親子だから、そこは当然仲間入り、呪われた血の一族です。

羽月☆

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1 お兄ちゃん、記念すべき発症の日、カウントダウンが始まった。

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どの家にもそれぞれルールがあると思う。
大抵決めるのはお父さん、よりもお母さんかもしれない。
本当に小さな家族内のルールから、人生を教訓になるような大きなことまで。

我が家で厳しく守られてるルールの一つ。

『お酒の場の雰囲気に誘われるな!一晩二杯までは厳守!!』

残念だけど守らされてるのはお父さんだけ。
お父さんのためのルールだった。
それでも何かあるたびにお母さんが釘をさす。
太い太い釘だと思う。
さされたお父さんの手が止まるくらいの痛そうな釘。

お酒に関する限りお母さんは厳しい。
お腹を見てもまだまだ狸でもない、毎年の健診結果だって肝臓は元気だし。
それでもそう決められてる。
それが我が家の、お父さんに課せられたルール。
ちなみに自宅でのお疲れビールはもっと厳しい。
小さい缶ビール一缶だけだ。


もちろん他にもたくさんルールはある。
自分に関係することだってある。

例えば週末のご飯は事前申告制だったし、洗濯物はきちんとした状態で脱いで洗濯機に入れないと、靴下も袖もそのままひっくり返ったままで返される。
ポケットの中はきちんと出してから出さないと本当に怒られる。
それぞれ一度は紙類をポケットに入れたまま洗濯に出して、お母さんに恐ろしい顔で怒られたことがある。ただ、お母さんも一度はやってるのを知っている。
白い細かいゴミが張りついた洗濯物を見てため息をついていた。
そんないろんな助け合いの精神で家族は同居して成長するのだ。

ゴミは気がついた人が拾いましょう。
最後まで使い切ったものは補充もしくは購入の手続きを踏みましょう。
空いたものは所定の場所へ。

嘘はつかない、不機嫌な態度はとらない、常に感謝を忘れずに、他の皆を思いやる事。
何かがあったらすぐにホウレンソウ。
家族で解決すること。

今まであんまりひどく困ることもなかったから、仲良しの家族のままだ。




ある時、大学生のお兄ちゃんが元気に出かけていった。

サークルの飲み会があるとは言ってた。
そんなの毎週あるんじゃないのって思ってた先週のこと。
テーブルに置き去りにされた携帯が震えた。
持ち主のお兄ちゃんが冷蔵庫を探っていた時だった。
見えたメッセージ。
『結城さん、参加するって、頑張れ!』
みたいな文字が浮かんだのを見た。

???

お兄ちゃんの参加してるサークルは・・・よくわからない、小難しいもの。
ほとんど男子、就職にも有利なものにしたと言っていた。
家族の中でそれが分かったのは誰もいなかったけど、将来役に立つらしい、じゃあいいよと許されたものだった。

女子いたの?まさか男性先輩なんてことないよね、『頑張れ』ってことは、女子よね?

鼻歌を歌いながら戻ってくるお兄ちゃん。
携帯の着信に気がついて画面を見ている。

ぼんやりのふりをしながら、お兄ちゃんの表情の変化を見た。
やっぱり驚いてうれしそうな顔をした。

ビンゴ~。

そういうことだよね。好きな人が参加するんだよね?
吉報に舞いあがってるのを全く隠せてないよ。

カレンダーにご飯無しの申告は早々と書かれていた。
夜にお母さんにサークルの飲み会だと言っているその声も楽しそうで、隠せてない喜びが溢れ出ていた。



そして金曜日の今日。当日。
本当に嬉しそうに朝からウキウキを隠せてないお兄ちゃん。

ちなみに大学の授業が午後からでもきちんと朝は揃って顔を見せることもルール。
ボサボサで二度寝してもいいけど、朝は一度起きて着席すること。

いつもならゾンビのようなお兄ちゃん。
今日は違う!!


「お兄ちゃん、今日の授業のは朝から?」

「いや、いつも通り午後。」

「珍しく早起き出来たんだね。」

「まあな、そろそろいろんな情報をもらったりして、来年の事も考えることがいっぱいあるんだよ。お気楽な二年生とは違うのさ。」

偉そうに言う。一個しか違わない。
私は大学二年生、お兄ちゃんは三年生。
私は着実に単位をとっていて、一度も冷や冷やしたことはない。
お兄ちゃんは毎回毎回神頼みの運任せで、家族を不安にさせてバタバタしてる。

偉そうに言える立場じゃないのに。


「あ、今日はすごく楽しみにしてた飲み会だ。おしゃれしていくの?」

「な、何でだよ。楽しみだけど、いつも飲んでるんだから。」

この間珍しくお母さんにおねだりしてお小遣いをもらっていた。
服を買ったらしい。
丁度お父さんのボーナスがうっすら見えてきたころで、特別にもらってた。
近くで見ていた私も、もちろんもらえた。

兄ちゃん、グッジョブ!
そう思った。

私はバーゲンで使う予定。
お兄ちゃんは早々にその日のうちに買い物に行っていた。
金額を指定してもらっていたから、吟味に吟味を重ねて選んだ服だったのだろう。

ただ、起き抜けの今は普通の楽な部屋着だった。

「和人、飲み過ぎないでね。」

「分かってる。絶対飲み過ぎないって。」

お父さんに課せられたお酒のルール。
お兄ちゃんもそんなに強くない。
すぐに赤くなるから本当に飲み過ぎるまでもないらしい。
すぐに頭が痛くなるって言っていた。

気の毒に・・・・。


ちなみに私はまだ甘いカクテルを2,3杯くらいしか飲んだことがない。
だからどのくらい飲めるかは分からない。
それでもお父さんが飲み過ぎて、ある意味壊れたのを見てから、飲み過ぎるのはよくないと思ってた。



「そういえば優、好きな奴はいるのか?」

いきなり妹の恋愛に首をつっこもうと思ったらしいお兄ちゃん。
ずいぶん余裕じゃん。

「いない。」

「マジ、寂しいなあ。お前ボケボケしてるとすぐに自由時間は終わるぞ。」


「自由時間だと思ってるのは和人だけでしょう。あんまり自由にしてると来年泣くことになるからね。」

お母さんに言われた。
そうだそうだ。

「私は二回くらい部屋でどんよりしてた誰かを知ってるけど。自由と寂しさと隠せない喜びと、寂しさの代わりに手にしたものが消えた後と、いろんな事が起こるんだね。」


「お前何を知ってるんだよ。」

真っ赤になりながら怒ってる心当たりのある人。

「なかなかご飯にも降りてこないから、親切に部屋に迎えに行ってあげたのに、暗い部屋にいるし、悲しい歌が流れてるし、トボトボと階段下りて来るし。まったく二回とも同じ反応で・・・・笑えるくらい丸わかり。」

笑って教えてあげた。
まさかバレてないなんて思ってないよね。

「本当に1週間くらい、気を遣うわよね。大好物を出してもボソボソと食べるだけだし。さすがに二回目は嫌いなものを出したのに、同じように食べてたわよね。ピーマンも克服出来たのかと思ったのに、元気になったらまた残すんだから。本当・・・面倒。」

「二度あることは三度あるって言うからね。」

そう言ってやった。
もし今夜そんな事になったら恨まれそうだ。
ちょっと不吉な予言だっただろうか?

「そんなことは一度くらい寂しさを忘れるくらいのイケメンを捕まえてから言え。口だけ生意気な奴だな。」

「生意気とか何とかより、好き嫌いは失くした方がいいよね。そんなところ彼女が知ったらがっかりだよ。お母さん、今度はピーマンだけのメニューでいいよ。私は大好き!」

私は基本好き嫌いはない。
普通に食卓に並ぶお母さんの料理で気に入らないものはない。
お兄ちゃんは子供のように人の皿に嫌いなものを乗せてくる。
ピーマンと、パプリカと、桜エビ。
桜エビに至っては嫌がらせのようにお母さんが入れてるのを見てる。
それをちまちまと先に取り除いて食べ始めるんだから、そんな根性はあるらしい、さすが理系、細かい。味も香もとっくに染みこんでるだろうに、舌触りが嫌だと言う。


とうとう嫌な顔をしてお兄ちゃんが席を立った。

「和人、飲み過ぎるなよ。」

珍しくお父さんがまた注意してきた。
好き嫌いの事に関しては口をはさめないお父さん。
さすがにお母さんのお皿に乗せることはないけど、小さい頃は私が膝の上で食べてあげていた・・・・ピーマン。そうやって小さいころからお父さんの優しさだと思って、口元にもらったピーマンを雛鳥のように口を開けて食べてあげてたんだから。
そんなピーマン苦手も父と息子は似ている。


お兄ちゃんは二階へ行った。

お父さんも席を立った。


「お母さん、お兄ちゃん今日好きな人と一緒に飲むのかもしれない。グループに参加してくれるらしいよ、多分。だから洋服も買ったんだと思う。」

小声で会話。

「何で知ってるの?」

「偶然携帯を見た。多分そう。『結城さんが参加するから頑張れ。』ってメッセージがあって、それ見てにやけてた。」


「楽しみね。どんな人かな?」

「優しい人だといいね。落ちこんで帰ってきたらどうしよう。ちょっと責任感じる。」

「いきなり失恋?それは気の毒。」

「元気になるように声をかけて送り出す。」

「そうして。食卓が暗いのは勘弁よね。ピーマン安いかしら?」

お母さん、もしかして上手くいくかもしれないのに。
そうなったらそうなったでピーマンも気にせず食べるかも。

ただお父さんががっかりするのか・・・・・。
今では自分でちゃんと食べてるけど、しぶしぶなくらいだ。
決して好きなものでも得意なものでもなく、しょうがないから口に入れて丸のみ。

もう、大人なのにね。


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