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6 冬休みが始まる前に、もう一度。
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このまま年末から年明けへ。
来年も変わらないまま。
ただの同期のふたりのまま。
途中の大きな駅で人に押されて電車から一度出る。
そのまま押されて、並んでいた人の列の最後に並んだ。
はぁ~。
ため息をついてる間に並んでる列は進んでいく。
立ち止まった位置は電車から遠くて。
いいの?
それでいいの?
くるりと振り返り反対のホームに入り込んだ電車に乗って、帰って来た道を引き返す。
最後の最後にもう一度だけ。
今度は私が誘ってみる。
ダメもとでも、もう一度だけ。
会社に行く駅を出て、乗りなれない電車に乗りかえて降りたのは二度目の駅。
なんとなく思い出しながら暗い道をたどる。
コンビニがあった。
ドラッグストアもあった。
道が分かりやすくて助かった。
歩ける距離で良かった。
さすがに部屋は覚えてると思ったけど、念のために郵便ポストで確認した。
ポストに出された名字をしばらく眺める。
そしてオートロックのパネルの前に立つ。
びっくりするだろうなあ。
最悪は、下に降りてきた青野君と駅に引き返すことになること。
『どうしたの?』って、一緒に駅まで行ってファミレスに連れていかれること。
そういうこともあるかもしれない。
勝手に来た、図々しい同期の女だから。
オートロックパネルの数字のボタンを見つめる。
手は出ずに見つめたまま。
すごく怪しい女の出来上がり。
確認した部屋の番号を押そうと指を伸ばした時に後ろから声を掛けられた。
「河野さん?」
ビックリして振り返った。
まだ帰ってなかったの?
さっきと同じバッグに、格好に、買い物してましたというスーパーの袋。
ネギが見えてる。ビールと、お菓子と、お肉といろいろ。
「ごめんなさい。」
何が?ここにいることが。突然の訪問が。
また迷惑をかけることまで含めて。
「寒いから、入ろう。」
駅に引き返されることはなかった。
二度目となるその部屋に入る。
「買い物してたんだ、ちょっと待って温かいお茶いれるから座ってて。もしかしてずいぶん待った?」
「ううん、本当に数分。部屋番号確認して押そうと思ったところだったの。」
「良かった。」
「そこのハーフケット使って。」
この間使ったものが置かれていて、膝に掛けた。
暖かい。
懐かしいにおいがする気がする。
顎を膝に乗せるようにして小さくなる。
泣くな。何も始まってない。
気まぐれな訪問の訳もちゃんと言わないと。
お茶を入れてもらって温まる。
楽な格好に着替えた青野君がこの間のパーカーを持ってきてくれた。
ジャケットとコートを渡して借りる。
どうしたのとは聞かれないまま。
静かに流れる音楽はさすがにクリスマスじゃなくて。
横で同じようにお茶を飲んでる青野君。
理由・・・私がここに来た理由。
「ごめんね、本当に。電車で人ごみに押されて、なんだか気が付いたらここに向かってて。理由になってないけど。」
「知り合ってからの分よりこの二週間で話もしたけど、それよりも二年分くらい位は余分に謝られた気がする。この先一年以上は謝らなくてもいいよっていうくらい。」
「うん。」
続いて出そうになった『ごめん。』という言葉は飲み込んだ。
謝れば何でもいいでしょうとか思ってないよ。
あらためてそう言われると、そんな軽い言葉に聞こえてたみたいで。
「それに迷惑に思ってると思う?僕はすごくうれしいけど。外にいるより近いし。もう慰めることはしなくていいんだよね。元気になったって言ったもんね。」
「うん。」
確かに言った。必要ないと思う。
「でも聞いちゃうよね、どうしたの?って。」
「だって連絡先知らなくて、ここに来るしかなかったの。」
「そう言えばそうだね、あとで教えるよ。」
「先週・・・・・。先週、すごく楽しくてうれしくて、また一緒にいたいと思って、思い切って誘ったのに断られたから。なんだかずっと顔も見れなくて。この数日が寂しくて。今日せっかく誘ってくれても過去しか見えなくて。お休みがいっぱいあるのに。全然そんな話はされなくて。誘われたくて待ってたのに、全然で。だから最後にもう一度だけ自分から誘ってみようと思って来ました。」
ゆっくり顔を見るとすごく驚いてる表情、少し喜んでくれてる?
「そんなにびっくりするって、やっぱりおかしいと思ってる?甘えてるかもしれないけど、今誰と一緒にいたいかと聞かれたら青野君しか思い浮かばない。」
視線を合わせて言う。
ゆっくり抱き寄せられて。
「今日は・・・抱かないよ・・・・なんて宣言できない。もう暗いし、遅いし、寒いし、明日から休みだし、帰したくないし。」
「帰らない。帰りたくない。一緒にいたい。」
「あんまり簡単に誘うと・・・隙を狙ってるみたいで嫌らしいかなって思って我慢してたのに。誘ってよかったんだ。」
なんだ・・・・そう呟いた青野君。
先週と同じ格好で、先週と同じように狭いベッドの奥に横になった。
違いは、真ん中にクッションがない事くらい。
手をつないでクッションのない分、近い距離にいるふたり。
視線を合わせる。
つないでない青野君の手がゆっくりと私に伸びてきて。
自分の頬が冷たい事に気が付いた。
シャワーだけ簡単に浴びただけで温まる暇もなくて。
それとも青野君の手が暖かいのかもしれない。
自分の手を重ねた。
見つめあったまま顔が近くに来て目を閉じた。
抱き寄せられて体がくっつく。やっぱり暖かい。
心地よくてため息が出る。
ゆっくり動く手に背中を撫でられて。
自分も背中に手を回す。
繰り返されるキスに勢いがついて、手の動きもお互いにせわしなくなって。
ぶかぶかのパジャマはスルッと脱がされた。
思った通り優しく愛撫してくる青野君に甘い吐息で答える。
でもちょっとだけ物足りなくて先に青野君の下着に手をかけたのは私の方だった。
その後同じように脱がされて。
その後はお互い激しく求めあって、2人で上りつめた。
何も考えない。
ただ包まれた暖かさだけで満足だった。
来年も変わらないまま。
ただの同期のふたりのまま。
途中の大きな駅で人に押されて電車から一度出る。
そのまま押されて、並んでいた人の列の最後に並んだ。
はぁ~。
ため息をついてる間に並んでる列は進んでいく。
立ち止まった位置は電車から遠くて。
いいの?
それでいいの?
くるりと振り返り反対のホームに入り込んだ電車に乗って、帰って来た道を引き返す。
最後の最後にもう一度だけ。
今度は私が誘ってみる。
ダメもとでも、もう一度だけ。
会社に行く駅を出て、乗りなれない電車に乗りかえて降りたのは二度目の駅。
なんとなく思い出しながら暗い道をたどる。
コンビニがあった。
ドラッグストアもあった。
道が分かりやすくて助かった。
歩ける距離で良かった。
さすがに部屋は覚えてると思ったけど、念のために郵便ポストで確認した。
ポストに出された名字をしばらく眺める。
そしてオートロックのパネルの前に立つ。
びっくりするだろうなあ。
最悪は、下に降りてきた青野君と駅に引き返すことになること。
『どうしたの?』って、一緒に駅まで行ってファミレスに連れていかれること。
そういうこともあるかもしれない。
勝手に来た、図々しい同期の女だから。
オートロックパネルの数字のボタンを見つめる。
手は出ずに見つめたまま。
すごく怪しい女の出来上がり。
確認した部屋の番号を押そうと指を伸ばした時に後ろから声を掛けられた。
「河野さん?」
ビックリして振り返った。
まだ帰ってなかったの?
さっきと同じバッグに、格好に、買い物してましたというスーパーの袋。
ネギが見えてる。ビールと、お菓子と、お肉といろいろ。
「ごめんなさい。」
何が?ここにいることが。突然の訪問が。
また迷惑をかけることまで含めて。
「寒いから、入ろう。」
駅に引き返されることはなかった。
二度目となるその部屋に入る。
「買い物してたんだ、ちょっと待って温かいお茶いれるから座ってて。もしかしてずいぶん待った?」
「ううん、本当に数分。部屋番号確認して押そうと思ったところだったの。」
「良かった。」
「そこのハーフケット使って。」
この間使ったものが置かれていて、膝に掛けた。
暖かい。
懐かしいにおいがする気がする。
顎を膝に乗せるようにして小さくなる。
泣くな。何も始まってない。
気まぐれな訪問の訳もちゃんと言わないと。
お茶を入れてもらって温まる。
楽な格好に着替えた青野君がこの間のパーカーを持ってきてくれた。
ジャケットとコートを渡して借りる。
どうしたのとは聞かれないまま。
静かに流れる音楽はさすがにクリスマスじゃなくて。
横で同じようにお茶を飲んでる青野君。
理由・・・私がここに来た理由。
「ごめんね、本当に。電車で人ごみに押されて、なんだか気が付いたらここに向かってて。理由になってないけど。」
「知り合ってからの分よりこの二週間で話もしたけど、それよりも二年分くらい位は余分に謝られた気がする。この先一年以上は謝らなくてもいいよっていうくらい。」
「うん。」
続いて出そうになった『ごめん。』という言葉は飲み込んだ。
謝れば何でもいいでしょうとか思ってないよ。
あらためてそう言われると、そんな軽い言葉に聞こえてたみたいで。
「それに迷惑に思ってると思う?僕はすごくうれしいけど。外にいるより近いし。もう慰めることはしなくていいんだよね。元気になったって言ったもんね。」
「うん。」
確かに言った。必要ないと思う。
「でも聞いちゃうよね、どうしたの?って。」
「だって連絡先知らなくて、ここに来るしかなかったの。」
「そう言えばそうだね、あとで教えるよ。」
「先週・・・・・。先週、すごく楽しくてうれしくて、また一緒にいたいと思って、思い切って誘ったのに断られたから。なんだかずっと顔も見れなくて。この数日が寂しくて。今日せっかく誘ってくれても過去しか見えなくて。お休みがいっぱいあるのに。全然そんな話はされなくて。誘われたくて待ってたのに、全然で。だから最後にもう一度だけ自分から誘ってみようと思って来ました。」
ゆっくり顔を見るとすごく驚いてる表情、少し喜んでくれてる?
「そんなにびっくりするって、やっぱりおかしいと思ってる?甘えてるかもしれないけど、今誰と一緒にいたいかと聞かれたら青野君しか思い浮かばない。」
視線を合わせて言う。
ゆっくり抱き寄せられて。
「今日は・・・抱かないよ・・・・なんて宣言できない。もう暗いし、遅いし、寒いし、明日から休みだし、帰したくないし。」
「帰らない。帰りたくない。一緒にいたい。」
「あんまり簡単に誘うと・・・隙を狙ってるみたいで嫌らしいかなって思って我慢してたのに。誘ってよかったんだ。」
なんだ・・・・そう呟いた青野君。
先週と同じ格好で、先週と同じように狭いベッドの奥に横になった。
違いは、真ん中にクッションがない事くらい。
手をつないでクッションのない分、近い距離にいるふたり。
視線を合わせる。
つないでない青野君の手がゆっくりと私に伸びてきて。
自分の頬が冷たい事に気が付いた。
シャワーだけ簡単に浴びただけで温まる暇もなくて。
それとも青野君の手が暖かいのかもしれない。
自分の手を重ねた。
見つめあったまま顔が近くに来て目を閉じた。
抱き寄せられて体がくっつく。やっぱり暖かい。
心地よくてため息が出る。
ゆっくり動く手に背中を撫でられて。
自分も背中に手を回す。
繰り返されるキスに勢いがついて、手の動きもお互いにせわしなくなって。
ぶかぶかのパジャマはスルッと脱がされた。
思った通り優しく愛撫してくる青野君に甘い吐息で答える。
でもちょっとだけ物足りなくて先に青野君の下着に手をかけたのは私の方だった。
その後同じように脱がされて。
その後はお互い激しく求めあって、2人で上りつめた。
何も考えない。
ただ包まれた暖かさだけで満足だった。
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