がさつと言われた私の言い分は。

羽月☆

文字の大きさ
18 / 23

16 自分の成長を自覚するドラゴン。

しおりを挟む

「なんだか逞しい顔になったぞ。」

実験室にこもって、区切りがついたときに椅子にもたれて休んでたら、高田さんに言われた。

目を開けて下から見上げるような形になって、急いでもたれた体を戻した。

「高田さん、びっくりしました。」

「少し休めば。残業無しで頑張っても、どうせ向こうの方が遅いだろう?」

確かにそうです。
自分は予定が立つのに皐月さんの方は本当にギリギリまで分からないから。
そしてその場合はたいてい他の人のせいで。
ブツブツと愚痴を言いながら、謝られるパターンが多い。


「あいつも少し部屋がきれいになったらしいし、お前もすくすくいい男に育ってるみたいだし。うまくいってるんだろう。」

真面目に聞かれると照れる。
前みたいに揶揄われて、異常に接近されることはなくなった。
なんであんなに最初の頃、迫られたんだろう・・・。
今となっては謎だ。過剰に揶揄われたのだろうか。

自分でも少し顔つきがしっかりしてきたと思いたい。
皐月さんにもそう言われることがある。

それでも残念そうに言われる。

「時々前の可愛いリュウがいないって思っちゃう。」

前みたいに肩に甘えることも少なくなってきたから。
でもその後に褒められる。

「すごく大人っぽい顔つきになった。目も違う。」

照れながらそう言ってくれるから誉めてくれるんだと分かる。

「まあ聞くまでもないか。」

高田さんの声がした。
つい、回想シーンにふけっていた。やばい。

「はい、楽しく過ごしてます。」

「まあ、頑張れ。」

「はい。」

呆れた顔で見つめられて、手を振って出て行った。

全力で頑張ってます。

部屋もきれいになったらしい。
行きたいと言っても絶対招待してくれない。

元カレたちが泊った部屋。
そんなところには行きたくはないから無理にはいいんだけど。

それに皐月さんが気にしてたガサツポイントも、今のところ分からない。
こまめに動くのを偉いと褒められて、床や水回りはもちろん、クローゼットや棚もきれいだと褒められて。さりげなく観察していて、褒められることがある。
物が少ないんだと思う。
女性に比べるとそれは圧倒的に。
熱く語れる趣味もない自分は特に。

だから気にしなくてもいいのに。

僕は気にしてないのに。



話をしてたように、先週の忙しさから一転、今週は頑張れば残業は少しだけだと。
30分くらいだと言われたら、大人しく待ちたい。

元々器用に自炊をする方じゃない。
一緒に分け合って食べれるなら、それでいい。

駅周辺で・・・・というわけにはいかないので最初にデートした分岐の駅周辺を開拓する。
毎日違うお店に行く。
学生が多いらしくチェーン店以外にもコスパのいい店ばかりで助かる。

一緒に選んだお店に行き、混んでたら違う店にという感じで。

「はぁ~、ねえ、毎回外食って、太りそう。」

「あぁ、すみません。」

「別に、そう言う意味じゃないよ。」

そう言って笑う笑顔は随分とリラックスしてる。
高田さんに見せる顔とも違う気がするし。
時々目線にドキッとしていろいろ思い出しそうになるから大変だけど、たいていはそんな緩んだ感じだった。

「皐月さん、自炊は?」

「・・・家事全般苦手なの。本当に情けないけど。」

「僕もあんまりしないです。もしよかったら僕の部屋で簡単に作ったら経済的でもあるし、野菜もたくさん食べれますけど。」

「味の保証が出来ない。」

「チンするものに野菜を足したり、ちょっとお惣菜を買ってきたりとか・・・・・。」

そう提案したのに返事はもらえず。

「なんだか生きてくのって大変だよね。衣食住すべてがエンドレスに繰り返されるね。食べてかたずけて、着て洗って、掃除して汚れて、また掃除して。少しでもサボるとどんどん落ちて行きそう。」

「でも美味しいものは食べたいし、おしゃれもしたいし、汚いよりきれいがいいし。きっと楽しい事です。」

「全くそうは思えないんだけど。美味しい物も勝手に出てくると嬉しいし、おしゃれもしたいけど、きれいな部屋がいいけど。簡単じゃない。なんだかダメだよね、そんな女。」

「今、誰かを思い出してるんですか?そんな皐月さんが嫌だと言って去っていた人を。」

「え?別に思い出してない。」首を振る皐月さん。

「最初はしょうがないなあって思ってくれても、最後は本当に嫌になるみたい。」

悲しそうに笑う。
まるで僕もそうなるよって言うみたいに。だから覚悟はしてるっていう風に。

「・・・・・やっぱり思い出してるじゃないですか。」

あえてそう言って話をずらした。

「残念ながら顔は思い出せないかも。ぼんやり存在だけ。」

そう言えば安心するって思ってるのだろうか?


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)

久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。 しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。 「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」 ――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。 なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……? 溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。 王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ! *全28話完結 *辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。 *他誌にも掲載中です。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

25年の後悔の結末

専業プウタ
恋愛
結婚直前の婚約破棄。親の介護に友人と恋人の裏切り。過労で倒れていた私が見た夢は25年前に諦めた好きだった人の記憶。もう一度出会えたら私はきっと迷わない。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

処理中です...