なぜか訳ありの恋にハマりました。

羽月☆

文字の大きさ
13 / 19

13 私に甘いのはコーヒーと同期だけ。

しおりを挟む
金曜日、長かった一週間。まだ終わってもいないのにそう思ってる。

昨日手直しした所を読み返し、課長が席を外した時にまた提出した。

戻ってきた課長が気がついたのも分かった。
だから休憩室に行った。


でもたくさん人がいた。賑やかに楽しそうに話をしてる先輩達。

そのままトイレに行った。

鏡も見たくない、恨めしい顔をしてる自分に会いそう、捨てられたような悲しい目をした自分だろうか?
壁に背中をつけてぼんやりする。
壁は冷たい。

あんなに月曜日に邪魔だと思いながらも繰り返して思い出してた声も遠い。

誰が誰にどんな声でどんな表情で言ってるのかわからなくなってきた。
二日たっぷりの思い出が薄くなった。
課長は数年付き合い、結婚して一緒にいた奥さんのこともすっかり忘れてるみたいだし、じゃあ、たった二日の相手なんてもっと簡単に記憶から消せるんだろうか?
やっぱりまだまだあの部屋や課長の心を埋めるには全然足りないんだろうか?


こんなに考えても声が聞こえない、笑顔も向けられない。
あの時間の記憶はどこに行ったの?


誰もトイレに来なくて、思いっきりサボってしまった。

さすがに背中を壁から外して、トイレに行って戻った。
あと少しでお昼だった。

「穣君、ランチ一緒に行ける?」

「いいよ。」

「ありがとう。」

お礼ばかり、お世話になってばかり。
一人だと何だかグルグルしてしまうから、誘った。
全然違う話をしてくれるなら、その話にうなずくだけでも時間が過ぎればいい。
また甘えて自分のお世話まで押し付けた。


お昼一緒に外に出た。

「ねえ、今日は私が奢る。うさぎのチョコレート可愛くなってきたよ。コーヒーもいつも奢ってもらってるし。昨日のお礼も含めて、そうさせて。」

「うれしい。今月ちょっと無駄遣いしたから助かる。」


「何買ったの?」

「自転車、かっこいいの買ったんだ。」

「遠くまで行くの?」

「ううん、ほとんどコレクション。今のところ部屋に置く予定なんだ。」

「乗らないの?」

「う~ん、春かな?どうかな?」

「もしかして本当に無駄遣いだったの?高かったの?」

「うん、普通の奴の5倍くらいした。」

「普通のも持ってるの?」

「うん、一台ある。普段に使うのはそっち。」

「しばらくコーヒーは私が奢るよ。」

「じゃあ、他のことでお礼をする。何でも相談に乗るよ。」

「うん、頼りにしてる。」

「本当に?」

「もちろん。」

「ねえ、聞いていいの?」

「何を?」

「元気がない訳。」

二人で見つめ合う。

「多分・・・・気がついたんだけど。」

それは無理だと思うけど・・・・どう?

「前みたいに楽しそうに話もしてないよ。時々ぼんやり見てるけど泣きそうだし。」

「何が?」

ちょっと声がとがったかもしれない。

「ごめん。隣だからそうかなって思っただけ、間違ったかな、ごめん。」

合ってるかもしれないけど、認めたくはない。
それに思ってるのとは違うと思うし。

「ねえ、本当に好きな人いないの?気に入った人とか、可愛いと思う人とか、話をしたい人とか。」

話題を変えて聞いてみた。

「まあ、そうかな。そんなに変かな?」

本当に困った顔をしてる。

「ねえ、・・・・じゃあ、私は?お休みの日に遊びに行くのは、誘ってくれないの?」

そう言った。
どこか自分の声じゃない気もした。
何考えてるんだろうと、自分がその声を冷静に聞いていた。

「必要だったら、誘うけど、本当に必要としてるんじゃなさそう。」

さっきの表情で少し笑って言われた。

やっぱり違うらしい、それはお互いに。

「そうだね。」

断ってもらえて良かったと思う。
本当に同期で大切な友達なんだから、甘えすぎたらいけないのに。

どうしようもない後悔の様な反省の気持ちが心を占める。
もう、自分でもよく分からない。



約束通り奢った。
さっきの話題には触れずに、なかったことにして話をしながら戻る。

心ではたくさんありがとうを言いたかった。

あと半日。

昨日の続き、また穣君の書類を見せてもらっていた。

それでも全部読み終わった。

課長に呼ばれることはない。来週でもいい気もしてきた。
色んな意味で課長の中の優先順位も低いのかも。


「ねえ、全部読ませてもらった。少し資料課に行って来ていい?もし誰かが急用あるって言ったら、教えて。携帯持って行く。」

しばらく帰ってこないと言って資料課に行った。
誰かが私に急用なんてあるわけない。

それでもサボりじゃない。
資料課の人に断って隣の資料室に入れてもらった。

過去の書類を見る。
開いて捲って・・・・、でもやっぱりあんまり集中できてない気がする。

隅に置かれていた机に体を預けてパラパラと紙が捲られる音がする。

滅多にここも人が来ないんだろう、静かで湿っていて、でも落ち着く。

それを完全な逃避行動というんだろうか?
視界に入らないなら、本当にいっそ見えない所へ。
春に・・・・は無理でもいずれ違う課へとか。
そう考えてたら、適性の問題があるのかと思い当たった。
自分の能力・・・でも適性も・・・・・。
勝手に成長したと思って自信を持っても三か所も直された。
さらに穣君にも簡単に直された。
『これでいいと思うけど・・・・。』なんて言葉もなく。

もっともっと満足にできる仕事があるんだろうか?
この会社に?それともよそに?

今までバイトだって普通にできていたと思ったのに、なんでこんなに急に自信がなくなるんだろう。
『厄介な新人。』重たくて面倒でいろいろと足りてない新人。

ああ・・・・・声は蘇らなくても文字でセリフが出てくるようになった。

それはとても正しい事みたいに書き出された状態で。


止めた。集中できないだけじゃなくて落ち込みのスパイラルにハマりそう。
一人でいるのは止めたい。

まだ誰かのいる気配を感じたい。

取り出した資料を丁寧に元の棚に戻す。
部屋を出て、資料課の人に挨拶をして元の自分の席に戻った。

「お帰り。」

「ただいま。」

「面白い発見はあった?」

「ううん、面白くない発見ばかり。嫌になったから戻って来た。」

そう言ったらまた困った顔をされた。

「コーヒー奢ろうか?」
 
「無駄なお金は遣ったらダメじゃない。」

「あ、そうだった。来月の引き落としが怖いんだった。」

「そうだよ。穣君がコーヒー飲みたかったら言って。しばらくは私が一日一杯だけ奢ります。」

「本当?じゃあ、休憩の時に。」

「いいよ。声かけて。」


やっぱり仲良しの二人。
昨日の変な雰囲気はなかったことに。


休憩室で甘いコーヒーを頼んでちびりちびりと飲んでいた。


聞きたい声は聞こえない。

甘い声が聞きたい。せめて褒めて欲しい。せめて仕事だけでも。

暖かさも甘さも隣の穣君かコーヒー頼りだった。
それじゃあ物足りないのに。



急に携帯に連絡があった。
本当に私としてはそんな感覚だった。

『できるだけ早く終わらせて連絡する。』


席にはまだ戻って来てない。

トイレか、休憩室か。

やっと待ってた連絡。でも喜びは半分。しょうがないけどすごく業務的で素っ気ない。

静かに画面が暗くなったのを確認して机の引き出しにしまった。
返事は夕方でいいだろう。
少しは連絡を待つ気持ちが分かればいい。
・・・・・待ってるとしたらだけど。


穣君に今日の分のコーヒーを奢った。
席でカレンダーを見ながら、ボーナスだねって話もしたりして。

「でも自転車を買ったから、もう何も買えない。」

「しょうがない。何か欲しいものあるの?」

「そう言われると別にない気もするけど、なんとなく安くなってる時に買おうかと無駄に買い物に行っちゃうんだよね。」

「完璧女子の心だね。私は無駄遣いするために行くよ、バーゲン。」

「テンション高くなりそうだね。元気にもなりそうだし。」

「もちろん。疲れ果てるだけの女子はいません。一度は燃えます、途中失速しても、最後には燃え尽きても。」


「楽しみだね。」

「うん。」




そんな休憩タイムが終わったら反対隣の南先輩に頼んでフォルダをのぞかせてもらった。
さすがに穣君とは違う、たくさんあって残りの午後の時間はその書類を読んでいたら終業の時間になった。


「じゃあ、お疲れ様。」

さっさと帰り支度をした穣君が笑顔で帰っていく。

「また来週。」

「お疲れ様。じゃあね。」

隣がいなくなって、ゆっくりと携帯を引き出しから取り出す。


『食事は済ませててほしい。』

そうメッセージが来ていた。
一緒にご飯はなし、話しだけ。

やりにくい?やっぱりダメだって思った?

顔もあげずに携帯を閉じて、ゆっくりと終わりの準備をする。

金曜日は皆早い。
隣もいなくなり、課内の残りは本当に少し。

挨拶をして先に出た。



約束のカフェでぼんやりとする。
サンドイッチはそこにあるだけで開けられもしてない。
また甘いドリンクを買ったからいい。



「お疲れ。愛内、大丈夫か?」

目の前に課長が来て、ぼんやりと見上げる。

何時?結構待った?

真っ暗な外を見る。
サンドイッチと飲み物を持たれて待たれる。

「移動しよう。」

そうでしょうね、ここじゃあ。

タクシーに乗せられて、飲み物を返された。
課長が告げた住所はあの部屋だった。

ゆっくりタクシーが走り出す。
外を見ながら飲み物に口をつける。
手がつながれることはない、飲み物とバッグでふさがってる。

サンドイッチがそのまま課長の膝のバッグの上にある。

食事してないのは課長も同じ。

『食べていいですよ。どうぞ。部下からの愛情たっぷりのプレゼントです!』
そんなふうに軽口で言えない今。

運転手さんは後ろの二人の雰囲気には我関せずで、ラジオを聞き流しながらひたすらお仕事中。
真面目なお仕事ぶりで、この間の場所にあっという間にたどりついたタクシー。

コンビニに立ち寄ることもなくまっすぐにマンションに向かった課長の後を少し離れてついて行った。

部屋の前で、振り向いて見下ろされた。
距離を開け、視線は課長の背中を見上げていたから、目が合った。
少しの間見つめ合った時間が何の時間だか分からない。

鍵を開けて入る課長に続いた。

「どうぞ。」



「お邪魔します。」

少し遅れて返事して上がった。

少しだけ悲しい予感を感じて、それでも泣き出すのは止めたいと、一生懸命に抑えていた。

ここで何を話すの?
ここでならゆっくり話せるから?

そんな思いがクルクルと入れかわり表に出そうになる。


暖房をつけてジャケットを脱ぐ課長。

「ちょっと上着を持ってくるから。」

そう言って寝室に行った。

手に持ったカップをテーブルに置いてソファに座った。


お互い何かを含んだ視線を交わし合ってる気がする。
先週ここで展開された場面すべて、何かが間違いだったのだろうか?
課長は何が間違いだったと思ってるんだろう。

大人しくソファに座り待っていた。
また、待っていた。
大人の意見は私のわがままよりも優先される。
さすがに、小生意気になんて振舞えない。


「愛内、これを。」

パーカーを手渡された。
大きいからジャケットを脱がなくてもいい。
上から羽織って緩く前に引き寄せた。

ソファの座面が揺れる。

課長が空いたスペースに座った。ビールも何もない。

サンドイッチはどこに行ったんだろう。
どうでもいい事が気になった。


「愛内、後悔してるか?」

そう言われて、どこを?と思った。全部?

「何をですか?」

「先週ここにいた事、俺が誘ったこと、応えてくれたこと、すべて。」

「課長は?課長こそ後悔してますか?」

「するわけないだろう。俺が誘ったんだ、ずっと思ってた事だったから、別にあの場の酔いに任せて適当に誘った訳じゃない。そこは分かってもらえてるよな。」

「もちろんです。そんな人だとは思ってません。」

「俺の質問は?答えてくれないか?」

後悔してるわけない。

「そんな、後悔なんてしてません。なんで私がそれを聞かれるのか分かりません。」



「あれから連絡もないし、素っ気ないと言うより避けられてる気がした。西村にも相談してるようだったし。」

「そんなこと、相手のことを器用に誤魔化しながら相談できるわけないじゃないですか。仕事のアドバイスをもらっただけです。」

「一緒に食事したり、飲みに行ったり、誘われてるよな。」

「それは・・・・ただ誘ってくれただけです。ランチは今までだって二人で食べることはよくありました。」


「そうか。」


「大体課長こそ、連絡するっていうから待ってました。ずっと楽しみに、大人しく待ってました。忙しくて疲れてるんだろうって思ったけど、まったくないから。課長こそランチでも誘ってくれていいのに。ランチを部下ととっても全然不思議じゃないです。そうじゃなかったら少しだけでも話しかけてくれても良かったのに。」


「連絡しなくてすまなかった。毎日携帯は手にしても・・・・なかなか送れなかった。」


静かになった部屋。



「愛内、こっち向いて。」

やっと・・・・そう言ってくれた。

「悪かった。ちゃんと連絡する。用がなくても、・・・・いいんだよな。」

「待ってます。私もします。」



「ああ、待ってる。」




「今日はもう遅い。」

「そうですね。」

「泊まって行けばいい。」



「課長。」

「なんだ?」

「お腹空いてます。」




「・・・・・・・。」

確かに頬に手を当てられていた、ちょっとづつ近寄った距離が一気に詰められていた。
目を閉じれば恋人時間が始まったかもしれないけど。
お腹空いた。昼の分も、安心した分も。


「サンドイッチでいいのか?」

「我慢します。」



「俺も食べてないんだが。」

「半分、食べていいですよ。分けてあげますよ。」

控えめだったけど言えた。

「まったく色気のない提案だが、最中にお腹空いたと喚かれるよりはいい。体力をつけといたほうがいいなら、少しくらい我慢してやる。」


そう言ってキッチンへ行った。
お湯を沸かして戸棚からカップ麺を取り出す後ろ姿。

近寄って確認する。

『夜のラーメン。』滅多にお世話にはならないけど、響だけは美味しそうだと思ってる。
響だけじゃなくて部屋に匂いが漂うことになったらもっと誘われた。


「心配しなくても、半分、あげるから、食べていいぞ。」

「心配はしてません。」

「そうだな。確かに明らかなおねだりの視線だったな。あげないととんでもない目で見つめて食べることになりそうだ。」

カップ麺の匂いを想像して美味しそうだと見ただけだ、まだ欲しいと訴えてはいなかったのに。

サンドイッチを冷蔵庫から出してくれた。

わざわざ仕舞っててくれたらしい。

本当にマメなんだろう。今日も見渡す限り綺麗な部屋だった。




とりあえずお腹を満たす間は深く聞くことは止めてあげた。
そう考えて、やっぱり小生意気な考えだと思った。
あんなに不安で入った部屋なのに、悲しい予感がなくなった途端に『なぜ』を聞きたくなったのだから。


お互いにサンドイッチとカップ麺を分け合った。

空腹にしみる、悲しい予感に襲われてて冷えていた体にもしみわたる。

じゃあ、もうどうでもいいか・・・・って思った。

「美味しい。課長、いいですね、噂の夜ラーメン。」


「そうか、安上がりでいいな。常備してあるから週末はラーメンに誘ってあげるぞ。」

「課長が毎週ラーメンでいいならいいですよ。」


そう言ったらカップを持ってこっちを見た。

「もちろん冗談です。毎週はさすがに寂しいです。美味しい物も食べたいです。さすがに飽きます。」




「西村は優しく教えてくれるのか?」

「もちろんです。穣君は本当に誰にでも平等に優しいんだと思います。」

仕事まで丸投げのように・・・・教えてもらうことになったし。

「なんでですか?」

「ただ聞いただけだ。」

「そうですか。・・・・でも、そんな事でも、気がついた日の夜に聞いてくれても嬉しいです。」

探りの連絡でも何もないよりはいい、そんな探るような内容でも、まったくない時期だったら喜んだだろう。
話もつながるし。
・・・・今はつながってないけど。


「今のセリフをもっと甘い声で可愛く言ってくれたらもっと嬉しいのに。」

「何で聞いたんですか?ただ聞いただけだ、なんて。もっと違う答えをください。」



「お前らは、仲良過ぎだろう。分かってやってるのか?」

やっぱり、いつもそう思ってたんだ。
誰にでも、何度も言われて、聞かれて、否定してるはずなのに。


「全然違うって分かってるのに聞いてますか?」

「そんなに違うか?」

「穣君とはこんな距離で話したこともないし、体が触れたこともないです。」

「・・・・そうだな。」

納得してくれたらしいけど。

「なあ、お腹はいっぱいになったか?」

「もちろんです。」

さっき中断して空腹を主張したのは私だ。

「課長、シャワー浴びたいです。」

「今日は一緒にはいるか?」

「嫌です。」

離れた。

『あ~あ。』って顔してる。

「もし、一緒に旅行に行くことがあって、お部屋にお風呂がついてる事があったら入ります。」

「それは旅行の誘いだな。いい部屋がいいって事なんだろう。了解。明日探す。」


まだ間に合う、冬休み、ちょっと二人で旅行もいいかと思ってた、いいタイミングで言えた。
誘えた。素晴らしい!!やったね。

こっそり拍手喝采して喜んだ。

お風呂に一緒に入ることになったけど、部屋についてたら入ってもいい。
そんないいお部屋だったらのんびり入ってもいい。
間違っても混浴とか探し出さないだろう。

何か忘れてる気がしてるんだけど、何だっただろう?

忘れるくらいなら、その内思い出すだろう。
仕事のことじゃなければいいだろう。



バスルームに案内された。

この間置いて行ったものはそのまま端の方に寄せられていたらしい。
小さな物干しがあった。
下着を洗い浴室の棒にかけておいた。

明日乾くだろうか?
生乾きでも、少し乾燥をかけてもらえば何とかなるだろう。

それがないと外にも出れないんだから。



当然バスタオルだけで外に出て、寝室に入った。

遠慮もなく最初から課長のバスタオルを落とした。
さすがに視線で追ってはいなかったけど、音がしたから落ちたと思う。
自分も手を離したし。


「課長、部屋に一人でいた夜に、少しは思い出してもらえましたか?」

「当たり前だろう。あんなに一緒にいたんだから。静かな夜は寂しくて、電話したらそう伝えてしまいそうで、だから連絡しなかった。」

「そんな連絡だったらもっともっと欲しかったのに。」

「憧れの大人彼氏だろう?そんな弱弱しい大人でいいのか?」

「いいです。若い彼女が恋しいって言ってくれてもいいです。」

そう言って目を閉じたのに、おでこが音を立てて、久しぶりに感じた痛みがあった。

「イタッ。」

いきなりで目を開けて抗議したかったのに、おでこにキスされた。

そう言えば、そんな事も言ってた気がする。


「本当に憧れてるのか?なんだか操られてる気がしてきた。」


「憧れてるのは『年上の大人』ってところです。課長の肩書の一つです。実際の課長は違ってもいいです。」

「それはそうと何で俺だけ裸なんだ?」

「課長が手を出さないからです。」

「そこは『早く邪魔なものを取ってください。』とかお願い口調で言えないのか?」

「言わせたかったから聞いたんですか?」

「そうだ。」

「課長・・・・・風邪ひきますよ。」

そう言って自分でバスタオルを落としてベッドに入った。

そのあとはちょっと大人だった・・・のか。
完全にムキになっていた気がする。

両手を掴まれて途中までずっと固定されて、体に回すこともできないし、引き寄せることも、突っ張る事も出来ない。不自由な状態で若さを吸い取られた。


なかなか甘いだけの関係は難しい。
支配者は時々入れ替わる。
でも最後にはイーブン関係で終わってるはず。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

距離感ゼロ〜副社長と私の恋の攻防戦〜

葉月 まい
恋愛
「どうするつもりだ?」 そう言ってグッと肩を抱いてくる 「人肌が心地良くてよく眠れた」 いやいや、私は抱き枕ですか!? 近い、とにかく近いんですって! グイグイ迫ってくる副社長と 仕事一筋の秘書の 恋の攻防戦、スタート! ✼••┈•• ♡ 登場人物 ♡••┈••✼ 里見 芹奈(27歳) …神蔵不動産 社長秘書 神蔵 翔(32歳) …神蔵不動産 副社長 社長秘書の芹奈は、パーティーで社長をかばい ドレスにワインをかけられる。 それに気づいた副社長の翔は 芹奈の肩を抱き寄せてホテルの部屋へ。 海外から帰国したばかりの翔は 何をするにもとにかく近い! 仕事一筋の芹奈は そんな翔に戸惑うばかりで……

2月31日 ~少しずれている世界~

希花 紀歩
恋愛
プロポーズ予定日に彼氏と親友に裏切られた・・・はずだった 4年に一度やってくる2月29日の誕生日。 日付が変わる瞬間大好きな王子様系彼氏にプロポーズされるはずだった私。 でも彼に告げられたのは結婚の申し込みではなく、別れの言葉だった。 私の親友と結婚するという彼を泊まっていた高級ホテルに置いて自宅に帰り、お酒を浴びるように飲んだ最悪の誕生日。 翌朝。仕事に行こうと目を覚ました私の隣に寝ていたのは別れたはずの彼氏だった。

嘘をつく唇に優しいキスを

松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。 桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。 だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。 麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。 そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。

俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛

ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎 潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。 大学卒業後、海外に留学した。 過去の恋愛にトラウマを抱えていた。 そんな時、気になる女性社員と巡り会う。 八神あやか 村藤コーポレーション社員の四十歳。 過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。 恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。 そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に...... 八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

Fly high 〜勘違いから始まる恋〜

吉野 那生
恋愛
平凡なOLとやさぐれ御曹司のオフィスラブ。 ゲレンデで助けてくれた人は取引先の社長 神崎・R・聡一郎だった。 奇跡的に再会を果たした直後、職を失い…彼の秘書となる本城 美月。 なんの資格も取り柄もない美月にとって、そこは居心地の良い場所ではなかったけれど…。

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

処理中です...