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48 変にラブラブ?
しおりを挟む世間はクリスマス一色で。こいつの頭の中も当然。
「ねえねえ、どうするのクリスマス?」
「普通。」
「今までなかったような普通?」
期待するような、嫌な顔。
「23日にランチすることにしてる。」
「ランチ?夜は?家族とか?」
「そうだ。仲がいいんだよ。」
「あ、挨拶どうだった?」
「まあまあ、何とかなったみたいだし。2人ともいい人で良かった。ほとんど質問もなく、むしろお礼ばかり言われた気がする。」
「ふ~ん。で、プレゼントは買ったよね?」
何でこいつにここまで探られるんだ?
もしくは、心配されてる?
うっとうしいぞ。
「買った。」
愛想なくそう言うと肩を叩かれた。
「何だよ、痛いぞ。」
「亜子ちゃんの分。」
きつい一言。黙るしかないじゃないか。
「まあ、これが最後。ハッピーそうだよ。」
「そうか・・・。」
良かった。
そう言うと去っていた高田。
一応背中にお礼を言う。
最近いろいろと世話になったから。
あえて言葉にはしないが心ではちょっと思ってるぞ。
そう伝える様に。
いきなり振り返って・・・・笑われた。
お見通しとか?
23日のお昼前。
待ち合わせた場所にいったら、唇を結んで難しい顔をしていた彼女を見つけた。
時々キョロキョロしても自分を探してるのではない、とにかく落ち着かない様子だ。
何だ?
「茜?何してるんだ?」
声をかけて聞いた。
いきなり謝られた。
何だ?いろいろな不安が頭をよぎり、反省するべきポイントを探そうと脳内に一瞬にして電気信号が走った。
赤い、危険を知らせる信号が。
おどおどと言われたことに脱力する。
そんなことか。
特に自分に対するプレゼントは用意しなくてもいいと言った。
何故かお店の端の方に連れていかれていたので思わず気が抜けた。
つい目に入った赤い唇に触れたい衝動を我慢できずに、そっと触れた後に自分の口に持って行った。
自分でも驚く行動。
当然彼女もそうだったのだろう、唇の色と同じくらい赤面した。
お店の端っこの使い方として良かったのでは?
そしてプレゼントはイブに現物支給でいいと言った。
なかなか通じなかったがやっと分かってくれたらしい。
それでも一応考えとくと言った。
それで気が済むならそう言おう。
コンビニレジ横のチロルチョコ一個でもうれしいと言いたい。
レストランに向かい予約した席に案内される。
夕食もしっかりと食べるだろうと軽めのコースにした。
それでもクリスマスらしい飾りつけされたプレートに彼女が喜ぶ。
すっかり女性らしい格好も見慣れたが今日はちょっと大人びて見える。
メイクのせいかもしれない。
坂井の指導が入ったのかも。
そんなことに気がつく自分も高田の教えが刷り込まれているのか。
そして自分も褒められた。
うれしいものだな。
浮かれてる自分を自覚した。
コースをデザートまで堪能して、近くのホテルのラウンジに入った。
多くあるソファでも気に入った席があって予約をしていた。
クリスマスプレゼント、どうしても自分が首につけてあげたくて。
自然に座ったままつけてあげれるようなソファ席のここが良かったのだ。
しかも高いところにあり外を見る向きのソファだ。
お酒を頼んでプレゼントを出してつける。
つい首筋に唇を近づけてしまった。
自分自身がこの手慣れたような行動にびっくりしていた。
なかなかやるな、自分。
指で触れながら喜ぶ彼女。
やっぱり似合ってると思う。
このためなのか今日は首回りに何もつけてない。
指輪はどのタイミングで出そうか?
探りを入れる様に彼女にこの間の事を聞いてみる。
この間挨拶に行った後に何か言われただろうか?
まったくと言っていいほど探りを入れられず、あっさり旅行の許可ももらえた。
信頼してもらえてるのだろうか?
それともあえて先の事は茜本人に任せてるというスタンスなのか?
ポツポツと聞いた質問に答える茜も少し戸惑っているのか、核心を突くような答えもない。
この先の事とか一切言われなかったのか?
どうやらそうらしい。
目を閉じてもらいもう一つの箱から指輪を取り出す。
膝に軽く置かれた手を取りその指にはめた。
それで分かったらしく目を開けて驚いた顔をする。
ふたりが行きつく先の約束をしよう。
大切にしてほしいと伝える。
抱きつけないと言いながらガッツリと肩に手を置かれて耳元で囁かれてキスをされた。感謝は耳元に。
きっと誰かが見てたらバレてるだろうが。
笑顔で見あげられたから同じように返す。
二つともつけたまま駅で別れた。
明日、一緒にいられるから。
手を振る彼女の指には自分の約束の印が光っていた。
翌日、クリスマス前日。
やたらとお昼休憩に長々とテーブルでお茶会をしている面々。
お菓子を広げて周りで見かけたクリスマスカップルの話で盛り上がる。
「昨日レストランで隣の二人が突然険悪モードに突入して。すごい剣幕で男の人が怒って出て行って。料理は手つかずで女の人も出て行って。本当につまらないやきもちネタだったの。絶対男が悪い。」
隣の席のやり取りが披露されると一同が女性に同情した。
「変にラブラブすぎても困るけど、もめられたり修羅場なのも困るよな。」
成井が言う。
変にラブラブって何だろう?
多分茜もそう考えてる。横目で見た表情がそう言っていた。
褒めるのはいいだろう?
似合ってるとか、大人っぽいとか言った気がるが。
アクセサリーをつけて首にキスはどうだろう?
隣でやられたらひくか・・・・・。
でもあれはレストランよりずっと隣との距離もあったし、方向も・・・・。
耳にキスとかも・・・・どうだろう。
『変にラブラブ。』
定義が分からない。
まあちょっとラブラブぐらいだったかと思う。
「玉井さん?どうかした?」
見ると、とうとう指を顎に当てて考えてますポーズ。
視線が天井から成井に。
「変にラブラブってどんなのかなあって思ってて。」
馬鹿正直に答えるな!
一同の視線が俺を通り戻る。
素早い動きながら、誰もがこっちをうかがっただろう視線。
誰もが沈黙を守る。本当はいたたまれずに席を立ちたい。
後悔の渦が自分を取り巻くようだ。
ただ茜を監視してないと何を暴露するか、させられるか分かったものじゃない。
坂井にはどのくらい話してるのだ?
ネックレスをつけてもらって首にキスされたとか、唇にに触れた指を口に持っていったとか。言ってないよな?坂井、聞いてないよな?
もしや高階まで?・・・・と自分の猜疑心が広がる。
せめて服を褒めたくらいにして欲しい。
とにかく安心したければ目の届く、声の聞こえる範囲にいることだ。
ダラダラとした雰囲気の中、仕事も終わり、誰もが素早く支度して帰る。
茜と2人で消灯して部屋を出る。外はすっかり暗い。
駅向こうのイルミネーションの通りを手をつないで歩く。
お気に入りのバーでお酒と少し食事をする予定。
長い道中にワゴン出店のスタンドが何台かあり、グリューワインのお店を見つけた。
お手軽な値段だ。飲みたそうにしてたので一杯だけ買ってみる。
カップを渡した指にはプレゼントがあった。もちろん見えないが首にも。
暖かいお酒を飲みながら頭上を見上げる。
軽く抱き寄せた体に後ろからくっついて、一緒に見上げる。
「近藤さん、変にラブラブ?」
ニコニコして聞いてくる。
「普通じゃないか?」
「そう?」
「ああ。」
だがそうとも限らないようで。
周りを見渡したら、腕を組んだり腰に手を当ててるパターンはたくさん見られるのに。自分たちはくっつぎ過ぎか?
立ち止まってる人が少ないからだろうと思い直した。
変でも何でもいいじゃないか。ラブラブなら。
飲み終わりカップのごみを回収してもらって駅に向かう。
バーで少しだけお酒を飲んで、食べて。
部屋に戻り交代でシャワーを浴びてソファでくつろぐ。
「茜、坂井とか高階にはどのくらい話をしてるんだ?」
「どのくらいとは・・・。」
「いろいろ、俺とのことを。家族にはいろいろ話をしてるだろう。」
「はい、親に会ってもらったってことは言いました。驚いてましたが。正直にお母おさんのお願いだとも言いました。あとはクリスマスは23日にランチするってことも。」
「それくらいか?」
「そうです。えっと今日の事は・・・バレました。」
心配するほど詳しくは言ってないのかと思えて安心する。
まあ、言わないか。
とりあえず良かった。油断は出来ないが、今のところ問題なし。
「茜、おいで。」
膝の上に呼んで抱きかかえる。
「明日ちゃんと起きろよ。」
「当たり前です。」
「起きないと置いてくぞ。」
「はい。」
「じゃあ、プレゼントの現物支給。」
一瞬目が合った。笑って目を閉じた彼女の唇に触れる。
「今頃お母さんたちもいいクリスマスを楽しんでるといいな。」
「はい。」
返事も甘い。
吐く息が熱くなってきた。
クリスマスイブの夜だから、あちこちで変にラブラブの恋人たちが愛の形を確かめ合ってるだろう。
いちばん許される日じゃないのか?
ソファの上で体を寄せ合うことにもすっかり慣れた。
最初の頃の初々しさはなくてもお互い気持ちいいポイントを攻め合い高め合う。
素直に求めることにも慣れたようだ。
「ベッドにいきたい。」
いつも体温をあげてお願いされてから寝室に流れ込む。
無防備な肌は居心地のいい温度を知っていて、シーツの上ですべてが重なると大きなため息が出る。
何度も何度も欲しいものを味わいつくす。
明日は仕事だということをすっかり忘れて味わいつくした
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