街中で偶然出会えたら、それは運命だと思います!

羽月☆

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5 眼鏡がフィットする男 ~友田、完全回復

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新しい眼鏡はすこぶる調子がいい。
誰も気がつかないくらい、見た目は変わってないがフィット感がいい。
当然、週末ですっかり体調も良くなった。



「お似合いです。冷静で出来る男の印象です。」

その場でかけたら眼鏡屋さんの担当の人に褒められた。
うれしかった。
大人になると褒めてくれるのは洋服屋くらいだ。
お金と引き換えだとしてもうれしい。



「あれ、メガネ買い替えた?」

よく気がつくやつだ。お前が初めてだ。
昼の社内食堂、金子が向かいに座りながら聞いてきた。

「お前があんなにお酒注文するから。土曜日起きたら、部屋がぐちゃぐちゃだった。ふらふらと歩いてメガネを踏んだんだ。半分くらい請求したいくらいだ。」

「まあ、確かに酔ってたかもね。」

そんな可愛いもんじゃなかったと思うが。

「なんだかんだ言っても楽しみなんだ?楽しそうに飲んでたよね。」

「何がだよ?」

「今度紹介するって言った子。」
小声で言われた

眉間にシワがよる。
なんだ?

「何の話だ?」

「金曜日言ったじゃん。彼女いないって確認しただろ。一人紹介したい子がいるって言ったじゃん。もしかしてトボケてるのか?本当に彼女いないよな?好きな子とか。」

「記憶にない。ほとんど何を話したか記憶にない。」

「それは本当か?」

「ああ、飲みすぎたらしい。土曜日は酷い二日酔いで本当に気分が悪かった。」

「あああ・・・・・・。あの時お前はいいって言ったよ、会うって。まさか今更断るなよ。」

そう言われた。
そんな話本当にしたのか?誰かの話が出たのはうっすらと・・・というレベルだ。
だが、それ以上はまったく思い出せない。

話のかけらでも思い出そうとしてたら、いつの間にか話は進んでいて。

「露木さんと仲がいいみたいだから今週末あたりに予定な。あ、ちょうどいいところに。」

「露木さん、こっちに来れない?」
まさか相手はいないだろうなあ。
ゆっくり振り返ると同期の露木さん一人で。

「お疲れ様。何?」

食事のトレーを持って隣に座られた。
同期の一人だと言っても話はしたことがないと思う。
何度か同期会で飲みに行っても、ほとんど飲んでばかりで男同士の中にいるだけだった。
もちろん自分がだ。
だから露木さんに限らず、他の女性も同じようなものだ。


金子が話を始める前に彼女が話をした。


「あ、一つ聞きたいんだけどさあ、街中でいきなり『付き合ってください』って言われたらどうする?」

思わず手にしようとした湯飲みを落としそうになり慌てた。

「わわっ。」

「何だよ。こぼすなよ。」
迷惑そうな顔をした金子に注意された。

びっくりした。
どこかで聞いた話だ。
あの現象は街中でもよく見られる現象なのか?
相当不審に思ったのに。


「後輩がそう言ったら相手に『どこにだよっ』って冷たく言われて睨まれたみたいなの。その返しは脈無しかなあ?」

「うおぉっ。」

今度は本当に湯飲みを落とした。
中身は少しだけだったので、軽いプラカップの音だけで、こぼれたお茶の被害も少しだった。
トレーの中で済んだんだから。

「何だよ、友田。」
不審がられる。

「べ、別に・・・気にするな。」
冷静を装う。


俺の事か?今のは俺の事か?
冷たかったか?睨んだか?
そうかも、裸眼に二日酔い、酷い状態だったから。

やっぱり世間にそうそうある話じゃないと思う。
『先輩』と声をかけられた時点で『社内の後輩』というのは決定的。
それは、同一人物だろう・・・多分。


露木さんの後輩ということは・・・・。
金子の後輩でもある。


もしかと思うけど・・・・・。


金子の視線を感じた。
何とか顔をあげると情けない顔をされた。


「もしかと思うけど・・・・羽柴さん?」

「言わない。相手が誰かも知らない。」


そういった時点で後輩は決定か?
金子の顔を見ると、こっちを見られたので急いで視線をそらした。
その話の中の冷たい男が誰かも、今、ハッキリばれた気がする。


「何で・・・・・?」
金子が小さくつぶやく。

しばし無言の三人。


「やっぱり相手も酷いよね。そんな奴やめろって言ったほうがいいかな?
で、金子君、何? 用事?」

「ああ、うん。金曜日の夜空いてる?ちょっと飲みに行かないかなって思ったんだけど、ちゃんと決まったらもう一回聞く。」

「いいよ。空いてるし。」

「友田もいいよな。」

いいのか・・・・・?

「じゃあさあ、羽柴さん誘って。元気づけてあげよう!」

話の流れ的にうまくまとまったように言い切る金子。

気が付いてるか?

それでも敢えて会わせようと思ってるのか?
向こうが嫌がると思うけど。

気まずい。

もし同一人物だったら気まずい。
謝って言い訳すべきか。

どうしようか。

どうすべきか。


「お先に。」悩みながらもそう言い、先に席を立つ。

「話は終わってない。待て、まだ話がある。」

金子も立ってお先にと言って、露木さんを残して食堂を後にする。

休憩室に連れ込まれた。
やっぱり、黙ってて済むことじゃない。
自分も知りたい。


「お前、露木さんの話に心当たりはあるんだな?」

「・・・ああ。」

「本当に街中で告られたのか?」

「土曜日に、誰かが目の前に来てそう言った。眼鏡がないし二日酔いで頭が痛かった。誰だかも分からない。よく見ようと思ったから目を細めた。睨んだわけじゃない。だいたい、名前も言わないで、いきなりだったんだ。」

そう言うとあっさり信じたようだ。

「ああ、わかるかも。」

納得してる。そんな変な奴を紹介するのか?

「普通は真面目で地味で一生懸命で可愛いんだ。思いが募り過ぎたんだ、きっと。」

すごい好意的な解釈か?
俺は話をしたこともないと思うが、誰だよ。


俺の気持ちが分かったらしい。金子が言った。


「俺が話をしてる時にお前だって何度も隣にいただろう。この間もお前の白衣姿に見とれてたよ。」

何となく思い出した。
何で俺がいる時に話しかけるんだと思ったこともあった。
たいした用じゃない時もあった気がする。
不審に思ったこともある。

この間も白衣で引っ張られて外に出された。
あの時か?
どの子かはもちろん見ればわかる。

でも土曜日の子がその子かは分からない、自信がない。

「違う子ってことはないか?」

「そんな突飛な行動する子で、お前に片思いしてる子が二人も社内にいるのか?」

・・・・悪かったな、そんなにモテなくて。

「露木さんとも一番仲がいい。たぶん彼女だよ。羽柴さんだよ。」

確信してるらしい。

「羽柴つくしちゃん。名前からして可愛い、一年目新人。年下。」

「俺は他はあんまり知らない。仕事の上の彼女しか知らない。気になるなら聞いておくが?」

「なあ、その羽柴さんの方が俺に会いたくないというと思うぞ。お店で会って回れ右されたり、待ち合わせの時点でドタキャンされたり。知らないからな。」

「お前、謝らないのか?羽柴さんに謝れ。TPOのいくつかは間違っても勇気を出したんだ。可哀想にショック受けてるだろうから謝るべきだ。とりあえず謝ってから・・・後はご自由に。」

TPまで間違ってるし、Oに行きつく方法ももっと・・・・だよな。

「それに俺は一度は会わせたい。だから努力はする。絶対連れていく。」

何でそんなにやる気なんだ?
気に入ってるのか?大きな借りがあるとか?
それとも・・・弱みでも握られてるのか?

まあ、いい。
なるようになるらしい。
取りあえず機会があるなら謝ろう。
さすがに誤解はされたままなのも・・・・まあなんだしな。

しかしそんな話を金曜日にしてたのか?
楽しみで飲み過ぎたなんてことはないぞ。
金子が次々頼むから、残したら悪いと思ったから。
それとも・・・俺は何か言ったのか?
別にそこまで彼女が欲しいとか思ってるつもりはないが。
あれからだってそろそろ3年くらいになるが、気にしてはいないぞ。
1人でも別に・・・・。
何の不自由もないぞ。




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