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7 私の周りの誰かがそう囁いたらしい。
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部屋に帰ってくつろいで考えようと思ったのに、手にした携帯で陽に連絡してしまった。
『ごめんね。ちょっとだけ話があるの。邪魔はしないから、今日でも明日でも、お願いします。』
他に思いつかないんだからしょうがないじゃない。
一番二人の事を知ってるだろう相手だし。
『何?想像つくけど一応聞く。』
しばらくしたら連絡が来た。
『電話、いい?』
そう送ったらかかって来た。
本当にいい奴。
「陽、柴田さんと一緒じゃないの?」
『違うよ。部屋にいるし。気を遣わなくてもいい。本題に入ろう。示現のことでしょう?』
当たり前だ。その事しかないだろう。
「何か言われた?聞いてるの?」
『まあね。告白して返事待ちで、今日も返事してもらえなかったってところまでね。』
「今日もって何?夕方以降連絡来たの?」
『気になる?』
来たんだ。ちょっとくらいなじられただろうか?
言ったことも言われた事も、全部筒抜けかもしれない。
『亜紀、何で返事しないの?』
「この間食事をした時に全然そんな感じじゃなかったんだもん。その後も全く連絡ないし、嫌われたと思った。皆にはあの夜の示現君が酔っぱらって人恋しくなっただけだろうとか言われた。」
『なにそれ?本気でそう思ってるわけじゃないでしょう?』
「だって今日まで本当に何も・・・・・・なかったし。」
『示現には何で待つ必要があるのって言ったくらいなのに。別にそのままでもそうなるって分かるのに、スタートをはっきりさせたい方なのかな?』
「そう言う陽ははっきり言わないまま柴田さんと会ってるの?」
『そうだね。会いたいって言って、都合を聞いて、その内どうかなって聞くつもり。だって示現と亜紀とは違うよ。ちょっとしか話をしてないし、向こうだって違うと思ったら断ると思うよ。そこで理由が曖昧で誤魔化されたりしたら、もう誘うのはやめようかなって思うから。』
「何?参考にしろって事?」
『話聞いてる?二人とは違うから参考にはならないって言ったのに。今すぐ返事をしたらいいよ。もったいないじゃん、明日も明後日も悩むの?寂しい週末で無駄な時間を過ごして、示現も可哀そうだし、亜紀も・・・・・他に誰もいないよ、最後のチャンスだと思って。今から示現に言っとくから、返事するつもりだからもうしばらく起きてるようにって。おめでとうって言うから。じゃあ、よろしく。』
そう言いきって、そのまま切られた。
なんであんたが返事するのよ、勝手に言わないで、それに『最後のチャンス』って何?『他にいないよ』ってどんな予言よ!!
思いっきり言い切ったけど、当然独り言だった
電話はとっくに切れてたし。
本当に今連絡してるんだろうか?
もう寝てるかも・・・・って時間ではない。
陽のメッセージをすぐには読まないパターンもあると思う。
だからしばらく時間は置いていいと思う。
示現君はいい人、それは確実。
今回もすごく協力もしてもらった。
仕事もやりやすかった。
それは優しさだし、いい人なんだと思う。
でもそれは私にだけじゃないよね。きっと他の人にも同じようにいい人だと思う。
好きだと言われたら、私も好きだけど、それは一緒なの?
一番一緒にいて楽だとは思う、それは陽と同じくらい。
今更だから気取らずに自分のままでいいと思える。
だっていろいろバレてる気がする。
それを心を許してると取るか、どうせ気取ってもしょうがないって諦めてるってとるか。
なんだか考えれば考えるほど難しい。
どう返事していいか分からない。
だからこの間一緒にいたはずなのに、あの時は距離があり過ぎたんだろうか?
ドキドキという感じからは程遠かった。
本当に同僚だった。
そう見られてると思って、私もそう見ていた。
やっぱりわからない。
他の人よりはずっと好き、そうとしか言えない。
そう正直に言うしかない。
示現君に連絡してみた。
『話をしたい。電話していい?』
しばらく読んでもらえなくて、それでも時々確認して、待っていた。
それでも反応はなくて、ため気をついて携帯を手離した。
陽のメッセージも読んでないんだろう。
どこかで食事をして、お酒を飲んで、気分転換をしてるのかもしれない。
本当に会社での姿以外は知らない。
どんな生活パターンなのか全然。
あの日もそんな話はしなかったから。
本当に今の個人的なことは知らないから。
同じように私だって知られてないのに、陽が少しは教えたとしても今の私の過ごし方なんて知らないから。
あの仕事の時にもそこまでのやり取りはなかった気がする。
『近くにいるんだけど。』
いきなりそう返事が来た。
近くって、今?この部屋の近く?
『どこにいるの?』
今から駅までだとしても出ていくのは面倒極まりない。
すっかり化粧も落として、パジャマを着ている。
食事だとしても、グラタンも諦めて、適当にお惣菜を買ってきて食べた。
一応優先順位は考えた。
グラタンで癒されるよりは考えるべきと思ったから。
『マンションの近くのコンビニ。車にいる。』
なんでマンションを知ってるの?
陽に聞いたの?
でも、そこまで詳しく教えてた???
秋津パパに教えたかもしれない。
あの日、電話番号や住所も書いた名刺を渡した。
秋津パパにも同じようなものをもらった。
『何かあったら相談してね。』
そんな優しい言葉をもらった。
・・・ってそれはいいとして、どうすればいいの?どうしたいの?
電話で話が出来ればいいと思っただけなのに。
じゃあ、あの時返事をすればよかったんじゃない?
だってそれはちょっとまだ無理だった。
じゃあ、食事をしても良かったのに、頑張って誘ってみたのに示現君が断った癖に。
色んな事を考えてたら時間が空いてしまった。
『もうお風呂にも入って化粧も落としてパジャマなの。示現君はどうしたいの?』
責めてるように読まれるだろうか?
『車を止めて、部屋に行ったら迷惑?』
当たり前だ。
部屋をぐるりと見渡す。
迷惑は迷惑だ。
ただここで断るのは・・・・・どう?
車に行くと言う手もある。窮屈な密室だ。しかもコンビニ。
ダメでしょう。
『分かりました。部屋は分かるの?』
『多分。後で聞く。少し時間がかかる。』
そう言われた。
車をコインパーキングに入れて、探してくれるんだろう。
あのコンビニだと思う。
窓辺に行ってカーテンを開けた。
暗い道に何かが見えるわけではないけど。
しばらくぼんやりと窓辺に立っていて、ふと我に返った。
急いで動いた。今の優先順位!!
まず・・・・・眼鏡をした。
それ以外することもなく、髪を整えて、パジャマを見てパーカーを羽織り・・・着替えた方がいいのだろうか?
もうパジャマだって言ったからいいよね。
コーヒーとお茶を出せる用意をして・・・・・・。
『窓辺に立ってもらっていい?』
連絡が来た。
窓辺に行って下を見下ろす。
人影がいるのが分かる。
携帯の明かりが浮かび上がらせてもいる影の感じ。
あれがそうだと、そんな気もする。
『手を振って。』
手を振った、その人影が違ったら恥ずかしいので、正面を向いて軽く手を振った。
その後見下ろした。
手を振られたから、やっぱりそうだったみたい。
『分かった。今から行きます。』
その人影が見えなくなった。
玄関で足音を待つ。
聞こえた足音に少しだけ玄関のドアを開けた。
止まった足音を確認して大きく開いたら、そこにいた。
さすがにパジャマじゃなかった。
顔をジッと見られる前に下を向いて迎え入れた。
「ごめん。突然、こんな夜に。連絡が来なかったら、部屋を見て大人しく帰るつもりだったんだけど。」
それの何が楽しいの?・・・なんて聞けない。
「どうして住所知ってたの?」
「教えてもらった。」
「陽も知らないと思うけど。」
「亜紀さんの友達。」
ええ~、まさかそこは思ってなかった。本当に?誰に?
・・・・冬美?
リビングに立ったままの会話も変だった。
「適当に座って。何か飲む?」
「ううん、車の中で飲んでたから、今はいらない。」
その手にはペットボトルがあった。
半分減っている。コンビニ袋もある。お菓子が入ってるみたい。
一体何がしたかったんだろう?
とりあえず距離をとって近くに座った。
「ここは近いの?」
「30分くらいで来れる。夜ならそれくらいで来れるから。」
無駄な時間の使い方をしてたのは私だけじゃなかったみたい。
「話がしたいと言われて、顔を見て話したいと思ったんだ。」
いい話だと思ってるよね。
陽だって安心させるように言ったと思う。
だけど・・・・・。
「正直に言うと、分からない。一番仲がいい、一番話しやすい、一番近くにいてもらいたい、いい人だし、変に気取らずに自分らしくいてもいいって安心できる。好きだと思う。でもまだ自信がない。たとえば、陽も同じくらい近いって思ってる。陽は恋愛対象じゃないってはっきり言えるけど、いい奴だから好きは好き、友達として好き。」
言い切って顔を上げた。
『聞きました。』そうその顔は言ってる。
じっと見られて、ズズズっとお尻を動かして近くに来られた。
気分的には離れたいけど、失礼だと思ってそのままでいた。
でも・・・・ドキドキする。
どうしよう・・・・・、顔が赤い気がする。
手をつながれた。多分初めて。そう、初めてだと思う。
「陽と手をつないだことある?」
「ない、あるわけない。」
何を考えてるの?
変な想像してる?
「俺は、好きだって言ったよね。」
腰に手を当てられた。
動けない。
自分の部屋なのに、固まって動けない、リラックスからは程遠い状態。
「ねえ、この間はああ言ったけど、本当のところ自信はあるんだ。絶対、そうなるって。」
理解不能。
いろいろと正常に機能してないから、もっと普通の会話をお願いしたい。
「陽は待つ必要はないのにって言うし、亜紀さんの友達もなんだかそんなことを言ったから。・・・・ねえ、どうして部屋に入れてくれたの?そんなに安心してる?」
「ちゃんと返事をもらうまで、何もしないって思ってる?」
そこは頷いた。
そこをいい加減にしてると流されそう。
ただ、そうは思っても、皆が流されろって思ってるのは分かった。
「何もしないよ。嫌がることはもちろん。そんな男じゃない。嫌われるのは避けたいし。でも逃げないよね。・・・・今、嫌がってないよね。」
顔が近づいた。
「許される事はあるんじゃないのかなって、そう思うけど。」
ずっと目を逸らせずに見ていた。
陰になってちょっと暗くなった顔を、自分が映ってるだろう瞳を。
最後は閉じた。
顔が近づいて、体が引き寄せられて、そこはずっと閉じていた。
自分でも首に手を回して引き寄せたし、明らかに流された、自分から流れに飛びこんで泳いだくらい、上手に流された。
随分たって目を開けて陸にたどり着いたように流れから抜けた。
胸から上が少し離れて、でも完全に示現君の体に乗り上げるようにくっついてる自分の体。
気がついたら恥ずかしくて、肩に手をついて突っ張るように離れた。
ただ示現君が腰においた手は緩まないままで、やっぱり半端な状態のままだった。
ゆっくり眼鏡をはずされた。
パソコン用の眼鏡で素顔を隠す以外の意味はない。
「・・・邪魔だし。」
確かに邪魔だった、さっき。完全に浮いていたと思う。
そんな顔を見られてたと思う。
普通外すよね、キスする時は外すよね。
そのままゆっくり後ろに倒されて、かぶさるように上から見られて、示現君の体の影に入った。
手はゆっくりと広い背中に当てた。
「何か、言葉はないの?」
何か・・・・・必要なの?
「言ってよ、今はどう?さっきと変わらないの?全然まだ分からないまま?」
首を軽く振った。
視線を合わせたまま、伝わるように軽く振るだけにした。
「ありがとう。」
「何が?」
「来てくれて。」
「ねえ、もっとちゃんと答えてよ。さっき聞いたことに答えてよ。」
「もっと、キスして。」
そうお願いした。
すぐそこに、くっつくくらい近くにいるのに、動かないままだったから。
もう、いいじゃない。
はっきりしたことはある。
嫌がることもなく、自分から流された、そしてもっとくっつきたいと思ってるんだから。
軽く一度触れた、本当に軽く。
すぐ目を開けてもう終わり?って確認したいくらいの短さだった。
体を抱きしめられるようにしてくるりと位置が変わった。
示現君の体に完全に乗っかった。
私は何もしてない、完全に乗っけられた。
今度は私が見下ろす形になった。
「亜紀さんが、望むようにして。」
ここで起き上がって話の続きを・・・・なんてことになるわけがない。
少しづつ顔を下ろして近づけた。
それでも、頭と腰に置かれてた手にも力を入れられて引き寄せられてもいたから。
『ごめんね。ちょっとだけ話があるの。邪魔はしないから、今日でも明日でも、お願いします。』
他に思いつかないんだからしょうがないじゃない。
一番二人の事を知ってるだろう相手だし。
『何?想像つくけど一応聞く。』
しばらくしたら連絡が来た。
『電話、いい?』
そう送ったらかかって来た。
本当にいい奴。
「陽、柴田さんと一緒じゃないの?」
『違うよ。部屋にいるし。気を遣わなくてもいい。本題に入ろう。示現のことでしょう?』
当たり前だ。その事しかないだろう。
「何か言われた?聞いてるの?」
『まあね。告白して返事待ちで、今日も返事してもらえなかったってところまでね。』
「今日もって何?夕方以降連絡来たの?」
『気になる?』
来たんだ。ちょっとくらいなじられただろうか?
言ったことも言われた事も、全部筒抜けかもしれない。
『亜紀、何で返事しないの?』
「この間食事をした時に全然そんな感じじゃなかったんだもん。その後も全く連絡ないし、嫌われたと思った。皆にはあの夜の示現君が酔っぱらって人恋しくなっただけだろうとか言われた。」
『なにそれ?本気でそう思ってるわけじゃないでしょう?』
「だって今日まで本当に何も・・・・・・なかったし。」
『示現には何で待つ必要があるのって言ったくらいなのに。別にそのままでもそうなるって分かるのに、スタートをはっきりさせたい方なのかな?』
「そう言う陽ははっきり言わないまま柴田さんと会ってるの?」
『そうだね。会いたいって言って、都合を聞いて、その内どうかなって聞くつもり。だって示現と亜紀とは違うよ。ちょっとしか話をしてないし、向こうだって違うと思ったら断ると思うよ。そこで理由が曖昧で誤魔化されたりしたら、もう誘うのはやめようかなって思うから。』
「何?参考にしろって事?」
『話聞いてる?二人とは違うから参考にはならないって言ったのに。今すぐ返事をしたらいいよ。もったいないじゃん、明日も明後日も悩むの?寂しい週末で無駄な時間を過ごして、示現も可哀そうだし、亜紀も・・・・・他に誰もいないよ、最後のチャンスだと思って。今から示現に言っとくから、返事するつもりだからもうしばらく起きてるようにって。おめでとうって言うから。じゃあ、よろしく。』
そう言いきって、そのまま切られた。
なんであんたが返事するのよ、勝手に言わないで、それに『最後のチャンス』って何?『他にいないよ』ってどんな予言よ!!
思いっきり言い切ったけど、当然独り言だった
電話はとっくに切れてたし。
本当に今連絡してるんだろうか?
もう寝てるかも・・・・って時間ではない。
陽のメッセージをすぐには読まないパターンもあると思う。
だからしばらく時間は置いていいと思う。
示現君はいい人、それは確実。
今回もすごく協力もしてもらった。
仕事もやりやすかった。
それは優しさだし、いい人なんだと思う。
でもそれは私にだけじゃないよね。きっと他の人にも同じようにいい人だと思う。
好きだと言われたら、私も好きだけど、それは一緒なの?
一番一緒にいて楽だとは思う、それは陽と同じくらい。
今更だから気取らずに自分のままでいいと思える。
だっていろいろバレてる気がする。
それを心を許してると取るか、どうせ気取ってもしょうがないって諦めてるってとるか。
なんだか考えれば考えるほど難しい。
どう返事していいか分からない。
だからこの間一緒にいたはずなのに、あの時は距離があり過ぎたんだろうか?
ドキドキという感じからは程遠かった。
本当に同僚だった。
そう見られてると思って、私もそう見ていた。
やっぱりわからない。
他の人よりはずっと好き、そうとしか言えない。
そう正直に言うしかない。
示現君に連絡してみた。
『話をしたい。電話していい?』
しばらく読んでもらえなくて、それでも時々確認して、待っていた。
それでも反応はなくて、ため気をついて携帯を手離した。
陽のメッセージも読んでないんだろう。
どこかで食事をして、お酒を飲んで、気分転換をしてるのかもしれない。
本当に会社での姿以外は知らない。
どんな生活パターンなのか全然。
あの日もそんな話はしなかったから。
本当に今の個人的なことは知らないから。
同じように私だって知られてないのに、陽が少しは教えたとしても今の私の過ごし方なんて知らないから。
あの仕事の時にもそこまでのやり取りはなかった気がする。
『近くにいるんだけど。』
いきなりそう返事が来た。
近くって、今?この部屋の近く?
『どこにいるの?』
今から駅までだとしても出ていくのは面倒極まりない。
すっかり化粧も落として、パジャマを着ている。
食事だとしても、グラタンも諦めて、適当にお惣菜を買ってきて食べた。
一応優先順位は考えた。
グラタンで癒されるよりは考えるべきと思ったから。
『マンションの近くのコンビニ。車にいる。』
なんでマンションを知ってるの?
陽に聞いたの?
でも、そこまで詳しく教えてた???
秋津パパに教えたかもしれない。
あの日、電話番号や住所も書いた名刺を渡した。
秋津パパにも同じようなものをもらった。
『何かあったら相談してね。』
そんな優しい言葉をもらった。
・・・ってそれはいいとして、どうすればいいの?どうしたいの?
電話で話が出来ればいいと思っただけなのに。
じゃあ、あの時返事をすればよかったんじゃない?
だってそれはちょっとまだ無理だった。
じゃあ、食事をしても良かったのに、頑張って誘ってみたのに示現君が断った癖に。
色んな事を考えてたら時間が空いてしまった。
『もうお風呂にも入って化粧も落としてパジャマなの。示現君はどうしたいの?』
責めてるように読まれるだろうか?
『車を止めて、部屋に行ったら迷惑?』
当たり前だ。
部屋をぐるりと見渡す。
迷惑は迷惑だ。
ただここで断るのは・・・・・どう?
車に行くと言う手もある。窮屈な密室だ。しかもコンビニ。
ダメでしょう。
『分かりました。部屋は分かるの?』
『多分。後で聞く。少し時間がかかる。』
そう言われた。
車をコインパーキングに入れて、探してくれるんだろう。
あのコンビニだと思う。
窓辺に行ってカーテンを開けた。
暗い道に何かが見えるわけではないけど。
しばらくぼんやりと窓辺に立っていて、ふと我に返った。
急いで動いた。今の優先順位!!
まず・・・・・眼鏡をした。
それ以外することもなく、髪を整えて、パジャマを見てパーカーを羽織り・・・着替えた方がいいのだろうか?
もうパジャマだって言ったからいいよね。
コーヒーとお茶を出せる用意をして・・・・・・。
『窓辺に立ってもらっていい?』
連絡が来た。
窓辺に行って下を見下ろす。
人影がいるのが分かる。
携帯の明かりが浮かび上がらせてもいる影の感じ。
あれがそうだと、そんな気もする。
『手を振って。』
手を振った、その人影が違ったら恥ずかしいので、正面を向いて軽く手を振った。
その後見下ろした。
手を振られたから、やっぱりそうだったみたい。
『分かった。今から行きます。』
その人影が見えなくなった。
玄関で足音を待つ。
聞こえた足音に少しだけ玄関のドアを開けた。
止まった足音を確認して大きく開いたら、そこにいた。
さすがにパジャマじゃなかった。
顔をジッと見られる前に下を向いて迎え入れた。
「ごめん。突然、こんな夜に。連絡が来なかったら、部屋を見て大人しく帰るつもりだったんだけど。」
それの何が楽しいの?・・・なんて聞けない。
「どうして住所知ってたの?」
「教えてもらった。」
「陽も知らないと思うけど。」
「亜紀さんの友達。」
ええ~、まさかそこは思ってなかった。本当に?誰に?
・・・・冬美?
リビングに立ったままの会話も変だった。
「適当に座って。何か飲む?」
「ううん、車の中で飲んでたから、今はいらない。」
その手にはペットボトルがあった。
半分減っている。コンビニ袋もある。お菓子が入ってるみたい。
一体何がしたかったんだろう?
とりあえず距離をとって近くに座った。
「ここは近いの?」
「30分くらいで来れる。夜ならそれくらいで来れるから。」
無駄な時間の使い方をしてたのは私だけじゃなかったみたい。
「話がしたいと言われて、顔を見て話したいと思ったんだ。」
いい話だと思ってるよね。
陽だって安心させるように言ったと思う。
だけど・・・・・。
「正直に言うと、分からない。一番仲がいい、一番話しやすい、一番近くにいてもらいたい、いい人だし、変に気取らずに自分らしくいてもいいって安心できる。好きだと思う。でもまだ自信がない。たとえば、陽も同じくらい近いって思ってる。陽は恋愛対象じゃないってはっきり言えるけど、いい奴だから好きは好き、友達として好き。」
言い切って顔を上げた。
『聞きました。』そうその顔は言ってる。
じっと見られて、ズズズっとお尻を動かして近くに来られた。
気分的には離れたいけど、失礼だと思ってそのままでいた。
でも・・・・ドキドキする。
どうしよう・・・・・、顔が赤い気がする。
手をつながれた。多分初めて。そう、初めてだと思う。
「陽と手をつないだことある?」
「ない、あるわけない。」
何を考えてるの?
変な想像してる?
「俺は、好きだって言ったよね。」
腰に手を当てられた。
動けない。
自分の部屋なのに、固まって動けない、リラックスからは程遠い状態。
「ねえ、この間はああ言ったけど、本当のところ自信はあるんだ。絶対、そうなるって。」
理解不能。
いろいろと正常に機能してないから、もっと普通の会話をお願いしたい。
「陽は待つ必要はないのにって言うし、亜紀さんの友達もなんだかそんなことを言ったから。・・・・ねえ、どうして部屋に入れてくれたの?そんなに安心してる?」
「ちゃんと返事をもらうまで、何もしないって思ってる?」
そこは頷いた。
そこをいい加減にしてると流されそう。
ただ、そうは思っても、皆が流されろって思ってるのは分かった。
「何もしないよ。嫌がることはもちろん。そんな男じゃない。嫌われるのは避けたいし。でも逃げないよね。・・・・今、嫌がってないよね。」
顔が近づいた。
「許される事はあるんじゃないのかなって、そう思うけど。」
ずっと目を逸らせずに見ていた。
陰になってちょっと暗くなった顔を、自分が映ってるだろう瞳を。
最後は閉じた。
顔が近づいて、体が引き寄せられて、そこはずっと閉じていた。
自分でも首に手を回して引き寄せたし、明らかに流された、自分から流れに飛びこんで泳いだくらい、上手に流された。
随分たって目を開けて陸にたどり着いたように流れから抜けた。
胸から上が少し離れて、でも完全に示現君の体に乗り上げるようにくっついてる自分の体。
気がついたら恥ずかしくて、肩に手をついて突っ張るように離れた。
ただ示現君が腰においた手は緩まないままで、やっぱり半端な状態のままだった。
ゆっくり眼鏡をはずされた。
パソコン用の眼鏡で素顔を隠す以外の意味はない。
「・・・邪魔だし。」
確かに邪魔だった、さっき。完全に浮いていたと思う。
そんな顔を見られてたと思う。
普通外すよね、キスする時は外すよね。
そのままゆっくり後ろに倒されて、かぶさるように上から見られて、示現君の体の影に入った。
手はゆっくりと広い背中に当てた。
「何か、言葉はないの?」
何か・・・・・必要なの?
「言ってよ、今はどう?さっきと変わらないの?全然まだ分からないまま?」
首を軽く振った。
視線を合わせたまま、伝わるように軽く振るだけにした。
「ありがとう。」
「何が?」
「来てくれて。」
「ねえ、もっとちゃんと答えてよ。さっき聞いたことに答えてよ。」
「もっと、キスして。」
そうお願いした。
すぐそこに、くっつくくらい近くにいるのに、動かないままだったから。
もう、いいじゃない。
はっきりしたことはある。
嫌がることもなく、自分から流された、そしてもっとくっつきたいと思ってるんだから。
軽く一度触れた、本当に軽く。
すぐ目を開けてもう終わり?って確認したいくらいの短さだった。
体を抱きしめられるようにしてくるりと位置が変わった。
示現君の体に完全に乗っかった。
私は何もしてない、完全に乗っけられた。
今度は私が見下ろす形になった。
「亜紀さんが、望むようにして。」
ここで起き上がって話の続きを・・・・なんてことになるわけがない。
少しづつ顔を下ろして近づけた。
それでも、頭と腰に置かれてた手にも力を入れられて引き寄せられてもいたから。
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