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9 明かされた一族の呪いの話、背後霊憑き現象の訳。
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休み明け。
朝、一番に一理さん達のところに行った。
一理さんはまだ来てなかったから、先に来てた花音と瑞樹ちゃんを相手に話をして待った。
「二人とも楽しかったよね。」
「うん、そういえば優は帰りの間ずっと丹羽さんと話をしてたじゃない。」
あれは丹羽さん、そうだったかも。
「横にいて話しかけられた。楽しかったよ。」
「いろいろ聞かれた?」
聞かれた・・・・のは住んでるところと日曜日の予定くらい。
同じことを聞き返したりして、駅までの間話をつないだ。
「何聞かれたの?」
「どこに帰るの?って駅を教えて、日曜日は何するのって聞かれてのんびりしたいと答えて。」
「他には?」
「さあ、そのくらいかな?私も聞いたんだけど・・・・降りたことない駅で忘れたなあ。どこだかもあんまり知らない所だった。」
「楽しそうだったけど。」
「うん、楽しく話をしてくれたからね。」
感想をシェアする。
「あ、一理さん、おはよう。お礼を言いたくて待ってました。楽しい飲み会ありがとうございました。」
「うん。楽しかったらよかった。」
一理さんが二人に挨拶をして、どう?って聞いて。
二人とも首を倒す。
楽しかったよ・・・・・。普通に、普通のお食事会みたいに。
時間が無くなり、自分の席に戻るべく挨拶をして離れた。
途中の廊下で矢田君とすれ違った。
あ・・・・・・忘れた・・・・・。
マコトにすすめられて買った紙袋・・・・・。
矢田君も気がついてくれた。
ちょっとだけ立ち止まって挨拶を普通にした。
それだけ。さすがにここでゆっくりするわけにはいかないじゃない。
大体忘れてた時点で謝るのも・・・・・。
あ~あ、怒られるなあ。
席に戻ったら、マコトがいた。
「どうだった?昨日楽しかった?」
「うん、すごく年上のお兄さんたちと飲んだ。」
「それで?」
「うん、・・・・それだけ。」
ちょっとガッカリした表情をしてしまった。
それを見て薄々成果なしという結果を分かってくれたらしい。
「じゃあ、コツコツと行こう。」
何を?
「ねえ、もちろん忘れてないよね?」
何を・・・と聞き返せない。あれですか?だよね?それしかないよね・・・・・?
ちょっと小さくなった私にムッとした表情を作ったマコト。
「失くしたの?」
「失くしてない、忘れただけ!」
偉そうに言った訳じゃない。でも失くしたりはしないよ。
「もう・・・・朝ちゃんと連絡すればよかった~。まさかまさかだよ。」
失くしてないからいいじゃない。明日持ってくるよ・・・・。
「おはよう、どうしたの?」
聖が来た。後ろには架純ちゃんも若葉ちゃんもいる。
大きくため息をついたマコト。
「優が肝心なもの忘れたらしい。」
「ええっ。」
聖が言い、その後ろで『ああっ~』と声が続く。
何でそれだけで皆が矢田君へのお詫びの品と分かるのか、どうやらマコトが全部教えてたんだろう。
「それは飲み会に楽しいことがあって舞い上がってたパターン?」
「そうじゃないみたい。そこは全然。」
マコトが答えた。
それも教えたんだ・・・・・。
だってさすがに年上すぎたんだってば・・・・・・。
マコトが他のメンバーの方を向いて、そのまま話がすすんでる。
私はのけ者状態。
でも明らかに作戦は私がメイン人物で、勝手に決められてる。
結論。
『とりあえず昼に代わりの物を買う。佐島君に午後の時間を打ち合わせる。』
その作戦でグループが分けられて、昼にマコトと架純ちゃんとランチに行き、隣のカフェで同じようなコーヒーを買わされた。
家にあるのは家族で飲めばいい、とそう言われた。
何でよ・・・・・。
今頃聖と若菜ちゃんが佐島君のところに行ってると思う。
時間を決めて矢田君を連れ出してもらいたいとお願いするらしい。
絶対迷惑かけ直してるパターンでしょう?
マコトは佐島君と聖とをって言ってたけど。
どうなるの?
ちなみに架純ちゃん、若菜ちゃんは彼氏がいる。
そうなると本当の傍観者はマコトだけになる。
マコトが私と聖を動かす一番の指令者。
聖もまさかそんな目的を背負わされてるなんて思ってないだろう。
教えてなんてやらない、もちろん。
だってちょっとは楽しみたい、他人事を。
ノリが良かった佐島君、仕事の区切りがついたらしい矢田君。
そしてマコトはちょっと離れてる。
先に戻って行った。
気になるんじゃないの?せめて聖の事は見守ればいいのに・・・・・。
そんな事を気にもしてない聖が佐島君と話をして、それに参加してる風の私と矢田君。
コーヒーを置いた小さいテーブルの下で腰をつんつんされて合図が来た。
そんな合図なんて決めてなかったけど、そうなんだろう。
「矢田君、本当にこの間はごめんね。いろいろ言われたでしょう?」
「いや・・・・別に大丈夫。『お父さん』ってセリフが効いたみたいだよ。」
「本当にびっくりさせてしまいました。これ、佐島君と分けてもらえる?」
一応佐島君にも迷惑をかけてる。間接的にだけど、直接的には聖が迷惑を・・・・・。
「僕は平気。全部矢田がもらえばいいよ。睡眠柱のお礼だと思えば。」
「『背後霊憑き現象』って私たちは呼んでるけど。」
「何?もしかして、よくある事なの?」
「それがね・・・・って全部話をしてあげたいけど、ちょっと時間がかかるから、飲みに行こうよ。なかなか面白い話だから。」
「そこまで聞いたら、最後まで聞きたいけど、分かった。いつにする?」
「早速金曜日。」
佐島君がまたまたノリノリで、聖と話を進める。
「いいよ。」
そう答えた佐島君が矢田君を見て、うなずかれて。
「じゃあ、決まり。さあ、仕事に戻ろう。・・・・ありがとう。」
最後、聖が小さく佐島君に言った。
聞こえてるよ・・・・・・。
今のお礼は今日の今の時間の話だよね、金曜日の予定の話じゃないよね。
そこまでは仕込んでないよね。
全部するすると決まった。
『背後霊憑き現象』そんな言葉でまとめたらしい。
あんな話し方じゃあ、私が他にもいろいろやらかしてるみたいじゃない。
絶対期待されるのに。
お父さんとお兄ちゃんの話をオチに使いたいんだろうけど、がっかりしない?
私には他のエピソードはないよ。
知らないから。
仕事に戻って、金曜日をちょっとだけ楽しみに思ったりもしたけど、急いで残りの仕事をし始めた。
時間で仕事を終えて、聖に聞いた。
「ねえ、金曜日誰が行くの?」
「そうだね・・・もう少し人数増やそうか。三人か、四人がいいね。佐島君に誰か連れて来てもらおう。」
「マコトも入れて三人だよね。」
「そうだよ。まあ、打ち合わせはしておくから大丈夫、任せて。」
だから、余計なことまで打ち合わせそうじゃない。
はっきり言ったよね、飲みすぎただけだって言ったよね。
それに、飲まないよ・・・・。
それでも浮かれる春。
あちこちで花見酒や送別会、区切りの飲み会は行われてるらしい。
あれから廊下やランチで同期に会っても何も聞かれることもなく。
恐れた敵対視する視線もないと思う。
皆飲んでたし、忘れた人もいるよね。
仕事は本当に一年が経った感じだった。
一年目の課題を、先輩と一緒に評価して、二年目の目標をあげて、もう少しすると先輩になるのだから。
そんな気合を入れ直す時期でもあった。
当然仲良し三人誰も異動はなく、そのまま。
上も変らないまま。
『春の宴』
そう言われて金曜日一緒に予約したお店に行った。
ちょっと前に予約したのにいいところをとっていたらしい。
お肉メインのお店らしく、開放的なテラス席では大きなグリルでお肉が豪快に焼かれていた。
ちょっと肌寒いけどストーブの近くならひざ掛けを借りればいい。
温かいお酒も飲みおさめとばかりにある。
男性陣が少し遅れるらしいと言うことで先に遠慮なく始めた。
「で、本当にこの間の一理さん紹介の年上男子はダメだったの?」
聖が聞きたかったらしい。
ダメ・・・・って言われると悲しい。
「目の前の人は30歳過ぎくらいだし、他に話をしたのは最後の駅まで直線コースだけ。結局誰もが楽しかったねで終わったのかもしれない。」
「次はないの?」
「分からない。もともと話をしに行った時に誘われただけだし。」
「ふ~ん。優は楽しそうにしゃべてたって花音ちゃんが言ってたけど。」
直接聞きに行ったの?だったら知ってるんだよね?
「楽しかったってば。優しいし、たくさんお金も払ってもらったし。」
「ふ~ん、まあ、いいや。」
「ねえ、今日は誰が来るの?」
「あの二人以外は私も知らない。サジーが誰か誘ってるでしょう。」
サジー・・・・って。
佐島君だよね。
本人了解の呼び方?
ガンガンと遠慮なく飲み始めてる聖。
危機感なく飲めるのが羨ましい。
温かいグリューワインをちょびちょびと飲んで、すっかり温くなってる私のグラス。
「このお店は聖が選んだの?」
「うん、サジーと打ち合わせして決めたの。」
もしかして本当に仲良し?
さり気なくマコトを見る。
視線に気がついたのか片頬をあげた満足そうな笑顔をされた。
そんなあっさり?本当にそうなった?聞いていいの?
落ち着かない。
とりあえず二人が揃ってから観察しよう。
マコトによろしくって言われたけど、マコトがいるなら任せたい。
そんな事私には無理、苦手。任されてくれるよね?
男性三人が揃ったらしい。
サジーこと佐島君と矢田君が入ってきて、続いて村山君、あ、雫井君だ・・・・。
四人だったらしい。
席は・・・・誰かが誕生席かはみだし席。
偉い、佐島君が行った・・・と思ったらバッグを置いただけだった。
となると、まさかこっちの席?ここも誕生席?
そして・・・・・・やっぱり矢田君。
もはや驚きもしない。
むしろ素早く動いた佐島君とその他の二人。
素晴らしいくらいのフォーメーションを見た気がした。
元から決まってたかのような・・・・決まってたんだろう。
それでいいの?矢田君???
大人しく下を見てため息をついた。
大丈夫、あの時は酔っていたから・・・・。
「お疲れ様~、カンパ~イ。」
元気よく乾杯の音頭をとった佐島君。
楽しんでるのが分かる。
笑顔なのは聖もだ。
ちょっと視線を合わせてアイコンタクトをとってるのは気のせいじゃない。
なにか・・・あるよね・・・・。
やっぱりいいコンビだし、マコトの思う通りじゃない、主役は渡した、どうぞどうぞ。
この間の反省を踏まえて、冷たいのはやめてグリューワインにした今日。
もともとの飲み頃を過ぎてぬるいけど、まだいいと思う。
やっぱり美味しい。
「優、ここのお酒は優しい感じに作ってもらえるようになってるから、いつもより飲んでも大丈夫だよ。」
嬉しそうに聖が言った。
そんな特別ってあり?
本当に優しい感じ?
「他の皆さんもどうぞご自由に。」
一回一回オーダーするからこの間とは違う。
皆と同じペースで飲み終わり、同じように二杯目を頼んだ、私の注文には『優しく』と聖が付け加えてくれた。
料理を食べて二杯目が来て、乾杯をもう一度したところで、思い出したらしい佐島君。
「ねえ、そう言えばこの間話が途中で、気になってたんだ。」
「何?」
聖がフォークを片手に聞く。
二人の会話だ。
「ほら・・・・・赤城さんの背後霊の話・・・・。」
ああ・・・違った、二人の私に関する会話だった。
それにちょっと話が変りそうな聞き方。
決して私に面白い背後霊がついてるわけじゃない。
「何、それ?」
まったく知らない村山君と雫井君が興味を寄せる。
だから・・・違うってば・・・・・。
「『背後霊憑き現象』皆この間見たでしょう?優が矢田君の背後霊みたいに背中にぴったり張り付いたの。」
「ああ・・・・・あれ・・・・何だったんだろう?」
私にもわからない、初めてです、そう言いたい。
「よく知らないんだ。気がついたら終わってたみたいで。」
雫井君がそう言う。
真ん中のテーブルで周りが盛り上がってたから、見えなかっただろう。
そのまま忘れて欲しい。
なのに最初の佐島君の疑問を解こうと、この間の話の続きとばかりに聖が楽しんで話をする。それは一族の呪われた血のことで、当事者家族の私よりきちんとまとめ上げてる聖。
「そしてとうとう、親子二代にわたり、『呪われた一族の血』からの逆転ハッピーな結末になったという、おめでたい話です。」
お兄ちゃんの結婚の話は最近教えた。
本当につい最近。
「そうなるんだ・・・・・・。」
雫井君が理解したらしい。
でも視線が私を見てる。
私も呪われた一族の一人、そう思われてる。
「違います。あれは男子に受け継がれる呪いです。私はもっと飲めます。」
二杯目を空にして、そう言った。
今のところ優しいお酒は全然悪さをしてない。
大丈夫、まだ飲める、全然平気。
皆が私の空のグラスを見て、納得してくれた。
よし!
「おめでとう。お兄さん、良かったね。」
急に矢田君に言われて現実に戻る。
「ありがとう。本当にお兄ちゃんが浮かれててうるさいくらいなの。」
「一緒に暮らしてるの?」
「お兄ちゃんは働いたらすぐに部屋を借りて、その内さなえさんと住み始めたの。私だけ実家。」
「いいね、楽でしょう?」
「お母さんも働いてるから、それぞれが協力して、お父さんもちゃんと家事をしてるよ。」
「じゃあ、料理とか普通に作るんだ。」
「えっと、そこは得意の物を分担制で、私は洗濯と平日の掃除係で、ご飯はお母さんが担当してくれてる。」
「洗濯が得意なの?」
知りたい?極意があると思う?
「洗濯機との相性はいいみたい。」
別に極意なんてないよ。
きちんと袖を伸ばして、裏返しにならないようにネットに入れるルールがあるから誰でもできる、ボタンを押して終わったら干して、終わったら畳む。
必要なものにはアイロンをかける。
あとは一応屋根はあっても、天気予報をちゃんと見てる。
まあ、そのくらい。
そう言ったら『だよね。』って顔をされた。
『家事は協力してる。』にしておけばよかった。
ご飯だって手伝うんだから、食器を並べたり、片付けたりが主だけど、かき回したり、よそったりもしてる。
「矢田君は、どのくらい完璧?」
「普通くらい。全部やらなきゃいけないし、お金ばかりかけられないし。」
それはクリーニングもたまにで外食もたまにってことかな。
「面倒だよね、生きてるだけで自分の周りが汚れるなんて。」
こうやって外で食べて飲んで、だったら楽なのに。
誰かが三杯目の注文を取ってまた優しいものを頼んだ、ついつい。
優しいっていいかも、ついついが許されるんだから。
目の前の雫井君を見る。
同期の中では人気がある。
優しそうで柔らかそう。
彼女がいないんだろうか?
この間も中心にいて、ツートップで人に囲まれていた。
「雫井君は佐島君に誘われたの?」
「うん、村山に話が来た時にそこにいたからついでに誘われたんだ。」
「女子とは飲みに行くの?」
「行かないよ。」
「あんなに人気者なのに?」
「なんだかそう言われるけど、誘われないよ。坂内がよく喋って楽しいからついでに真ん中にいるだけだよ。よく言われるけど僕は全然。」
「蜂谷君と雫井君が人気者だと思ってた。」
「それもよく言われる。全然です。」
ふ~ん。
私みたいに一年たってもそう思ってる子はいるかも。
もしかして勇気をだせない子はいるかも。
そう言えば、私は本当に誰かに恨まれてないんだろうか?
あんなことをして、どこかでビックリして、誤解をしてショックを受けた子がいないだろうか?
矢田君を見た。
「何?」
「矢田君は?誰かに誘われてる?」
「別に誰にも。女性ってことだよね。」
「そう。私誰かに恨まれてないかな?勝手に背中を借りて図々しいって思われてないかな?」
「大丈夫だよ。」
気にしてないように見えるけど、信じたいけど。
本当にそうだったらうれしい。
朝、一番に一理さん達のところに行った。
一理さんはまだ来てなかったから、先に来てた花音と瑞樹ちゃんを相手に話をして待った。
「二人とも楽しかったよね。」
「うん、そういえば優は帰りの間ずっと丹羽さんと話をしてたじゃない。」
あれは丹羽さん、そうだったかも。
「横にいて話しかけられた。楽しかったよ。」
「いろいろ聞かれた?」
聞かれた・・・・のは住んでるところと日曜日の予定くらい。
同じことを聞き返したりして、駅までの間話をつないだ。
「何聞かれたの?」
「どこに帰るの?って駅を教えて、日曜日は何するのって聞かれてのんびりしたいと答えて。」
「他には?」
「さあ、そのくらいかな?私も聞いたんだけど・・・・降りたことない駅で忘れたなあ。どこだかもあんまり知らない所だった。」
「楽しそうだったけど。」
「うん、楽しく話をしてくれたからね。」
感想をシェアする。
「あ、一理さん、おはよう。お礼を言いたくて待ってました。楽しい飲み会ありがとうございました。」
「うん。楽しかったらよかった。」
一理さんが二人に挨拶をして、どう?って聞いて。
二人とも首を倒す。
楽しかったよ・・・・・。普通に、普通のお食事会みたいに。
時間が無くなり、自分の席に戻るべく挨拶をして離れた。
途中の廊下で矢田君とすれ違った。
あ・・・・・・忘れた・・・・・。
マコトにすすめられて買った紙袋・・・・・。
矢田君も気がついてくれた。
ちょっとだけ立ち止まって挨拶を普通にした。
それだけ。さすがにここでゆっくりするわけにはいかないじゃない。
大体忘れてた時点で謝るのも・・・・・。
あ~あ、怒られるなあ。
席に戻ったら、マコトがいた。
「どうだった?昨日楽しかった?」
「うん、すごく年上のお兄さんたちと飲んだ。」
「それで?」
「うん、・・・・それだけ。」
ちょっとガッカリした表情をしてしまった。
それを見て薄々成果なしという結果を分かってくれたらしい。
「じゃあ、コツコツと行こう。」
何を?
「ねえ、もちろん忘れてないよね?」
何を・・・と聞き返せない。あれですか?だよね?それしかないよね・・・・・?
ちょっと小さくなった私にムッとした表情を作ったマコト。
「失くしたの?」
「失くしてない、忘れただけ!」
偉そうに言った訳じゃない。でも失くしたりはしないよ。
「もう・・・・朝ちゃんと連絡すればよかった~。まさかまさかだよ。」
失くしてないからいいじゃない。明日持ってくるよ・・・・。
「おはよう、どうしたの?」
聖が来た。後ろには架純ちゃんも若葉ちゃんもいる。
大きくため息をついたマコト。
「優が肝心なもの忘れたらしい。」
「ええっ。」
聖が言い、その後ろで『ああっ~』と声が続く。
何でそれだけで皆が矢田君へのお詫びの品と分かるのか、どうやらマコトが全部教えてたんだろう。
「それは飲み会に楽しいことがあって舞い上がってたパターン?」
「そうじゃないみたい。そこは全然。」
マコトが答えた。
それも教えたんだ・・・・・。
だってさすがに年上すぎたんだってば・・・・・・。
マコトが他のメンバーの方を向いて、そのまま話がすすんでる。
私はのけ者状態。
でも明らかに作戦は私がメイン人物で、勝手に決められてる。
結論。
『とりあえず昼に代わりの物を買う。佐島君に午後の時間を打ち合わせる。』
その作戦でグループが分けられて、昼にマコトと架純ちゃんとランチに行き、隣のカフェで同じようなコーヒーを買わされた。
家にあるのは家族で飲めばいい、とそう言われた。
何でよ・・・・・。
今頃聖と若菜ちゃんが佐島君のところに行ってると思う。
時間を決めて矢田君を連れ出してもらいたいとお願いするらしい。
絶対迷惑かけ直してるパターンでしょう?
マコトは佐島君と聖とをって言ってたけど。
どうなるの?
ちなみに架純ちゃん、若菜ちゃんは彼氏がいる。
そうなると本当の傍観者はマコトだけになる。
マコトが私と聖を動かす一番の指令者。
聖もまさかそんな目的を背負わされてるなんて思ってないだろう。
教えてなんてやらない、もちろん。
だってちょっとは楽しみたい、他人事を。
ノリが良かった佐島君、仕事の区切りがついたらしい矢田君。
そしてマコトはちょっと離れてる。
先に戻って行った。
気になるんじゃないの?せめて聖の事は見守ればいいのに・・・・・。
そんな事を気にもしてない聖が佐島君と話をして、それに参加してる風の私と矢田君。
コーヒーを置いた小さいテーブルの下で腰をつんつんされて合図が来た。
そんな合図なんて決めてなかったけど、そうなんだろう。
「矢田君、本当にこの間はごめんね。いろいろ言われたでしょう?」
「いや・・・・別に大丈夫。『お父さん』ってセリフが効いたみたいだよ。」
「本当にびっくりさせてしまいました。これ、佐島君と分けてもらえる?」
一応佐島君にも迷惑をかけてる。間接的にだけど、直接的には聖が迷惑を・・・・・。
「僕は平気。全部矢田がもらえばいいよ。睡眠柱のお礼だと思えば。」
「『背後霊憑き現象』って私たちは呼んでるけど。」
「何?もしかして、よくある事なの?」
「それがね・・・・って全部話をしてあげたいけど、ちょっと時間がかかるから、飲みに行こうよ。なかなか面白い話だから。」
「そこまで聞いたら、最後まで聞きたいけど、分かった。いつにする?」
「早速金曜日。」
佐島君がまたまたノリノリで、聖と話を進める。
「いいよ。」
そう答えた佐島君が矢田君を見て、うなずかれて。
「じゃあ、決まり。さあ、仕事に戻ろう。・・・・ありがとう。」
最後、聖が小さく佐島君に言った。
聞こえてるよ・・・・・・。
今のお礼は今日の今の時間の話だよね、金曜日の予定の話じゃないよね。
そこまでは仕込んでないよね。
全部するすると決まった。
『背後霊憑き現象』そんな言葉でまとめたらしい。
あんな話し方じゃあ、私が他にもいろいろやらかしてるみたいじゃない。
絶対期待されるのに。
お父さんとお兄ちゃんの話をオチに使いたいんだろうけど、がっかりしない?
私には他のエピソードはないよ。
知らないから。
仕事に戻って、金曜日をちょっとだけ楽しみに思ったりもしたけど、急いで残りの仕事をし始めた。
時間で仕事を終えて、聖に聞いた。
「ねえ、金曜日誰が行くの?」
「そうだね・・・もう少し人数増やそうか。三人か、四人がいいね。佐島君に誰か連れて来てもらおう。」
「マコトも入れて三人だよね。」
「そうだよ。まあ、打ち合わせはしておくから大丈夫、任せて。」
だから、余計なことまで打ち合わせそうじゃない。
はっきり言ったよね、飲みすぎただけだって言ったよね。
それに、飲まないよ・・・・。
それでも浮かれる春。
あちこちで花見酒や送別会、区切りの飲み会は行われてるらしい。
あれから廊下やランチで同期に会っても何も聞かれることもなく。
恐れた敵対視する視線もないと思う。
皆飲んでたし、忘れた人もいるよね。
仕事は本当に一年が経った感じだった。
一年目の課題を、先輩と一緒に評価して、二年目の目標をあげて、もう少しすると先輩になるのだから。
そんな気合を入れ直す時期でもあった。
当然仲良し三人誰も異動はなく、そのまま。
上も変らないまま。
『春の宴』
そう言われて金曜日一緒に予約したお店に行った。
ちょっと前に予約したのにいいところをとっていたらしい。
お肉メインのお店らしく、開放的なテラス席では大きなグリルでお肉が豪快に焼かれていた。
ちょっと肌寒いけどストーブの近くならひざ掛けを借りればいい。
温かいお酒も飲みおさめとばかりにある。
男性陣が少し遅れるらしいと言うことで先に遠慮なく始めた。
「で、本当にこの間の一理さん紹介の年上男子はダメだったの?」
聖が聞きたかったらしい。
ダメ・・・・って言われると悲しい。
「目の前の人は30歳過ぎくらいだし、他に話をしたのは最後の駅まで直線コースだけ。結局誰もが楽しかったねで終わったのかもしれない。」
「次はないの?」
「分からない。もともと話をしに行った時に誘われただけだし。」
「ふ~ん。優は楽しそうにしゃべてたって花音ちゃんが言ってたけど。」
直接聞きに行ったの?だったら知ってるんだよね?
「楽しかったってば。優しいし、たくさんお金も払ってもらったし。」
「ふ~ん、まあ、いいや。」
「ねえ、今日は誰が来るの?」
「あの二人以外は私も知らない。サジーが誰か誘ってるでしょう。」
サジー・・・・って。
佐島君だよね。
本人了解の呼び方?
ガンガンと遠慮なく飲み始めてる聖。
危機感なく飲めるのが羨ましい。
温かいグリューワインをちょびちょびと飲んで、すっかり温くなってる私のグラス。
「このお店は聖が選んだの?」
「うん、サジーと打ち合わせして決めたの。」
もしかして本当に仲良し?
さり気なくマコトを見る。
視線に気がついたのか片頬をあげた満足そうな笑顔をされた。
そんなあっさり?本当にそうなった?聞いていいの?
落ち着かない。
とりあえず二人が揃ってから観察しよう。
マコトによろしくって言われたけど、マコトがいるなら任せたい。
そんな事私には無理、苦手。任されてくれるよね?
男性三人が揃ったらしい。
サジーこと佐島君と矢田君が入ってきて、続いて村山君、あ、雫井君だ・・・・。
四人だったらしい。
席は・・・・誰かが誕生席かはみだし席。
偉い、佐島君が行った・・・と思ったらバッグを置いただけだった。
となると、まさかこっちの席?ここも誕生席?
そして・・・・・・やっぱり矢田君。
もはや驚きもしない。
むしろ素早く動いた佐島君とその他の二人。
素晴らしいくらいのフォーメーションを見た気がした。
元から決まってたかのような・・・・決まってたんだろう。
それでいいの?矢田君???
大人しく下を見てため息をついた。
大丈夫、あの時は酔っていたから・・・・。
「お疲れ様~、カンパ~イ。」
元気よく乾杯の音頭をとった佐島君。
楽しんでるのが分かる。
笑顔なのは聖もだ。
ちょっと視線を合わせてアイコンタクトをとってるのは気のせいじゃない。
なにか・・・あるよね・・・・。
やっぱりいいコンビだし、マコトの思う通りじゃない、主役は渡した、どうぞどうぞ。
この間の反省を踏まえて、冷たいのはやめてグリューワインにした今日。
もともとの飲み頃を過ぎてぬるいけど、まだいいと思う。
やっぱり美味しい。
「優、ここのお酒は優しい感じに作ってもらえるようになってるから、いつもより飲んでも大丈夫だよ。」
嬉しそうに聖が言った。
そんな特別ってあり?
本当に優しい感じ?
「他の皆さんもどうぞご自由に。」
一回一回オーダーするからこの間とは違う。
皆と同じペースで飲み終わり、同じように二杯目を頼んだ、私の注文には『優しく』と聖が付け加えてくれた。
料理を食べて二杯目が来て、乾杯をもう一度したところで、思い出したらしい佐島君。
「ねえ、そう言えばこの間話が途中で、気になってたんだ。」
「何?」
聖がフォークを片手に聞く。
二人の会話だ。
「ほら・・・・・赤城さんの背後霊の話・・・・。」
ああ・・・違った、二人の私に関する会話だった。
それにちょっと話が変りそうな聞き方。
決して私に面白い背後霊がついてるわけじゃない。
「何、それ?」
まったく知らない村山君と雫井君が興味を寄せる。
だから・・・違うってば・・・・・。
「『背後霊憑き現象』皆この間見たでしょう?優が矢田君の背後霊みたいに背中にぴったり張り付いたの。」
「ああ・・・・・あれ・・・・何だったんだろう?」
私にもわからない、初めてです、そう言いたい。
「よく知らないんだ。気がついたら終わってたみたいで。」
雫井君がそう言う。
真ん中のテーブルで周りが盛り上がってたから、見えなかっただろう。
そのまま忘れて欲しい。
なのに最初の佐島君の疑問を解こうと、この間の話の続きとばかりに聖が楽しんで話をする。それは一族の呪われた血のことで、当事者家族の私よりきちんとまとめ上げてる聖。
「そしてとうとう、親子二代にわたり、『呪われた一族の血』からの逆転ハッピーな結末になったという、おめでたい話です。」
お兄ちゃんの結婚の話は最近教えた。
本当につい最近。
「そうなるんだ・・・・・・。」
雫井君が理解したらしい。
でも視線が私を見てる。
私も呪われた一族の一人、そう思われてる。
「違います。あれは男子に受け継がれる呪いです。私はもっと飲めます。」
二杯目を空にして、そう言った。
今のところ優しいお酒は全然悪さをしてない。
大丈夫、まだ飲める、全然平気。
皆が私の空のグラスを見て、納得してくれた。
よし!
「おめでとう。お兄さん、良かったね。」
急に矢田君に言われて現実に戻る。
「ありがとう。本当にお兄ちゃんが浮かれててうるさいくらいなの。」
「一緒に暮らしてるの?」
「お兄ちゃんは働いたらすぐに部屋を借りて、その内さなえさんと住み始めたの。私だけ実家。」
「いいね、楽でしょう?」
「お母さんも働いてるから、それぞれが協力して、お父さんもちゃんと家事をしてるよ。」
「じゃあ、料理とか普通に作るんだ。」
「えっと、そこは得意の物を分担制で、私は洗濯と平日の掃除係で、ご飯はお母さんが担当してくれてる。」
「洗濯が得意なの?」
知りたい?極意があると思う?
「洗濯機との相性はいいみたい。」
別に極意なんてないよ。
きちんと袖を伸ばして、裏返しにならないようにネットに入れるルールがあるから誰でもできる、ボタンを押して終わったら干して、終わったら畳む。
必要なものにはアイロンをかける。
あとは一応屋根はあっても、天気予報をちゃんと見てる。
まあ、そのくらい。
そう言ったら『だよね。』って顔をされた。
『家事は協力してる。』にしておけばよかった。
ご飯だって手伝うんだから、食器を並べたり、片付けたりが主だけど、かき回したり、よそったりもしてる。
「矢田君は、どのくらい完璧?」
「普通くらい。全部やらなきゃいけないし、お金ばかりかけられないし。」
それはクリーニングもたまにで外食もたまにってことかな。
「面倒だよね、生きてるだけで自分の周りが汚れるなんて。」
こうやって外で食べて飲んで、だったら楽なのに。
誰かが三杯目の注文を取ってまた優しいものを頼んだ、ついつい。
優しいっていいかも、ついついが許されるんだから。
目の前の雫井君を見る。
同期の中では人気がある。
優しそうで柔らかそう。
彼女がいないんだろうか?
この間も中心にいて、ツートップで人に囲まれていた。
「雫井君は佐島君に誘われたの?」
「うん、村山に話が来た時にそこにいたからついでに誘われたんだ。」
「女子とは飲みに行くの?」
「行かないよ。」
「あんなに人気者なのに?」
「なんだかそう言われるけど、誘われないよ。坂内がよく喋って楽しいからついでに真ん中にいるだけだよ。よく言われるけど僕は全然。」
「蜂谷君と雫井君が人気者だと思ってた。」
「それもよく言われる。全然です。」
ふ~ん。
私みたいに一年たってもそう思ってる子はいるかも。
もしかして勇気をだせない子はいるかも。
そう言えば、私は本当に誰かに恨まれてないんだろうか?
あんなことをして、どこかでビックリして、誤解をしてショックを受けた子がいないだろうか?
矢田君を見た。
「何?」
「矢田君は?誰かに誘われてる?」
「別に誰にも。女性ってことだよね。」
「そう。私誰かに恨まれてないかな?勝手に背中を借りて図々しいって思われてないかな?」
「大丈夫だよ。」
気にしてないように見えるけど、信じたいけど。
本当にそうだったらうれしい。
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