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腐敗

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ニッシュが憤怒ふんど形相ぎょうそうに染まる。

「テメエ―――――!!」

「まあまあ、落ち着けニッシュ」

と、なだめたのはドレアスである。

「確かにお前のスキルは、お嬢ちゃんの魔法と相性が悪い。そこは素直に認めよう」

「……は、はい。師匠」

ニッシュが深呼吸をして頭を冷やす。

ドレアスが一拍置いてから、告げた。

「俺たちはいま3人いるんだ。1人の相性が悪くても、互いがサポートすればいい。1人でターゲットを殺すのも、3人の連携で殺すのも、同じことだ。要は殺せば勝ちなのだから」

そしてドレアスが一歩前に出てくる。

私は推定する。

(ドレアスが親玉かな。なんかリーダーって感じするもんね)

私はニッシュとジルを雑魚だとあおったが、内心ではそう思っていない。

ひとかどの実力者ではあるだろう。

その二人が、リーダーと認識してるドレアスとは、いったいどのような者なのか?

私はドレアスを注視する。

ドレアスは言った。

「お嬢ちゃん。特別に、俺の能力について教えておこう」

「……!」

「俺の能力は【腐敗】だ」

そうドレアスが述べた直後。

彼の足元にあった草や根が、急激にしなびていく。

あるいは近くにあった大樹が、枯れ木へと変わっていく。

まるで生命力を失っていくかのように。

「俺は周囲にあるものを、腐敗させることができる。【腐敗】といっても、ただ腐らせるだけじゃない。ちさせたり、老化させたりすることも可能だ」

ドレアスが説明する。

「人も、物も、獣も、植物も……この世に存在するものは全て、やがて老いる。鮮度をうしない、朽ちていく。それが自然の摂理せつりだ。俺はその摂理を操っている。だから、誰にも俺の【腐敗】を防ぐことはできないんだよ」

ドレアスが近づいてきた。

彼が踏みしめるたびに、足元にある生命たちが、腐り、朽ちていく。

「……」

私はチョコレート魔法を発動した。

ぐいーんと伸ばしたチョコレート・パンチを2つ。

ドレアスに殴りかかる。

しかし。

「……!」

ドレアスに触れる寸前のところで、チョコレート・パンチが急に制止した。

そして。

チョコレートいろが急激に、くすんだ色へ変わっていく。

やがてチョコレート・パンチが、ボロボロと崩れていった。

「どうやらお嬢ちゃんの魔法と、俺の能力は、相性が良いようだな」

ドレアスは微笑む。

チョコレートは死なない。

チョコレートは殺せない。

だが。



――――チョコレートは、腐敗する。




私は思う。

(このオッサン……)

もしかして、私の天敵てんてきなのでは?
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