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7 宿題に真面目に取り組む妹はうれしくも悩む。
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ドタドタと階段を駆け上がる足音がする。
「文土、うるさいわよ。」
お母さんの声も聞こえた。
バタンッ。
私の部屋のドアが勢いよく開いた。
文句は言いたい、静かに開けて、必ずノックもして!!
だけど、その顔を見たら言えない。
どうやら何らかの進歩があったらしい。
それならそれで気を遣わななくていいからいい。
でも言いたい、今ならいいだろう。
「お兄ちゃん、ちゃんとノックしてね。礼儀よ。」
「ああ、悪い。椎名、お前は塾に通ってて成績が上がったからご褒美を買ってもらえることになった。」
何?塾?行ってませんが?
「勝手に原市がそんなストーリーを作った。明日は彼女が買い物に付き合ってくれることになった。何が欲しい、買ってやる。」
そんなうれしい提案、ノックを二回もしないで入ってきたことは帳消しにしてあげる!
「本当?何がいいかな?何でそんな急なの?もっと悩みたい。」
「ダメだ、この後何をどこで買うから、どこで待ち合わせるか詳しく連絡することになってる。」
「ええ、ええ、ええっ~っと、じゃあ、アクセサリー。普段使い出来る、細いタイプの・・・・・ブレスレット。サイズはないし。有名じゃなくてもいいよ、きらきらしてなくていいよ。」
「どのくらいするんだろう?」
「一万円前後でいいよ。」
「・・・・・」
「もっと安くてもいいけど、彼女にせこいとか思われるから、あんまり安いとね。」
「細めのブレスレットだな。」
「うん、色はシルバーね。」
「どこのお店で買えばいい?どこで買える?」
「駅中のお店ならどこでもあるよ。ついでに彼女の分も見たりすれば?」
「・・・・・。」
「私のは彼女のよりは安くていいし、私のより彼女のは高いのを買うんだよ。」
「いきなり変だろう?プレゼントって何のプレゼントだよ。」
「告白して、記念にって。」
「それ上手くいかなかったらお前が二個もらうつもりなのか?」
「そんなに自信ないの?」
「ない。」
即答だった。
「じゃあ、別にいいよ。でもいけると思ったらいかないと、そんなに私も成績上がらないよ。誕生日は終わったばっかりだし。」
「分かってる。」
「ご飯一緒に食べるの?」
「ああ、そう言った。お礼にご馳走するからって。」
「言ってもらったんでしょう?」
「・・・・・・。」
そうらしい。すべて周りのサポートがあって初デートらしき二人きりが実現。
ああ、明日の顔色も窺わないといけないんだ。
明日も気を遣うんだ。
他人が進めてくれた大きな一歩。あとは自力でどうぞ。
だって、すっかりしょんぼりして渡されても、ちょっと喜べない。
「写真ないの?今日撮らなかった?」
「撮らないよ。」
「なんて人?名前は?」
「阿里さん。」
漢字も説明してもらった。
「可愛い名前だね。」
「彼女が椎名も可愛いし、名前も似合ってるって言ってた。」
「写真見せたの?なんで?」
「原市が勝手に携帯の太郎の写真を見せた。勝手にめくられて見られた。」
「何?太郎も役に立った?」
「ああ、可愛いって褒めてくれた。」
「じゃあ、太郎にもお礼しなきゃね。」
「なあ、どこがいいかな?待ち合わせとご飯。」
「買い物がメインのはずですが?」
「それは適当でいいだろう?どうせ嘘のご褒美なんだし。」
「あ~あ、やる気が出ないなあ、眠いなあ、寝ようかなあ、疲れたなあ~。」
「・・・・分かってるよ。ちゃんと心を込めて買うから。あとで検索していくつか教えてくれれば彼女に相談するから。面倒くさい演技をするなよ。」
「相談にのってあげてるのに。」
「椎名さん、お願いします。」
可哀想に、本当に困ってるみたいだ。
「ねえ、別に初恋じゃないんだし、今までだっていろいろ経験あるでしょう?私に聞かなくてもよくない?」
まさか、ここで無言になられたら困るんだが。
「それでもせっかく二人が協力してくれたんだから、うまくいかないと恥ずかしいだろう?」
「はっきり彼女になって欲しいって言わないと伝わらないよ。そんな外面気にしてますみたいな言い訳、絶対聞きたくないと思うよ。」
「当たり前だよ、言わないよ。」
「言わなくても、自分がお願いして協力してもらったくらいのやる気を見せてよ。」
「お前に見せてどうする。」
それもそうか。
「適当に入るか、予約をするかで、服装も考えるよ。最初だし楽なところがいいんじゃない?緊張しないように、お皿からお肉が飛び出して恥ずかしい思いをしたら台無しだよ。シェアしながら食べるとか、少し味見してみる?って言えるくらいのところが良くない?買い物が終わってその時に食べたいところに入ろうって言えば?」
「大きな駅ならどこでも売ってるから。彼女はどこに住んでるの?」
「知らない。」
「それ聞いてから、自分も教えて、会話しながら考えればいいよ。文字より電話が手っ取り早いと思うよ。電話していいか聞いてから、電話すれば?」
「後は二人でどうぞ。音楽かけるから聞こえません。聞きません。今から私は買ってもらうものを選びますので忙しいです。」
とびきりの優しい甘い声で会話をしてください、どうぞどうぞ。
「ありがとう。そうしてみる。あとでお店の名前とかいろいろ教えてくれ。」
「はいは~い。ちゃんとノックはすること!!」
「分かったよ。」
取りあえず今までも彼女はいたらしい。
慌てたり、恥ずかしそうにもしなかった、いたんだろう、良かった。
やっぱり大人は大変。
それに付き合う妹も大変だよ・・・・・。
さっそくブレスレット~、プレゼント~、もう余計な宿題増やしてぇ~。
やったね。阿里さん、感謝!!
「文土、うるさいわよ。」
お母さんの声も聞こえた。
バタンッ。
私の部屋のドアが勢いよく開いた。
文句は言いたい、静かに開けて、必ずノックもして!!
だけど、その顔を見たら言えない。
どうやら何らかの進歩があったらしい。
それならそれで気を遣わななくていいからいい。
でも言いたい、今ならいいだろう。
「お兄ちゃん、ちゃんとノックしてね。礼儀よ。」
「ああ、悪い。椎名、お前は塾に通ってて成績が上がったからご褒美を買ってもらえることになった。」
何?塾?行ってませんが?
「勝手に原市がそんなストーリーを作った。明日は彼女が買い物に付き合ってくれることになった。何が欲しい、買ってやる。」
そんなうれしい提案、ノックを二回もしないで入ってきたことは帳消しにしてあげる!
「本当?何がいいかな?何でそんな急なの?もっと悩みたい。」
「ダメだ、この後何をどこで買うから、どこで待ち合わせるか詳しく連絡することになってる。」
「ええ、ええ、ええっ~っと、じゃあ、アクセサリー。普段使い出来る、細いタイプの・・・・・ブレスレット。サイズはないし。有名じゃなくてもいいよ、きらきらしてなくていいよ。」
「どのくらいするんだろう?」
「一万円前後でいいよ。」
「・・・・・」
「もっと安くてもいいけど、彼女にせこいとか思われるから、あんまり安いとね。」
「細めのブレスレットだな。」
「うん、色はシルバーね。」
「どこのお店で買えばいい?どこで買える?」
「駅中のお店ならどこでもあるよ。ついでに彼女の分も見たりすれば?」
「・・・・・。」
「私のは彼女のよりは安くていいし、私のより彼女のは高いのを買うんだよ。」
「いきなり変だろう?プレゼントって何のプレゼントだよ。」
「告白して、記念にって。」
「それ上手くいかなかったらお前が二個もらうつもりなのか?」
「そんなに自信ないの?」
「ない。」
即答だった。
「じゃあ、別にいいよ。でもいけると思ったらいかないと、そんなに私も成績上がらないよ。誕生日は終わったばっかりだし。」
「分かってる。」
「ご飯一緒に食べるの?」
「ああ、そう言った。お礼にご馳走するからって。」
「言ってもらったんでしょう?」
「・・・・・・。」
そうらしい。すべて周りのサポートがあって初デートらしき二人きりが実現。
ああ、明日の顔色も窺わないといけないんだ。
明日も気を遣うんだ。
他人が進めてくれた大きな一歩。あとは自力でどうぞ。
だって、すっかりしょんぼりして渡されても、ちょっと喜べない。
「写真ないの?今日撮らなかった?」
「撮らないよ。」
「なんて人?名前は?」
「阿里さん。」
漢字も説明してもらった。
「可愛い名前だね。」
「彼女が椎名も可愛いし、名前も似合ってるって言ってた。」
「写真見せたの?なんで?」
「原市が勝手に携帯の太郎の写真を見せた。勝手にめくられて見られた。」
「何?太郎も役に立った?」
「ああ、可愛いって褒めてくれた。」
「じゃあ、太郎にもお礼しなきゃね。」
「なあ、どこがいいかな?待ち合わせとご飯。」
「買い物がメインのはずですが?」
「それは適当でいいだろう?どうせ嘘のご褒美なんだし。」
「あ~あ、やる気が出ないなあ、眠いなあ、寝ようかなあ、疲れたなあ~。」
「・・・・分かってるよ。ちゃんと心を込めて買うから。あとで検索していくつか教えてくれれば彼女に相談するから。面倒くさい演技をするなよ。」
「相談にのってあげてるのに。」
「椎名さん、お願いします。」
可哀想に、本当に困ってるみたいだ。
「ねえ、別に初恋じゃないんだし、今までだっていろいろ経験あるでしょう?私に聞かなくてもよくない?」
まさか、ここで無言になられたら困るんだが。
「それでもせっかく二人が協力してくれたんだから、うまくいかないと恥ずかしいだろう?」
「はっきり彼女になって欲しいって言わないと伝わらないよ。そんな外面気にしてますみたいな言い訳、絶対聞きたくないと思うよ。」
「当たり前だよ、言わないよ。」
「言わなくても、自分がお願いして協力してもらったくらいのやる気を見せてよ。」
「お前に見せてどうする。」
それもそうか。
「適当に入るか、予約をするかで、服装も考えるよ。最初だし楽なところがいいんじゃない?緊張しないように、お皿からお肉が飛び出して恥ずかしい思いをしたら台無しだよ。シェアしながら食べるとか、少し味見してみる?って言えるくらいのところが良くない?買い物が終わってその時に食べたいところに入ろうって言えば?」
「大きな駅ならどこでも売ってるから。彼女はどこに住んでるの?」
「知らない。」
「それ聞いてから、自分も教えて、会話しながら考えればいいよ。文字より電話が手っ取り早いと思うよ。電話していいか聞いてから、電話すれば?」
「後は二人でどうぞ。音楽かけるから聞こえません。聞きません。今から私は買ってもらうものを選びますので忙しいです。」
とびきりの優しい甘い声で会話をしてください、どうぞどうぞ。
「ありがとう。そうしてみる。あとでお店の名前とかいろいろ教えてくれ。」
「はいは~い。ちゃんとノックはすること!!」
「分かったよ。」
取りあえず今までも彼女はいたらしい。
慌てたり、恥ずかしそうにもしなかった、いたんだろう、良かった。
やっぱり大人は大変。
それに付き合う妹も大変だよ・・・・・。
さっそくブレスレット~、プレゼント~、もう余計な宿題増やしてぇ~。
やったね。阿里さん、感謝!!
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