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30 非常階段でのできごとについて
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自分が悪い。そう言われて、怒ってもいいとまで言ってくれた。
そう言われても殴るわけにはいかない。
萩原さんの目が本当に辛そうに自分を見つめていたから。
隣にいることを許されたならそれでいい。そう思った。
ベッドでいつものようにキスをされてもどこかぎこちない手つきに思えた。
触れる手が優しい。優しすぎる。
他の誰にも渡したくない、私だけを全身で強く激しく愛して欲しい。
そう思ったらつい口にしていた。
『もっと乱暴に壊れるくらい激しく。』
ストレートに伝えた。
見つめられた一瞬の後始まった流れはあっという間の急流で。
十分すぎるほどわかった、今まではまだ、まだまだだったんだと。
何度首を振っても、いやと言っても、お願いと言っても聞き流されて。
望みどおりに、それ以上に乱されて壊された。
最後がどこだったのか意識が飛んで分からないくらいだった。
すべての力がつき果て、ほとんど死体のように横になったかもしれない。
それでも満たされた体の中でゆっくり心臓が動き出し、血液が流れ呼吸をして、意識が浮上した。
胸にのせられた萩原さんの腕すら、さっきまで心臓を押さえてたのではないだろうかと思うほど、ちょっと重いと感じる。
今までにない疲労感。
ちょっとだけ上を見ると寝顔の萩原さん。
久しぶりだなあ。しみじみと懐かしみながら見つめる。
私の大好きな顔。
昨日からは真面目モードで一切意地悪は無し。
少しぎこちない気もするけど、また前みたいになれると思う。
気持ちよさそうに寝てるのを見てると、つい悲しんで悲しんでどうしようもなかったここ数日の恨み言が心に浮かび出てしまいそうになった。
大嫌い、もう本当に大嫌い。
『できる男クールな営業部萩原』の癖に仕事以外の大切な約束をきちんと守れないなんて。
『できる男』の冠は外してやる。
仕事熱心なのはいいけど、男性としては減点にしてやる。
大阪で出会ったお嬢様に一目ぼれして玉の輿にほいほい乗って・・・・。
たこ焼き食べ過ぎて丸い顔にでもなればいい、歯に青のり付けて幻滅されればいい。
こじゃれたスコーンも紅茶もなしで粉物と土手焼きと串揚げと・・・で、ぶくぶく太ってメタボ体形になってしまえ。
だいたいあんな噂が広まっても誰も教えてくれないなんて、誰も興味持ってくれる人がいないんじゃないの?
普通問い合わせの嵐でしょう?クールぶってるから誰も教えてくれないのよ。
だいたい私だって・・・・もっと毎日話が出来てたら聞けたかもしれないのに・・・・。
絶対聞いた・・・、ちょっと探りを入れるくらいしたし。
そうしたらあんな噂から隠れるように非常階段で座りこんで泣いたりしなかった。
みんなが噂するのを違うよって余裕の目で見てられた。
面白がって毎日尾ひれを拾い集めて萩原さんに報告してたと思う。
2度も鈴木さんに恥ずかしいところを見られて・・・・あんな展開になって・・・・。
だから元はと言えば全部萩原さんのせい。南田さんのせいじゃない。
自業自得のくせに私まで巻き込んで。
どれだけ泣いて、泣いて・・・・本当に大嫌いって、冷凍室のスコーンにまで八つ当たりして投げつけてしまって。馬鹿みたいに痩せて化粧のノリも悪くてお化けみたいな顔になって・・・・香にも上司にも心配かけて。
本当に大嫌いって思ってたのに。
全部でたらめだって知っても、そう急に言われても、どんな顔をすればいいのかわからなくて。
南田さんがいなかったらきっとまだ素直に信じられなかったかもしれない。
やっぱり南田さんはすごい。囁き一つで心をゆるっと緩めてくれるなんて。
でも、そんな人に『大切な友達』って言われる萩原さんもすごい。
『できる男』やっぱり戻してあげる。すごいプロジェクトに参加したんだもん、お疲れ様。
私は・・・・。
「『そんな出来る男の萩原さんに愛されてる私もすごい』って続くのかな?、琴。」
「うへぇ」
最初はちゃんと口閉じてた、ちゃんと。いつからかまた声出てたみたいだ。
「なんとなく聞こえて目が覚めて、『玉の輿』あたりからはとっても良く聞こえてたよ。なんで大阪の食べ物ばかりの設定なの?噂はそんな細かい情報もあったのかな?ん?」
「・・・・。」
「いや~、面白かった。いつもとはちょっと方向性が違ってて。で、何で南田が褒められるのかな?違う男の名前も出てきたみたいだし、そこ聞きたいねえ、琴。」
ガバッと起き上がり上からベッドに押し付けられて見下ろされる。
あのニヤリ顔。ドSのシソド登場。
「100歩譲って南田はいいや、どうでも。その鈴木君とか言ったかなあ、ポケットから名刺が飛び出て何だろうと思ってたけど・・・・まさかあの追加された情報にアクセス済みとか?」
あ、名刺をポケットに・・・・忘れてた!ひえ~・・・。
うまく言葉が出ない。
アレは何だったのか、自分でもよく理解が及ばないというか信じられないというか、だっていまだに本当に誰?みたいな気分で。
「萩原さんは知ってるんですか?あの名刺の鈴木さんのこと。」
「ううん、知らない。琴ほど知らない。」
「私も知りません、よくは。」
「じゃあちょっとは知ってるんだよね?」
なんと、かぶせてくる質問。
せっかくの肌のふれあいタイムというか・・・・愛情タイムなのに。
「困った顔してもダメ。気になるからちゃんと教えてくれる?」
声は優しそう、表情は・・・困り顔?
しょうがない。またあの話が蒸し返されますが、いいんですか?いいんですね?
テレパシーを送る。これは通じなかったようだ。
まだおんなじ表情のままこっちを見ている。
「噂に打ちのめされた私が非常階段でうずくまってたら、偶然通りかかった鈴木さんが心配してコーヒーをおごってくれて少し話をして。次の日はさらに新情報の噂に再び非常階段へ逃げたら、また鈴木さんが通って。顔も上げずに声も出せずにいた私に付き合って少し一緒にいてくれて、心配してくれて。そして今日午後にきちんとお礼を言うために非常階段に来てもらったら・・・・あんな状態でも話しかけるきっかけができてうれしかったと言われ、名刺を渡されて連絡してほしいと言われたような気がします・・・・。」
もっと具体的なセリフだった気もするけどその辺はあいまいに。
そっと萩原さんを見上げると同時に顔が降りてきて耳元で囁かれた。
「で、どうするの?」
体重がどっしりと乗っかって重いです。
「もちろん、そのままにしていいのならそのままにしていいかなと・・・。」
「断らないの?」
相変わらずの態勢で顔は見えない。
「だってなんだかよく分からないし・・・・。」
ふ~。鼻息ですか?ため息ですか?
萩原さんが横にゴロンと転がる。
横に顔を倒して見上げる。
真っすぐに天井を見ている萩原さんが何をどう考えてるのか分からない。
なんで名刺をポケットに入れたままだったんだろう。
・・・・すっかり忘れてたからです。
何でつぶやいたんだろう、ご丁寧に名前まで入れて。
・・・・心が勝手につぶやきました。
自分からボロを出すとはこのことだ。
何とか言ってほしいのに。
ぴったりと手を腰に当ててくっついてみた。
「わかってるよ。琴。わかってるけど、やっぱり原因が自分にあったんだと思うと情けない、自己嫌悪中。」
だから言いたくなかったのに。
萩原さんが私の方へ向き直り腰に手を回してくる。
「本当にごめんね。仕事にならなかったんじゃないの?」
「いえ、何も考えたくなくて、恨みをぶつける様な怖い顔して集中してたようです。周りが気を遣うほどに。」
最後の方は死相が浮かんでたようですが。
「そう。とりあえずは良かった。」
「はい、もう大丈夫ですし。」明るく言う。
「ちょっとハードなダイエットでした、みたいな気分で。」
萩原さんが時計を見る。まだ日付は変わってない。
「琴~、明日仕事なんだよね、サボりたいね。シャワー明日の朝でいい?」
うなずく。このまま寝てもいいかと。
そう思うでしょう、この流れでは・・・・。
くっついて目を閉じる。
「ダメだ~、気になって眠れない。明日その男をチェックするから。いい男?」
「・・・・・普通の人でした。でもとてもいい人です。」
片眉が上がった気がする。
ザワーッと何かの気配がしてまた体が押しつぶされる。
だから今日はまだ月曜日で、明日も二人とも仕事で。
さっきので本当に何もかも尽き果てたと思ったのに。
触られる場所からまた体温が上がるのを感じる。
もちろん体が喜んでるのも隠せない。
体力も落ちてるはずなのにどうしてこんなに応えてしまうのか・・・・・。
途中言わされた。
『大嫌いなんて言ってごめんなさい』と。
『歯に青のりついてても幻滅しません』と。
ドSめ。
しかも寝起きのはずなのに記憶力がいい、言った本人が忘れてるのに。
最後には自分から大好きを連発して、誰にも渡さないとまで叫んでた。
はずかしい。独り言より恥ずかしいかも。
朝、二人でシャワーを浴びてるときに伸びてくる手を払い、さっさと浴室からでる。
「萩原さん、お腹すきました。」
さようなら、ハードなダイエットの日々。
心も体も健康になったらしい。
空っぽな心まで愛をしっかりチャージされたようです。
冷凍室のベーグルを暖めてコーヒーを飲みながらやっぱり思う。
やっぱり大好きな顔。
鈴木さんの顔は思い出せないけど、萩原さんは声までしっかり思い出せる。
「琴、朝からそんなこと言われたら、本当に仕事行きたくなくなるから。」
へ?
「顔を褒めてくれてありがとう。声は何だろう?そんなにいい声?」
また・・・本当に?
「・・・いいです、もう、顔も声もいいんです。大好きなんです。」
「ありがとう、琴も顔も声も体も全部最高だから。」
余計なことを。
「もう。大嫌いです。」
赤い顔をして言ってしまう。
でも、大嫌いって冗談で言えるのがうれしい。
買ってもらったスーツにブラウス。
完全萩原さんコーディネートに身を包み職場へ行く。
今日、忘れないように有休をとらないと。
まずダメだと言われることはない。
また1ケ月前と同じような日々が戻ってきた。
体重も徐々に戻るだろう。
私を見るたび、触るたびに萩原さんが申し訳なく思うことのないように、少しだけ太ることにしよう。
そう言われても殴るわけにはいかない。
萩原さんの目が本当に辛そうに自分を見つめていたから。
隣にいることを許されたならそれでいい。そう思った。
ベッドでいつものようにキスをされてもどこかぎこちない手つきに思えた。
触れる手が優しい。優しすぎる。
他の誰にも渡したくない、私だけを全身で強く激しく愛して欲しい。
そう思ったらつい口にしていた。
『もっと乱暴に壊れるくらい激しく。』
ストレートに伝えた。
見つめられた一瞬の後始まった流れはあっという間の急流で。
十分すぎるほどわかった、今まではまだ、まだまだだったんだと。
何度首を振っても、いやと言っても、お願いと言っても聞き流されて。
望みどおりに、それ以上に乱されて壊された。
最後がどこだったのか意識が飛んで分からないくらいだった。
すべての力がつき果て、ほとんど死体のように横になったかもしれない。
それでも満たされた体の中でゆっくり心臓が動き出し、血液が流れ呼吸をして、意識が浮上した。
胸にのせられた萩原さんの腕すら、さっきまで心臓を押さえてたのではないだろうかと思うほど、ちょっと重いと感じる。
今までにない疲労感。
ちょっとだけ上を見ると寝顔の萩原さん。
久しぶりだなあ。しみじみと懐かしみながら見つめる。
私の大好きな顔。
昨日からは真面目モードで一切意地悪は無し。
少しぎこちない気もするけど、また前みたいになれると思う。
気持ちよさそうに寝てるのを見てると、つい悲しんで悲しんでどうしようもなかったここ数日の恨み言が心に浮かび出てしまいそうになった。
大嫌い、もう本当に大嫌い。
『できる男クールな営業部萩原』の癖に仕事以外の大切な約束をきちんと守れないなんて。
『できる男』の冠は外してやる。
仕事熱心なのはいいけど、男性としては減点にしてやる。
大阪で出会ったお嬢様に一目ぼれして玉の輿にほいほい乗って・・・・。
たこ焼き食べ過ぎて丸い顔にでもなればいい、歯に青のり付けて幻滅されればいい。
こじゃれたスコーンも紅茶もなしで粉物と土手焼きと串揚げと・・・で、ぶくぶく太ってメタボ体形になってしまえ。
だいたいあんな噂が広まっても誰も教えてくれないなんて、誰も興味持ってくれる人がいないんじゃないの?
普通問い合わせの嵐でしょう?クールぶってるから誰も教えてくれないのよ。
だいたい私だって・・・・もっと毎日話が出来てたら聞けたかもしれないのに・・・・。
絶対聞いた・・・、ちょっと探りを入れるくらいしたし。
そうしたらあんな噂から隠れるように非常階段で座りこんで泣いたりしなかった。
みんなが噂するのを違うよって余裕の目で見てられた。
面白がって毎日尾ひれを拾い集めて萩原さんに報告してたと思う。
2度も鈴木さんに恥ずかしいところを見られて・・・・あんな展開になって・・・・。
だから元はと言えば全部萩原さんのせい。南田さんのせいじゃない。
自業自得のくせに私まで巻き込んで。
どれだけ泣いて、泣いて・・・・本当に大嫌いって、冷凍室のスコーンにまで八つ当たりして投げつけてしまって。馬鹿みたいに痩せて化粧のノリも悪くてお化けみたいな顔になって・・・・香にも上司にも心配かけて。
本当に大嫌いって思ってたのに。
全部でたらめだって知っても、そう急に言われても、どんな顔をすればいいのかわからなくて。
南田さんがいなかったらきっとまだ素直に信じられなかったかもしれない。
やっぱり南田さんはすごい。囁き一つで心をゆるっと緩めてくれるなんて。
でも、そんな人に『大切な友達』って言われる萩原さんもすごい。
『できる男』やっぱり戻してあげる。すごいプロジェクトに参加したんだもん、お疲れ様。
私は・・・・。
「『そんな出来る男の萩原さんに愛されてる私もすごい』って続くのかな?、琴。」
「うへぇ」
最初はちゃんと口閉じてた、ちゃんと。いつからかまた声出てたみたいだ。
「なんとなく聞こえて目が覚めて、『玉の輿』あたりからはとっても良く聞こえてたよ。なんで大阪の食べ物ばかりの設定なの?噂はそんな細かい情報もあったのかな?ん?」
「・・・・。」
「いや~、面白かった。いつもとはちょっと方向性が違ってて。で、何で南田が褒められるのかな?違う男の名前も出てきたみたいだし、そこ聞きたいねえ、琴。」
ガバッと起き上がり上からベッドに押し付けられて見下ろされる。
あのニヤリ顔。ドSのシソド登場。
「100歩譲って南田はいいや、どうでも。その鈴木君とか言ったかなあ、ポケットから名刺が飛び出て何だろうと思ってたけど・・・・まさかあの追加された情報にアクセス済みとか?」
あ、名刺をポケットに・・・・忘れてた!ひえ~・・・。
うまく言葉が出ない。
アレは何だったのか、自分でもよく理解が及ばないというか信じられないというか、だっていまだに本当に誰?みたいな気分で。
「萩原さんは知ってるんですか?あの名刺の鈴木さんのこと。」
「ううん、知らない。琴ほど知らない。」
「私も知りません、よくは。」
「じゃあちょっとは知ってるんだよね?」
なんと、かぶせてくる質問。
せっかくの肌のふれあいタイムというか・・・・愛情タイムなのに。
「困った顔してもダメ。気になるからちゃんと教えてくれる?」
声は優しそう、表情は・・・困り顔?
しょうがない。またあの話が蒸し返されますが、いいんですか?いいんですね?
テレパシーを送る。これは通じなかったようだ。
まだおんなじ表情のままこっちを見ている。
「噂に打ちのめされた私が非常階段でうずくまってたら、偶然通りかかった鈴木さんが心配してコーヒーをおごってくれて少し話をして。次の日はさらに新情報の噂に再び非常階段へ逃げたら、また鈴木さんが通って。顔も上げずに声も出せずにいた私に付き合って少し一緒にいてくれて、心配してくれて。そして今日午後にきちんとお礼を言うために非常階段に来てもらったら・・・・あんな状態でも話しかけるきっかけができてうれしかったと言われ、名刺を渡されて連絡してほしいと言われたような気がします・・・・。」
もっと具体的なセリフだった気もするけどその辺はあいまいに。
そっと萩原さんを見上げると同時に顔が降りてきて耳元で囁かれた。
「で、どうするの?」
体重がどっしりと乗っかって重いです。
「もちろん、そのままにしていいのならそのままにしていいかなと・・・。」
「断らないの?」
相変わらずの態勢で顔は見えない。
「だってなんだかよく分からないし・・・・。」
ふ~。鼻息ですか?ため息ですか?
萩原さんが横にゴロンと転がる。
横に顔を倒して見上げる。
真っすぐに天井を見ている萩原さんが何をどう考えてるのか分からない。
なんで名刺をポケットに入れたままだったんだろう。
・・・・すっかり忘れてたからです。
何でつぶやいたんだろう、ご丁寧に名前まで入れて。
・・・・心が勝手につぶやきました。
自分からボロを出すとはこのことだ。
何とか言ってほしいのに。
ぴったりと手を腰に当ててくっついてみた。
「わかってるよ。琴。わかってるけど、やっぱり原因が自分にあったんだと思うと情けない、自己嫌悪中。」
だから言いたくなかったのに。
萩原さんが私の方へ向き直り腰に手を回してくる。
「本当にごめんね。仕事にならなかったんじゃないの?」
「いえ、何も考えたくなくて、恨みをぶつける様な怖い顔して集中してたようです。周りが気を遣うほどに。」
最後の方は死相が浮かんでたようですが。
「そう。とりあえずは良かった。」
「はい、もう大丈夫ですし。」明るく言う。
「ちょっとハードなダイエットでした、みたいな気分で。」
萩原さんが時計を見る。まだ日付は変わってない。
「琴~、明日仕事なんだよね、サボりたいね。シャワー明日の朝でいい?」
うなずく。このまま寝てもいいかと。
そう思うでしょう、この流れでは・・・・。
くっついて目を閉じる。
「ダメだ~、気になって眠れない。明日その男をチェックするから。いい男?」
「・・・・・普通の人でした。でもとてもいい人です。」
片眉が上がった気がする。
ザワーッと何かの気配がしてまた体が押しつぶされる。
だから今日はまだ月曜日で、明日も二人とも仕事で。
さっきので本当に何もかも尽き果てたと思ったのに。
触られる場所からまた体温が上がるのを感じる。
もちろん体が喜んでるのも隠せない。
体力も落ちてるはずなのにどうしてこんなに応えてしまうのか・・・・・。
途中言わされた。
『大嫌いなんて言ってごめんなさい』と。
『歯に青のりついてても幻滅しません』と。
ドSめ。
しかも寝起きのはずなのに記憶力がいい、言った本人が忘れてるのに。
最後には自分から大好きを連発して、誰にも渡さないとまで叫んでた。
はずかしい。独り言より恥ずかしいかも。
朝、二人でシャワーを浴びてるときに伸びてくる手を払い、さっさと浴室からでる。
「萩原さん、お腹すきました。」
さようなら、ハードなダイエットの日々。
心も体も健康になったらしい。
空っぽな心まで愛をしっかりチャージされたようです。
冷凍室のベーグルを暖めてコーヒーを飲みながらやっぱり思う。
やっぱり大好きな顔。
鈴木さんの顔は思い出せないけど、萩原さんは声までしっかり思い出せる。
「琴、朝からそんなこと言われたら、本当に仕事行きたくなくなるから。」
へ?
「顔を褒めてくれてありがとう。声は何だろう?そんなにいい声?」
また・・・本当に?
「・・・いいです、もう、顔も声もいいんです。大好きなんです。」
「ありがとう、琴も顔も声も体も全部最高だから。」
余計なことを。
「もう。大嫌いです。」
赤い顔をして言ってしまう。
でも、大嫌いって冗談で言えるのがうれしい。
買ってもらったスーツにブラウス。
完全萩原さんコーディネートに身を包み職場へ行く。
今日、忘れないように有休をとらないと。
まずダメだと言われることはない。
また1ケ月前と同じような日々が戻ってきた。
体重も徐々に戻るだろう。
私を見るたび、触るたびに萩原さんが申し訳なく思うことのないように、少しだけ太ることにしよう。
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