小さな鈴を見つけた日 

羽月☆

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16 さらに隠されているらしい、事情

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最近は朝起きても普通だと思えるようになった。
時間の経過は偉大だし、さすがに青空の下で、瞬殺された思いは小さく小さくなって消えたらしい。

課長も大人しく仕事をして、パソコンたちも反抗的にならず。
日々は実に淡々と過ぎて行った。


本当に秋めいて。
すっかり細くなったままで維持することにも慣れていた。
時々川べりを散歩する。
トニーと川瀬さんと会うことはない。
ただ同じようなレトリバーを連れた女の子とすれ違ったことはある。
犬の方が私を見上げたけど、特徴的な首輪もしてなかったから、その犬がトニーかどうかは分からなかった。


久しぶりに大学の時の友達に会った。
会ったとたんに目を見開いて、痩せた私にびっくりしていた。


「わあ、昔に戻ってる。ダイエットしたの?」

「うん、後輩にデブデブって言われて、スカートの上の肉をつままれて。自社製品を食べて頑張った。」

「本当?私も太ったら小鈴のところのお弁当食べる。痩せるんだ・・・・。」

そう言う友達は太る気配もなく。
学生の頃から全然変わらない。

「全然変わらないじゃない。」

「まあね、努力はしてる。」

「偉いね。」


「どのくらい痩せたの?」

「とりあえず二週間ちょっとで7キロくらい。」

「え・・・・それは痩せすぎよね。」

「まあね。運動もしたよ。その後も少し痩せて、維持してる状態。」

「ふ~ん。」


「なんだか綺麗になった。いい事あった?」

「ない。・・・・・逆。悲しい事はあった。」


「何?」


「子供と遊んでる先輩に会って、失恋したことに気が付いた・・・・。」


「何それ。」

微妙な間が空いて聞き返された。

「結婚してるなんて知らなかった。それが子供までいて。その現場を見て初めて、自分が好きだったんだって気が付いた、と同時に失恋した。」

「そんな事ある?何で結婚してる事を知らなかったの?」

普通はそう思う。
でも他の人もまさか・・・・って、本当にそういう反応になると思う。

「変わってるけど有能という噂しかなかったし、会社の人もほとんど知らないと思う。だって子供の年から考えて大学生でパパになってる。就職した時にはすでに扶養家族がいたって事。」

「・・・・いるの、そんな人。」

「いたの、そんな人。」

「かっこいいの?」

「多分。」

「残念だったね。」

「うん。」

「それで痩せたんだ。」

「・・・・・まあ・・・・。」


「美月は?何かいいことあった?」

「うん・・・・まあ、相変わらず。」

「相変わらず・・・ラブラブなの?」

「そこそこ。なんだか一緒に暮らし始めて、逆にいろいろ面倒が増えるんだよね。ぶつかることも増えるし、楽してる分、お互いに気を遣わなくなるし。新鮮さも薄れるし。」

「贅沢だね。」

「まあ、そうなんだけど。」

「時々気分をリセットしたくなる。1人になりたくなる。」

「ふ~ん。週末も一緒?」

「外に出かけることが少なくなる。そうすると当然ご飯も作る。おしゃれはしなくなる、ダラダラしてる二人の出来上がり。」

「じゃあ、他の子も誘ってたまには遊ぼうよ。」

「もちろん。ガンガン遊びたい気分。」

「それは反対されないんでしょう?」

「うん。大丈夫。」

「何だ、結局幸せそうに笑ってるじゃん。」

「まあ・・・そうかな。」

「・・・・あやかりたい。」

「頑張れ。すごく綺麗になったよ。痩せただけじゃなくて、なんだか雰囲気変
わったかも。」

「そう?」

「うん。だからいい事あったのかなって思ったんだから。」


「は~、頑張ろうかな。」

「うん、幸せを勝ち取れ。」

「よしっ。」


すごく気分転換になった。
元気をもらった気もした。


だから月曜日、普通より少し元気よく目覚め、黄粉牛乳にフルーツヨーグルトも食べて出かける。


ランチの量も少しずつ元に戻って来てる。
沙良ちゃんと外に出かけた。

「すず先輩、この間聞いたんですけど、・・・・七尾先輩が好きなんですか?」

うっ。
危ない、口にたくさん含んでたら、口か鼻から噴き出すところだったかも。
今日はスープランチにしていた。
ゆっくりスープをすすっていたのが良かった。飲み込んで堪えられた。

「何?何でそうなるの?」

ビックリした。
何でバレたの?顔が赤くなる。
じっと顔を見られた。
ニヤリと口角が上がって嬉しそうな顔になった沙良ちゃん。

「知らなかったです。全然知らなかったです。」

勝手に肯定したことになってる。

「待って、そんな事言ってない。誰がそんな事言ったの?」

「兵頭先輩ですよ、もちろん。こっそり聞き出したって言ってました。」

いつ?兵頭さん、何言ってるの・・・・。
怖い・・・本人に言ってないよね・・・・・。

「沙良ちゃん、そんなこと少しも言ってないし。」

「だって兵頭先輩をだませます?」

そうきたか・・・・。

「違う。勝手に勘違いされたの。あのね・・・・本当に内緒にして欲しいんだけど・・・・・・。」

声を潜めて告げた。
口にしてもなんとか平静でいられるようになったから。
七尾さんが大切にしてる家族の存在。

「本当に偶然会ったの。びっくりした、最初は全然気が付かなかったから。会社でも内緒にしてるみたい。あんまり言うことでもないしって言ってた。」

信じられない表情の沙良ちゃん。
ほら、私だけじゃない。
本当に誰も、想像もしてないと思う。


「だから、ちょっと興味があって年齢が知りたかったの。全然知らなかったから、もしかして思ってるより年上で8歳の娘がいてもおかしくない年なのかなって思って。ほら、浪人とか留年とかで就職が遅くなるってこともあるし。」

「でも・・・・学生結婚って事ですか?20歳ですでに子持ち?」

「沙良ちゃん、本当に内緒にして。本人にも悪いし、本当にお願いね。」

沙良ちゃんには何度もお願いした。
その事実にさすがにびっくりしたらしく、私の話はどこかに飛んで行ったらしい。とりあえず良かった。
でもごめんなさい・・・・・勝手に言ってしまって・・・・。
七尾さんに心の中で謝った。

とりあえずランチを終えて会社に戻った。

席について、沙良ちゃんが思い出したように聞いてきた。

「すず先輩、で、その犬の人は?」

すっかり『犬の人』の川瀬さん。

「ああ、あの二週間だけ何度か一緒に散歩したの。それだけ。もう会ってないし。なかなか偶然にも会うことはないのよね。」

笑って教えた。

つまらなそうな顔をした沙良ちゃん。
分かりやすい。


数日後、また沙良ちゃんとランチを食堂で食べていた。


「すず先輩、やっぱり納得できなくて。」

「何が?」

嫌な予感を押し殺すように聞いた。

「兵頭先輩に聞いたんです。」

「沙良ちゃん、何を聞いたの?あんなにお願いしたのに。」

「だからバレないように聞きました。兵頭先輩は泊まりに行ったことがあるみたいです。1人暮らしの部屋に。」

へ?
当然七尾さんのことよね・・・・。1人暮らしの部屋?

「就職して数年して実家を出たらしいです。実家とはさほど離れてない同じ路線上で会社に近い駅に引っ越して一人暮ししてるみたいです。」

どう言うことだろう。
浮かぶのは・・・・離婚、別居、週末パパ?

「やっぱり謎ですね。」

「ねえ、本人に確かめようとか思ってないよね。私がバラしたって丸わかりじゃない。絶対だめよ。お願いね。」

「はい・・・・・私は何もしません。」

諦めてくれたらしい。

良かった。

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