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6 可愛い男の子と散歩して気分爽快な週末を過ごす。
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ゆったりとのんびりしたい週末。
昨日は若さの香りを吸い込んで新鮮な気分で飲めたと思う。
よく寝た~、そんな目覚め。
でも起きた途端思い出す。
寝てる間も考えてたくらいに、ずっと脳内で転がしてたかもしれない今日の予定。
リョウ君と出かける、らしい。
別れ際にも笑顔で確認された。
可愛い。本当に小さい頃リボンが似合ってたかもしれないと勝手に想像する。
無理に空手なんて習わされずに、そのまま可愛く育ったんだから、きっとお姉さんたちが猫可愛がりしたんだろう。良かった良かった。
一瞬想像した逞しいリョウ君を首を振って脳内から追い出した。
顔を洗いながらも鏡に映る笑顔の女、寧々先輩、なんて同じ会社でもないのに。
そう思って笑顔が出るのだから。
今日は食べ歩きをする。一緒に分け合って食べれたらいい、朝は軽くてもいい。
コーヒーをいれてヨーグルトを食べて。
歩きやすい格好でいいよね、そう思ってもジーンズじゃあ色気もないかも。
あれ、どんな感じだった?
食べ歩きに色気が必要かどうか悩むけど、少しは必要という結論に至った。
礼儀としてね・・・・・でも食べ歩き仲間が欲しかったのかな?
あ、お姉さん希望の子がいるって、そんな事も言ってた?
でもお姉さんは私と吉野さんだけ、二択、場所が開いたのは端の席・・・・。
まあ、本当に礼儀的にちょっとだけでいい。
そんな色気ニーズについて考えながらも、手はジーンズをとることなく、スカートが握られている。
まあまあだろう。
スニーカーと合わせてもまあまあ、夕方になってお酒が飲みたいと言われてもまあまあな感じに仕上げた。
朝から何度自分に頷きかけたか分からない。
服を選んで「よし。」といい、アクセサリーを選んでにっこり笑い、満足そうにうなずく顔を鏡越しに見て、最終的にくるりと回って・・・・。
久しぶりなんだなあ、男の人と遊ぶのも。
珍しい年下相手に新鮮な気分になれてる。
「お待たせしましたか?」
駅の改札を出たところで声をかけられた。
今出て来たばかりの私に声をかけてきたのはリョウ君で。
明らかに先に着いてたよね?
「今出て来たよ。リョウ君、一緒に出てきた?」
「そこのコーヒー屋さんにいました。すぐに分かったので急いで出てきました。」
「じゃあ、先に来てたんじゃない。」
やっぱりつられて思わず笑顔になる。
並んで歩きながら思う。
弟感があるけど並ぶとまあまあの身長だった。
がっしりとはならなくても身長は普通よりもちょっと高めくらいだと思う。
ヒールを履かなければいいバランスだ。
たくさん歩く食べ歩き仲間にはいいバランスだ。
「食べることが好きなの?昨日は普通だったと思うけど。」
「好きですけど、普通です。知らない所を歩いたり、新しい発見があったりするのが楽しくないですか?」
「なるほど。」
「一人だとあんまり張り切って食べる場所には入れないので、ちょっと軽く食べるくらいです。今日は二人だし、寧々先輩がお腹空いてたらどんなお店でもご一緒します。寧々先輩も昨日普通でしたよね。普通に食べて、お酒はガンガンでした。」
「同じペースでお代わりしてたでしょう?リョウ君もガンガンってことになるよ。」
「はい、すごく楽しくて、僕もガンガンでした。」
目の前の商店街を入り、あんまりよそ見しないで歩いてきた。
つい話しながらで相手を見ていた。
「朝ごはんは?」
「食べてないです。寧々先輩は?」
「私もヨーグルトだけ。どうする?おすすめのお店ある?」
「寧々先輩の好きなものを知りたいです。」
二度目なんだよね。ここは前に来てるんだよね。だからいいんだよね。
でも・・・・。
「私はリョウ君の好みを知りたいけど。」
「・・・・じゃあ、二つから選んでください。僕が前に来て入りたいって思ったところです。」
「うん、いいよ。」
そうだったら気が楽。
そう言って前を向いて歩いてたら腕を引かれて、止められた。
「こっちにあるんです。」
そう言われてしばらく腕を掴まれたまま。
グイグイと引っ張る感じはないのに、そのままだったけど。
気になって見てたら、気がついてくれたらしくて手は外された。
更に少し緩んだスピード。
「ここと・・・・。」
そう言って指をさす。
天ぷら屋さんみたい。
野菜メインでコースになってるみたい。
滅多に食べないメニューだ。
どう?
「あれ・・・・・・。」
キョロキョロしながら歩くリョウ君。
一人走り出して、立ち止まって、やっぱりキョロキョロして。
通りかかった人に聞いて、驚いてがっかりしてる。
本当に気の毒なくらい、教えてくれた人も心配するくらいがっかりしていた。
私が追いついてやっと顔をあげてくれた。
「寧々先輩・・・・・1つはなくなりました。閉店してしまったらしいです。ガッカリでした。すごく・・・・・残念でした。」
「そうなんだ。なんだか本当にガッカリしてる。ねえ、天ぷらでもいいよね。食べれなかったのは残念だったけど、さっきの天ぷら屋さんに呼ばれたってことにしない?」
「はい。結局僕が決めたみたいになりました。」
「いいよ、リョウ君の好みに興味があるって言ったじゃない。めったに食べないからこんな機会に食べてみたい。」
「はい。美味しいらしいです。」
そう言って引き返した。
少し大人しくなってしまった。
何屋さんだったんだろう?
肩がしょぼんと落ちている。
「元気出して。」
背中を叩いて慰めるように、元気づけるように。
「はい。そうですよね。」
顔は上がった。
天ぷら屋さんは人気らしい。
お値段もランチにしては高めなのに、三組がお店の中で待っていた。
その横に二人で座った。
メニュ―表を渡された。ランチコースは一つしかないらしい。
てんぷらの内容が書いてあったけど、季節により変わる野菜と魚。
『詳しくは店内をご覧ください。』
そう書いてあったのでカウンターの上の貼り紙を見た。
「苦手なものはありますか?」
「ないよ。」
「良かったです。」
リョウ君もないんだろう。
一組が帰り一組分ズレる。
「昨日の幹事のハヤト君とは仲がいいの?」
「はい。ハヤトはまあまあ皆と仲がいいです。僕よりずっと、先輩も同期にも簡単に声をかけるタイプです。」
「そうかもね。だって彼女の杉野ちゃんもそんなタイプよ。もう全然私にも遠慮がないから。」
「でもすごく褒めてました。すごく美人でしっかりした先輩だって先に聞いてたんです。」
「先にって・・・・いつ?」
そう言ったら『あっ』って顔をして俯いた。
「ハヤト君の席が空いた時?もう一人私より一つ上の先輩もいたのよ。知ってた?」
「はい。それは、もちろんです。」
もちろんな事なの?
自己紹介の時に年齢は言わなかったけど、さすがに見ればわかるってこと?
「男の子達は皆同期でしょう?」
「そうですが、一人一つ年上もいました。」
「そうなんだ。分からなかった・・・というか他の子とは話ししてないし、よく知らないままだった。」
「誰かと話したかったですか?」
「まさか。だって全然思い出せないくらいだから。」
杉野ちゃんもいなくなって本当にリョウ君としか話してない。
「そう言うリョウ君は?ずっと私と話をしてたじゃない。」
「もちろんです。だって・・・。」
「お客様、お待たせいたしました。どうぞ、お席へご案内いたします。」
やっと順番が回ってきたらしい。
席に案内される間話は途切れて、そのままランチコースとお酒を頼んだ。
「リョウ君、日本酒も好き?」
「はい、大好きです。」
「私は久しぶり。最近オヤジのようにビールの小さいのを飲んでから寝てたの。昨日といい、今日といい、美味しいお酒が飲めてうれしい。」
「僕も最高にうれしいです。」
「リョウ君、どこの出身なの?」
「金沢です。」
「ああ、じゃあ、強いのも当たり前?」
「はい。日本酒も美味しいのはたくさんあります。」
「いいなあ。一度も行ったことがないの。冬は凄い?真っ白い雪景色になるんだよね。」
「そうです。住んでる時はそんなものだと思ってたけど、最近東京の冬に慣れて忘れてます。寧々先輩は東京だから変わりないですね。」
「うん、会社にも通えるくらいだしね。」
「いつから一人暮らしですか?」
「大学の途中からだよ。」
そう言ったらじっと顔を見られた。
実家が遠い子には理解しづらいだろうか?
わざわざ家賃をかけて一人暮らしなんてしなくてもいいのにって。
それでも自由と何か。一人っ子なのにさっさと家を出てしまった。
お母さんは逆に働き始めて、ちょっとの愚痴はあるけど、ダラダラがなくなったらしい。
まあ、良かったと思おう。
天ぷらは三度に分けて揚げたてを持って来てくれた。
その都度説明があり、それに合うお塩や天つゆを勧められた。
「美味しいね。」
「はい。」
本当にうれしそうだ。
付き合えた私もうれしい。
「いつもは一人なの?」
天ぷらのかぼちゃを口に挟んだままこっちを見たリョウ君。
「大学でサークルとか作れば女子もたくさん集まりそうじゃない?歩こう系のサークルもありそうだし。商店街ツアーのサークルとか。なかったの?」
「そんなことは考えなくて、ただ仲のいい奴がたまに付き合ってくれました。一人でふらりと行くのも楽しいです。あんまり一人じゃ出かけないですか?」
「そんなことないよ。集まるのも好きだけど、一人も楽しいよね。楽だし。」
「寧々先輩、どんなところに行ってましたか?」
「場所?・・・・別に大きな駅の近くのレストランかな。だいたい女子は喋るのと同時に食べるからね。」
「そうじゃなくて、デートとか・・・・。」
「それも同じかな。・・・・あとはイベントとか普通の人が行くスポットだよ。」
デートスポット、室内娯楽施設か夜景か飾り付けイベント。
そんなのはどんな二人組も考えるから大勢の中の二人、それでも横にいてくれたのは特別な人だったとは思うけど。
ちょっと・・・・遠い思い出になりつつあるんですけど・・・・・。
正面から見られてた。
恥ずかしい、ちょっと遠い目をしてなかったよね?
「リョウ君は?大勢と一緒にってタイプ?二人だけってタイプ?」
そう聞いたらすごく赤くなった。
私には普通に聞いてきたのに。
「・・・・特別はそんなにないです。」
「私もそんなにないよ。杉野ちゃんは楽しんでるみたいだけどね。」
「・・・。」
聞いてないのかな?ハヤト君は喋らない方?女子ほどじゃない?
もう杉野ちゃんは普通に教えてくれる。
聞かなくても楽しかったところを同じようにすすめて来る。
一人じゃ行かないところがほとんどなのに。
最後の天ぷら、魚介類もはいり一層豪華な感じになる。
「お腹いっぱいになるね。」
「そうですね。」
「行けなかったところ残念だったね。」
「そうですね。時々そんな事はあるんです。一度行ったらしばらくは行かないので、そうしたら新しいお店もあるし、なくなることもたまにはあります。」
「この辺はどのくらいぶりだったの?」
「一年は経ってないです。」
「そうか。」
「一年でも変わることはたくさんあるからね。」
「寧々先輩も何か変わりました?」
「何?私?」
何かを思い出してたのに、急いで消した気もする。
「お店のことでしょう?私は変りません。さすがにリョウ君の年の頃に比べたら少し図々しい感じの大人にはなったかもしれないけど。」
「寧々先輩は異動をしてきたって聞きました。いろいろ変ったんじゃないですか?」
確かにそれは変った。
仕事には慣れたのに気に入らない先輩が常の目の上にいるような感じだ。
「まあね。それはね。」
仕事の愚痴を言っても仕方ないし、普通の愚痴とはちょっと違う。
「ね、この後はどうするの?」
「少し歩きませんか?個性的なお店もあります。」
「じゃあ、お付き合いします。」
付き合ってもらったから払うと言い張ったリョウ君にお会計を任せた。
天ぷらのコースって、なかなかいいお値段だったけど。
その後はぶらぶらと細めの道を迷うように歩き、時々立ち止まり場所を確認して、大きな通りに出て、また違う道に入って。
一通り巡ったかなって二人が顔を見合わせた頃には随分疲労感が出ていた。
そのまま駅に向かい、そこで別れた。
「寧々先輩、また、連絡してもいいですか?」
「そうだね。今日はありがとう。バイバイ。」
手を振って別れた。
自分の手にはいろんなお菓子やせんべいなど、主に食べ物が。
同じように買ってリョウ君にも持たせた。
部屋に戻ってホッと一息。
「疲れた~。」
声に出た。
さすがに少しは気を遣う。
誘ってもらったから楽しくしたいし、話が途切れないように。
同じことをリョウ君も思ってるだろう。
一人の方が楽かもなぁって思ってなければいいけど。
次の日はのんびりした。
食料もあるし、どこにも出なくても良かったけど、さすがに気分転換は必要だった。
駅までゆっくりと歩いて予備のトイレットペーパーやお米を買う。
小さなバッグに財布と携帯を入れてあるだけだった。
かさばるものと重たいものは予定のない時に買うのがいい。
両手に交互に持ちながら部屋に帰る。
途中携帯が震えるのが分かったけど、見れない。
部屋に戻り見るとリョウ君からお礼が来ていた。
『寧々先輩、昨日はありがとうございました。楽しかったです。買ってもらったものをゆっくり味わってます。』
『本当にまた連絡します。』
『じゃあ、今日もいい日だといいですね。』
笑顔でそう言う声が聞こえそうだった。
『昨日はありがとう。私も少しづつ食べてます。』
『久しぶりにたくさん歩いた気がする。お陰で良く眠れました。』
『今日はゆっくりします。またね。』
そしていつもよりは週末が早かった。
昨日は若さの香りを吸い込んで新鮮な気分で飲めたと思う。
よく寝た~、そんな目覚め。
でも起きた途端思い出す。
寝てる間も考えてたくらいに、ずっと脳内で転がしてたかもしれない今日の予定。
リョウ君と出かける、らしい。
別れ際にも笑顔で確認された。
可愛い。本当に小さい頃リボンが似合ってたかもしれないと勝手に想像する。
無理に空手なんて習わされずに、そのまま可愛く育ったんだから、きっとお姉さんたちが猫可愛がりしたんだろう。良かった良かった。
一瞬想像した逞しいリョウ君を首を振って脳内から追い出した。
顔を洗いながらも鏡に映る笑顔の女、寧々先輩、なんて同じ会社でもないのに。
そう思って笑顔が出るのだから。
今日は食べ歩きをする。一緒に分け合って食べれたらいい、朝は軽くてもいい。
コーヒーをいれてヨーグルトを食べて。
歩きやすい格好でいいよね、そう思ってもジーンズじゃあ色気もないかも。
あれ、どんな感じだった?
食べ歩きに色気が必要かどうか悩むけど、少しは必要という結論に至った。
礼儀としてね・・・・・でも食べ歩き仲間が欲しかったのかな?
あ、お姉さん希望の子がいるって、そんな事も言ってた?
でもお姉さんは私と吉野さんだけ、二択、場所が開いたのは端の席・・・・。
まあ、本当に礼儀的にちょっとだけでいい。
そんな色気ニーズについて考えながらも、手はジーンズをとることなく、スカートが握られている。
まあまあだろう。
スニーカーと合わせてもまあまあ、夕方になってお酒が飲みたいと言われてもまあまあな感じに仕上げた。
朝から何度自分に頷きかけたか分からない。
服を選んで「よし。」といい、アクセサリーを選んでにっこり笑い、満足そうにうなずく顔を鏡越しに見て、最終的にくるりと回って・・・・。
久しぶりなんだなあ、男の人と遊ぶのも。
珍しい年下相手に新鮮な気分になれてる。
「お待たせしましたか?」
駅の改札を出たところで声をかけられた。
今出て来たばかりの私に声をかけてきたのはリョウ君で。
明らかに先に着いてたよね?
「今出て来たよ。リョウ君、一緒に出てきた?」
「そこのコーヒー屋さんにいました。すぐに分かったので急いで出てきました。」
「じゃあ、先に来てたんじゃない。」
やっぱりつられて思わず笑顔になる。
並んで歩きながら思う。
弟感があるけど並ぶとまあまあの身長だった。
がっしりとはならなくても身長は普通よりもちょっと高めくらいだと思う。
ヒールを履かなければいいバランスだ。
たくさん歩く食べ歩き仲間にはいいバランスだ。
「食べることが好きなの?昨日は普通だったと思うけど。」
「好きですけど、普通です。知らない所を歩いたり、新しい発見があったりするのが楽しくないですか?」
「なるほど。」
「一人だとあんまり張り切って食べる場所には入れないので、ちょっと軽く食べるくらいです。今日は二人だし、寧々先輩がお腹空いてたらどんなお店でもご一緒します。寧々先輩も昨日普通でしたよね。普通に食べて、お酒はガンガンでした。」
「同じペースでお代わりしてたでしょう?リョウ君もガンガンってことになるよ。」
「はい、すごく楽しくて、僕もガンガンでした。」
目の前の商店街を入り、あんまりよそ見しないで歩いてきた。
つい話しながらで相手を見ていた。
「朝ごはんは?」
「食べてないです。寧々先輩は?」
「私もヨーグルトだけ。どうする?おすすめのお店ある?」
「寧々先輩の好きなものを知りたいです。」
二度目なんだよね。ここは前に来てるんだよね。だからいいんだよね。
でも・・・・。
「私はリョウ君の好みを知りたいけど。」
「・・・・じゃあ、二つから選んでください。僕が前に来て入りたいって思ったところです。」
「うん、いいよ。」
そうだったら気が楽。
そう言って前を向いて歩いてたら腕を引かれて、止められた。
「こっちにあるんです。」
そう言われてしばらく腕を掴まれたまま。
グイグイと引っ張る感じはないのに、そのままだったけど。
気になって見てたら、気がついてくれたらしくて手は外された。
更に少し緩んだスピード。
「ここと・・・・。」
そう言って指をさす。
天ぷら屋さんみたい。
野菜メインでコースになってるみたい。
滅多に食べないメニューだ。
どう?
「あれ・・・・・・。」
キョロキョロしながら歩くリョウ君。
一人走り出して、立ち止まって、やっぱりキョロキョロして。
通りかかった人に聞いて、驚いてがっかりしてる。
本当に気の毒なくらい、教えてくれた人も心配するくらいがっかりしていた。
私が追いついてやっと顔をあげてくれた。
「寧々先輩・・・・・1つはなくなりました。閉店してしまったらしいです。ガッカリでした。すごく・・・・・残念でした。」
「そうなんだ。なんだか本当にガッカリしてる。ねえ、天ぷらでもいいよね。食べれなかったのは残念だったけど、さっきの天ぷら屋さんに呼ばれたってことにしない?」
「はい。結局僕が決めたみたいになりました。」
「いいよ、リョウ君の好みに興味があるって言ったじゃない。めったに食べないからこんな機会に食べてみたい。」
「はい。美味しいらしいです。」
そう言って引き返した。
少し大人しくなってしまった。
何屋さんだったんだろう?
肩がしょぼんと落ちている。
「元気出して。」
背中を叩いて慰めるように、元気づけるように。
「はい。そうですよね。」
顔は上がった。
天ぷら屋さんは人気らしい。
お値段もランチにしては高めなのに、三組がお店の中で待っていた。
その横に二人で座った。
メニュ―表を渡された。ランチコースは一つしかないらしい。
てんぷらの内容が書いてあったけど、季節により変わる野菜と魚。
『詳しくは店内をご覧ください。』
そう書いてあったのでカウンターの上の貼り紙を見た。
「苦手なものはありますか?」
「ないよ。」
「良かったです。」
リョウ君もないんだろう。
一組が帰り一組分ズレる。
「昨日の幹事のハヤト君とは仲がいいの?」
「はい。ハヤトはまあまあ皆と仲がいいです。僕よりずっと、先輩も同期にも簡単に声をかけるタイプです。」
「そうかもね。だって彼女の杉野ちゃんもそんなタイプよ。もう全然私にも遠慮がないから。」
「でもすごく褒めてました。すごく美人でしっかりした先輩だって先に聞いてたんです。」
「先にって・・・・いつ?」
そう言ったら『あっ』って顔をして俯いた。
「ハヤト君の席が空いた時?もう一人私より一つ上の先輩もいたのよ。知ってた?」
「はい。それは、もちろんです。」
もちろんな事なの?
自己紹介の時に年齢は言わなかったけど、さすがに見ればわかるってこと?
「男の子達は皆同期でしょう?」
「そうですが、一人一つ年上もいました。」
「そうなんだ。分からなかった・・・というか他の子とは話ししてないし、よく知らないままだった。」
「誰かと話したかったですか?」
「まさか。だって全然思い出せないくらいだから。」
杉野ちゃんもいなくなって本当にリョウ君としか話してない。
「そう言うリョウ君は?ずっと私と話をしてたじゃない。」
「もちろんです。だって・・・。」
「お客様、お待たせいたしました。どうぞ、お席へご案内いたします。」
やっと順番が回ってきたらしい。
席に案内される間話は途切れて、そのままランチコースとお酒を頼んだ。
「リョウ君、日本酒も好き?」
「はい、大好きです。」
「私は久しぶり。最近オヤジのようにビールの小さいのを飲んでから寝てたの。昨日といい、今日といい、美味しいお酒が飲めてうれしい。」
「僕も最高にうれしいです。」
「リョウ君、どこの出身なの?」
「金沢です。」
「ああ、じゃあ、強いのも当たり前?」
「はい。日本酒も美味しいのはたくさんあります。」
「いいなあ。一度も行ったことがないの。冬は凄い?真っ白い雪景色になるんだよね。」
「そうです。住んでる時はそんなものだと思ってたけど、最近東京の冬に慣れて忘れてます。寧々先輩は東京だから変わりないですね。」
「うん、会社にも通えるくらいだしね。」
「いつから一人暮らしですか?」
「大学の途中からだよ。」
そう言ったらじっと顔を見られた。
実家が遠い子には理解しづらいだろうか?
わざわざ家賃をかけて一人暮らしなんてしなくてもいいのにって。
それでも自由と何か。一人っ子なのにさっさと家を出てしまった。
お母さんは逆に働き始めて、ちょっとの愚痴はあるけど、ダラダラがなくなったらしい。
まあ、良かったと思おう。
天ぷらは三度に分けて揚げたてを持って来てくれた。
その都度説明があり、それに合うお塩や天つゆを勧められた。
「美味しいね。」
「はい。」
本当にうれしそうだ。
付き合えた私もうれしい。
「いつもは一人なの?」
天ぷらのかぼちゃを口に挟んだままこっちを見たリョウ君。
「大学でサークルとか作れば女子もたくさん集まりそうじゃない?歩こう系のサークルもありそうだし。商店街ツアーのサークルとか。なかったの?」
「そんなことは考えなくて、ただ仲のいい奴がたまに付き合ってくれました。一人でふらりと行くのも楽しいです。あんまり一人じゃ出かけないですか?」
「そんなことないよ。集まるのも好きだけど、一人も楽しいよね。楽だし。」
「寧々先輩、どんなところに行ってましたか?」
「場所?・・・・別に大きな駅の近くのレストランかな。だいたい女子は喋るのと同時に食べるからね。」
「そうじゃなくて、デートとか・・・・。」
「それも同じかな。・・・・あとはイベントとか普通の人が行くスポットだよ。」
デートスポット、室内娯楽施設か夜景か飾り付けイベント。
そんなのはどんな二人組も考えるから大勢の中の二人、それでも横にいてくれたのは特別な人だったとは思うけど。
ちょっと・・・・遠い思い出になりつつあるんですけど・・・・・。
正面から見られてた。
恥ずかしい、ちょっと遠い目をしてなかったよね?
「リョウ君は?大勢と一緒にってタイプ?二人だけってタイプ?」
そう聞いたらすごく赤くなった。
私には普通に聞いてきたのに。
「・・・・特別はそんなにないです。」
「私もそんなにないよ。杉野ちゃんは楽しんでるみたいだけどね。」
「・・・。」
聞いてないのかな?ハヤト君は喋らない方?女子ほどじゃない?
もう杉野ちゃんは普通に教えてくれる。
聞かなくても楽しかったところを同じようにすすめて来る。
一人じゃ行かないところがほとんどなのに。
最後の天ぷら、魚介類もはいり一層豪華な感じになる。
「お腹いっぱいになるね。」
「そうですね。」
「行けなかったところ残念だったね。」
「そうですね。時々そんな事はあるんです。一度行ったらしばらくは行かないので、そうしたら新しいお店もあるし、なくなることもたまにはあります。」
「この辺はどのくらいぶりだったの?」
「一年は経ってないです。」
「そうか。」
「一年でも変わることはたくさんあるからね。」
「寧々先輩も何か変わりました?」
「何?私?」
何かを思い出してたのに、急いで消した気もする。
「お店のことでしょう?私は変りません。さすがにリョウ君の年の頃に比べたら少し図々しい感じの大人にはなったかもしれないけど。」
「寧々先輩は異動をしてきたって聞きました。いろいろ変ったんじゃないですか?」
確かにそれは変った。
仕事には慣れたのに気に入らない先輩が常の目の上にいるような感じだ。
「まあね。それはね。」
仕事の愚痴を言っても仕方ないし、普通の愚痴とはちょっと違う。
「ね、この後はどうするの?」
「少し歩きませんか?個性的なお店もあります。」
「じゃあ、お付き合いします。」
付き合ってもらったから払うと言い張ったリョウ君にお会計を任せた。
天ぷらのコースって、なかなかいいお値段だったけど。
その後はぶらぶらと細めの道を迷うように歩き、時々立ち止まり場所を確認して、大きな通りに出て、また違う道に入って。
一通り巡ったかなって二人が顔を見合わせた頃には随分疲労感が出ていた。
そのまま駅に向かい、そこで別れた。
「寧々先輩、また、連絡してもいいですか?」
「そうだね。今日はありがとう。バイバイ。」
手を振って別れた。
自分の手にはいろんなお菓子やせんべいなど、主に食べ物が。
同じように買ってリョウ君にも持たせた。
部屋に戻ってホッと一息。
「疲れた~。」
声に出た。
さすがに少しは気を遣う。
誘ってもらったから楽しくしたいし、話が途切れないように。
同じことをリョウ君も思ってるだろう。
一人の方が楽かもなぁって思ってなければいいけど。
次の日はのんびりした。
食料もあるし、どこにも出なくても良かったけど、さすがに気分転換は必要だった。
駅までゆっくりと歩いて予備のトイレットペーパーやお米を買う。
小さなバッグに財布と携帯を入れてあるだけだった。
かさばるものと重たいものは予定のない時に買うのがいい。
両手に交互に持ちながら部屋に帰る。
途中携帯が震えるのが分かったけど、見れない。
部屋に戻り見るとリョウ君からお礼が来ていた。
『寧々先輩、昨日はありがとうございました。楽しかったです。買ってもらったものをゆっくり味わってます。』
『本当にまた連絡します。』
『じゃあ、今日もいい日だといいですね。』
笑顔でそう言う声が聞こえそうだった。
『昨日はありがとう。私も少しづつ食べてます。』
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