苦手なものを克服する一番いい方法は?

羽月☆

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10 なんだかがっかりした私が知ったいろんな絡繰り。

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あんなにワクワクして出かけたのに、帰って来た時はガッカリだった。

ワンピースを脱いで、部屋着の楽な恰好になる。いつもの週末に戻った。
まあまあ、思ったくらいの時間ではあった。
途中までは楽しかったのに。
デザートまで食べられたら、もっと話が出来たのに。

もっと話したかっただろうかと考えて、どうだろう、と笑う。
美味しいデザート食べながら、紅茶が飲みたかった。

もっと桃太郎君の写真をゆっくり見せてもらったりしても楽しかったのに。
椎名ちゃんとの話でも良かったのに。
もちろん、原市さんの話でも良かった。
私も美沙子の話ができるのに・・・あ、それはいらない?

まあ、もういいや。
どうでもいいか。

帰りにあのブレスレットを見ようかと思ったけど、さすがに自分一人で買いに来たって言うのも変かなって思ってやめた。
それにそんな気分でもなかった。

ずっとずっと私が原市さんを本気で好きで、それで楽しく話をしてるんだと思ってたんだろうか?
もしかして美沙子が何か言ったのかな?
原市先輩大好き!とは言ったけど、別に特別な意味じゃないつもりだった。
美沙子と私、二人とも仲良くしてもらえてるから。
それだけだから美沙子は変には思ってないよね?
もちろん原市さんも。
ちゃんと後輩として優しい先輩が大好きですよって感じで話をしてたと思う。
外してテーブルに転がしていたアクセサリーもケースにしまう。
バッグの中身も入れかえて。

ソファにゴロンと横になる。
小さくて足も背中も丸めるようにしないと横にはなれない。
私がそうだから、郷里さんはもっと無理。
まあ、郷里さんがこのソファを必要とすることもないけど。
美味しかったランチ。
話しをしててすっかり冷めてしまったけど。
美味しかった。

きっとデザートも美味しいものが食べられたんだろうなあ。
残念だったなあ。

食べたかったんだと思う、美味しいものを、もう涙が出るくらい。

テーブルのティッシュを目に当てる。
どんどん涙が出てくる。

付き合うんじゃなかった。
友達と約束があるとか言って断っても良かった。
金曜日だって、お腹が痛いでも良かった。

行かなきゃ良かった。
原市さんと食事が出来るのが嬉しくて、喜んで行ってしまった。
美沙子が勝手に約束してきたから、私じゃなくても他の人でも良かったのに。
考えてたら後悔ばかり出てくる。
そんな悲しい一日にしたくないのに。
途中までは楽しかったのに。

キッチンに置いた袋を忘れていた。
コンビニでアイスを買って来たんだった。
食べられなかったデザートの代わりに目についた美味しそうなものを買って来た。

冷凍室に入れておかなきゃ。

冷凍室にしまって、またソファに戻る。

携帯が震えた。

郷里さんから、謝罪のメッセージがあった。
途中で切れてて分からないけど、謝罪の言葉は読み取れた。
しばらくして、ため息をついて画面を明るくした。

謝罪の言葉に続いて、きちんと話して謝りたいと書かれていた。

別にいいのに。

『関係ないですが、一応言います。原市さんは先輩として大好きです。たくさん助けてもらってます。いつも美沙子と私にも優しい先輩です。原市さんももちろんそれは分かってると思います。だから、もう、いいです。』

そう送った。
あの時に何を言ってるんですか?とすぐに言えなかったのは私だから。
だからあんな可哀想な目で見られた。

『彼女がいる先輩に片思いしてる後輩』

違いますから。やっぱり違う。うん、違う。

もう、私だけじゃなくて、原市さんにも、はぁ?って言われればいい。

そう思ってたのに、電話が来た。

しばらく見て、でた。

「はい。」

『郷里です。いきなりで申し訳ないけど、きちんとお詫びをしたくて。』

「それはもういいです。」

『・・・ずっと原市とは楽しそうに話をしてて、羨ましくて、どうしても確認したかったから、それで怒らせてしまって、本当に失礼だったと反省してます。』

謝られれば謝られる程、自分が悲しくなっていく気がして。
だから、もういいのに、止めて欲しい。
無言の私に、郷里さんも無言になる。

『東野さんに嫌われてるとは分かってて、でも先週薄木さんと話が出来て、ちょっといろいろあって。』

何があったの?
知らない。
やっぱり何かあったの?

『原市も協力するって言ってくれたから。・・・椎名の塾の成績が上がったというのは嘘なんだ。』

「はい?」

嘘????何でそうなるの?

『原市が良かれと思って言ってくれたみたいで、ビックリしたけど。そのままそういうことにして、誘って一緒に買い物をして、食事をして。』

『多分そんな事でもないと自分は阿里さんを誘えないから。』

「あの、何がですか?」

よくわからない混迷する話。

『金曜日に飲みに行ったのは自分と阿里さんを話しさせるためで、原市が薄木さんと計画したんだ、二人が勝手に・・・・とか言いたいけど、ありがたかった。阿里さんが楽しみにしてるぞって言われてうれしかったし。』

『ずっと可愛いと思ってて、でも怖がられてるから、話も出来なくて。ずっと阿里さんと話がしたかった。今日は本当にうれしかった、もちろんあのコーヒー屋での昼の時間も、金曜日の夜の時間も。』

誰と誰の話?
登場人物は五人。
この間の四人と椎名ちゃん。
単純に線を引いて、現実に合わせると、私と郷里さんの話になるんだけど・・・。

「よく、話が、分からないんですが・・・・。」

『俺はずっと阿里さんが気になって、可愛いと思って、好きになったみたいで。多分・・・・嫌われてて無理だと思ってて、でも少しは仲良くなれた気がして。だから、余計に原市のことが気になって。』

どうやら告白されたみたい?
そして美沙子も知ってたの?
本当に私と郷里さんの話?

「美沙子と何があったんですか?いろいろあったって、全然聞いてないです。」

『話をしてて、さり気なく阿里さんのことを聞いたら、なんだかバレてしまって、笑顔で協力しますと言われて。任せてくださいとまで言われて。』

それがいろいろ?
ただ美沙子が鋭かったか、郷里さんが分かりやすかっただけじゃないの?
私の気配りはまったく勘違いだったの?・・・・本当に?
全く考えられない混乱の中。
無理無理、ちょっと無理、考えられない、いろいろ・・・何が起こってる?

「椎名ちゃんは喜んでくれましたか?」

とりあえず聞いた。

『まだ開けてないと思う。阿里さんに嫌われたと言ったら、プレゼントそっちのけで説教だったから。』


「何でそんなことまで妹に言うんですか?」

「まさか、妹にもバレたんですか。」

『うん、まあ、そう。』

どんだけわかりやすいの?

『あの、今すぐじゃなくていいから、少し考えてもらえないだろうか?』

返事を要求された。当たり前だと思うけど。

「今は無理です。」

そんなにすぐに返事は出来ない。

『・・・・・そう。』

すぐじゃなくていいって言ったのに、何でそんな反応なの?

「そんな今すぐに返事なんてできません。先週まで怖い先輩としか思ってなかったんです。イメージは変わりましたが、そんなすぐには・・・・無理です。少し時間をください。きちんと返事をします。」

『あ・・・・・・・・ああ、うん。ありがとう。考えてもらえるなら、待ちます。よろしくお願いします。』

「また連絡します。」

『うん、いつでも・・・・待ってます。』

「じゃあ、切ります。」

『ありがとう。』

自分が切った。

マジッー、何考えてんの?????
本当に?ちょっとおかしくない?

原市さんを鈍感と思ったり、美沙子の話をねじれた作戦だと思ったり。
もしかして一番の『ド級の鈍』だったのは私?
分かりにくすぎる。
いや、他の人にはわかりやすい人だったらしい?

どうしよう、偉そうに考えますとか、返事しますなんて。
何も考えられない、考えられるわけがない。
取りあえず、美沙子!!

『邪魔したくないけど、電話が欲しい。時間を作って、お願い。』

そう送った。
見返すことなく送った。
落ち着かない心と何か、とりあえず私自身。

デート中じゃなかったのか、美沙子はすぐに連絡して来てくれた。

『阿里、どうしたの?楽しかったでしょう?』

「美沙子、デートは?」

『まだだよ。仕事が終わってからだから。』

「じゃあ、今日一緒に付き合ってくれても良かったんじゃない?」

『ダメだよ、ジムに行って打ち合わせはしてきたんだから。夜こそ本番だけど。で、阿里は?もう部屋なの?』

「そう。」

『楽しくなかった?全然ダメだった?』

「・・・・。」

『何かあった?』

「どうしてそう思うの?美沙子、最初から知ってたんでしょう?」

『知ってたわけじゃないよ、気がついただけ。ちゃんと言われたんだ?』


『どうした?』


さすがに無言の私を心配してくれたらしい、やっと。
そんなに本当に郷里さんが気に入ったの?

「私は美沙子が郷里さんと飲みたいんだと思ってた。あんなに嬉しそうに言ってたのに。」

『う~ん、まったく好みに合わない。』 

ハッキリ言った。
そう言ってもそんなに毎回毎回好みどんぴしゃりの人と出会うとは限らないと思うのに。

『私のことはいいよ。私はマイペースで頑張るから、阿里は?なんて返事したの?』

「時間をくださいって言った。」

『そうだね。まあ、そうかな?でも昨日すごく楽しそうだったし、いいかなって原市さんとも言ってたのに。』

いつよ!!
そんな風に見られてて、まったく気がつかない私は何?
やっぱり超ド級の鈍感な女じゃない。

「郷里さんが、やっぱり原市さんが好きなのかって、聞いてきた。」

『あ、ああっ、もう、そこはそれとなく否定したのに。やっぱり気になったんだ。』

「美沙子、私にも一言聞いてよ。そんなこと知らない。」

『だって見てれば分かるじゃない。原市さんも彼女のこと隠さないし、阿里がキラキラした目で見てても、ちょっと違うとは分かるのに。郷里さんはそうは思わなかったんだ。私の言葉も信じてもらえなかったみたいね、悲しい。』 

そんな、少しは彼女になりたいって思ったけど。
本気度は自分でもわからないけど、許されるなら、可能なら、一番彼女になりたいのは原市さんなのに。
美沙子は私が彼女に敵わないと、諦めると思ってる。
きっと敵わないけど、何かのきっかけで諦めるけど。
ただ、今のところ他に一番がいなかったから、一番のままの原市さん。
それも本当の気持ち。

『ねえ、阿里、よく考えて。でも返事はまだでいいんじゃない?仲良しの先輩でもいいし、もっと普通に、せめて原市さんくらい普通に話しが出来るようになったら、少しは考えられるようになるかもしれないし。正直に言ってもきっと待っててくれるよ。』

「どうしてそんなに信頼してる風なの?」

『だって、信頼できるよ、出来ない?』

理由を聞いたのに答えてもらえない。

「分からない。」

『本当に?』

嘘でも本当でも、分からないとしか言えないって。

『阿里、楽しかった?』

「・・・・うん。」

『良かった。それはちゃんと郷里さんに伝えて欲しい。すごくうれしいと思ってくれるよ。だって私もだし、きっと原市さんもうれしいと思う。』

「美沙子」

『何?』

「ありがとう。」

『どういたしまして。じゃあ、私はそろそろ準備するから。明日も午前中はジムだけど、何かあったら連絡して。いつでも相談にのりますよ。』

「うん、わかった。じゃあ、美沙子も楽しんできてね。」

『もちろん。じゃあね!』

デザートの時間は過ぎた。
もうすっかり夕方過ぎ。

やっぱりソファに横になって考える。

本当に途中まですごく楽しかった。


携帯を出して丸くて小さい桃太郎の写真を見る。
すごく気に入った一枚なんだろう。
夕方の散歩も長い時間かけて歩いたのかもしれない。

『今日はごちそうさまでした。楽しかったです。』
『また、連絡します。』

そう送った。
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