親子だから、そこは当然仲間入り、呪われた血の一族です。

羽月☆

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8 年上のお兄さんにご馳走になりました。

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改札でマコトと別れて、私は乗り慣れない電車で待ち合わせ場所へ。


改札を出たら一理さんがいた。
手を振って近くに行った。

私服も大人っぽかった。
年上だし、彼氏ももっと大人だし、そうなるんだなあ。

「一理さん、すごく綺麗です。大人っぽいです。」

「ありがとう。赤城さんはイメージ通り、可愛い。」

「ありがとうございます。『優』でいいです。みんなそう呼ぶし。」

「そう、分かった。でも私はみんなが一理さんって呼ぶんだよね。」

「だってそんな名前も雰囲気に合ってます。でも美紀さんも合ってます。」


「優ちゃん、昨日はあれから大丈夫だったよね。」

早速名前で呼んでくれて嬉しい。

「はい、もちろんです。あの後一人でいた矢田君にまた謝りました。今日はマコトにお詫びの品を買いなさいと言われて。」

小さい袋を見せた。

「なんだかしつこいと思われて逆に嫌がられそうだって抵抗したのに。」

「周りが楽しんでる?」

「やっぱりそう思いますよね。多分そうです。」

「いいね、仲良しだし、この際矢田君とも飲み仲間になってもいいかもね。」

「私は何も言えません。断られなければ、嫌がられなければ。」


「う~ん、昨日のメンバーの中に矢田君狙いがいない事を祈るだけだね。」

え・・・・・。そうか・・・・。
あんなこといきなりした私はその人に思いっきり敵対視されるよね。
怖いなあ。

「誰か聞いてますか?」

「知らない。全然。矢田君が誰かと喋ってるのもあんまり知らないね。注文係は時々やってくれるけどね。すごく飲めるんだろうね、酔わないで皆の取りまとめをするんだから。」

「ああ・・・お父さんとお兄ちゃんが聞いたら羨ましがると思います。」

「ああ、そうだったね。でも面白いね。少なからずみんな同じ体質なんだろうね。」

「そんな・・・・・・。」


違うと思いたい。
たまには思いっきり飲みたい時もあると思うのに、そんな残念な呪いは嫌だ。


思ったより楽しく話が出来て、その内全員揃った。

「じゃあ、お店に行こう。」

携帯を出した一理さん。

「残業の連絡はないみたい。」

彼氏からの連絡を待ってるんだろう。


いいなあ、どんな人だろう、かっこいい大人なんだろうなあ。


まだお店には誰もいなかった。
先に席について話をして待つ。

「お酒美味しそう。」


メニュー表のお酒は本当に美味しそうだった。
いっそ知らない男性陣じゃなかったら・・・・いや、知ってる人でも二度目はやばい。
同じ人にでもヤバいし、違う人に行った日にはもっとヤバい。
どっちがやばいって・・・どっちだろう?

「優、期待を裏切らないでね。」

「何?」


「新しい『宴の呪い』作ろう!」

「他人事だと思ってるでしょう。今日は一杯にします。厳選に厳選を重ねて一杯。あ、でもコースはどうなってるんだろう?」

「聞いてない。飲み放題ついてそうだから・・・これは入らないかも。ごめんね。」

一理さんが気の毒そうに言う。

「大丈夫。本当に食べる方で楽しむから。」

「そこは出会いを楽しんでもいいよ。」

もちろんです。全力で楽しみます。


どやどやと大人がやってきた。
まさにそんな感じだった。
大人・・・おじさん混じり・・・・あれ?


一理さんの彼氏さんは思った感じとはびっくりするほど違った。
もっと線で描けるような顔立ちとか、顎のラインのとがったような人だと勝手に思ってたのに、丸だった。耳まで丸。
まるで熊だった、いやパンダだろうか?
どちらにしても丸だった。
別に太ってると言う感じはない。

そう、違うと思う。
ただ、皆が何となく体育会系を卒業してちょっと経ってしまいましたという感じだった。
どっしりとした・・・・頼れそうとも言える・・・・あれ?
昨日同期の皆で飲んだ時間、本当に大人になったと言いながらもやっぱり大学の頃のようなはじけた感じがあった。
誰か落ち着いた人いた?
私を含めてそんな感じはいないと思う。
だから一理さんのことを二歳上だと意識するだけでも落ち着いてると思った。

今日はもっと上の人みたい。
だって本当に30歳に近いんじゃない?
帰ったら小さい子供が出て来てもあんまり違和感がないような・・・・。


「優ちゃん、お酒は飲まない?」

目の前の人、牛島さんに言われた。
皆が私の事を『優』と呼ぶから、牛島さんにもその呼び名で呼ばれた。

「実は強くないみたいなんです。自宅以外だとちょっと困るので控えてます。」

「そうなんだ。じゃあ、何か頼む?」

お酒以外は頼まないといけない。
ワインやビールは棚にあって冷やされている。
適当に飲み放題で取り出して注げばいいと言われてる。

グラスには名残惜しそうに三分の一くらいのスパークリングワインがあった。
皆がさっさと次のワインに行くのに、そのまま一杯目を楽しんでいる。

「牛島さん、何か注ぎましょうか?」

それくらいは・・・・頑張る。
牛島さんは本当に30歳は超えてるだろう。
一番の年上さんだと思う。

「本当?じゃあ、赤をお願い。」

そう言ってボトルを渡された。
私はそれを注ぐだけ。
ちょっとだけくるりと回してしずくが切れるように。
お兄ちゃんが偉そうに講釈をたれてくれて覚えた。
プロの人もそう注いでたのを見たことがある。

合ってたかな?


まあまあきちんと注げたけど、結構たっぷりだった。


「ああ、すみません。多かったですか?」

「大丈夫だよ。美味しくいただきます。」

代りに私の分の注文もしてくれた。
残念だけどソフトドリンクを頼むのは私だけだった。
本当に残念。
今ならお兄ちゃんとお父さんの気持ちも分かる。
本当に家では浴びるように飲みたいと思うくらいには。
それでもお父さんがそんなに飲んでるのは見たことがない。
小さいころ、私たちが眠ってからお母さんと二人で飲んでたみたいだけど、ダラダラとお母さんに甘えてたんだろうか?
想像できるような、したくないような。


「どうした?」

「ああ、すみません。やっぱり飲める方が楽しいなあって思ってしまいました。」

「そうかな・・・・ごめんね目の前で平気で飲んじゃうけど。」

「もちろんです。どうぞどうぞ。」

それでも私の分が来るまで待っていてくれて、一緒に乾杯してくれた。

優しいらしい。
年上だから。

「牛島さんは酔わないんですか?」

「まあ、普通に強いほうかな。女性と飲んで先につぶれたことはないよ。さすがに大学の時は先輩達と飲んで記憶が途絶えて気がついたら雑魚寝ってこともあったけど。」

「どのくらい飲んだんでしょう?」

「さあ、お店で全力出したら会計が怖いってくらいだから、合宿の時に飲んだりするとすごいね。」

「合宿ですか・・・・・運動部だったんですよね?」

見るからにみんなそんな感じだし、牛島さんもガッチリしてる。
一理さんの彼氏さんは警備関係って言ってた気がする。
『丸』な人だけど、そんな感じだし、男性陣はだいたいそんな感じだった。
柔道なら納得だけど。


「そうだよ。柔道してたんだ。これでも結構強かったんだよ。」

やっぱりそうだった!当たり!!

「なんとなく強そうです。踏ん張って敵を倒してくれそうです。」

つい当たったのが嬉しくて笑顔になったし、牛島さんも嬉しそうな顔をする。

「今でもやられてるんですか?」

「たまにね。近くの道場でちょっとだけ教えたりするのを手伝ってるんだ。半分以上はその後の飲みの方が楽しみなんだけどね。」

「それも納得です。」

こんなお兄ちゃんも良かったなあ、お酒の強いお兄ちゃんだったら一族の呪いはお父さんだけになる。それも寂しいかな。

時々温くなったスパークリングワインを飲んで炭酸を味わって。
やっぱり冷たい内に飲めばよかったと残念に思ったり。

仕事後のお兄さんたちは程よく赤くなり、楽しい話題でみんな笑顔だったと思う。
あんなに勢い込んでた思いも、まあいいか・・・・と思えるくらい、楽しかったからいい、満足です。


お会計はお兄さんたちがたくさん払ってくれた。
お店の前から塊で移動して、あんまり話をしてない人に話しかけられて、牛島さんよりは若い人。それでもガチガチに肩辺りが硬そうな人だった。

それでも酔ってるせいもあり、笑うと全力の笑顔で優しそうだった。

年上の人は優しいらしい、それが人間の余裕だろうか?
多分背中くらいずっと貸してくれるだろう。
酔っぱらってもたれても、私の体重なんて全然重たくないくらい丈夫そうだったし、柱というより大きな壁だと思う。

だからと言って酔っぱらっていい訳はない。
椅子だともたれるなんてできないし、昨日は和室だったのが良くなかったんだと思う、うん、きっとそう。


改札に着くまでご機嫌に話しかけられた誰かと話をして、皆で手を振ってそれぞれ別れた。

は~、全然酔ってないし、何だか、物足りない気分がするんだけど。

部屋に帰って、美術館で買ってきた葉書を出して飾ってぼんやりと見る。


楽しかった一日が無事に、何事もなく終わった。
『呪いの宴』にもならなかったんだから、良かった!

一理さんの連絡先は聞いてないままだった。
お礼を伝えてもらうべく早速メッセージを入れた。
それでお終い。

シャワーを浴びて、お肌を整えて、ベッドに入った。


明日は何しようかな~。

枕に腕をついて顔を乗せて、バタ足で疲れをとる。
眠い、やっぱり知らない人だと気を遣うから。
それなりに疲れたみたい。

寝よう・・・・。



朝目が覚めて時間を確認したら、メッセージが入ってた。

昨日のお礼の続きだった。


『優、楽しそうだったけど。』

『うん、優しい人達だったね。みんな運動部みたいで頼りがいがある人だったよね。』

『気に入ったの?』

『それはちょっと年上過ぎないかな?お兄ちゃんみたいだった。リアルなお兄ちゃんがヘラヘラなだけに、ちょっとあんなタイプのお兄ちゃんも欲しいかも。』

『なんでそんなにお兄ちゃんにこだわるの?』

「別にこだわってないよ。ただそう思っただけ。」

『本当に全然?』

『だから一回りくらい離れてるんだって。私の目の前の牛島さんが一番の年長さんだったよね。みんなはどうだったの?』

『まあ、楽しかったね。』

『それだけ?』

『今のところはそうだね。優こそ連絡先交換したの?』

『まさか、してないよ。交換したの?』

ええ~、みんな教えてもらったの?
私だけ知らないの?

『してない。一理さんが誘ってくれればまた会うことがあるかなって感じだね。』

『そうなんだ。』

まあ、そんな感じ?
また会うと違う?
どうだろう。


やっぱり特別に一理さんからの伝言もなかった。
私の分は伝えてくれただろう、伝えてくれたよね?


直接お礼を言おう。言いに行こう。



特別に用事のない日曜日はだらだらとして適当に時間が過ぎるに任せた。

夜、携帯が震えて、お兄ちゃんから連絡が来た。

『優、聞いて驚け、羨ましいと泣くなよ、寂しいと泣いていいぞ。』

そんなメッセージが来た。
意味不明。
なんだろう?

その後もったいぶったように続報が来た。

『さなえとの結婚を向こうの両親に許してもらった。結婚することになった。』

『秋くらいを予定してる。招待してやるぞ。』

感想は『そうなんだ・・・・。』

だってとっくに一緒に暮らしてるじゃん。
就職して最初のボーナスが出るころに、わざわざ広めの部屋に引っ越したお兄ちゃん。
そのあと結城さんと一緒暮らすようになって、広い部屋が丁度良い広さになったんだろう。

だからそんなの分かってる。
早いなあと思ったし、いいなあと思ったし、結城さんに感謝もした。

だからそうなるとは思ってた。
さすが今更驚かないし、それ以外もなし。

『良かったね。日にちが決まったら教えて。お姉さんによろしくお願いしますと言いたいです、ふつつかな兄ですが・・・・って。』

『実家に帰る時にはいてほしい。一応のけじめだから。』

普通のメッセージが来た。

『もちろん。いつでもいいよ。』

『じゃあ、また連絡する。』

『待ってる。』


そんなやり取りをした。

うれしいお知らせだった。
寂しいなんて思うんだろうか?
普通思うの?

だってお姉ちゃんが出来るんだから、うれしいじゃん。
それは直接会ってさなえさんのいるところで伝えたいと思った。

『一族の呪いは決してその血筋の者を不幸にしない、第二弾。』だった。
じゃあ・・・私も飲んでいいよね・・・・・って思いきりたい!!


カチコチのお兄ちゃんと綺麗なさなえさんの二人の姿を思ってみる。
その隣に笑顔のお母さんと私と、泣きそうなお父さん・・・・泣く?どうだろう。
私の時は泣くだろうな、絶対泣く・・・泣いてくれる・・・・と思う。

ぼんやりと私の最高の仕上げの日を思い浮かべてみたら・・・隣はただ黒いスーツ姿だった。
顔はまだ誰もハメこめなかった、残念。


テレビを見たり、パソコンでフラフラといろんな情報を追いかけて、一日は終わった。

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