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13 自分の役目をやり切った感 金子のご機嫌な週末、再び

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浮かれた状態のまま週末を過ごした。
後は2人に任せるけど、とてもいい予感しかしない!

帰ってから藍にも散々聞かせて、ずっと言い続けてご機嫌に過ごした。

まさか、その予感が欠片もなかったなんて思えなかった。


月曜日
彼女の顔を見て、本当に自分がまたおせっかいをしたのかと不安になった。
どこで間違っただろうか?

でも詳しくは聞けない。
自分より露木さんにお願いすることにした。
時間を見て聞いてくれるという。
同じように楽しみにしてたのに、露木さんもびっくりしただろう。


あいつが悪いのか?
それしか考えられない。
さっさと駅に送ったりして別れたのか?
それとももっと彼女を傷つける決定的なセリフを言ってしまったのか?


じりじりと昼を待つ。
危うくヘルプの手を見過ごすところだった。
集中できない、気になる。

視界の端に彼女がいる。
いつもの笑顔がない、明らかに落ち込んでるような暗い顔。
それでも一生懸命仕事をしてるのも可愛いのに。
やっぱり難しいのか。

あいつのタイプとはかけ離れ過ぎてるかもしれない・・・・。



昼になってさっさとブースを飛び出して奴の研究室に行く。
まだほとんどのメンバーがいた。
奥の部屋で動いてる姿を見つける。

ガラスをノックすると気が付いた。

こっちを見て諦めたような顔をする。
そりゃそうだ。
説明してもらいたいじゃないか。


奴の机で脚を組んで待つ。
研究室から出てきた奴に声をかける。

「昼に行けるか?」
「ああ。準備する。」

白衣を脱いで、手を洗って上着を着て。

一緒に社食に行こうとするのを引っ張って外に連れ出す。

普段は行かない遠目のお店に連れていく。


「で、どうだったんだ?見てるのが辛くなるくらい落ち込んでるんだが。仕事はちゃんとやってるけど。」


小声で聞く。
なかなか話しだそうとしない。
イライラしてくる。


「時々、妹だったらこんな感じかなって思えて。」

妹・・・・?

「まさかそう言ったのか?」

・・・・・。
馬鹿正直に言ったらしい。

楽しそうにしてたのに、嬉しそうにしてたのに。
そんな雰囲気もぶち壊す最強の拒否の言葉じゃないか。

俺が読み間違ったのか?

「それでもちゃんともう少し時間が欲しいと言ったよ。中途半端な返事は出来ないから、もう少しこのままで、返事は待って欲しいって。」

「それで?」

「分かりましたって言って、部屋を出て行った。傷つけたのは分かってる。その話の前に、日曜日も一緒に出掛けようって言ってたけど連絡先知らなかった、交換しようって言って、してなかったから、そのまま別れたから。」

「何で、・・・せめてすぐに俺のところに連絡してくれれば何とかしたし。」

「それは俺が決めることじゃない。彼女が決めてくれれば、俺は自分が思ってることは言った。」

「お前はそれでも年上だろう?そんな事想像もできないのか?そんな奴なのかよ。」

「お前はどうしたいんだ、俺と自分の部下を。可愛いならお前が近くに置いておけばいいだろう。」


そういう目も、表情も、殴りつけるには悲しそうで。


「そんな自分も傷ついてるみたいな顔するなよ。傷つけたって分かってるのにそのまましたのはお前だろう。」

冷めたてんぷらは重くなって食欲もなかったけど、何とかお腹に収めて店を出た。
出来ることはないのか。
時間が欲しいというところをもう一度納得してもらいたい。

午後の仕事始めに会議室で露木さんに聞いた。

「妹って言われたみたい。今2人でいても抱きたいとは思わないって。今後も何とも言えないって。なんて馬鹿正直なの。」

そこまで言ったのか。
二人で馬鹿だと罵る。

「諦めるって言ってた?」

「出来ないでしょう。それまではすごく楽しかったって。優しいし、楽しいって言ってくれたって。日曜日も一緒に出掛けようって言われたって。気持ちが変わってないなら返事を待っててほしいって。先にそう言われてたみたい。」

伝わってはいたらしい。

「じゃあ、もう少しくらいは待つかな?」

「うん、多分。しばらくは。」

「連絡手段がないんだ。奴にアドレス教えていいと思う?」

「うん、先に連絡とって欲しい。待ってると思う。」

「じゃあ、教える。 はぁ~、絶対うれしそうな顔見られると思ってたのに。ごめん、面倒なことに巻き込んで。」

「ううん、いい。絶対何とかしたいって思えてきた。絶対抱きたいって思わせるくらいに夢中にさせたい。」

凄い目で目標を掲げてる露木さん。
他人事だけど女性のプライド賭けてる気がする。
じゃあ、頑張る。自分もやる。

燃えてきた。


電話番号とアドレスと社内名簿から携帯に打ち込んで友田に送った。

「もう一度ちゃんと待っててほしいと伝えて欲しい。それでいいと思ってるならきちんと伝えて欲しい。」と。

馬鹿野郎とののしりながら送った。

これで週末までに約束でもしてくれたら、今度こそ放っとくのに。

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