握りしめた細い糸の先で見つけたのは。

羽月☆

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2 なかなかです、頼りない糸には手応えがないのです。

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内緒の内緒、憧れの浅田先輩。
痴漢からさり気なく守ってくれた人。
同じ会社だったという偶然。

それだけだけど、十分でもあった。
いつかお礼が言えるかもしれない、そう夢見てた。


ただ素敵で、当然人気がある先輩らしい。(鞠情報)
そして噂では特別な人はいないらしい。(同上)


いつか伝えたい、お礼とともに・・・・。
なんて思っても、声さえかけることもできず、既に一ヶ月になろうとしていた。


だいたい、営業で外に出てることが多いのか、社内で会うのも稀だから。
時々社食で見かけるのも、朝のテレビの占いで一位になる以上のレア現象。
会うのも珍しいのに、話をするなんて・・・・どうやって?


出来ることと言ったら、同期の夏越くんにさり気なく情報を聞いてみること。
バレないようにとは思ってる。
だから質問も核心を攻められず。
さり気なさすぎて、なかなか役に立ってもらえない。


現在集めることが出来た情報の断片は。

『いい先輩、かっこいい、営業相手にも好かれてる。男の目にも尊敬に値する。』
以上、それだけだ。


もっと形容詞と、エピソードを披露して、長々と語って欲しいのに、それだけ?
夏越君がおしゃべりな人じゃなかったことが悔やまれる。

他の人のことも聞かないとバレてしまう。
適当な人の話も振る。そっちも言葉少なだけど、いい。
ただ右から左へ聞き流すだけだから。


私にとって夏越君は先輩につながるだろう貴重な糸。
飲み会では相変わらず近くの席にいることが多い。
それは偶然半分、ミッションの為に自分からすすんでそう動いてもいる。
もう一人の営業同期 権堂 修くんには頼めない。
だって今でもその周辺は女子密度が濃い。
同期の中でも一番!!というくらい注目されてる。

『二人くらいは真剣な修狙いがいると思う。』と鞠が言っていた。
そう思って見てみると、やっぱりいつも同じ子が近くにいて話をしてる。
鞠が言う、修ガールズ。
なるほど・・・・。
本当に改めて見ても爽やかなイケメンなのだ。
『シュウ』ってカタカナで呼ばれそうな人で。
そんな中には、とてもミッションの為でも割り込めない。


結局、今日もいつもの細い糸の夏越君とその周辺の人々と飲んでいる。
『周辺』というのはその都度変わる。

時々二人が会話から残されることがある。
そうするとミッション遂行タイムだ。

「相変わらず忙しいの、営業?(の浅田先輩)」

「まぁね。外回り、そろそろ暑くなるからきつい。」

汗かく夏越君を想像したけど、その後すぐに爽やかな浅田先輩の笑顔が浮かんだ。

いいなぁ。


「なに?外に行きたいの?」

「へ?」

首を軽く倒された。

・・・何でしょうか?


それからも隙を見ていろいろと聞いてみた。
営業に興味があるの?なんて逆に聞かれたりして。
なんだかひたすら空回りしてる気がする。

中々ポイントに当たらない。
勘の鈍いやつめ、と思わないでもないが、はっきり分かられたら慌てて否定するしかない、恥ずかしい。

「営業だと仕事後、彼女と夜のご飯の約束も難しいね?」

鞠経由の噂通り、特別な人は居ないのかな?
私は週末だけでもいいのに。
それだけで満足します!!

そんなことを思って一人うなずいてたら、じっと見られてた。

「何?」

ちょっと恥ずかしい。バレる前に変な奴みたいじゃない。

「いや、別に。」

そう言って席をたった夏越君。

別に・・・変じゃなかったって事でいいんだよね。
そしてトイレタイム? 残念!!
まぁ今日はこのへんでいいか。



隣の席の飯田君が話しかけてきた。

「ねぇ、夏越と仲いいよね。いつも近くにいる気がする。」

ヤバイ、そんなに・・・ですよね・・・・。

「そうかな?他の人とも話してるつもりだけど。でも、研修中から近くにいて、話をしてたから他の人より喋りやすいんだよね。楽なの。友達に一人はいてほしいタイプ。さすがに営業にいるだけあるよね。」

言葉を重ねてほめ尽くす。
いない間に誤解はといておこう。

・・・・まさか本人も変だと思ってる?

まさか本人はそんなこと思ってないよね、的はずれなことしか聞いてないし。
だって個人情報はほとんど引き出してないよ。
興味あったらもっと聞いてるし。
私が聞かれたら、答えた後に聞き返しはするけど・・・・・。
弟の話はしたなあ。
あとは・・・・????
まあ、そんなレベル。住んでるところとか、週末の過ごし方くらいは聞かれて、聞き返して。
私はもっぱら仕事の事を聞いてるかも。
会社でのことを。
周りの営業の人の事などなど。
つまりはやっぱり浅田先輩の事を・・・。


「飯田君は誰と仲がいいの?」

「夏越とも仲いいよ。よく二人で飲んでる。お互い彼女いなくて寂しい者同士ね。」

「飯田くん、いないの?」

一応礼儀としてちょっと驚いた風に聞く。

「うん、名越もね。」

サラリと受け流された。
わざとらしかったとしたら逆に失礼だったかな・・・?

「久松さんは?」

「い、ない。」

あんまりサラリとは流せなかった・・・・。
逆襲ですか?

浅田先輩の爽やかな笑顔を思わず浮かべてしまう。
ちょっとおぼろげになってる気がするのは気のせいじゃない。
最近見かけることもないのだ。残念だ。

「ふ~ん。今度、一緒に飲もうよ。誘っていい?」

そう言われた。
楽しく飲むのは大好きだから。
たいてい予定はないから・・・・。

「うん。鞠も誘う、いいかな?」

「もちろん。」笑顔で言われた。


「あ、でも二人で飲んでるのは立ち飲み屋が多いんだ。安いし、賑やかだし。女の人も同じくらいいるけど、どう?苦手じゃない?」

「楽しそう。」

「そう?興味ある?じゃあ、絶対誘う。」

飯田君が嬉しそうだ。
一体どんなところに行ってるんだろう?
鞠も多分気にしないとは思うけど。

「あ、夏越、今、久松さんと飲みに行こうって話してたんだ。立ち飲みでもいいって。」

飯田君が帰って来た夏越君に報告する。
嬉しそうにそう言ってくれたのに、こっちを見た夏越君の顔はあんまり嬉しそうじゃなくて。勝手にだけど、ちょっと傷つく。

二人で見つめ合ってる。

言葉もないなんて・・・・なんだか・・・・・迷惑みたいじゃない・・・・。
いれかわるようにトイレに立った。
夏越君が飯田君に叩かれてたのが見えた。


別にいい。そんなの、無理に一緒に行ってくれなくても。


そう思ったから鞠に飯田君の誘いの事を言い出すこともなかった。
あの感じじゃあ、きっと誘われないから。



いつ浅田先輩に会ってもいいように、自分でも頑張ってる。
でも、本当になかなかそんな偶然はない。
やっぱりエレベーターから降りて見てもその席にはいなくて、相変わらず夏越君と目が合いそうになるから、見るのは一瞬にしていた。

そして、あの飲み会から何となく見るのも減らした。
そんな時に浅田先輩がいたんだとしたら本当に悲しいけど、多分居ないよね。


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