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3 日比谷の吉祥天
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今日は新規入会希望の面談予定が5件も控えてる。
めったにここまでは重ならない。
夏が終わり少し肌寒くなったのも関係あるのだろうか?
あとボーナスとか。
そう、登録料金はかなり高い。
3年間の期限でいろんな人と会おうと思えば会える。
せっかくなのでどんな人が自分と合うのか、たくさんの人と会うのもいい方法だ。
当初の説明はすべて私が対応する。
そのあと相性の一番良さそうな担当者を選び具体的な話をして実際の条件でシュミレートしたりする。
今日返事を頂かなくても良いからと書類を預け送り出すこともあれば、その場で即決しガンガンとパソコンの検索機能を使い相手を絞ろうとする人もいる。
このオフィスのクライアントの男性女性の比率は少し女性が多いくらいだ。
女性のクライアントには女性を、男性のクライアントにはタイプによって男性をと、スタッフにも男性を入れているもののまだ少ない。
他の同業者さんにしてもスタッフは女性が一般的かもしれない。
わが社では都内のオフィスに男性スタッフがちょっとづつ配属されている。
今ここでは3人の男性スタッフがいる。
男性スタッフは落ち着いた雰囲気で丁寧な接客ができる人、綺麗な言葉使いができる人。
うちの研修はそのあたりも徹底的に指導される。
笑顔を絶やさずに対応を心がける。
ただたまに誤算が生じトラブルになりそうになる。
新人だった一人を3ヶ月指導し独り立ちさせた。
2年目になりそれなりにうまくいっていた。
ただどうも入社時より余裕が出てきた分、一般的に言うと男性的に魅力が出てきたらしい。
う~ん。
入会されたクライアントが二人ほどアプローチをかけてくるという事態になって、ちょっと困ったレベルである。
とはいっても本人は真面目に仕事をしているだけでなんともしようがない。
今は本人よりかなり年上のクライアントを持ってもらうようにしている。
たしかに新人の頃も素直で可愛かったのでそれはそれで。
時々注意して見てるけど本当に笑顔が自然だから。
これは会員さんじゃなくても惹かれてしまいそうよね。
分かる分かる・・・なんて思ったりして。
新規の面談を5件もこなすとすっかり疲れを感じる。
同じ事を基本に繰り返すマニュアル対応になるけどそれで良い訳ではない。
さりげなく本人の情報を聞き出し、希望を探り、決め手となるようなポイントをつくように話をする。
今日は3件が登録に至った。後のお持ち帰り2件も手ごたえがあったと思う。
一息入れるために休憩ブースに入ってコーヒーを飲む。
この後書類をいちいち起こしていかないといけない。今日も残業確定!
ふ~、ため息をついて外を見る。
ビル群が見える鉄の街。乾燥した匂いのする街だと思う。
無機質な直線ばかり見ていると誰かのそばでやわらかい体温を感じたいと、そう思う。私も。
後ろから声をかけられた。
「お疲れ様です、祥子さん。」
「お疲れ。」
明くんには二人目に面談に来た大人っぽい雰囲気の女性を担当してもらった。
入会の手続きも終わり積極的にサービスも利用したいと言われていたと聞いている。
こういった人は一人でもサービスのシステムの中でうまくいい人とめぐり合っていくだろう。
「さっきの浜中さんが祥子さんのことすごく信頼できそうな人って褒めてましたよ。」
明君がにっこりと笑う。手にはおそろいのコーヒーが握られている。
「浜中さんみたいなスーパーOLさんに言われるとうれしいわね。」
彼女は実際誰もがうらやむような一流会社に籍を置く30歳真ん中。
仕事もてきぱきとできそうなキャリアウーマンタイプだった。
「思いやりのある人希望って言ってました。」
そうなのだ、強く見える女こそ癒しを求めているのだ。
「誰か思い当たりそうな人いる?」
「そうですねぇ。僕の担当だとソフトな感じの人は一人いたかなあ?後で見ておきます。」
「少し年下の男性の方がいいかもしれないわね。年上に甘えるより力を抜いて最初から油断してしまうような年下もいいんじゃない?って思ったけど。」
「祥子さんも・・・そう思いますか?」
明君がまっすぐに聞いてくる。
「きっとあの人にはそういう感じがいいかなって思っただけよ。明君もそう思ったらきっとそうよ。意見が合ってうれしいわ。」
「・・・あ、そうですか、浜中さんですね。今度聞いてみます。」
「そうしてみて。私も後で考えてみるから。」
「はい。」
「じゃあ、お先に。」
いつもの甘い笑顔。
すこし疲れもとれた気がして休憩ブースを出る。
さて5人分の入力作業。
記憶の新しいうちに自分の中でいろんなシュミレートをしてみる。
最初の二人は友達が次々に結婚式に向かうのに不安を覚えて入会を希望してきた。
一人目はちょっと内気な女の子。趣味の欄に料理と書くくらいなのがうらやましい。
自宅でも楽しく過ごせそうなタイプで物静かな趣味のある人のほうがいいだろうか?
何人か頭に浮かぶ。チラチラとチェックして何人かピックアップする。
スタッフから簡単な対応表が上がってきている。
引き継いだ後の説明などの反応、疑問、希望などを記入してもらっている。
旅行や外食よりもゆっくり自宅で過ごしたいほうだと書かれている。
やはり。さっき選んだ男性会員のナンバーを書いて担当したスタッフに後で聞いてみることにして。
次、二人目の人は持ち帰り検討とした人。
システムに対する不安感を取りきってもらえなかったのだとしたら、こちらの力不足かもしれない。
説明を引き継いだ担当者からは具体的な不安点は上がってない。
お金もかかることだし、何事も慎重な人なのかもしれない。
タイプとしてはさほど内向的という印象もない。
聞きたいことがあれば聞きそうなタイプ。
あとは自分の中で消化して返事をくれるだろう。こういう人には・・・と。
さすがに5人分を考えると脳がスパークしてしまう。
すべてのファイルをそれぞれの担当者に返しながらお互いに印象をシェアしあう。
この仕事を始めてから人を覚えることは得意になった。
街を歩いて二人組みをついつい観察する。
職業や年齢はもちろん、どんなタイプの人同士がくっつくのか、あるいはどのくらいの関係性か。
貴重なサンプルが歩いてるのを見ながら楽しんだ。
そして、いつの間にかペアリングがかなりの確立で成功するにいたる。
日比谷の吉祥天の呼び名はこうした日々の努力の賜物なのだ。
登録をしてクライアントになっていただいたお客様にはコーディネート券なるものが3枚サービスされる。
会員期間中いつでも使える券でパソコン上の情報で選ぶのではなく担当のコーディネーターがこの方はどうでしょうか?と推薦してセッティングするのだ。
これは責任もあるし、有効に使いたい。
それぞれのスタッフも力が入る。
たいていのクライアントが最初に使うことが多い。
新しく登録いただいたクライアントについては2日以内に情報共有という形でカンファレンスをして紹介する。
もちろん本人不在で。
この2日のうちに担当は必ずメールや電話面接などより具体的な条件をつめていく。
ところが時々無理といいたくなるような条件を列挙するクライアントもいたりする。
さりげなく優先順位を聞き出し妥協していただくほかない場合だってあるのだ。
このコーディネートは日比谷オフィスではおおむね好評である。
オフィスに来ていただいて引き合わせ後はごゆっくり・・・・となるのだが、ほとんどの場合何度か会うパターンにはなる。
全然違いますと怒られることはない。
クリック一つで選べる相手でもじっくりとゆっくりと付き合ってお互いを見ていってもらいたい。
めったにここまでは重ならない。
夏が終わり少し肌寒くなったのも関係あるのだろうか?
あとボーナスとか。
そう、登録料金はかなり高い。
3年間の期限でいろんな人と会おうと思えば会える。
せっかくなのでどんな人が自分と合うのか、たくさんの人と会うのもいい方法だ。
当初の説明はすべて私が対応する。
そのあと相性の一番良さそうな担当者を選び具体的な話をして実際の条件でシュミレートしたりする。
今日返事を頂かなくても良いからと書類を預け送り出すこともあれば、その場で即決しガンガンとパソコンの検索機能を使い相手を絞ろうとする人もいる。
このオフィスのクライアントの男性女性の比率は少し女性が多いくらいだ。
女性のクライアントには女性を、男性のクライアントにはタイプによって男性をと、スタッフにも男性を入れているもののまだ少ない。
他の同業者さんにしてもスタッフは女性が一般的かもしれない。
わが社では都内のオフィスに男性スタッフがちょっとづつ配属されている。
今ここでは3人の男性スタッフがいる。
男性スタッフは落ち着いた雰囲気で丁寧な接客ができる人、綺麗な言葉使いができる人。
うちの研修はそのあたりも徹底的に指導される。
笑顔を絶やさずに対応を心がける。
ただたまに誤算が生じトラブルになりそうになる。
新人だった一人を3ヶ月指導し独り立ちさせた。
2年目になりそれなりにうまくいっていた。
ただどうも入社時より余裕が出てきた分、一般的に言うと男性的に魅力が出てきたらしい。
う~ん。
入会されたクライアントが二人ほどアプローチをかけてくるという事態になって、ちょっと困ったレベルである。
とはいっても本人は真面目に仕事をしているだけでなんともしようがない。
今は本人よりかなり年上のクライアントを持ってもらうようにしている。
たしかに新人の頃も素直で可愛かったのでそれはそれで。
時々注意して見てるけど本当に笑顔が自然だから。
これは会員さんじゃなくても惹かれてしまいそうよね。
分かる分かる・・・なんて思ったりして。
新規の面談を5件もこなすとすっかり疲れを感じる。
同じ事を基本に繰り返すマニュアル対応になるけどそれで良い訳ではない。
さりげなく本人の情報を聞き出し、希望を探り、決め手となるようなポイントをつくように話をする。
今日は3件が登録に至った。後のお持ち帰り2件も手ごたえがあったと思う。
一息入れるために休憩ブースに入ってコーヒーを飲む。
この後書類をいちいち起こしていかないといけない。今日も残業確定!
ふ~、ため息をついて外を見る。
ビル群が見える鉄の街。乾燥した匂いのする街だと思う。
無機質な直線ばかり見ていると誰かのそばでやわらかい体温を感じたいと、そう思う。私も。
後ろから声をかけられた。
「お疲れ様です、祥子さん。」
「お疲れ。」
明くんには二人目に面談に来た大人っぽい雰囲気の女性を担当してもらった。
入会の手続きも終わり積極的にサービスも利用したいと言われていたと聞いている。
こういった人は一人でもサービスのシステムの中でうまくいい人とめぐり合っていくだろう。
「さっきの浜中さんが祥子さんのことすごく信頼できそうな人って褒めてましたよ。」
明君がにっこりと笑う。手にはおそろいのコーヒーが握られている。
「浜中さんみたいなスーパーOLさんに言われるとうれしいわね。」
彼女は実際誰もがうらやむような一流会社に籍を置く30歳真ん中。
仕事もてきぱきとできそうなキャリアウーマンタイプだった。
「思いやりのある人希望って言ってました。」
そうなのだ、強く見える女こそ癒しを求めているのだ。
「誰か思い当たりそうな人いる?」
「そうですねぇ。僕の担当だとソフトな感じの人は一人いたかなあ?後で見ておきます。」
「少し年下の男性の方がいいかもしれないわね。年上に甘えるより力を抜いて最初から油断してしまうような年下もいいんじゃない?って思ったけど。」
「祥子さんも・・・そう思いますか?」
明君がまっすぐに聞いてくる。
「きっとあの人にはそういう感じがいいかなって思っただけよ。明君もそう思ったらきっとそうよ。意見が合ってうれしいわ。」
「・・・あ、そうですか、浜中さんですね。今度聞いてみます。」
「そうしてみて。私も後で考えてみるから。」
「はい。」
「じゃあ、お先に。」
いつもの甘い笑顔。
すこし疲れもとれた気がして休憩ブースを出る。
さて5人分の入力作業。
記憶の新しいうちに自分の中でいろんなシュミレートをしてみる。
最初の二人は友達が次々に結婚式に向かうのに不安を覚えて入会を希望してきた。
一人目はちょっと内気な女の子。趣味の欄に料理と書くくらいなのがうらやましい。
自宅でも楽しく過ごせそうなタイプで物静かな趣味のある人のほうがいいだろうか?
何人か頭に浮かぶ。チラチラとチェックして何人かピックアップする。
スタッフから簡単な対応表が上がってきている。
引き継いだ後の説明などの反応、疑問、希望などを記入してもらっている。
旅行や外食よりもゆっくり自宅で過ごしたいほうだと書かれている。
やはり。さっき選んだ男性会員のナンバーを書いて担当したスタッフに後で聞いてみることにして。
次、二人目の人は持ち帰り検討とした人。
システムに対する不安感を取りきってもらえなかったのだとしたら、こちらの力不足かもしれない。
説明を引き継いだ担当者からは具体的な不安点は上がってない。
お金もかかることだし、何事も慎重な人なのかもしれない。
タイプとしてはさほど内向的という印象もない。
聞きたいことがあれば聞きそうなタイプ。
あとは自分の中で消化して返事をくれるだろう。こういう人には・・・と。
さすがに5人分を考えると脳がスパークしてしまう。
すべてのファイルをそれぞれの担当者に返しながらお互いに印象をシェアしあう。
この仕事を始めてから人を覚えることは得意になった。
街を歩いて二人組みをついつい観察する。
職業や年齢はもちろん、どんなタイプの人同士がくっつくのか、あるいはどのくらいの関係性か。
貴重なサンプルが歩いてるのを見ながら楽しんだ。
そして、いつの間にかペアリングがかなりの確立で成功するにいたる。
日比谷の吉祥天の呼び名はこうした日々の努力の賜物なのだ。
登録をしてクライアントになっていただいたお客様にはコーディネート券なるものが3枚サービスされる。
会員期間中いつでも使える券でパソコン上の情報で選ぶのではなく担当のコーディネーターがこの方はどうでしょうか?と推薦してセッティングするのだ。
これは責任もあるし、有効に使いたい。
それぞれのスタッフも力が入る。
たいていのクライアントが最初に使うことが多い。
新しく登録いただいたクライアントについては2日以内に情報共有という形でカンファレンスをして紹介する。
もちろん本人不在で。
この2日のうちに担当は必ずメールや電話面接などより具体的な条件をつめていく。
ところが時々無理といいたくなるような条件を列挙するクライアントもいたりする。
さりげなく優先順位を聞き出し妥協していただくほかない場合だってあるのだ。
このコーディネートは日比谷オフィスではおおむね好評である。
オフィスに来ていただいて引き合わせ後はごゆっくり・・・・となるのだが、ほとんどの場合何度か会うパターンにはなる。
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クリック一つで選べる相手でもじっくりとゆっくりと付き合ってお互いを見ていってもらいたい。
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