なぜか訳ありの恋にハマりました。

羽月☆

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19 やっぱりやられたらやり返す。今年もそんな年になります。

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課長が切符を買ってる間に実家に連絡をしてみた。
結局ほとんど奢りの旅だったけどしょうがない。
いいって言われたから、お礼だとも言われたから。
列の外で待ちながら壁にもたれてお母さんに年始の挨拶をして、ちょっとだけ聞いてみた。


『お母さん、明けましておめでとう。』

『新年早々、ちょっと聞きたいことがあります。私の好きな人が10個以上年上で、離婚歴があるって言ったら、お母さんはどう思う?お父さんはどう思うかな?』

『年と離婚歴か、びっくりだけど、その人によるから。そんな条件だけで反対するくらいの嫌な気持ちにはならないつもりだから。今、一緒にいるんじゃないの?明日連れてきたいなら、どうぞ。前もって言っておいてもらえれば、お父さんにも伝えておくから。多分お父さんも同じ気持ちだから。』

それを読んですぐにそのやり取りは消した。

少し安心したけど、課長が行きたいと思うかを知るのも怖い。
ただの紹介だと、今日は連れて行かれたから、お返しに私も。
私は全然緊張しないと思うのに、何で課長はあんなに緊張したんだろう?
それとも本当に連れて行くとなると緊張する?

電車の中で小さな声で聞いてみた。

「課長、明日実家に帰るんです。・・・・私も課長のことを紹介したいと思ったんです。どうですか?嫌ですか?」

「喜んでついて行く。」

「本当ですか?」

そう言って見た顔に冗談の気配はなかった。

「じゃあ、両親を紹介しますのでお願いします。」

笑顔で誘った。


お世話になってる上司だし。
何と言ってもお正月だし。
紹介されたからこれでおあいこ。

一緒にお母さんの煮物を食べて、お酒を飲んで、みかんを食べて、こたつでダラダラとして。

やっぱり緊張はしないと思う。

新年会、もしかして本当に話題にしてしまうかもしれない。
好きな人が出来て、一緒に年越しをしたと。

私にもミラクルが起きたと。


・・・・なんて言える訳ないけどちょっとだけ皆がビックリする顔を想像して満足した。


早速お母さんに連絡しよう。
きっとビックリすると思う。

皆の顔は無理だけど、お父さんとお母さんのビックリする顔は見れるんだから。

やっぱり楽しみで緊張はしないじゃない。
つないだ手に力をこめてすり寄った。


「次降りるぞ。」

にこやかな自分の顔がスッと消えた気分。
さっさと冷静さを取り戻した課長。

悔しい。勝手だけどそう思った。

明日、きっと緊張するでしょう。
そっちも楽しもう、そうも思った。


「あ、そういえば三個上のお姉さんの話しか聞いてなかったです。何で一人分しか教えてもらえなかったんですか?」

「双子だから、二人とも三個上だし。」

何~!!そんな事あのざっくりした紹介のどこにもなかったじゃない。
ちょっと待ってください。いろいろ、足りないです。
ちゃんとしてください。抜け過ぎです!!

そんなに似てた?
私だって冷静には観察出来てなかった。
ある程度似てるのは姉妹だと思ったから。


ブツブツ呟きながら思わず課長の駅まで来てしまった。

「あ、自分の部屋に帰ります。明日実家に行くし。」

「一度立ち寄ってからでもいいんじゃないか?」

そう言われる程、自分の部屋に何を置いてあるって訳でもないけど。
考えてるうちに手を引かれて、馴染んだ部屋に戻ってきてしまった。

「はぁ~。」

大きく息をついた課長。

「疲れました?」

「いろいろ緊張したんだよ。里菜は相変わらず能天気だし、それに人を年寄り扱いするよな。」

「・・・・・紹介するだけって言ったのに。」

「何?」

「いえいえ。いろいろ手配いただいてお任せだったので私は楽しむだけで良かったみたいです。ありがとうございました。」

「そんな小生意気な顔で言われてもな。あそこでは思いっきり外面だったくせに。」

そんな、当たり前です。
お客様なんですから、それらしく大人しくします。

「そっちも別人だったくせに。」

それでも言い返した。

「まったく。本当に生意気すぎる。」

諦めたらしい課長が冷蔵庫からビールを取り出して飲む。

「何か飲むか?」

「今はいいです。」

ソファに座り込んだ。

「私の名前も年も教えてなかったんですね。」

「ああ。さすがに若すぎると思われるし。」

それは最大の魅力ですから。

首のネックレスに手をやる。
ゆっくりチャームを触ると安心する。


課長がビールを飲む音を聞きながらその体にもたれて目を閉じた。
朝早起きだった。一度目が早起きだった。
二度寝したのも寝坊したのも課長のせいだし。
滅多にない、これ以上ない楽しい年明けにいいい予感しかしない。

満足そうに飲み終わった課長の息にビールの匂いを感じながら、それでもオヤジ臭いなんて思わない。ただ側にいれることが嬉しくて。

ペシッ。

毎度芸のない仕打ち。

今日はおでこ全開のいつもの髪型だった。

「ニヤニヤしながら寝そうになってる。」

ニヤニヤって表現はどうよ。
オヤジ臭いって断言しないであげたのに。

「いいじゃないですか。ちょっとまったりとしたいんです。」

「そうやって勝手に寝る癖に。」

どうせ諦めて寝かせてくれるくせに。
目は開けないまま、本当に眠った。
まだまだ幸せな冬休みが続くから。
ちょっとくらい無駄に時間を使っていい。

明日ももっともっと楽しい日になりますように。

神様、まだ御前までは行ってませんがここでお願いいたします。

現金的なものは後日で。



今年もいろいろよろしくお願いします。
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