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16 変わらない景色と懐かしい人たちと。
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駐車場に着いた。
一面牧場の緑が見える。
「わあ、連休だとやっぱり人が多いんだ。お昼も少しは並んじゃうかも。」
「大丈夫。まだまだ早いし、ゆっくり並んでもいいよ。」
そういって車の外に出た。
ポケットにナナオをつれてきてる。
いつもの変化の姿で。
走り回りたい気分になるかもしれない。
ナナオは来たことがあるんだろうか?
「今日は犬は遊びには来てなかったね。」
「うん、いつも午後に来るんじゃないかな?」
「うちには来た事がないのに、あの家が気に入ってるのかな?」
「そうだとうれしい。きっと二人だと寂しいだろうから。」
「そうだね。」
「でも本当は一緒に来たかった?ナナオ君だよね。」
「一緒に歩くと楽しそうだけど、別に、いいよ。」
横に並んで歩く。
天気が良くてよかった。遠くで牛や羊がのんびりしてるのが見える。
「乳製品とソーセージとか、美味しいんだよ。買って帰ろうかと思ってるから、お土産も見ようね。」
「じゃあ、私も買おうかな。」
「後はお肉とソフトクリームとか。」
「よく来てたの?」
「そうでもないかな。」
「でもデートスポットだったりする?」
「どうだろう?知り合いに会いそうだけど。ほら、皆ずっと一緒で知ってる人が多いから。」
「数人のグループだったらばれないよ。」
「あ・・・そうかな。」
そう答えながらどんどん赤くなっていった。
きっと来たでしょう?
思い出したんでしょう?
「すごく空が広くて気持ちいいね。」
「うん、風も気持ちいいし、天気が良くてよかった。少し歩いてお腹空かせよう。」
そういわれて手を出されたけど、間違ったってすぐ気がついたらしく、すぐに手は引っ込んだ。
気がつかないふりで横を歩く。
さっき思い出した記憶では手をつないでたの?
「仕事の服とは全然違うし、何だか新鮮だね。昨日のも可愛かったけど、今日の服も似合ってる。」
まっすぐ前を向いて歩きながら褒められた。
「・・・・ありがとう。」
ポケットに手を入れてナナオに触れようとしたら、いなかった。
え?
ポケットを見る。
いない。
何で?
周りを見るとずいぶん先のほうに走ってるのが見えた。
顔は見えないけど、尻尾がそうだと思う。
「ナナオっ。」
「えっ?」
横から声がした。
つい走って追いかけた。
前を歩いてた人を追い越して、結構走った。
立ち止まってこっちを見たナナオに追いついた。
「お願いだから、いきなり消えないで。」
誰も気がついてないみたいだった。
見えないバージョンなんだろう。
だから小声でそうお願いした。
「ちょっと走りたくなっただけだよ。迷子にはならないから、大丈夫。」
ニコニコして言う。
「日疋さん、大丈夫?」
ゆっくり歩いてきたみたいな高森君。
「まさか、知ってる人がいたの?」
「ううん、ちょっと、ナナオ・・・・・に似た犬がいた気がして。」
「いた?」
「ごめん、間違いかも。」
「うん、でもいても不思議じゃないよね。きっと誰かの飼い犬だしね。」
「そうだね。本当にごめんなさい。」
「あっちに行こうか。」
その後、牛と羊を見ながら、指先で撫でながら、ウサギも優しく撫でて。
気がついたらいつの間にかポケットに戻っていたナナオ。
すぐに頭をギュッとしてやった。
もう。
レストランのほうへ歩いていって、メニューを見ながら並ぶ。
ちょうどお昼のいい時間に席に案内された。
牧場で牛肉を食べる。ちょっと複雑な気分になるけど、そうは思ってないみたいな皆。
「美味しそう。」
じゅうじゅうと鉄板で音を立てて油が跳ねている。
「外の席もいいね。」
牧場を見下ろす席にいた。
目の前に牛がいなくて良かった・・・・。
「ねえ、稲田君たちと飲みに行く話、聞いてる?」
「ああ、稲田君がすごく飲みたいって言ってた。葉山君と仲がいいのかな?誘って貰うって言ってたよ。高森君も誘われるんじゃない?」
「僕はあんまり話したことはないんだ。だからどうかな?」
「そうなんだ。あの二人稲田君と品川くんって中高が同じみたい。偶然一緒になったんだって。そんな話ってあるんだね。」
そういったら「そうだね。」って小さく言われた。
お肉は食べ終わった。
重たくなったお腹。
ぼんやりと遠くを見る。
「ここね、昔にも何度か来てたの。」
「あの頃だよね。ほかに行くところもあんまりないしね。」
「写真があった。ソフトクリームを食べて笑ってる自分が写ってて、従兄妹も写っていたから、ママのお姉さん家族と来たんだと思う。」
「パパとママに送ってくれた写真だと思う。私のアルバムに入っていた。あの頃の写真がそうやって送られてママにも届いてたんだと思う。」
「ママはどう思ったかな?」
「安心してくれたんじゃない?周りの人が可愛がって楽しませてくれてるってわかって、千早さんが笑って楽しそうにしてて。頑張って元気になろうと思ったと思うよ。早く会いたいって。」
「そうかな?」
「うん。あの期間会ってないんだったら、すごく楽しみにしてたんじゃないの?大きくなったなあとか、こんな事も出来るようになったんだなあって。」
「優しいね。」
「きっと、そう思ってたよ。」
そう言ってくれた。
「仕事だってそうだよね。楽しいって思うことが、たとえば仕事の後に飲みに行くとかでもいいけど、何か楽しいことがあると思うと、一週間頑張ろうって思うし、会社に来るのも楽しいし。」
「そんな楽しみがあるんだ。」
「あるよ。」
それは・・・・・・そうなんだよね。
「人が多く並んでるから、そろそろ出ようか?またちょっと歩いてみない。お腹一杯。」
入り口にはたくさんの人が列を作っている。
お店の人は忙しそうに動いてる。
「そうだね。美味しかった。」
ソフトクリームは諦めた。
道の駅にも売ってると思うけどって、そう言われたから。
お土産を見て美味しそうなソーセージを買った。
高森君もたくさん買っていたし、用意もよくアイスクーラーの入れ物を持ってきていたので一緒に入れてもらった。
お母さんに持たされたらしい。
車に乗って、道の駅に行く。
ずいぶん山の中にあるらしい。駐車場から遊具を見ながら歩く。
天辺にいろんな地元の野菜や工芸品売り場があるらしい。
途中に足湯があった。
まばらに人が座って、皆で麓の方を見ている。
ふらりと立ち寄ってもいいように足を拭く用の厚手のキッチンペーパーがあった。
もちろん入りたい!
靴下を脱いで空いてる場所に座る。
今度は山の緑がよく見える。
相変わらず時々優しい風が吹いている。
「気持ちいいね。」
「そうだね。」
「またこっちに帰って来る?」
「そうだね。二人が元気なのを見たいし。」
「犬もね。」
「前にお世話になったおばさんのとこには行かなくていいの。」
「連れて行ってもらうつもりなの。お土産渡したいし、お礼もしたいし。」
「従兄妹の人はいるの?」
「いないと思う。仕事で遠くにいるみたい。休みだけど帰ってきてるかな?」
「高森君は将来帰ってくるの?」
「それは難しいかも。すごく大きな決断だし、仕事のことを考えると、ここにというのは無理かも。多分親も諦めてると思う。」
「凄くいいところなのにね。ママも結局帰れなかったしね。」
きっとパパと一緒にいることを選んだんだと思う。
こっちで入院でも良かったかもしれない。
だけど見てもらっていた病院のこともあるし、やっぱりパパの近くにいる方を選んだんだと思う。そう思いたい。
「どう、ソフトクリーム食べる?」
「食べたい。ちょっと熱くなって丁度冷たいのが欲しいくらい。」
「だね。」
「じゃあ行ってみる?」
「うん。」
靴を履いて残りの坂道を登る。
また一段と遠くまで見渡せるようになった。
どこかにナナオの森もあるんだと思うけど、分からない。
空が近い。
並んでいたソフトクリームの列に加わった。
やっぱり『牧場のバニラ、濃厚!』でしょう。
二人で舐めながら野菜を売ってるところへ行く。
さっき買った牧場のソーセージも売っていた。種類はかぎられている。
ちょっとよそ行き顔じゃない果物を買って、ふりかけを買って。
陽射しが少し弱くなる頃、家にたどり着いた。
車を降りてお礼を言った。
お土産をしまいこみ、少し休んでおばさんの家に連れて行ってもらった。
大きくなったと言われ、ママに似てきたと言われた。
泣きそうな顔で言われて、私も泣きそうになる。
少しだけ薄れていた記憶に色がついた気がした。
やっぱりあの頃いろいろとお世話になったみたい。
楽しく過ごせたのはきっとこの家族のお陰だとも思う。
お礼を言ってお土産を渡して、家族のことも聞かれて。
夕飯までごちそうになった。
おばあちゃんは元からそのつもりだったみたい。
おばさんとおじさんと五人。
従兄妹はこの連休は帰ってこないらしい。
また帰ってくると約束した。
おばさんが私を見る目は懐かしい目をしていた。
元気な頃のママを思い出してくれてたらうれしい。
やっぱりここにはママがいる。
いろんな誰かの中にママがいる。
そして私の中にもはっきりと分かるくらいにいる。
だから満足したい。
そう思った。
次の日、帰る予定は午後にして、ご飯を食べてから荷物をまとめて少しだけ散歩に出た。
もちろんあの森に。
いつの間にかナナオも変化を解いたらしくて前を歩いてる。
それが当たり前のように思える私もちょっと変かもしれない。
一緒に石段をのぼり社の前に。
手を合わせて心の中でお願いする。
『もう少しナナオと一緒にいさせてください。』
目を開けて横を見ると座って正面を向いてるナナオの頭が見える。
あ・・・・・。
「ねえ、ナナオの研修が続く間、おじいちゃんとおばあちゃんのところには行けないんだね。私のところで研修が終わったら、次はどうするの?他の人のところに行くの?帰ってくるの?」
「分からない。まだはっきりとは分からない。」
「じゃあ、寂しがると思う。二人ともナナオが大好きなのに。心配もすると思う。ねえ、早く研修終わるといいね・・・・。」
さっきお願いしたばかりなのにまったく違うことを言う。それも本当の気持ち。
ナナオがこっちを見上げてくる。
そのおでこを撫でる。その手触りをなんとなく感じていたら、ナナオの視線が私から外れた。
隣で声がした。
「ケンッ。」
そんな声に振り向いた。
もう一匹の犬・・・・キツネがいた。
ナナオより少し大きい。
でも少しだけ耳がかじられてる。
喧嘩をしたんだろうか?
毛におおわれた三角の耳の先が少しだけ歪に丸い。
ナナオを見るとニッコリと笑ってる。
「先輩が遊びに行きたいって。」
石像のナナオの隣の『耳なし犬さん』を見た。
似てる。そっくり。
「ナナオ、もしかして、耳なし犬さん?」
「そう、千早が勝手にそう呼んでた先輩。」
その先輩を見る。
ゆっくり手を伸ばして顎を撫でると気持ちよさそうにしてくれた。
「ナナオ、喋らないのかな?」
「それは無理なのかも。でも喜んでる。時々二人のところに遊びに行くって。楽しみだって言ってる。」
「本当に?」
そう聞いたらさっきより大きな声が聞こえた。
「ケンッ。」
「じゃあ、紹介する。今から行っても大丈夫?」
「大丈夫だって。」
そう言いながらもう歩いてる。
何と言っていいか分からないけど、一緒に行けばナナオの友達かお兄さんと思ってくれるだろう。
あんまり深くは考えないだろう。
家が見えるころ、高森君に会った。
「高森君、おはよう。昨日はありがとう。」
「おはよう、千早さん。何で二匹に増えてるの?」
「分からない。ついてきたの。多分ナナオの友達かお兄さんかな?」
「そうなの・・・・?」
「分からない。」
そう言いながら高森君も向きを変えて一緒に歩き出した。
先を行くのは二匹。
何となく話をしてるみたいだった。
後ろからついて行く。
今日も優しい風が吹いてる。
「ただいま。」
「お帰り、千早ちゃん。裏の高森君が来たのよ?」
おばあちゃんがそう言いながらこっちを見て高森君がいるのに気がついた。
「そこで会ったよ。」
「あら?犬が増えてる。どうしたの?」
「ナナオが連れてきたの。友達かな?お兄さんかな?」
廊下に二匹も上がり込み、丸くなる。
やっぱり食べないのかな?
「おおっ、今日は友達も一緒か。珍しい。」
おじいちゃんも喜ぶ。
きっとナナオがいなくても二人は歓迎してくれるから。
大丈夫だよ。・・・・良かった。
「あ、高森君、そういえばどうしたの?」
「今日帰る?」
「うん。午後に帰るつもりなんだ。」
「じゃあ、一緒に帰らない?母さんに車出してもらうし、一人よりは退屈せずに時間も早く感じるかもしれないし。」
「ああ、そうしてもらえると嬉しい。千早ちゃん一人だとやっぱり心配だから。高森君が一緒なら安心。」
おばあちゃんにそう言われた。
おじいちゃんも顔がそう言ってる。
「じゃあ、お願いしていい?」
「うん。時間決めてないんだけど、何時の電車にする?」
「三時頃は?」
おじいちゃんが壁に張った時刻表を見てくれた。
「三時少し前の電車でいいかな。二時半くらいにここを出れば間に合うかもしれないけど。」
「分かりました。母親にそうお願いしておきます。」
「じゃあ、あとで連絡するね。」
「ありがとう。」
「本当にありがとうね、高森君。よろしくね。」
「はい。じゃあ、あとで。」
そう言ってナナオと新顔の先輩を撫でて帰って行った。
「なんだかお世話になりっぱなしね。」
「いい人なの。すごく皆に優しい。」
「・・・そうなの?」
「うん。」
「じゃあ、千早ちゃん、お昼ご飯は一緒に作りましょう。」
「うん。おばあちゃんのご飯美味しいし、多分懐かしいんだと思う。」
「覚えてる?あの頃そんなに好き嫌いもなく食べてくれて助かったのよ。」
「ママがご飯も野菜もお肉もお魚も、ちゃんと食べて大きくなりなさいって、言ってたから。」
「あら、千乃は小さいとき散々好き嫌いをしてたのに。偉そうに言ってたのね。」
「うん、嫌がっても最後まであきらめずに食べさせられた・・・・気がする。でも今は良かったって思ってるよ。」
「そうね。」
「お酒も普通に飲めるし。」
「良かったじゃない。でも飲み過ぎたらダメよ。」
「そんなには飲まないよ。」
「高森君とも飲むの?」
「うん、一緒に食事するグループにいるから、何度か飲んだの。」
「本当に安心。それにうれしい偶然だし。」
そんな話は何度も出た。
そんな事を言いながら二匹の犬を撫でていた。
『耳なし犬さん』の耳は少しだけ丸い。
毛が生えてるから、そんなに痛そうでもない。
・・・・・来てくれるのが『顔なし犬さん』じゃなくて良かった。
さすがにそんな犬が歩いてたらみんなビックリよね。
ちょっとだけ怖い想像をしてしまった。
すっかりくつろいでる感じの耳なし犬さん。
気に入ってもらえたらいいと思う。
たくさん来てくれたらいいと思う。
きっと二人より長生きなんだよね?
あっという間の三日間。
また来年、そう思ってる。
その前に夏休みは・・・・・どうだろう?
それでもまた来たい。
高森君から連絡があり、時間に迎えに来てくれた。
窓を開けてもらっておじいちゃんおばあちゃんに手を振ってお礼を言ってまた来ると約束して。
何度もそう言ったけど、最後にそう言って。
後ろの方に耳なし犬さんもいた。
『よろしくお願いします。』視線でそう言った。
ナナオは少し前にバイバイして、いなくなって、ポケットの中に戻って来た。
『ナナオ君がいなくてものんびりしてくれるなんて、気に入ったのかしら?』おばあちゃんにそう言われてた。
ナナオをそっと手に持って、一緒に手を振った。
涙が出そうになるタイミングで、車が動き出して、何とか笑顔で別れることが出来た。
「千早ちゃん、苑也がお世話になるだろうから、二人の事は任せてくれても大丈夫よ。声をかけて、時々苑也が送ってくれるお菓子を一緒に食べて、苑也の話をしながら千早ちゃんの話もして。」
「贈り物の催促を混ぜないでよ。」
高森君が笑って言う。
「そう言ったら仕事も頑張って、マメに連絡してくれて、時々は何かを贈ろうかなって思ってくれるでしょう?」
「はいはい。」
「ありがとうございます。小さい頃もお世話になったかもしれないのに、本当に記憶があいまいで。」
「大丈夫よ。あの頃はあんまり私は会ってないのよ。苑也が毎日のように報告してくれる限りは女の子達と仲良く楽しそうだって事だったけど。」
高森君を見る。
「最初の頃聞かれたから答えただけだろう。」
照れながらそう言う。
家族で気にかけてくれてたんだろう。
「ありがとう。」
駅についてあっさりと車は戻って行った。
切符を買って駅のベンチで待つ。
「高森君、寂しい?」
「ええっ、そんなでもないよ。でも一人で電車に乗ると寂しかったかもしれない。」
「だから誘われたの?」
「違うよ。せっかくだから一緒に帰りたいって思ったんだよ。」
「冗談。私も一人でここで待ってたら泣きそうになってたと思う。ありがとう。」
「もう何度もお礼言われてる。」
「それでも、ありがとう。」
「ねえ、疲れちゃうと思うけど、帰る前にどこかの駅でご飯食べない?」
「そうだね。帰って作るのも面倒だし、一人も寂しいかもね。」
「じゃあ車内で決めよう。」
「うん。」
ちょうど見えてきた電車に乗るべく立ち上がる。
柔らかい風が吹いた。
遠くの森を見る。
何も変わらない。
きっといつ帰ってきても変わらずそこにあって、皆がいて、優しい風が吹いてるんだろう。
一面牧場の緑が見える。
「わあ、連休だとやっぱり人が多いんだ。お昼も少しは並んじゃうかも。」
「大丈夫。まだまだ早いし、ゆっくり並んでもいいよ。」
そういって車の外に出た。
ポケットにナナオをつれてきてる。
いつもの変化の姿で。
走り回りたい気分になるかもしれない。
ナナオは来たことがあるんだろうか?
「今日は犬は遊びには来てなかったね。」
「うん、いつも午後に来るんじゃないかな?」
「うちには来た事がないのに、あの家が気に入ってるのかな?」
「そうだとうれしい。きっと二人だと寂しいだろうから。」
「そうだね。」
「でも本当は一緒に来たかった?ナナオ君だよね。」
「一緒に歩くと楽しそうだけど、別に、いいよ。」
横に並んで歩く。
天気が良くてよかった。遠くで牛や羊がのんびりしてるのが見える。
「乳製品とソーセージとか、美味しいんだよ。買って帰ろうかと思ってるから、お土産も見ようね。」
「じゃあ、私も買おうかな。」
「後はお肉とソフトクリームとか。」
「よく来てたの?」
「そうでもないかな。」
「でもデートスポットだったりする?」
「どうだろう?知り合いに会いそうだけど。ほら、皆ずっと一緒で知ってる人が多いから。」
「数人のグループだったらばれないよ。」
「あ・・・そうかな。」
そう答えながらどんどん赤くなっていった。
きっと来たでしょう?
思い出したんでしょう?
「すごく空が広くて気持ちいいね。」
「うん、風も気持ちいいし、天気が良くてよかった。少し歩いてお腹空かせよう。」
そういわれて手を出されたけど、間違ったってすぐ気がついたらしく、すぐに手は引っ込んだ。
気がつかないふりで横を歩く。
さっき思い出した記憶では手をつないでたの?
「仕事の服とは全然違うし、何だか新鮮だね。昨日のも可愛かったけど、今日の服も似合ってる。」
まっすぐ前を向いて歩きながら褒められた。
「・・・・ありがとう。」
ポケットに手を入れてナナオに触れようとしたら、いなかった。
え?
ポケットを見る。
いない。
何で?
周りを見るとずいぶん先のほうに走ってるのが見えた。
顔は見えないけど、尻尾がそうだと思う。
「ナナオっ。」
「えっ?」
横から声がした。
つい走って追いかけた。
前を歩いてた人を追い越して、結構走った。
立ち止まってこっちを見たナナオに追いついた。
「お願いだから、いきなり消えないで。」
誰も気がついてないみたいだった。
見えないバージョンなんだろう。
だから小声でそうお願いした。
「ちょっと走りたくなっただけだよ。迷子にはならないから、大丈夫。」
ニコニコして言う。
「日疋さん、大丈夫?」
ゆっくり歩いてきたみたいな高森君。
「まさか、知ってる人がいたの?」
「ううん、ちょっと、ナナオ・・・・・に似た犬がいた気がして。」
「いた?」
「ごめん、間違いかも。」
「うん、でもいても不思議じゃないよね。きっと誰かの飼い犬だしね。」
「そうだね。本当にごめんなさい。」
「あっちに行こうか。」
その後、牛と羊を見ながら、指先で撫でながら、ウサギも優しく撫でて。
気がついたらいつの間にかポケットに戻っていたナナオ。
すぐに頭をギュッとしてやった。
もう。
レストランのほうへ歩いていって、メニューを見ながら並ぶ。
ちょうどお昼のいい時間に席に案内された。
牧場で牛肉を食べる。ちょっと複雑な気分になるけど、そうは思ってないみたいな皆。
「美味しそう。」
じゅうじゅうと鉄板で音を立てて油が跳ねている。
「外の席もいいね。」
牧場を見下ろす席にいた。
目の前に牛がいなくて良かった・・・・。
「ねえ、稲田君たちと飲みに行く話、聞いてる?」
「ああ、稲田君がすごく飲みたいって言ってた。葉山君と仲がいいのかな?誘って貰うって言ってたよ。高森君も誘われるんじゃない?」
「僕はあんまり話したことはないんだ。だからどうかな?」
「そうなんだ。あの二人稲田君と品川くんって中高が同じみたい。偶然一緒になったんだって。そんな話ってあるんだね。」
そういったら「そうだね。」って小さく言われた。
お肉は食べ終わった。
重たくなったお腹。
ぼんやりと遠くを見る。
「ここね、昔にも何度か来てたの。」
「あの頃だよね。ほかに行くところもあんまりないしね。」
「写真があった。ソフトクリームを食べて笑ってる自分が写ってて、従兄妹も写っていたから、ママのお姉さん家族と来たんだと思う。」
「パパとママに送ってくれた写真だと思う。私のアルバムに入っていた。あの頃の写真がそうやって送られてママにも届いてたんだと思う。」
「ママはどう思ったかな?」
「安心してくれたんじゃない?周りの人が可愛がって楽しませてくれてるってわかって、千早さんが笑って楽しそうにしてて。頑張って元気になろうと思ったと思うよ。早く会いたいって。」
「そうかな?」
「うん。あの期間会ってないんだったら、すごく楽しみにしてたんじゃないの?大きくなったなあとか、こんな事も出来るようになったんだなあって。」
「優しいね。」
「きっと、そう思ってたよ。」
そう言ってくれた。
「仕事だってそうだよね。楽しいって思うことが、たとえば仕事の後に飲みに行くとかでもいいけど、何か楽しいことがあると思うと、一週間頑張ろうって思うし、会社に来るのも楽しいし。」
「そんな楽しみがあるんだ。」
「あるよ。」
それは・・・・・・そうなんだよね。
「人が多く並んでるから、そろそろ出ようか?またちょっと歩いてみない。お腹一杯。」
入り口にはたくさんの人が列を作っている。
お店の人は忙しそうに動いてる。
「そうだね。美味しかった。」
ソフトクリームは諦めた。
道の駅にも売ってると思うけどって、そう言われたから。
お土産を見て美味しそうなソーセージを買った。
高森君もたくさん買っていたし、用意もよくアイスクーラーの入れ物を持ってきていたので一緒に入れてもらった。
お母さんに持たされたらしい。
車に乗って、道の駅に行く。
ずいぶん山の中にあるらしい。駐車場から遊具を見ながら歩く。
天辺にいろんな地元の野菜や工芸品売り場があるらしい。
途中に足湯があった。
まばらに人が座って、皆で麓の方を見ている。
ふらりと立ち寄ってもいいように足を拭く用の厚手のキッチンペーパーがあった。
もちろん入りたい!
靴下を脱いで空いてる場所に座る。
今度は山の緑がよく見える。
相変わらず時々優しい風が吹いている。
「気持ちいいね。」
「そうだね。」
「またこっちに帰って来る?」
「そうだね。二人が元気なのを見たいし。」
「犬もね。」
「前にお世話になったおばさんのとこには行かなくていいの。」
「連れて行ってもらうつもりなの。お土産渡したいし、お礼もしたいし。」
「従兄妹の人はいるの?」
「いないと思う。仕事で遠くにいるみたい。休みだけど帰ってきてるかな?」
「高森君は将来帰ってくるの?」
「それは難しいかも。すごく大きな決断だし、仕事のことを考えると、ここにというのは無理かも。多分親も諦めてると思う。」
「凄くいいところなのにね。ママも結局帰れなかったしね。」
きっとパパと一緒にいることを選んだんだと思う。
こっちで入院でも良かったかもしれない。
だけど見てもらっていた病院のこともあるし、やっぱりパパの近くにいる方を選んだんだと思う。そう思いたい。
「どう、ソフトクリーム食べる?」
「食べたい。ちょっと熱くなって丁度冷たいのが欲しいくらい。」
「だね。」
「じゃあ行ってみる?」
「うん。」
靴を履いて残りの坂道を登る。
また一段と遠くまで見渡せるようになった。
どこかにナナオの森もあるんだと思うけど、分からない。
空が近い。
並んでいたソフトクリームの列に加わった。
やっぱり『牧場のバニラ、濃厚!』でしょう。
二人で舐めながら野菜を売ってるところへ行く。
さっき買った牧場のソーセージも売っていた。種類はかぎられている。
ちょっとよそ行き顔じゃない果物を買って、ふりかけを買って。
陽射しが少し弱くなる頃、家にたどり着いた。
車を降りてお礼を言った。
お土産をしまいこみ、少し休んでおばさんの家に連れて行ってもらった。
大きくなったと言われ、ママに似てきたと言われた。
泣きそうな顔で言われて、私も泣きそうになる。
少しだけ薄れていた記憶に色がついた気がした。
やっぱりあの頃いろいろとお世話になったみたい。
楽しく過ごせたのはきっとこの家族のお陰だとも思う。
お礼を言ってお土産を渡して、家族のことも聞かれて。
夕飯までごちそうになった。
おばあちゃんは元からそのつもりだったみたい。
おばさんとおじさんと五人。
従兄妹はこの連休は帰ってこないらしい。
また帰ってくると約束した。
おばさんが私を見る目は懐かしい目をしていた。
元気な頃のママを思い出してくれてたらうれしい。
やっぱりここにはママがいる。
いろんな誰かの中にママがいる。
そして私の中にもはっきりと分かるくらいにいる。
だから満足したい。
そう思った。
次の日、帰る予定は午後にして、ご飯を食べてから荷物をまとめて少しだけ散歩に出た。
もちろんあの森に。
いつの間にかナナオも変化を解いたらしくて前を歩いてる。
それが当たり前のように思える私もちょっと変かもしれない。
一緒に石段をのぼり社の前に。
手を合わせて心の中でお願いする。
『もう少しナナオと一緒にいさせてください。』
目を開けて横を見ると座って正面を向いてるナナオの頭が見える。
あ・・・・・。
「ねえ、ナナオの研修が続く間、おじいちゃんとおばあちゃんのところには行けないんだね。私のところで研修が終わったら、次はどうするの?他の人のところに行くの?帰ってくるの?」
「分からない。まだはっきりとは分からない。」
「じゃあ、寂しがると思う。二人ともナナオが大好きなのに。心配もすると思う。ねえ、早く研修終わるといいね・・・・。」
さっきお願いしたばかりなのにまったく違うことを言う。それも本当の気持ち。
ナナオがこっちを見上げてくる。
そのおでこを撫でる。その手触りをなんとなく感じていたら、ナナオの視線が私から外れた。
隣で声がした。
「ケンッ。」
そんな声に振り向いた。
もう一匹の犬・・・・キツネがいた。
ナナオより少し大きい。
でも少しだけ耳がかじられてる。
喧嘩をしたんだろうか?
毛におおわれた三角の耳の先が少しだけ歪に丸い。
ナナオを見るとニッコリと笑ってる。
「先輩が遊びに行きたいって。」
石像のナナオの隣の『耳なし犬さん』を見た。
似てる。そっくり。
「ナナオ、もしかして、耳なし犬さん?」
「そう、千早が勝手にそう呼んでた先輩。」
その先輩を見る。
ゆっくり手を伸ばして顎を撫でると気持ちよさそうにしてくれた。
「ナナオ、喋らないのかな?」
「それは無理なのかも。でも喜んでる。時々二人のところに遊びに行くって。楽しみだって言ってる。」
「本当に?」
そう聞いたらさっきより大きな声が聞こえた。
「ケンッ。」
「じゃあ、紹介する。今から行っても大丈夫?」
「大丈夫だって。」
そう言いながらもう歩いてる。
何と言っていいか分からないけど、一緒に行けばナナオの友達かお兄さんと思ってくれるだろう。
あんまり深くは考えないだろう。
家が見えるころ、高森君に会った。
「高森君、おはよう。昨日はありがとう。」
「おはよう、千早さん。何で二匹に増えてるの?」
「分からない。ついてきたの。多分ナナオの友達かお兄さんかな?」
「そうなの・・・・?」
「分からない。」
そう言いながら高森君も向きを変えて一緒に歩き出した。
先を行くのは二匹。
何となく話をしてるみたいだった。
後ろからついて行く。
今日も優しい風が吹いてる。
「ただいま。」
「お帰り、千早ちゃん。裏の高森君が来たのよ?」
おばあちゃんがそう言いながらこっちを見て高森君がいるのに気がついた。
「そこで会ったよ。」
「あら?犬が増えてる。どうしたの?」
「ナナオが連れてきたの。友達かな?お兄さんかな?」
廊下に二匹も上がり込み、丸くなる。
やっぱり食べないのかな?
「おおっ、今日は友達も一緒か。珍しい。」
おじいちゃんも喜ぶ。
きっとナナオがいなくても二人は歓迎してくれるから。
大丈夫だよ。・・・・良かった。
「あ、高森君、そういえばどうしたの?」
「今日帰る?」
「うん。午後に帰るつもりなんだ。」
「じゃあ、一緒に帰らない?母さんに車出してもらうし、一人よりは退屈せずに時間も早く感じるかもしれないし。」
「ああ、そうしてもらえると嬉しい。千早ちゃん一人だとやっぱり心配だから。高森君が一緒なら安心。」
おばあちゃんにそう言われた。
おじいちゃんも顔がそう言ってる。
「じゃあ、お願いしていい?」
「うん。時間決めてないんだけど、何時の電車にする?」
「三時頃は?」
おじいちゃんが壁に張った時刻表を見てくれた。
「三時少し前の電車でいいかな。二時半くらいにここを出れば間に合うかもしれないけど。」
「分かりました。母親にそうお願いしておきます。」
「じゃあ、あとで連絡するね。」
「ありがとう。」
「本当にありがとうね、高森君。よろしくね。」
「はい。じゃあ、あとで。」
そう言ってナナオと新顔の先輩を撫でて帰って行った。
「なんだかお世話になりっぱなしね。」
「いい人なの。すごく皆に優しい。」
「・・・そうなの?」
「うん。」
「じゃあ、千早ちゃん、お昼ご飯は一緒に作りましょう。」
「うん。おばあちゃんのご飯美味しいし、多分懐かしいんだと思う。」
「覚えてる?あの頃そんなに好き嫌いもなく食べてくれて助かったのよ。」
「ママがご飯も野菜もお肉もお魚も、ちゃんと食べて大きくなりなさいって、言ってたから。」
「あら、千乃は小さいとき散々好き嫌いをしてたのに。偉そうに言ってたのね。」
「うん、嫌がっても最後まであきらめずに食べさせられた・・・・気がする。でも今は良かったって思ってるよ。」
「そうね。」
「お酒も普通に飲めるし。」
「良かったじゃない。でも飲み過ぎたらダメよ。」
「そんなには飲まないよ。」
「高森君とも飲むの?」
「うん、一緒に食事するグループにいるから、何度か飲んだの。」
「本当に安心。それにうれしい偶然だし。」
そんな話は何度も出た。
そんな事を言いながら二匹の犬を撫でていた。
『耳なし犬さん』の耳は少しだけ丸い。
毛が生えてるから、そんなに痛そうでもない。
・・・・・来てくれるのが『顔なし犬さん』じゃなくて良かった。
さすがにそんな犬が歩いてたらみんなビックリよね。
ちょっとだけ怖い想像をしてしまった。
すっかりくつろいでる感じの耳なし犬さん。
気に入ってもらえたらいいと思う。
たくさん来てくれたらいいと思う。
きっと二人より長生きなんだよね?
あっという間の三日間。
また来年、そう思ってる。
その前に夏休みは・・・・・どうだろう?
それでもまた来たい。
高森君から連絡があり、時間に迎えに来てくれた。
窓を開けてもらっておじいちゃんおばあちゃんに手を振ってお礼を言ってまた来ると約束して。
何度もそう言ったけど、最後にそう言って。
後ろの方に耳なし犬さんもいた。
『よろしくお願いします。』視線でそう言った。
ナナオは少し前にバイバイして、いなくなって、ポケットの中に戻って来た。
『ナナオ君がいなくてものんびりしてくれるなんて、気に入ったのかしら?』おばあちゃんにそう言われてた。
ナナオをそっと手に持って、一緒に手を振った。
涙が出そうになるタイミングで、車が動き出して、何とか笑顔で別れることが出来た。
「千早ちゃん、苑也がお世話になるだろうから、二人の事は任せてくれても大丈夫よ。声をかけて、時々苑也が送ってくれるお菓子を一緒に食べて、苑也の話をしながら千早ちゃんの話もして。」
「贈り物の催促を混ぜないでよ。」
高森君が笑って言う。
「そう言ったら仕事も頑張って、マメに連絡してくれて、時々は何かを贈ろうかなって思ってくれるでしょう?」
「はいはい。」
「ありがとうございます。小さい頃もお世話になったかもしれないのに、本当に記憶があいまいで。」
「大丈夫よ。あの頃はあんまり私は会ってないのよ。苑也が毎日のように報告してくれる限りは女の子達と仲良く楽しそうだって事だったけど。」
高森君を見る。
「最初の頃聞かれたから答えただけだろう。」
照れながらそう言う。
家族で気にかけてくれてたんだろう。
「ありがとう。」
駅についてあっさりと車は戻って行った。
切符を買って駅のベンチで待つ。
「高森君、寂しい?」
「ええっ、そんなでもないよ。でも一人で電車に乗ると寂しかったかもしれない。」
「だから誘われたの?」
「違うよ。せっかくだから一緒に帰りたいって思ったんだよ。」
「冗談。私も一人でここで待ってたら泣きそうになってたと思う。ありがとう。」
「もう何度もお礼言われてる。」
「それでも、ありがとう。」
「ねえ、疲れちゃうと思うけど、帰る前にどこかの駅でご飯食べない?」
「そうだね。帰って作るのも面倒だし、一人も寂しいかもね。」
「じゃあ車内で決めよう。」
「うん。」
ちょうど見えてきた電車に乗るべく立ち上がる。
柔らかい風が吹いた。
遠くの森を見る。
何も変わらない。
きっといつ帰ってきても変わらずそこにあって、皆がいて、優しい風が吹いてるんだろう。
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