同居始めた修行中の狐犬に振り回されています。

羽月☆

文字の大きさ
15 / 20

15 懐いてくれた犬の名前は・・・・『ナナオ』君らしい。 ~エンヤ~

しおりを挟む
彼女がおばあちゃんに抱きついて泣き出したのを見て、そっと買い物の荷物を廊下に置いておじいちゃんにお辞儀をして外に出た。

実家に帰って母親にお礼を伝えた。

「4月が楽しみだって顔をしてると思ったら、まさかそんな楽しみがあったなんてね。仕事もやる気が出るでしょう?」

母親の顔を見て手が止まった。

「偶然だったからビックリしたんだよ。顔も裏の二人の家で写真をぼんやり見てたし、名前も聞いてたから分かったし。」

「ふ~ん。」

誤魔化されてくれたんだろうか?

「あ、そこに荷物置いてるから。」

「うん。ありがとう。」

荷物はとっくに解包されていた。
当然上に乗せていたお菓子は取り除かれている。

キッチンの方に歩いて行ったら、包装紙も開けられて、確実に減ってる中身。

「美味しかった?」

中身を取り出しながらそう言った。

「美味しかったわよ。食べてもいいわよ。」

ありがたいことだ。一応自分の分も残ってることを喜ぼう。



着替えを取り出して、自分の部屋に持って行った。
裏の家が窓から見える。

落ち着いただろうか?

そう思って窓の外を見てたら、森の中に歩いていく彼女の後姿が見えた。
小さな犬が一緒に歩いてる。
時々裏の家の廊下で見たことがある。
すっかり仲良くなったんだろう。


その足取りは元気そうだった。良かったと思った。

しばらくしたら連絡が来た。
後でお礼に来てくれるらしい。

しばらくして下に降りた。


ただ、何もすることはない。
とりあえず彼女との予定を考えてからだ。

外に出て森を眺めた。

風が吹いてくる。後ろから優しく。

森から風が吹いてくる時は近寄ったらいけない言われていた。

今は逆だった。
その風を感じた途端、歩き出した。
背中を押されるように歩き出して、森に向かった。


携帯は部屋に置いてきた。取りに戻ろうかと思ったけど、そのまま歩きだしていた。



懐かしい匂いがする。
そんなに何度も来ていたわけじゃない。
いつも部屋から、帰り道で、遠くから見ているくらいのものだった。
最近二回くらい喜びと決意と神頼みをゴチャっと混ぜたつぶやきをした場所だった。


午後の風が涼しく吹いてもいい時間。
それでも背中を押すように吹いてくる風は柔らかく、優しかった。

振り向くこともせずに、戸惑いもなく森を目指した。

あっという間に鳥居のところに来て、上を見上げながら石段をのぼる。
足音はしない。

ここにきて風は止んだ。

石段が終わりそうになる前に声が聞こえてきた。
彼女の声だった。誰かと電話をしてるらしい、彼女の声だけが聞こえる。

家族の話をしてるらしい。
三人と自分、今の家族のことだろう。
小さいころに再婚した彼女の父親、新しいお母さんとも馴染み、妹も出来て可愛がって。
亡くなったママを忘れてしまう自分の事を悲しく思ってるのは分かってたけど、もっと思うことがあったんだろうか?

そして相談してる相手が『ナナオ』らしいと分かった。

誰なんだろう?そう思ってた。
でも家族の事を言われてるみたいで、きっと最近まで彼女の近くにいた人なんだと思う。自分なんかよりもっと新しい知り合いなんだろう。
彼女の事をよく分かってる・・・・・出来の悪い・・・キツネ???

ちょっと気を抜いたかもしれない。バレないように立ち止まってたのに、いきなり後ろから体ごと叩かれた。風がビュンと自分に向かって吹いていたような、本当にどんと押されるように叩かれたように。

ビックリしてバランスを崩してしまった。


「うわぁあ。」

思わず声が出て、手を石段について、上の方で足音を聞いた。

見上げた自分を見下ろしてる彼女と小さな犬・・・犬・・・犬だ。

キツネ・・・ここは『きずねの森』
相手は木津根さんという名前の男?

手にあるだろうかと携帯を見たけどなかった。


「運動不足かな・・・・ちょっとここまで上がってくるだけで足がもつれちゃった。」

転んだ言い訳をした。

起き上がり、手をはたいて砂汚れを落とす。

相変わらずの距離のまま。

先に犬が自分に飽きたらしく、くるりと向きを変えてふさふさの尻尾を揺らしながら視界から消えた。

気がつかないふりをするけど、目が赤い。

「大丈夫?」

「うん、大丈夫。」

少し後ろに下がられた。
そのまま自分も石段の残りをのぼる。

ちょっとだけ、久しぶりの場所はやっぱり変わってない。
ただ、彼女が一緒にいた。あと犬も。それは大きく変わっていた。

まっすぐお社に手を合わせた。

昔夏休みの課題で調べたことがある。
結局古い謂れはあやふやになっていた。
図書館で古い資料を調べて、何とか自分なりにまとめて、写真をペタペタと張り付けて。
それなりの形になった。
学校の体育館にはり出したことは覚えてるけど、その後どうなったのかは分からない。
覚えてない。
中学生の頃の記憶だってそんなものなんだから、あの時の記憶がないと言われても当たり前だろう。自分は大きくなる姿を写真で見てたから、だから記憶がそのたびに塗り直された。

あの頃の母親とのエピソードもうっすらだから、ずっと離れていた彼女の記憶だって、もっとうっすらでもしょうがない。

いつかそう言いたい。

振り向いたらじっと見られてたみたいで、視線が合った。
ゆっくり逸らしながら足元で見上げてる犬を見た。

「前に二人の家の廊下で大人しく昼寝してた犬?」

「そう・・・かも。」

「なんだか大きくなってないから、こんな小さい種類なんだね。すごく懐いてるみたい・・・・・名前はあるの?」

「ナ・・・・・ない、みたい。つけてないって。他の家の子だから。」

「・・・・そうだよね。」



「あ、あの、ありがとう。今日は送ってもらって、ちゃんと最後にお礼言えなくて、あとでお母さんにも伝えたいと思ってたの。」

「うん、さっき連絡くれたよね。本当に気にしないで。」


「ここにはよく来てた?」

「ううん、本当に数回だけ。誰かがいたのなんて初めて。声が聞こえてびっくりしたんだ。」


「聞こえてた?」

「電話で話してる感じがして、誰だろうって思ってたら急に強い風が吹いてビックリっした。逆に吹いてたら階段から転げ落ちてたかもしれない。危なかった。」


話は聞いてないと伝えたかった。


「ここは記憶の中と変わらない?」

「うん、変わらない。全然変わらない、そんなものなんだね。」


「よくそこに座ってたの。さっき座ってみたらすごく小さく感じたから、ここは変わらなくても私が大きくなったんだよね。」

「『おとうと犬さん』でしょう?」

一番小さい新しい狐を指す。

「うん。あの時は犬だと思ってたの。よく見たらキツネなのに。」

「まあ、しょうがないね。」


屈みこんでおとうと犬さんの頭を撫でる。
心の中でありがとうと伝えた。
さっき手を合わせた時、もっと偉いだろう神様には伝えたけど。

立ち上がって振り向いて、なんとなく一緒に石段を下りた。

数メートル先であの犬が尻尾を振りながら歩いている。


「どこの犬だろうね。」

「知らない。」

「案内役みたいに一緒に来たの?」

「そう。一緒に行くって言ったから。」

「犬が?」

「う・・・・ん。」


恥ずかしそうに笑う。
犬を飼ったことがある人は普通だと思うけど。
それでもちょっと想像して笑顔になった。


「やっぱり一人暮らしだと飼えないよね。」

「そうだね。お世話が出来ないし、留守にしてる時間が長すぎて可哀想だよね。本当に毛が抜けなくて、鳴かなくて、ご飯もいらなくて、トイレもしないって、すごく楽かも。話し相手になってくれるし。」


「ロボット犬のこと?」

「あ・・・・うん。そう。」

「家にいたら週末に出かけるのもすごく減りそうだよね。飲み会断るし、デートもできないよね。」


そう聞いたけど返事はなかった。


「ねえ、日疋さん、明日帰るの?」

「ううん、明後日帰る予定。」

「明日の昼間、おじいさんたちと出かける予定たてた?」

「まだ何にも。ただ・・・・ママのことを教えてもらおうって思ってお願いしてるだけ。」

「そうなんだ・・・もしよかったら、車でちょっとだけ出かけない?近くじゃないけど牧場と足湯と道の駅はあるんだ。その辺案内したいんだけど。・・・・・二人も一緒にどうかな?」

誘ってみた。ただ、二人も久しぶりだし、一緒にいたい時間を邪魔するのも悪いと思って、丸ごと誘う様にしてみた。

「車の運転するの?」

「学生の頃は普通にしてたんだ。この辺だったら慣れてるし危なくもないけど。心配ならあとで勘を取り戻しておく。」


「・・・・あとで返事していい?」


「もちろん。どうせ明日も家にいて母親に用事言いつけられるだけだと思うから、いつでもいいよ。」


「高森君はいつ帰るの?」

「僕も明後日だよ。」

ほとんど立ち止まっての会話だった。
また風が少し出てきたみたいだった。
さっきとは向きが違って、森の方から吹いている。


「一緒の時間だったら、また家の車で駅まで行かない?僕は時間は決めてないけど、合わせるよ。」


「うん、ありがとう。それももう少し考えてみる。」

「うん。分かった。」


やっぱり風に吹かれてる。
彼女のスカートが揺れる。
背中を押されるように二人とも歩き出した。

もう目の前に家があるし、案内犬は先に入ったみたいだった。


「高森君も一緒にお茶しない?」

「いいのかな?」

「うん、おじいちゃんとおばあちゃんもお礼言いたいと思う。」

「ちょっとだけ家からお菓子持って来ていい?先にお土産買って送ってたんだ。家の親だけじゃあ食べきれないだろうし。少し二人にも食べてもらいたい。」

「分かった。先に準備お願いしておくね。」

「うん、すぐ戻るよ。」

手を振って、そう言い切らない内に駆け出した。
視界の向こうで犬がこっちを見てるのが分かった。


家に帰って、母親にお礼を改めて言われたことを伝えて、お茶をご馳走になると言いながらお菓子の箱からおすそ分けを取り出す。
ががっと半分近く。

二種類買っておいてよかった。
甘いのと甘くないの。
片方の箱にまとめて、蓋をして持って行く。

「行ってらっしゃい。」

そう言われたけど顔もあげず。
緊張してるだろうか?緩んでる気もする。
母親には見られたくないと思ったから。

「行ってきます。」

すぐ裏だけど。


「あ、明日車使う?」

「お遣いして来てくれるなら貸してあげてもいいわよ。ただし安全運転でケガはさせないようにね。」

まあ、バレてると思う。それとも友達と遊ぶと思っただろうか?

玄関じゃなくて廊下の方から顔を出した。
そのあたりはあの犬と同じように。

「こんにちは。」

何時もこっちから声をかけてる。ひょっとしたら郵便屋さんとかも、そうじゃない?

「ああ、いらっしゃい。待ってたのよ。」

「千早を送ってくれてありがとう。お買い物も頼んでしまって。」

「いえ、大丈夫です。」

「写真もありがとう。」

「ああ・・・・・・ごめんね、勝手に・・・家に送るついでに送ったんだ。」

「ううん。ありがとう。」


「仲良くしてもらってうれしいし、安心。何かあったら相談すればいいよ。」

照れた様に笑う彼女。

お菓子をテーブルの上に出した。

「甘いのと甘くないの、二種類買ってたので、味見してください。」

「あら、こんなにいいの?」

「着替えと一緒に送ったから、僕がたどり着く前にすっかり味見はされてました。それでもたくさん入ってたので、二人もどうぞ。日疋さんも。」


彼女のお土産も広げられてて、かわりにもらった。

明日の事が言い出せないまま。
もう言ったんだろうか?

彼女の小さいころから、今までのいろんな出来事を耳にする。

『ナナオ』らしき相談相手については出てこない。
話を聞きながらそんな事を探っていた。

昼寝に飽きたのか足元に犬が寄って来た。
ちょこんと顎を太ももにのせてそれでも目は見上げてくる。
小さい犬なのに目つきは鋭い気がする。

その顔や耳や背中を撫でる。
尻尾はふさふさとゆっくり揺れていてご機嫌のようだから、目つきはそんなものなんだろう。

お腹空いたのだろうか?

「お腹空いた?」

撫でながらそう聞いたら、彼女に言われた。

「大丈夫、ナナオは絶対食べないから。」

ナナオ・・・・?
そう呼んでるの?

「千早ちゃん、名前つけたの?」

おばあさんが聞いた。

「あ・・・何となく。名前がないと呼べないから。」

「じゃあ、ここにいる時は『ナナオ君』でいいかな。」

おじいさんもそう呼ぶことにしたらしい。

彼女の近くから、その名前が消えることはないらしい。
遠くまできて一緒にいると思っても、近くにいたいのはその男の人らしい。
ただの幼なじみとか、そういうことはあるんだろうか?
泣きたくなるようなことだって相談できる相手なのに。

こんな子犬に大人の名前をつけるだろうか?


「高森君、明日千早ちゃんを遊びに連れて行ってくれるって聞いたけど。」

「はい。車をだして、道の駅と牧場に、お二人も一緒にどうですか?」

「私たちはいいから、千早ちゃんだけよろしくね。」

彼女を見たらよろしくお願いしますと言われた。

「何時ごろがいいですか?」

「お昼ご飯を向こうで食べれば?」

「じゃあ、11時頃出発でいいかな?」

彼女に聞いた。

「うん。ありがとう。」

「じゃあ、その頃に。」

そう言って足にいたナナオ君の頭を撫でて、家に帰った。


うれしい気分にちょっとだけガッカリな要素もあり。
そこはあえて考えずに明日を楽しみにした。

「お母さん、明日11時から車を借りるから。」

「はいはい。久しぶりだけど、大丈夫?」

「ちょっと練習してくる。」

「ぶつけないでね。」

「分かってるよ。」


玄関の鍵を持って適当にドライブした。
ガソリンも大丈夫、車の中も綺麗。

下りる時に確認して、ドアを閉めた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

男爵令嬢なのにくじ引きで王子のいる生徒会の役員になりました!

らな
恋愛
男爵令嬢のリアはアルノー王国の貴族の子女が通う王立学院の1年生だ。 高位貴族しか入れない生徒会に、なぜかくじ引きで役員になることになってしまい、慌てふためいた。今年の生徒会にはアルノーの第2王子クリスだけではなく、大国リンドブルムの第2王子ジークフェルドまで在籍しているのだ。 冷徹な公爵令息のルーファスと、リアと同じくくじ引きで選ばれた優しい子爵令息のヘンドリックの5人の生徒会メンバーで繰り広げる学園ラブコメ開演! リアには本人の知らない大きな秘密があります。 リアを取り巻く男性陣のやり取りや友情も楽しんでいただけたら嬉しいです。 ひみつの姫君からタイトルを変更しました。

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

《完結》金貨5000枚で売られた王太子妃

ぜらちん黒糖
恋愛
​「愛している。必ず迎えに行くから待っていてくれ」 ​甘い言葉を信じて、隣国へ「人質」となった王太子妃イザベラ。 旅立ちの前の晩、二人は愛し合い、イザベラのお腹には新しい命が宿った。すぐに夫に知らせた イザベラだったが、夫から届いた返信は、信じられない内容だった。 「それは本当に私の子供なのか?」

処理中です...