微笑むと、芽衣の肩に手を載せた。
そっと目を閉じると、触れ合った唇から幸せが溢れ出す。
音に感動して心が震えるように、互いの愛を感じて胸が震える。
大切に大切に、ずっと心の中にしまっておこう。
聖と芽衣は、同じ想いを胸に噛みしめていた。
◇
披露宴は、笑顔と音楽に溢れる楽しい時間だった。
如月フィルのメンバーが、次々と演奏を披露してくれる。
公平と弥生もピアノを連弾してくれた。
もてはやされて、聖と芽衣も演奏させられる。
そこにアドリブで参加するメンバー達。
クラシック、ポップス、ジャズ、アルゼンチンタンゴ……
途切れることなく次の曲へと移っていく。
もはやどういうジャンルで何の編成なのかも分からない。
それでもいい。
音楽は常に自由だ。
それぞれが今感じている思いを音にするだけでいいのだ。
鳴り止まない音楽とおしゃべり。
理事長はお酒を飲んで大きな声で笑い、「ひ孫はまだかー!」と叫ぶ始末。
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