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28 やっぱり、自分以外の人の気持ちはどうしようもない
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なるべく普通に元気を出してるふりを装い、溢れる機嫌の良さを押し隠して仕事をした。
隣からは何も言ってこない。
今日は私も沙良ちゃんも忙しい。
真面目にコツコツと仕事を片付けてるから、隣の人を揶揄う余裕もないし、揶揄われる隙もないはず。
ランチタイム少し前に、椅子ごと倒れそうなくらいにのけぞった沙良ちゃんが声を出した。
疲れた。
やっと終わった。
勿論全部じゃない。
お昼前に区切りがついたと言いうことで。
やっと私の方を見る余裕を作ったらしい。
自分の心を引き締めた。
「すず先輩・・・・・・。」
視線を感じる。
「何?」
冷静に返す、目は合わせない。本当に何?ちょっと怯える。
「本当に・・・・・すっかり・・・・・」
何????
「痩せて、なんだかやつれた感じもなくなって、すごく・・・・・・。」
何よ~・・・・。
「きれいになりました。すごく、きれいです。」
ゆっくり褒められただけらしい。
ホッとした。
区切りのいい所まで進んで、横を見た。
「ありがとう。あれからリバウンドもないし、新しい服を買ったから、もう太らない。」
そんな宣言をした。
沙良ちゃんが嬉しそうに笑う。
その笑顔こそ可愛い。
本当はお礼をいいたいけど、もう少し待ってね。
「良かったです。落ち着くところに落ち着いて。は~、なんだか振り回されましたが一安心です。」
?
「あと少しで、ランチです。話は外でにしますよね?」
最後は小声になって体を寄せられて聞かれた。
何だか・・・・まさかね?
「・・・・うん。」
取りあえずそう答えた。
お昼 時計の針と同時に沙良ちゃんがパソコンを閉じて。
私も書類を保存して同じようにして、一緒に出掛けた。
午前中すごく頑張ったから、午後はゆっくりペースでも大丈夫そう。
休憩もとれる。
体が痛くて、特に太ももと腰。
ちょっとくらいサボっても太らないんじゃないかな?
夕食は軽めにするから、階段の上り下りは今日はパス。
沙良ちゃんとこの間のベトナム料理屋さんに行く。
気に入ったらしい。
私には何も聞かれず、ついて行ったら到着した。
「ゆっくり話が出来るし、ここにしました。」
割引券を持ってニコニコしてる。
「いいよ。私、食欲も戻ってるし。」
「もう、当たり前でしょう。ちゃんと食べてください。別に痩せてる女が好みって事もないみたいですし。」
あんなに痩せろと言って肉までつまんで、やばいを連発してた人が・・・・。
あの頃からは8キロくらい痩せてる。
少し戻しても、服は大丈夫。
すっかり昔の服が着れてる。
ランチセットを頼んでテーブルに肘をついて両手を開いて顎を乗せる。
素でこれをやる人はなかなかいない。
何だろう、圧迫感がある笑顔・・・・・。
ランチが運ばれてきてテーブルが少し狭くなるとさすがにその体勢は止めてくれた。
「で、ちゃんと聞いたんですか?謎の女の子。」
もやしを口に入れたまま咀嚼も止まる。
喋れないので首を横に倒す。
顔は・・・・どうなってる?
「もう、ちゃんと聞いたんですよね。本当に×ありだったんですか?」
「もしかして、七尾さんの事?」
取りあえず様子を見たい。少しとぼけた。
「もちろんですよ。あれからどうなったんですか?二人で歩いてましたよね?」
「いつ?」
「先週の木曜日。」
何で知ってるの?
「あれは・・・・沙良ちゃんがいけないのよ。辞めるって勝手に言うから、話しかけられたときに確かめたのよ。そしたら辞めないって。何でそんな話になったのって聞かれて、食事をしながら話をしたのよ。」
「辞めるなんて言ってないです。どうしてそう思ったんですか?」
「だって会えないとか、いなくなったとか、せっかく仲良くなれたのに残念だとか・・・言ってたじゃない。」
「あああ・・・・、あのボサボサの個性的な姿を止めたんだなって、もう会えないなんて残念って言ったんです。仕事を辞めるなんて言ってないです。」
じっと見た、本当に?わざとじゃなかった?
「それはいいです。ボサボサからすっかり普通のサラリーマンになったことは。もう一つの先輩が気にしてた事です。」
ハッキリ気にしてたと言われた。
確かにそれが『問題』で、おかげでダイエットが進んだんだけど。
「それは・・・・私は何も言えない。勝手に言ったら・・・・ちょっと悪いから。ごめん、沙良ちゃん。」
「いえ・・・・・、でも今は一緒にいていいんですよね。七尾先輩とすず先輩が一緒にいていいんですよね?」
沙良ちゃんも私の誤解を引きずった内容のままで納得してくれたと分かる。
申し訳ないけど訂正するわけにもいかない。
でももう一つはちょっと否定しておく。
「沙良ちゃん、別に七尾さんとは普通の知り合いだから。」
「そんな訳ないですよね。だって・・・・、全然違います。雰囲気が。今日は本当に違います。・・・・っでもいいです。先輩のことだから何とか誤魔化したいでしょうから。私がちゃんと証拠を突き付けてぐうの音も出ないくらいに、否定できないくらい追い込んだら認めてもらいますから。そう時間はかかりませんから。良かったです。本当にハッピーオーラ全開です。」
少しも否定は受け入れてもらえなかった。
どうやらわかりやすいらしい。
しかも近いうちに『ぐうの音も出ない証拠』を突き付けられる予定になった。
どんなボロも見せられない。
うっかりなんて・・・・。
何だか素直にお礼を言えるタイミングを無くした気がする。
どうしよう。
「楽しみにしててください。」
にっこりと笑われた。
「先輩、食べましょう。」
そう言って2人は食事を再開する。
なんだか緊張してきた。
気が抜けない。
食事は急に味がしなくなった。・・・もったいない。
「また兵頭先輩も入れて飲みましょうね。いろいろと七尾先輩からも聞きたいです。あれやこれやと。」
そう言われたけど、出来たら遠慮したい。
兵頭さんと揃ったら本当に容赦なく攻め立てられそう。
バレなくていいことまでバレそう。
きっと私がボスッとガードの甘い所から攻撃されて、赤くなって声に怒りを乗せて兵頭さんに怒る七尾さんが想像できる。
怒られるから嫌だ。
その後絶対私が責められそう。
一日に何度かメッセージのやり取りをして。
それでもトイレや休憩に行った時とか、沙良ちゃんが席を外した時に見ている。
今のところバレる様子は・・・・はっきりはない。
「すず先輩、まだ運動してるんですか?」
「うん、だって食欲戻ったから、リバウンドはしないように気を付けてるの。慣れると結構楽しいよ。1人で5回くらい行き来してる。」
「誰にも会いませんか?」
「会わないよ。非常階段なんて使う人いる?」
「いますよ。きっと秘密の会話をしたり、誰かと会ったり。」
「今まで一度も会ってないよ。そんなところお邪魔するのは嫌だなあ。」
木曜日、七尾さんとはなかなか仕事後も時間が合わなくて、食事もできずにいた。
金曜日には泊まりにおいでと誘われている。
もちろん行く気満々で楽しみにしていた。
週末も鈴ちゃんからは予約が入らず空いてるらしい。
一緒にいれると言われた。
すっかり食欲も戻ったので、沙良ちゃんに食べろ食べろとも言われなくなった。
二人で社食に行ってランチを食べていた時に、後ろに座った人たちの話が聞こえてきた。
自分の耳が耳ざとく『七尾さん』という単語をキャッチした。
「すごく変わったよね。本当にどうしたんだろうね?」
「でも、あんな感じだなんてね。」
「なんだか今までが論外だった感じだから、一気にイメージよくなったよね。」
「うん、明らかに狙われてるよね。」
「あれは・・・分かりやすい。でも愛想がないのは変わらないね。対応はクールだよね。」
「兵頭君と休憩室で内緒話して真っ赤になってるのを見たけど。」
「本当?何だろう?仲がいいのは兵頭君くらいだもんね。」
「どうなるかなあ?」
「さあ、ちょっと面白い。」
「あんまり実りそうじゃないね。」
「そうだね。結構断られてるのに、諦めないよね。」
「下向いてため息ついてるし、嫌がられてると思うのに、本人は気が付いてないのかなあ?」
「さあ?」
「そういえばさあ、隣の課にいる・・・・。」
噂話が対象を変えて話が変わったら、もう耳には入ってこなかった。
誰かにアプローチされてる?
分かりやすく、しつこく?
そんな話全く知らない。
そんな事言ってなかった。
手にした箸が止まる。
でも断ってくれてるらしい。
そこは安心したい。
愛想がないって・・・・・そこも安心したい。
それなのに、なんだか知らない人の話を聞いたような気がするのはなぜだろう。
愛想なんて溢れるほどある。
でも、そう思われるかもしれない。
安心したいのか、不安がどんどん募ってるのか。
やっぱり私じゃなくても気が付く人はいるし、注目する人はいる。
そして近くに行きたいと思う人も。
やっぱり不安がどんどん膨らんで。
「すず先輩。もう食べないですか?」
「ああ、うん。もういい。最後の一口は我慢して残すようにする。ごちそうさま。」
あと一口だったのに箸が止まって食べる気がなくなったから。
そのまま食器を返却して廊下を戻る。
沙良ちゃんが休憩室に行くと言うので別れて、トイレに行った。
手をかける前に中から声が聞こえてきた。
それでも誰かいるのだなって思っただけ。
大きく作られたトイレだから、何人かいるのが普通。
細く開いた隙間からどんどん声が大きくなったような・・・・、本当に短い間の感覚なのに、何故か人は知りたくない情報に進んで耳を寄せていく時があるみたい。
「大丈夫だよ。押して押して、七尾さんもその内時間を合わせて食事してくれるって、その時に正直に伝えればいいから。もう少し頑張ってみよう。」
「そうだよね。絶対何とかしたい。」
半端に開かれた扉を閉めることもできずに、そのまま携帯を見る振りしながらトイレに入った。
メッセージを打ち終わり、顔をあげて初めて先輩達に気が付いたみたいな演技をして、目礼してトイレに入った。
個室に入りトイレを済ませる。
外では会話が続いていた。
「じゃあ、少し日にちを開けて、もう一回帰り際に誘ってみたら?」
「そうだね、そうしてみる。」
そんな会話と化粧を直すような音が聞こえる。
足音が重なるころに個室を出る。
ふたりの後姿がちょうどドアの向こうに消えた。
どこの課の、誰なのかさっぱりわからない。
さっき食堂で聞いた人だろうか。
だから言ったのに・・・・。
必然・・・・ほら、そうなったじゃない。
隣からは何も言ってこない。
今日は私も沙良ちゃんも忙しい。
真面目にコツコツと仕事を片付けてるから、隣の人を揶揄う余裕もないし、揶揄われる隙もないはず。
ランチタイム少し前に、椅子ごと倒れそうなくらいにのけぞった沙良ちゃんが声を出した。
疲れた。
やっと終わった。
勿論全部じゃない。
お昼前に区切りがついたと言いうことで。
やっと私の方を見る余裕を作ったらしい。
自分の心を引き締めた。
「すず先輩・・・・・・。」
視線を感じる。
「何?」
冷静に返す、目は合わせない。本当に何?ちょっと怯える。
「本当に・・・・・すっかり・・・・・」
何????
「痩せて、なんだかやつれた感じもなくなって、すごく・・・・・・。」
何よ~・・・・。
「きれいになりました。すごく、きれいです。」
ゆっくり褒められただけらしい。
ホッとした。
区切りのいい所まで進んで、横を見た。
「ありがとう。あれからリバウンドもないし、新しい服を買ったから、もう太らない。」
そんな宣言をした。
沙良ちゃんが嬉しそうに笑う。
その笑顔こそ可愛い。
本当はお礼をいいたいけど、もう少し待ってね。
「良かったです。落ち着くところに落ち着いて。は~、なんだか振り回されましたが一安心です。」
?
「あと少しで、ランチです。話は外でにしますよね?」
最後は小声になって体を寄せられて聞かれた。
何だか・・・・まさかね?
「・・・・うん。」
取りあえずそう答えた。
お昼 時計の針と同時に沙良ちゃんがパソコンを閉じて。
私も書類を保存して同じようにして、一緒に出掛けた。
午前中すごく頑張ったから、午後はゆっくりペースでも大丈夫そう。
休憩もとれる。
体が痛くて、特に太ももと腰。
ちょっとくらいサボっても太らないんじゃないかな?
夕食は軽めにするから、階段の上り下りは今日はパス。
沙良ちゃんとこの間のベトナム料理屋さんに行く。
気に入ったらしい。
私には何も聞かれず、ついて行ったら到着した。
「ゆっくり話が出来るし、ここにしました。」
割引券を持ってニコニコしてる。
「いいよ。私、食欲も戻ってるし。」
「もう、当たり前でしょう。ちゃんと食べてください。別に痩せてる女が好みって事もないみたいですし。」
あんなに痩せろと言って肉までつまんで、やばいを連発してた人が・・・・。
あの頃からは8キロくらい痩せてる。
少し戻しても、服は大丈夫。
すっかり昔の服が着れてる。
ランチセットを頼んでテーブルに肘をついて両手を開いて顎を乗せる。
素でこれをやる人はなかなかいない。
何だろう、圧迫感がある笑顔・・・・・。
ランチが運ばれてきてテーブルが少し狭くなるとさすがにその体勢は止めてくれた。
「で、ちゃんと聞いたんですか?謎の女の子。」
もやしを口に入れたまま咀嚼も止まる。
喋れないので首を横に倒す。
顔は・・・・どうなってる?
「もう、ちゃんと聞いたんですよね。本当に×ありだったんですか?」
「もしかして、七尾さんの事?」
取りあえず様子を見たい。少しとぼけた。
「もちろんですよ。あれからどうなったんですか?二人で歩いてましたよね?」
「いつ?」
「先週の木曜日。」
何で知ってるの?
「あれは・・・・沙良ちゃんがいけないのよ。辞めるって勝手に言うから、話しかけられたときに確かめたのよ。そしたら辞めないって。何でそんな話になったのって聞かれて、食事をしながら話をしたのよ。」
「辞めるなんて言ってないです。どうしてそう思ったんですか?」
「だって会えないとか、いなくなったとか、せっかく仲良くなれたのに残念だとか・・・言ってたじゃない。」
「あああ・・・・、あのボサボサの個性的な姿を止めたんだなって、もう会えないなんて残念って言ったんです。仕事を辞めるなんて言ってないです。」
じっと見た、本当に?わざとじゃなかった?
「それはいいです。ボサボサからすっかり普通のサラリーマンになったことは。もう一つの先輩が気にしてた事です。」
ハッキリ気にしてたと言われた。
確かにそれが『問題』で、おかげでダイエットが進んだんだけど。
「それは・・・・私は何も言えない。勝手に言ったら・・・・ちょっと悪いから。ごめん、沙良ちゃん。」
「いえ・・・・・、でも今は一緒にいていいんですよね。七尾先輩とすず先輩が一緒にいていいんですよね?」
沙良ちゃんも私の誤解を引きずった内容のままで納得してくれたと分かる。
申し訳ないけど訂正するわけにもいかない。
でももう一つはちょっと否定しておく。
「沙良ちゃん、別に七尾さんとは普通の知り合いだから。」
「そんな訳ないですよね。だって・・・・、全然違います。雰囲気が。今日は本当に違います。・・・・っでもいいです。先輩のことだから何とか誤魔化したいでしょうから。私がちゃんと証拠を突き付けてぐうの音も出ないくらいに、否定できないくらい追い込んだら認めてもらいますから。そう時間はかかりませんから。良かったです。本当にハッピーオーラ全開です。」
少しも否定は受け入れてもらえなかった。
どうやらわかりやすいらしい。
しかも近いうちに『ぐうの音も出ない証拠』を突き付けられる予定になった。
どんなボロも見せられない。
うっかりなんて・・・・。
何だか素直にお礼を言えるタイミングを無くした気がする。
どうしよう。
「楽しみにしててください。」
にっこりと笑われた。
「先輩、食べましょう。」
そう言って2人は食事を再開する。
なんだか緊張してきた。
気が抜けない。
食事は急に味がしなくなった。・・・もったいない。
「また兵頭先輩も入れて飲みましょうね。いろいろと七尾先輩からも聞きたいです。あれやこれやと。」
そう言われたけど、出来たら遠慮したい。
兵頭さんと揃ったら本当に容赦なく攻め立てられそう。
バレなくていいことまでバレそう。
きっと私がボスッとガードの甘い所から攻撃されて、赤くなって声に怒りを乗せて兵頭さんに怒る七尾さんが想像できる。
怒られるから嫌だ。
その後絶対私が責められそう。
一日に何度かメッセージのやり取りをして。
それでもトイレや休憩に行った時とか、沙良ちゃんが席を外した時に見ている。
今のところバレる様子は・・・・はっきりはない。
「すず先輩、まだ運動してるんですか?」
「うん、だって食欲戻ったから、リバウンドはしないように気を付けてるの。慣れると結構楽しいよ。1人で5回くらい行き来してる。」
「誰にも会いませんか?」
「会わないよ。非常階段なんて使う人いる?」
「いますよ。きっと秘密の会話をしたり、誰かと会ったり。」
「今まで一度も会ってないよ。そんなところお邪魔するのは嫌だなあ。」
木曜日、七尾さんとはなかなか仕事後も時間が合わなくて、食事もできずにいた。
金曜日には泊まりにおいでと誘われている。
もちろん行く気満々で楽しみにしていた。
週末も鈴ちゃんからは予約が入らず空いてるらしい。
一緒にいれると言われた。
すっかり食欲も戻ったので、沙良ちゃんに食べろ食べろとも言われなくなった。
二人で社食に行ってランチを食べていた時に、後ろに座った人たちの話が聞こえてきた。
自分の耳が耳ざとく『七尾さん』という単語をキャッチした。
「すごく変わったよね。本当にどうしたんだろうね?」
「でも、あんな感じだなんてね。」
「なんだか今までが論外だった感じだから、一気にイメージよくなったよね。」
「うん、明らかに狙われてるよね。」
「あれは・・・分かりやすい。でも愛想がないのは変わらないね。対応はクールだよね。」
「兵頭君と休憩室で内緒話して真っ赤になってるのを見たけど。」
「本当?何だろう?仲がいいのは兵頭君くらいだもんね。」
「どうなるかなあ?」
「さあ、ちょっと面白い。」
「あんまり実りそうじゃないね。」
「そうだね。結構断られてるのに、諦めないよね。」
「下向いてため息ついてるし、嫌がられてると思うのに、本人は気が付いてないのかなあ?」
「さあ?」
「そういえばさあ、隣の課にいる・・・・。」
噂話が対象を変えて話が変わったら、もう耳には入ってこなかった。
誰かにアプローチされてる?
分かりやすく、しつこく?
そんな話全く知らない。
そんな事言ってなかった。
手にした箸が止まる。
でも断ってくれてるらしい。
そこは安心したい。
愛想がないって・・・・・そこも安心したい。
それなのに、なんだか知らない人の話を聞いたような気がするのはなぜだろう。
愛想なんて溢れるほどある。
でも、そう思われるかもしれない。
安心したいのか、不安がどんどん募ってるのか。
やっぱり私じゃなくても気が付く人はいるし、注目する人はいる。
そして近くに行きたいと思う人も。
やっぱり不安がどんどん膨らんで。
「すず先輩。もう食べないですか?」
「ああ、うん。もういい。最後の一口は我慢して残すようにする。ごちそうさま。」
あと一口だったのに箸が止まって食べる気がなくなったから。
そのまま食器を返却して廊下を戻る。
沙良ちゃんが休憩室に行くと言うので別れて、トイレに行った。
手をかける前に中から声が聞こえてきた。
それでも誰かいるのだなって思っただけ。
大きく作られたトイレだから、何人かいるのが普通。
細く開いた隙間からどんどん声が大きくなったような・・・・、本当に短い間の感覚なのに、何故か人は知りたくない情報に進んで耳を寄せていく時があるみたい。
「大丈夫だよ。押して押して、七尾さんもその内時間を合わせて食事してくれるって、その時に正直に伝えればいいから。もう少し頑張ってみよう。」
「そうだよね。絶対何とかしたい。」
半端に開かれた扉を閉めることもできずに、そのまま携帯を見る振りしながらトイレに入った。
メッセージを打ち終わり、顔をあげて初めて先輩達に気が付いたみたいな演技をして、目礼してトイレに入った。
個室に入りトイレを済ませる。
外では会話が続いていた。
「じゃあ、少し日にちを開けて、もう一回帰り際に誘ってみたら?」
「そうだね、そうしてみる。」
そんな会話と化粧を直すような音が聞こえる。
足音が重なるころに個室を出る。
ふたりの後姿がちょうどドアの向こうに消えた。
どこの課の、誰なのかさっぱりわからない。
さっき食堂で聞いた人だろうか。
だから言ったのに・・・・。
必然・・・・ほら、そうなったじゃない。
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