公園のベンチで出会ったのはかこちゃんと・・・・。(仮)

羽月☆

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6 知り得た情報は悲しい現実、だたそれだけだった。

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毎週月曜日、時間があると真奈さんを探して公園に来るのが日課になってしまった。
最初の一度しか出会えてないけど。

それから月曜日じゃなくてもここにきてしまう。
だって涼しいし、いろんな人が集まって情報が集まりやすい。なんて言い訳だけど。
後ろから声をかけられた。

「光司さん、調子はどう?」

直樹だった。

「何の?」

「決まってるじゃん、パン屋の姉ちゃん。略してパン姉。」

さすがに直樹には今更取り繕う気も起きない。報告する進展もないけど。

「本人に会っても言うなよ。」

「勿論だよ。」直樹が睨みつけてくる。

「ねえ、いいの?」

「何が?」

「もたもたしてるからさ。」

子供から見てもそんなにスローペースに見えるのか?もたもたって言われるほどか?

「月曜日におしゃれしてさわやかイケメンとデートしてたらしいよ、お昼のランチタイム。駅向こうの高そうなレストランね。」

何故か平日のランチの情報が関係ない直樹にばれてるらしい。


「よく知ってるな。」

「もちろん、パン姉の情報は入るようになってるから。」

そう言って直樹に見つめられる。


「今まで目撃談はないからパン姉は初めてのデートじゃない?」

直樹、今お前が恐ろしくなったぞ。自分のここ数年で作り上げたネットワークもなかなかだけど、直樹のネットワークはさらに凄そうだ。いろいろとお世話になってるから分かる。
でもそんな大人の事情のいろいろまで集約してるのか?

「なんでそんな個人的な事まで知ってるんだ?」


「へ?いつもバイト代もらってるから光司さんのために少し情報集めたんだよ。あ、大丈夫だよ、光司さんの事は全然言ってないし。その辺はうまくやってるから。」


「直樹、お前、すごいいい奴なんだな。」

「え~、今気がついたの?」

「いや、今更しみじみと思っただけだ。」

最初の時に彼氏はいないって確認できてたので安心していたのだが。


「なあ、そんなにさわやかイケメンだったのか?」

「まあ好みの問題じゃないの?商店街の近くの会社の人らしいよ。パン屋によく行くから仲良くなってデートしたみたいな感じじゃん。」

「凄い情報だな。」

「写真撮っとけばよかったね。会社でパンが人気になってるらしいよ。時々スーツの人がたくさん買ってるみたいだし。」

「ふ~ん。」


「ちなみに駅で別れたらしくて、すごくがっかりした感じで一人で帰ったらしいよ。」

それはこの間の事だろうか?
元気なく歩いていた月曜日。
直樹に集まった情報に自分が部屋までついて行った姿はなかったらしい。
それは良かった。

何があったんだろう?
あんなに元気がなくなるくらいの何かがあったんだろうけど、それは何だろう?


だからと言って今ここでバタバタしてもしょうがない。
自分とは関係ない所で誰かとどう動いてもしょうがない。

「ほら、だからもたもたせずにどんと行ってこい!」

子供なりのストレートな意見。いいなあ、未来があるって。

「大人になるとそうもいかないよ。自分が動いた波紋はいろんなところに広がるから。掴んだ石を拾うだけでも、もしまた同じところに戻したとしてももっと大きな波紋になるし。」

「なんだか大人って面倒だね。人間よりはやっぱ動物がいいな。本能だけで生きてみたい。」

「直樹、それ10年後に言ったらやばい奴だって。」

デブでエロい大人の直樹なんて見たくない。

「まだ先の事だからさ。でもパン姉の事は今のことじゃん。」


子供に背中を押される大人。なんだか真奈さんには偉そうに言っても結局自分はこのレベルなんだな。笑えるよ。

「ほらほら、パン屋に行ってみたら?絶対合える場所なんだから、まだ間に合うんじゃない?」

「そうだな、行ってみる。」

やはりその情報は気になってしまう。
はっきりわかるまでずっと気にしてしまいそうだし。


「なんかあったらメールしてね。」

「ああ、ありがとう。じゃあな。」

直樹と別れて森のキノコさんへ行く。

入り口で大きく深呼吸する。行くんだ!気合1つ。
お店に入るとはっきりとした違和感があった。
今日子さんがお店番をしていた。
真奈さんはいない。

「あら、佐野さん、真奈ちゃんならいないわよ。」

サッと探した視線を読まれていた。

「でも佐野さん、ちょうどいいところに。またバイトお願い。うちのかわいい真奈ちゃんが風邪でお休みしてるの。今元気になりましたメールが来たからお見舞いの品を届けてくれる?部屋は教えるけど玄関ですぐ帰ってくること!」

ちょっと待ってと奥に行き住所とバイト代とパンを渡される。
労せず部屋番号をゲットできた。

「なにか栄養ドリンクでも買って行ってね。」

渡されたポチ袋。自分でも何か見繕って買おう。

「じゃあ連絡しとくから、今すぐ行く?」


「はい、今から買い物して行きます。」

「じゃあ、お願いね。特別なことがなければ特に報告はいいわよ。他にもここに用事があったなら別ですけど?」

「いえ、今日は特に・・・。」

笑われた。すっかり隠す気もなくなる。

「じゃあ気を付けてね。」

そんなに年も変わらないはずだが今日子さんには敵わない。
真奈さんは暖かくて優しいというが、ちょっと自分には違うような気がする。
まるで本当の姉のようだ。お世話になっているという意味を込めて。

買い物をしたらすっかり袋一杯になってしまった。
体力は必要ということで。まずは食べてもらおう。

さてここまでなら何度か見送った。
重たい袋を下げたまま入り口のドアを見る。
部屋まで行くのは当然初めてだ。

オートロックを解除してらもう。声は大分元気そうだ。

部屋の前で深呼吸してピンポーン。鍵が開く音がして顔がのぞく。

手渡した荷物の多さにびっくりしたらしいが、結果部屋で一緒に食べることになった。
お金を使っても得られない価値。それは単純にうれしい。
これは直樹にお礼とともに報告するべきことか?

一緒にデザートタイムになった。

さり気なく月曜日の午後の事を聞こうとする。
お昼にデートしていた相手は誰ですか、どんな関係ですか?好きなんですか?
何かひどいことを言われたんですか?また会うんですか?
でもそんな核心に話が及ぶ前に拒絶された。

あまりの悲しい話に手にしていたスプーンも落ちる。

自分が優しくかけた声は真奈さんの空っぽな心には響かない、と。
この間猫の里親騒動の後、一緒に食事をした時にもいろいろと言葉をかけたつもりだった。
それでも『優しいですね』と真奈さんは言った。
心を込めたつもりだった、本当の自分の気持ちもちらりと見せながら特別だからと、自分にとって真奈さんと出会えたことも特別だからと伝えたつもりだったけど。本当に伝わってなかったらしい。
ガッカリと残念だけど僕はこんな事では諦めない。自分だって経験がある、もっとひどい経験が。何度でも言う、もっとわかり易いように自分の気持ちも言う・・・・それでも今の弱ってる彼女には自分の気持ちすら重いかもしれない。

いったいさわやかイケメンに何を言われたんだろう。結局はそこじゃないのか?
むしろそこまで影響力がある存在って何だ。
ゆっくり呼吸して落ち着く。自分の事じゃない。真奈さんの事だ、今考えるのは。
下を向いて泣いてるかもしれない真奈さんに出来ること。
あの当時師匠が自分にしてくれたこと。ただ近くに居てくれた。男と女の違いはあるけど。
少し体をずらして彼女に近寄る。さやかちゃんをなだめる時の様に手だけを伸ばして頭を撫でる。

「心が空っぽなら今からだっていっぱいになるんです。流れても流れても僕は言葉を注ぎます。真奈さんの心がもうたくさんだ、分かったって言うまで。僕も経験がありますから。空っぽになって何も持たずに山をさまよって拾ってもらった経験が。言葉もない位空っぽでしたよ。ただただ拾ってくれた人の家の廊下で光を浴びて庭の木を見つめてました。食べることもほとんどできない状態でしたから。真奈さんはちゃんと出来てます。そんなに空っぽな心ならなんであんなに猫をかわいいと感じたんですか?さやかちゃんと仲良くなってお客さんとも普通に会話して。全然空っぽじゃないですよ。真奈さんが見えてないだけです。月曜日何かありましたか?実は少し知ってます。小さな友達が教えてくれて。本当はすごく気になります。今僕の心をのぞいたら真奈さんがびっくりしますよ。すっごい怒りと嫉妬で優しさを見つけるのが大変なくらいです。話ができるようになって、聞きたくなったら聞くかもしれません。でもそこに何か原因があったのなら僕は何としてでも取り除きたいです。そのためだったら、力になれるのなら何でもします。」

撫で続けた頭がゆっくりとこっちに倒れてきた。体を寄せて受け止める。
両手が自分の胸に当てられて真奈さんの熱が伝わってくる。

「優しくしないでください、なんて言ってるのに・・・すみません。もうしばらくだけこのままでお願いします。」

抱きつかれたわけでもない。両手が体ごと密着するのを防いでるようでもある。
それでもおでこと頬と肩を預けられる。
自分の手は頭に置いて髪を撫でる。
こんな時だけど思ってた通りに気もちがいい手触りだった。
もう片方の手で背中をさする。

「気が済むまでどうぞ。」

ゆっくりなだめる様に動かす自分の手に伝わる感触が心地よくて。目を閉じてただただ感じた。つい腰をグッと自分に寄せて体を近づけて、髪の上からキスをしたのを気づかれただろうか。あまりの心地よさにうっかり恋人気分を出してしまった。
ピクリと動いたような反応もなかったので大丈夫だろうとほっとする。
しばらくすると胸の両手に力が入りそのまま体が離れた。

「すみませんでした。また、佐野さんの優しさに甘えてしまいました。」

下を向いたままの真奈さん。

「優しい・・・ですか。真奈さん、ちゃんと言います。僕は助けれる人を助けるのと、大切なものを守るためのものと、その優しさは区別してるつもりです。わかりませんか?」

小さく首を振られた。その反応はどっちなんだろう。

「大切なものはそう多くは抱えられないんです。そんなに器用な人間じゃないですから。だから気長に待ちます。でも早く気がついてくださいね。」

髪の毛にキスをして立ち上がる。
このままここに居たら自分の気持ちをぶつけて強引に迫りそうになる、弱ってる真奈さんに。それは今日子さんに頼まれている以外の事だ、怒られる。


「明日から仕事ですよね、今日までゆっくり休んでください。このまま僕は帰ります。もし必要な時はいつでも呼んでください。何時でもいいですから。じゃあ、またお店に会いに行きます。」

うつ向いたままの真奈さんの頭を名残惜しそうに撫でて背中を向けた。
小さくありがとうございますという言葉が聞こえた。少しとまった足をまた動かす。

「今度は笑顔を見せてくださいね。」

玄関のドアを開けて部屋を出た。
まだまだ伝わらないだろうか?自分の気持ちはすごくわかり易いと思うのに。それは小学生にすらバレるくらいに、今日子さんにだって。

何で肝心の本人に伝わらないんだろう。

手と胸に残る感触に体が震える。
気長に待つんじゃないのか?自分で呆れてしまう。
言ってることもやってることもよく考えるとめちゃくちゃだ。それに気がつくくらいの余裕が真奈さんにない今だからできた。
食べ残したゼリー、飲みかけの紅茶。
立ち去るタイミングは間違ってたかもしれない。
ああ、つくづくめちゃくちゃだけど、少し前進したと考えたい。
やっぱり自信はないけど。

そのまま部屋に帰り布団にダイブする。
良く分からない衝動が体を駆け巡る。
結局なに一つ分からなかった肝心の事。僕の言葉は響かないのにそのさわやかイケメンの言葉にはあんな顔をするくらいにダメージを受けたらしいと。自分の貸した胸は温度を持った壁であの時は誰でも良かったのでは。まさか壁が自分を引き寄せて頭に違う温度をくれてたなんて思わないだろう。だから本当にもたれるための壁で良かったのではないか。
自分の体との間にあった両掌がそれを物語っていたとか。

考えれば考えるほど負の要素しか思い当たらないのに、どこかで期待してる自分もいた。
あのまま抱きしめていたら、もしかしてと。
真奈さんは自分が優しさを振りまいてるように言う、仕事だ。
それを言うなら真奈さんだって商店街のおやじ達に家族以上の愛想を振りまいてる、そして自分に向ける笑顔も。パン屋で一緒に猫の話をしていた時は完全に壁はなかった。
ああいう風に他のお客にも。
そして直樹が教えてくれた近くの会社のさわやかイケメンにも。

食事に誘った時、わざわざ今日子さんを見て確認した。じゃあ、あのさわやかイケメンの時は?メールアドレスを交換しても彼女から連絡が来ることはない。ちょっと目新しい発見をシェアするように写真を送りメッセージをのせる。それに短い返事がくるだけだ。さっきまでは進歩したかと思ったけどやっぱり勘違いかもしれない。一歩も動き出せていないのかもしれない。やっぱり自信はないのだから。

胸で携帯のアラームが鳴る。次の仕事に向かう時間だ。
意識を切り替えて笑顔を作る。

もっと違う笑顔だって気がついてほしいのに。

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