親子だから、そこは当然仲間入り、呪われた血の一族です。

羽月☆

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2 ついでに思い出した寂しさが通り過ぎた出来事。

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その日お兄ちゃんにドア越しに楽しんで来てねと声をかけた。
返事も聞こえた。

そして私は午前二コマ目の授業に出た。

「優、今日の午後は?」

午前に一緒の授業をとってるモモが声をかけてきた。

「午後一、一つ。」

「バイトは?」

「夕方からだよ。」


「じゃあ、待ってるから、少し付き合って。」

「いいよ。じゃあ、駅のいつもの所辺りで。」


軽くお昼を済ませて、その間近くにいた友達と話をしたりして。
二年生はまだまだ余裕。
だって私の友達も家族をハラハラさせるタイプじゃない。
皆普通に真面目。
ちょっとだけ寂しいグループだけど、だから仲がいい。


授業が終わって携帯を見た。
駅近のコーヒー屋さんで待ってるとモモから連絡が来ていた。

「また明日ね、優。」

「うん、またね。」

仲間と別れて、急いで向かう。


皆でダラダラと話をすることはあるけど、二人は珍しい。
特に今日は他に誰もいなかったからだろうけど。


手をあげられて、そのままコーヒーを持ってそこに向かう。


「ちょっとトイレ。」

我慢してたらしいモモ。
テーブルのコーヒーを持ち上げたら結構減っていた。

くるりと回すと同じ物みたい。
少し分けてあげてもいい。


戻ってきたモモに言って、私の分を少し分けた。
丁度飲み頃になったモモのコーヒー。

バイトまで一時間ちょっと時間はある。
私は地元でパン屋さんのバイトをしてる。
すっかり慣れていて、気に入ってもいる。
出来るだけ卒業まで続けたいと思ってる。
シフトが短いから本当にお小遣いになるくらいだ。


「どうしたの?」

「うん・・・・・。」


「何?」

思ったより真面目な雰囲気になった。
色んな事を想像するけど、何も思いつかない。


「ねえ、優は誰か好きな人いる?」

今日二度目の質問。
答えも一緒。

「いない。」


「本当に?」

「うん。」

そこを疑うなんて、誰を好きだと思われてるのか、逆に聞きたい。
そんな候補者すら見当たらない。

「じゃあ、付き合ってる人もいないってことだよね。」

もちろん。うなずく。
赤くもならない質問だ。

「そう。」大きく息をついて椅子にもたれたモモ。

「どうしたの?」

今の話で相手が私でなくてはいけない理由があるとするならば・・・・教えて欲しいくらい。

「私が安忍(あんにん)に告ってもビックリしない?」

「えっえ~、それはするよ~、ビックリ~。」
「もう声が大きいから・・・・。」

急いで口をふさがれた。
危うくコーヒーをこぼすくらいの勢いがあった。

「だってビックリ。安藤君と仲良かった・・・・の?」

あんまり知らない。話をしてた?

思い出しても全然分からないくらい。

「ねえ、みんな『あんにん』って呼ぶのに、ずっと『安藤君』って呼んでたよね。」

「だって、そんなに仲良くないよ。」

安藤忍君。勿論男子、普通の男子。
確かに『あんにん』って呼ぶ子はいたと思う。
でも私はそんなに仲良くしてる方じゃなくて、呼ぶきっかけがないと呼べないあだ名ってあるじゃない。

「ねえ・・・・・もしかして私が安藤君を、って思ってたの?」

何でだろう?本当に自分にも心当たりがないし、多分安藤君もないと思う。

「うん、なんとなく思ってた。内緒にしてるのかもしれないから、一応聞いてみようと思ってた。」

「あ、そう。それなら全然大丈夫。本当に知り合いの一人、しかも距離のある知り合いだと思う。で、どうやってするの?呼び出し?電話?まさか文字じゃないよね?」

今度は私が身を乗り出した。
コーヒーはちゃんと掴んでるから倒すことはない。

「応援する。」

「本当に?」

「何でそこ疑うの?」

そこまで心は狭くないよ。寂しい私でも友達の幸せはちょっとくらい・・・・心を広くして喜ぶし。

「なんとなく安忍が良く優の事を見てた気がする。」

えっえええ~、驚き過ぎて声にならない。
嘘嘘嘘?
知らない。
誰か教えてよ、もっと本人が言ってくれてもいい・・・・なんて思った。

ここで、やっと赤面する場面だったらしい。

「何も言われてない?」

「ないないない、全然、全く、挨拶も平等だよ。」

本当にない、悲しいくらいない。
ああ・・・どうしよう、そう言われるともう見れない。
目が合ったら絶対赤くなる。

でも、もう、今更だ。

モモが好きだと言ったら、まあまあそうなるかもしれない。

そういうことだ。

そんな気持ちの盛り上がりは本当に一瞬で冷静になり、消えて行った。
寂しさよ、こんにちは。
ひとり部屋でどろろんとするまでもない出来事だった。


「じゃあ、頑張ってみる。」

モモがやっと安心したみたいに宣言した。

「うん、頑張って。誰か知ってる?」

「ううん、誰も知らないと思う。」

「そうか。」

結末は知りたいけど、本当に素直に喜ぶ前に一瞬だけガッカリするかも。
そんな気分は味わいたくないから、知るならみんなと一緒のタイミングでいい。
そしたら大きな声でおめでとうが言える。
他の子の声に紛れて言える。


だいたい私は安藤君の連絡先も知らない。
モモは知ってるの?
それとも待ち伏せるのかな?



結局この後の週末をいれた3連休で、会う機会もなく。
結末のお知らせもなく。


連休が明けて、皆が集まった時に、偶然二人が揃った。

まずモモを見たらうれしそうな顔をされた。
さり気なく安藤君を見た。

目は合わなかった。
それでもあんまりジッと見たことがなかった。
普通だと思ってたけど、ちょっとカッコいいなあと思ってしまった。

なんだか一人で勝手に失恋したみたいに、心の一部ががっかりした。

もう、何でよ・・・・・。


皆で適当に話をしていて、その内授業が始まって、終わって。

仲のいい子とカフェでまったりと話をしていた。


「ねえ、聞いた?モモ、安忍に告白して付き合うことになったんだって。」

モモ・・・・・なんで私より先に典ちゃんが知ってるの?
そこもガッカリした気もした。
あんなに聞くなら一緒にって思ったのに、でもちょっとは先に知らせてくれるかなって思ってたのに。


「そうだったんだ。全然知らなかった。いつから見てたの?」

「知らない。もうずっとって言ってたけど、話ししたりしてた?」

「知らないよね。安忍が女子と話をしてるのすら知らない。」

典ちゃん以外は初耳だったらしい。


「あ・・・・・でも・・・・・・・。」

会話が止まった。

静になったテーブル。顔をあげるとなっちゃんに見られてた。

何?

「優は・・・・・・。」

「ああ、ごめん、それは間違い。優は違う。」

典ちゃんが急いで謝った。誰に?

相変わらず名前が出てるのに、最終的に否定もされて。

何?


「違うの?」

なっちゃんが典ちゃんに聞く。

「うん、私の誤解でした。安忍が見てたと思ったんだけど、こっそり聞いたら本人もびっくりしてた。全然違ったみたい。ごめんごめん。」


まったく私を抜きに話が続いてる。
聞いていいよね?

「何?」

そう聞いた私に典ちゃんが説明してくれた。
結果、モモが思ってたことは本当に誤解だったって事で。
安藤君が私に何か言うなんて事、モモが何を言っても言わなくても、私には無関係だったと言うこと。

酷い・・・・・やっぱり勝手に失恋したみたいな気分が再び。
ちょっと期待させないでよ。
ちょっとくらいは期待したんだから。
最悪友達をとる?男の人をとる?みたいなギリギリの選択肢すら頭によぎったのに。


ああ・・・・まるで見当違い。
典ちゃんの馬鹿。
きっとモモにも言ったんだろう。
そしてモモが気にしてたんだろう。
安藤君が典ちゃんに否定したのに、モモは私にも確かめたかったんだ、きっとそうだろう。

「安忍はモモの事が好きだったの?」

当然の疑問。そういうことなんだよね。
安藤君もモモのことを見てたんだよね・・・・私じゃなくて。

「それは・・・知らない。でもまあ、そうなったみたい。良かったよね。」


やっぱり告白すると、ラッキーならそうなるみたい。

そんなラッキーな事私にもあったらいいのに。


そんな事を思った友達に関する出来事。
私にはまったく関係なかった出来事。


そう、ついでに思い出しただけ。
モモに確かめられたその日が、お兄ちゃんの運命の日だったから。


そうそうお兄ちゃんの事、それは本人の事。家族の事。

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