握りしめた細い糸の先で見つけたのは。

羽月☆

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19 小さな事件は日々起こり得て、油断できない日々が続くのです。

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金曜日、妙に落ちつかない私。

自分の事でもないのにドキドキして、ため息が出そうになり、肩を落として。
さすがに鞠に笑われた。

「普通に飲みに行くだけなのに。」

「だって頼まれたら、それなりに役に立ちたいんだもん。」

「だからセッティングしてあげて、あとはお二人でどうぞ、と。」

「どうしよう、本当に勝手にドキドキしてるんだけど。」

「本当に勝手にだね。なんかやらかして、邪魔だけはしないように。ゴシるよ。」

今のはどんな省略だろうか?
迷惑そうなゴシゴシの顔を思い浮かべて首を振る。

「大丈夫、大人しく、かつ楽しく飲む」

「その前に仕事ね。残業あったら置いてくよ。」

ゴシゴシは待っててくれると思うけど。
と思ってもやっぱり迷惑そうな顔が思い浮かんで・・・・。

仕事をした。

ちゃんと時間には終わる。
そうそう残業なんてない、しかも金曜日。

終わった報告をゴシゴシと志野ちゃんにする。
  

「志野ちゃんは終わったからここに来るって。ゴシゴシは分からない。返事なし。」

「飯田君は?」

「してない。」

そう言ったら鞠が連絡してくれて、もう一人と一緒にここに集合となった。

「ゴシって。」

「分かった。」

『みんな私と鞠の元に集合する予定です。どう?邪魔してたらごめん。』

しばらくしたら返事が来た。

『あと少しで行ける。』

良かった。邪魔ではなかったと思いたい。

「ゴシゴシ、あと少し。」
報告したら、笑われた。

笑顔が過ぎたかも。
バレる・・・・・、志野ちゃんと、誰かもう一人に。


それから30分くらいしてみんなが揃った。
化粧直しもバッチリ、志野ちゃんを見ると既に赤くなってる気がする。


鞠が新しい子担当、私はさりげなく志野ちゃんと飯田君を二人にするべく動く。
その作戦にした。

そして新しい一人は、穴井君だった。
知ってる、覚えてる、一度は近づきたくない人リストに入れたから。
すぐに外したけど、あの話は蒸し返すなよと背中を睨んで伝えたつもりで。


「志野ちゃん、明日の予定は?今日は飲み過ぎても大丈夫?」

「そんなに皆飲むの?私は明日は平気、予定無いよ。」

「じゃあ、楽しく飲もうね。」

「うん。」

「飲み過ぎたらどうなる?一応聞いておこうかな。」

「分からない、お腹いっぱいになったらペースが落ちるから、そんなにビックリするほど酔ったことないし。」

「そうなんだ。」

「そんなに強いの?」

「うん?知る限りの四人は普通に飲める。誰も変わらない。」

駅から斜めに歩いて数駅分離れてるけど、喋りながらあっという間に着いた。


予約したテーブルに通されてお酒の注文をして、料理を大量に注文する。

笑顔で乾杯が出来た。


いつもの四人より少し多いだけなのに、グンと注文数が増えた。
いいなあ、六人も。
席は思ったっ通りに端に飯田君が志野ちゃんと横並びで。その隣が鞠。
穴井君が正面、真ん中にゴシゴシと私。
うるさいから隣と話すには体を寄せて話す方がいい。
さっそく鞠が穴井君に話しかけて、ゴシゴシも加わっている。

飯田君に話しかけてこっちはこっちで。

「飯田君、最近変わったことない?」

「え~、久松さんが知ってる事なら大きく一つあるけど・・・・。」

ちらりとゴシに視線をやる飯田君。・・・それ以外です。

「あとは特にないけど。」

「言いたい?」

「特にないよ。穴井君と仲良かったの?」

「時々飲みに行くことがあった。最近ちょっといろいろあって、飲んでなかったから。誘ったんだ。久松さんと木村さんは?」

「ランチ仲間だよ。こういうところは少し人数増えたほうが楽しいし、ね。」

「うん。誘ってくれてありがとう。」

「志野ちゃんも飲める方らしいよ。」

「そうなんだ。何となく弱そうに見えるけど、頼もしいね。」

「でも、本当に女子が飲むレベルでついて行けるってだけだから。どうだろう?」

二人で会話をしてる時は大人しく料理を食べる。
美味しいし、テンション上がって喉も乾く、お酒も美味しい。

思わずだと思う、ゴシゴシの高い肩に手を置いてグラスを掲げた。
ビックリしたゴシゴシがこっちを見てグラスを合わせてくれた。

『いい感じかなあ?』

視線で聞いたのに。

「大丈夫?すでに飲み過ぎ?」

心配された。

もう、違うよ。そう思ったけど。

「大丈夫だよ、美味しいね。今日は頑張って仕事して、お昼も軽めだったから、お腹空いて喉も乾いて、気分もいい。」

「明らかに酔ってるよね?ちゃんと歩いて帰れる?」

そんな事言って連れて帰ってくれるくせに。そう思ったけど。

「ちゃんと歩きます。」

「そう願う。」

手は離した。
どんどん顔がそっちに寄って行きそうだったし。

「これ、美味しいよ。」

エスニック風にアレンジされた唐揚げを指す。
しばらく二人で食事を攻めた。

食べながらも正面の方の会話に耳を向ける。
飯田君は誰でも話しやすい人だから安心。
しっかり二人で会話してるし。
でも、だから特別感って分かんないかな?
特別感出てる?

声だけじゃあ分からない。


どうなんだろう?


志野ちゃんの気持ちが伝わってるんだろうか?


「寝てる?」

私は俯いて耳をすませて、真面目に友達の事を考えてるのに、ゴシゴシは全く違うことを言う。
少しは考えてくれてもいいのに。
飯田君は友達でしょう?

そう視線で伝えてもなかなか伝わらない。

「何だ。」

不満そうな顔をする。
その次の瞬間驚いた顔をして、おしぼりを鼻に押し付けられた。

ビックリした。
鼻が冷たい、変な匂い、化粧がとれる・・・・。

「鼻血出てる。」

「嘘!」

顔のおしぼりをそっとはがす。
赤い。
慌てて鼻に押し当てる。

ビックリしながらもバッグからティッシュを取り出してトイレに歩いて行く。


「何で、こんな時に出るの?」

背後で鞠の声が聞こえた。
テーブルは静かになったらしい。皆が気がついた。


二人の邪魔をしたのは結局私だったらしい。


よりによって、何で今日この時に?私も自分にそう言いたい。

ハッキリ二度目だと言いたい。
本当にゲストの二人にいつも出してるみたいに思われる。
あれ以来初めてです。
物心ついてからは前回が初めてで、今回が二度目。

トイレに行って鼻にティッシュを詰めて、顔の汚れを洗う。
被害はほとんどなかった。
ゴシゴシの手が素早く動いたから。
危うく服も汚すところだった。
まったく自覚はなった、気がつかなかった。

最悪のパターンは避けられた。

化粧ポーチ持ってくれば良かった。
随分濡れたお絞りに化粧を持って行かれた。

引き金が分からないって厄介だなあ。
二度ある事は三度以上あるかも。

時間をおいてスポッと鼻の詰め物をとる。
流れてくる感じはない。
大丈夫?

鞠が化粧ポーチを持ってきてくれた。

「ありがとう。助かる。」

「まあ、今更スッピンだとしてもゴシゴシは何とも思わないだろうけどね。」

「他にも二人いるじゃん。」

「まあね。飯田君と話出来てたみたいじゃない。いい感じだったよね。」

「うん、でも飯田君は誰にでも優しいから、分かりにくいね。」

「そうだけど離れて見てる限りはなかなかいい感じだったよ。」

「そう?鞠がそう言うならそうかも。」

「後はゴシってもらって。」

「ダメだよ、途中視線で聞いてみても全然伝わらない。寝るなとか、酔っぱらったのかとか、全然分かってくれない。」

「それは惚気ですか?」

「なんで?視線で通じ合えないって愚痴です。」

「ほうほう。遥がそう言うなんて。三人の視線を全く読み取れなかったのに?」

それは・・・・、それ。

「大丈夫なら、帰ろう。ゴシゴシが心配するよ。」

ただの鼻血ですから。


トイレを済ますと言う鞠をおいて先に出た。


本当に気の付く女の子。
鞠はいい子。
志野ちゃんも可愛い。


鞠が言うならなんとなく成功?
楽しい予感に足取りも軽く帰ったら注目された。

ん?

視線が顔に・・・。

あ、忘れてた。

「すみませんでした。久々の二回目、人生二回目の事件が再び。」
二回目を強調してやった。
本当に二回目だと思う。

今度お母さんに確認しておこう。

「一回目が研修中で、二回目が飲んでる時って、きっかけが分からない。」

「私も知りたい。予兆もなかったからゴシゴシが気がつかなかったら服にまで流血するところだった。助かった。」

しーん。

今度は何?


「『ゴシゴシ』って呼ばれてるんだ。」

飯田君が言った。

あ、しまった、油断してた。

顔が赤くなる。

でも恥ずかしいのは当人の方らしく、相当に赤いけど・・・・。


「噂には聞いてたけど、そうなんだ。」

穴井くんが発言した。
ブンッと首を動かして振りむいたのは当然私とゴシゴシ。

噂????

それはどんな・・・・そんな噂?

「そうなんだよね。いつの間にか僕も目を離した隙なんだよ。そして命名『ゴシゴシ』なんて。僕も初めて聞いた。なんだか面白いね。流行りそう。」

飯田君がチクリという。

「やめて欲しい。」

渾身の一言。勿論私じゃない、本人からだ。

あの・・・・、それは私に言ってませんよね。

「呼ばないよ。久松さんが呼ぶから可愛いんであって、男が呼んでも可愛くない。」

そうかも。
社内で『ゴシゴシ』と呼ばれて嫌な顔をして首を伸ばすゴシゴシを想像した。

たまには下の名前でも呼ぶし。
そっちも社内だと嫌がられそうだから内緒。


「で、久松さんは普通に下の名前で呼ばれてるの?」

うん、とうなずく。

まさか変なあだ名はないです。
鼻血にまつわるあだ名なんて無いです。
普通です。

「どうしたの?」

鞠が帰って来た。随分ゆっくりでしたが、彼氏に連絡してたとか?


「砂原さんは久松さんが夏越を何て呼んでるか知ってたの?」

「『ゴシゴシ』でしょう?なに?『ルイルイ』に変わったの?」

ああ・・・・鞠・・・・・・余計なことを。
私はそれは言ってません。
睨まないでください。


「『ゴシゴシ』の方が平和だね。」

そう言ってその話題は閉じられた。


隣に座るのが怖い。
テーブルの下で足を蹴られそう。

なんで鼻血なんて出たんだろう。
もうそこが問題なんです。

二度目というところは念を押したけど、それこそどうでもいいみたいに忘れてくれたらしい。


そっと椅子に座ると志野ちゃんがニコニコしてる。

お腹もいっぱいだし大人しく会話を聞いていた。

社内のカップルの話になっている。
知らない人と人。
多分鞠の携帯のフォルダに追記されるだろう情報。

時々飯田君が志野ちゃんの方を向いてニコッと笑うのを見てた。
いい感じじゃない?

今度こそゴシゴシを見上げたら目が合ったのに、やっぱり呆れた顔をされた。
今一つ通じないらしい。

ゴシゴシの方に問題があるんだと思いたい。


時間が来て会計をして駅まで歩いた。
その内方向がバラバラであちこちに散り始めて、とうとう二人になった。

だったら急いで帰る必要もない。

のんびり歩いて広い通りを歩く。
手をつないで。



緑を立体的に植えて、小道を作っている広場に出た。
この時間、近くのバーの周りには人がたくさんいて、時々酔いを醒ましたり、個人的に話をしたい人たちが歩いて来るみたい。

それでもこっそりと見えにくい場所が作られてるのを知ってる。

もしかしたら・・・・・、
この雰囲気でも叱られるのはがっかりだと思ってたけど、何も言ってこない。
忘れてる?

「志野ちゃん可愛かった。」

「そう?」

「もう、全然二人のこと見てないでしょう?ちゃんとうまくいくように見守ってよ。」

「あいにく隣の彼女が肩に手をかけて甘えて来るし、鼻血は出すし、変な暴露をするし、隙あらば甘い顔で見て来るし、よそ見してる暇がなかった。」

「はぁ、違うよ、いい雰囲気だねって、そう言いたかったんだよ。それなのにまったく通じないし。」

もう、何言ってんだか・・・・。
怒ってる振りしながらも、顔が勝手に赤くなってると思う。

「飯田も楽しそうだったし、今頃二人で話してるんじゃないか?だいたい目的は気がついただろう。そんなに周りの思惑に鈍感じゃないよ、誰かと違ってな。」

また嫌味を言う。


「でも、そうだと嬉しいなあ。」

可愛かったなあ~、志野ちゃん。
私が男だったらあんなかわいい子がいいなあ。
鞠はしっかりし過ぎてるから、呆れられそうだなあ・・・・って男になってもこんな自分のままなんだろうか?


「ねえ、ゴシゴシ、女の子になれるとしたら、誰がいい?可愛い志野ちゃんと、しっかり者の鞠と、ちょっと頼りない私。」


「遥は大変そうだけど、面白そうだから、遥でいい。」

『でいい。』って仕方ない感じに?
『がいい』ならうれしいのに。


「私は『私』も楽しいよ。周りがしっかりしてくれるし、ね。」

「俺みたいな心の広い男がいればな。」

「なかなかいないね、頑張って見つけてね。」

「今すごく褒めたのか?なあ、褒めたよな。」

「さあね。」

そんな時だけ伝わるらしい。
なかなか巡り合えない、自分に合う人には。
最初の研修で偶然後ろに居てくれて、鞠がいてくれてすごくラッキーだったんだ。

私はありえないくらい・・・とは言わないけど、ラッキーな女だったのかも。

呆れずに笑ってくれる相手を見つけられた。
理想の通りかも。

ゴシゴシの目に映る自分の姿がうっすら見える気がした。
緑の中の隠れた場所でも隙間や頭上からは街頭やビルの光が差し込んでくる。

目を閉じる瞬間までそんな小さな自分を見てたかも。

離れた唇をすぐに開く。

「早く、部屋に帰りたい。」

今、とっても甘えた顔をしてるかも。
それでも軽く笑って頬を撫でてくれる。

「帰ろう。」

その手で手をつながれて、外に出る。

急ぎ足になるのを引き留めるように落ち着かせる。

友達が幸せになったら、自分はもっと幸せになりたい。
そんな負けず嫌いなところもあるんだと思う。

だって本当は鞠にも追いついて追い抜きたいくらいだから。


内緒だけど、そう思ってる。
欲張りな私はつないだ手を離すことはない。
ずっと近くにいて欲しい。
ゴシゴシが呆れるくらい、いつも楽しく笑っていると思うから。


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