過去の痛い思い出を反省して、今に至ったはずです。

羽月☆

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1 始まらなかったことが始まりとなった春。

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「亜紀、いい加減に起きなさい。朝ごはん食べて。」
いつものようにママに起こされた。
いつものように・・・・・・ここ最近のいつものように。

前はママだって時間に起きることなんてなかった。 
逆に私が起きて、コーヒーをいれて、ママを起こして、同じようなセリフを言っていたのに。  
見た目しっかり、でも中身グズグズのママ、ついでに甘え上手らしい。

小さいころ、本当に私が生まれてすぐにパパが死んだらしい。
それからは子育てを頑張ってくれたたママ。
本当に世間知らずで、常識もあやふやなママはしっかり者だったパパとその周りの人たちのお陰で、お金の事は心配しないでも子育てが出来たらしい。
そうじゃなかったら私は施設に入れられたかもしれない、二人でゲッソリしてたかもしれない、もっともっとおかしな環境にいたかもしれない。

私はすくすく人並みに育ち、そして最近は少しだけ生意気になってしまったかもしれない。


テーブルに用意された朝ごはん。
栄養もちゃんと考えてくれてるし、何より美味しい。

珈琲一つとっても苦いだけの泥水とは大違い。


「おはよう、秋津パパ。いただきます。」

「おはよう、亜紀ちゃん。早く食べないと遅刻するよ。」

そう、ママが急に朝に強くなり、ご飯まで用意するくらいママ稼業に目覚めた訳ではない。
全部秋津パパが用意してくれて、ママを起こして、陽も起こしたんだと思う。

陽はすっかり朝ごはんを食べ終わり、軽く手を合わせてお皿をキッチンに運んでいる。
さすがに秋津パパの教育が良かったらしい。
そんな陽をちらりと見ながら、残りの三人で食事をする。

パパが心配した通り、ママの生活能力は頼りなくどん底レベルだった。家事育児全般も何とかおばあちゃんや近所の世話好きの人、私の可愛さを放っとけなかった人達に助けられた。

そしてゆっくりママは次の人生を考え始めたんだと思う。
時々素敵な男性と一緒に食事をしたりしてたらしい。
私という大きなお荷物がいるのに、まったくそうは見えないママ。
世間知らずは若くも見えるし、甘え上手だし、助けてあげたいと保護欲もそそるらしい。

まさか全てにおいてポンコツレベルに酷いとは思ってないかもしれない。
だから、それに気がついてもママを捨てなかった人なんて本当に少なくて。

秋津パパはすごくいい人だ。
奥さんが浮気相手を選んで、小さい男の子を一人で育てるシングルファザーになったらしい。きっと手伝ってくれる人もいただろうに。
ママとは親としての使命感と生来の器用さとマメさと、人生に対する何かが違ったんだろう。すっかり家事をそつなくこなすスーパーお父さんになったらしい。
それに加えて、仕事もいい。経済的余裕もあって、息子の陽と二人で頑張って生きて来たらしい。
そしてママと出会った。
当然私とも出会った。



二人の相性はまぁまぁ。

私と陽はちょっと微妙な年ごろで、すれ違うように一つの家にいた。
同じ年、二ヶ月だけ私が早く生まれただけの違い。

本当にちょっとだけ素直じゃなかった私。
いつもは優しい秋津パパにすごく怒られた事があった。

ある休日の午後、文房具屋さんのバックヤードに呼ばれて俯く私。
家族に連絡しようと言われて、私が甘えたのは秋津パパだった。
小さな犯罪。大きな犯罪の前には必ずあるけど、まだまだよねってそんなレベルの罪。
お店の人は許してくれなかった。
そして秋津パパも許してくれなかった、すごく怒られた私。
お店の人に平謝りして、商品を買い、警察や学校に届けなかったことに感謝して、お店を出た。

その帰り道、二人で公園のブランコに座ってひたすら説教をされた。

私が期待したほど秋津パパは甘くなかった。

そんな・・・・万引きなんてよくあるじゃない、ない?
本当に出来心だったし。
キラキラしたボールペン。
お財布にそのくらいのお金は入っていた。
ただお金を払わずにバッグに入れただけ。
店員さんの手を煩わせることなく、その辺の手続きを短くしただけの話。

そんなに怒られるなんて思わなかった私は、本当に可愛くもなくふてくされた。

甘えて迎えを呼んだのがママじゃなくて秋津パパだったことも怒られた。
仕事の休みの土曜日だった。
でも平日でも秋津パパにお願いしたかも。
ママには知られたくない・・・・って思った訳じゃない。
ただ秋津パパならちょっとの小言で許されるだろうと思ったのかもしれない。
その甘えを怒られたと思う。
自分の子供っぽい浅はかな考えの甘さを見透かされてしまって、余計ムカついた。


家に帰っても不機嫌な私。
理由のわからないママと陽。



そんな事もあった。
でもそれ以外にママと秋津パパ二人の大人の事情もあったんだろう。
そう思いたい。

しばらくして秋津パパが家からいなくなった。
陽もいなくなった。
私とママの二人の生活に戻った。

結婚には至らず。別れた。

短かった家族状態(仮)。

あの頃すねてたのは陽も同じだった。

自分だけのパパが私を可愛がる。
すぐ目をそらしてた陽。

性格の悪い私はわざと、そんな陽を横目で見て楽しんだ。

最初から少しお姉さんと言われてた。
だから陽は弟だった。
でも、本当は同じ年。数カ月の違いなのに姉ぶる私のことも気に入らない陽。


世の中には同じ年の姉弟、そんな二人もいると思う。
私たちみたいな事情があってそうなった人たちが。


今思い返してもあの事件は私の心残りになっていた。
ママは知らないかもしれない。

本当に申し訳なかったと三人に謝る機会もなかった。
そこまで素直になれていたら・・・・・・。

あのまま上手く行ったら私の名前は『アキツ アキ』になるところだった。

短くてもいろんなことがあった。
ママと二人だと静かだった家の中。
それが一気に四人になるとにぎやかにもなるし、映像と声とが入ったにぎやかな思い出がある。

プスプスと音のする目玉焼きとかさかさ音のするようなお米ご飯
秋津パパも、ママもいない日、私が適当に作ったらそうなった夜ご飯。
まだまだ家族状態(仮)の最初の頃の事。


目が点になった陽。
白い目で見られて、それでもリゾット風にして綺麗な卵の浮いたご飯に作り替えてくれた陽。ありがたくそれを食べた夜。
目玉焼きもどきはそっと生ごみになった。
一口食べて陽がそう決めた。もちろん異議なしの私。

それから、家事は放棄した。
無理は無理、得意な人がやればいい、そう思った。

秋津パパの背中を見て育った陽のほうが得意だったし。
あの2作品だけで懲りたんだ、お互いに。

だいたい『家庭的な女性』を私とママに求める方が間違い。

でも私もママも秋津パパは大歓迎だった。
優しくて、器用で。

そう考えるとやっぱり私がいけなかったんじゃないかと反省してしまう。
ごめんね、ママ、秋津パパ、・・・・陽も。


あれからずっとママと二人で暮らした。
そして大学生になる頃ひとりづつになった。

就職した会社にもたくさんの人がいる。
この中にご縁の深い人がいるかもしれない。
ちょっとだけ期待しながらそう思ってた。

ただ、思いもしなかった、過去にご縁のあった人に再会するなんて・・・・。
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