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1 噂はただただみんなの娯楽。
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だから、わかってるのに。
自分が動くと何となく視線が動く気配。
そしてこそこそヒソヒソと声を潜めるように、でも明らかに察知できるレベルでの内緒話の雰囲気。
別にそんなにコソコソ噂しなくても、どう見られてるかは自覚あるし。
わざと『あんたの悪口囁いてるよ感』出して悪口言うのはどう?
人の恋愛に口だす前に自分の身の回りを固めればいい。
簡単に取られる方が脇が甘いし。
カツカツと足音を立てるように大股で歩き、ドンと荷物を置いて席についた。
その一瞬だけは静かになったけど、その後の囁きを逆に大きく感じてしまう。
「相変わらずのご活躍で。」
隣の席から声がした。同期でもあるが、ちょっと縁のある男、林 真木だ。
睨んで黙らせたつもりなのに少しも懲りずに話しかけてくる。
「だいたい、最初から好みじゃなかったなんて、一日遊んで言うか?誘われた時に断れよ。」
「誰が一日遊んだなんて話をしてるのよ。ご飯を食べた二時間一緒にいただけよ。移動時間いれても三時間弱。」
だいたい、そんなものだ。
そう言い放ったら少し驚いた顔をされた。
もしかして、あいつは話を大きく伝えたのか?
一体何をして遊んだと言うのだ!!
本当に食事の時に同じテーブルにいただけの存在の癖に。
つい、暇だったからご飯くらいいいと思っただけで。
結果、想像通りつまらなかった。
ある意味期待を裏切らない男だった。
「だいたい、与えられた二時間で自己アピールできないようじゃ、営業は無理でしょう。」
別に聞く気もなかったけど。
それは別にどうでもいい。
一緒に行くことに同意したのは自分だから、ただ、ご飯くらいいいじゃない?
行こうと誘われれば、たまには誘われる。・・・・だって暇だから。
誰もお付き合いするなんて言ってないし、だから彼女がいるとかいないとか、考えたりもしない、彼女いても食事くらい別にさほど悪くないと思うのに。
ほぼ現地集合、現地解散。どこに怪しさを感じるんだ!
単なる会社の『仲間』だし。
仲間なんて思ってないけど、関係性としてはそんな感じ。
別に取ろうなんて思ってないし、トイレの貯水タンクの中の汚れほども気にならない、よく知りもしないカップルを破壊したいなんて思ってない。
なのに被害者面して女の子が騒ぐと、こうなる。
むしろ隠したくない?
彼氏がよそ見するなんて、プライドあって誰にも言いたくないのに。
誘った方も誘った方だし。
そんな男だってよくわかったはずだから、感謝してもよくない?
「誰も近寄ってこなくなるぞ。流石に悪評高すぎ。」
「なんで社内限定で恋愛するのよ。外にもいっぱいいるし。」
「彼氏が?」
今度こそ睨んだ。さっきより鋭く、突き刺すように。
たとえ一人でもいたら、あんなのとご飯には行かないし。
「おはよう~、亜弓。ついでに林君も。」
「おはよう、浩美。何でそう、ご機嫌なの?」
同期で仲のいい、大迫浩美が朝から笑顔満面でやってきた。
「なんだか久しぶりに活躍したみたいで、楽しいねえ、社内のゴタゴタ。」
後半は、かなり声を絞ってご機嫌の理由を教えてくれた。
「何を聞いたの?」
「『別れさせ屋として名高い鈴鹿さんが出来立てラブラブカップルの男にちょっかい出して、結果後輩を泣かしてしまいました。』って噂。ラブラブカップルならちょっかい出されないはずなのに、そこは敢えて気がつかないふりで、皆が楽しみつつ、同情しつつ、やっぱり心の中では面白がってるみたい。」
そう言いながらニコニコと話した。
「噂があっという間に広まるのがその証拠。」
浩美がそう言った。
噂を広めてるのに一役買ってそうな浩美が言ってどうする・・・・。
どうせなら、ちゃんと正しく広めて欲しい。
でも、そう言えばそうか。
本当に落ちこんでたら友達も内緒にするだろう。
友達にすら同情票が少なかった女の子だった・・・とか。
「有名なカップルだったの?」
「さあ、普通の男と地味目の女の子って感じだけど。知らない人も多かったんじゃない?何でバラしたんだろう?」
「そうでしょう?」
そうそう、知らないって。
誘われた後に『彼女がいるって分かってて、なんで・・・。』とか『よく人の物に手を出そうなんて思えますね。』とか。
知るか!!
何でそんなに自分たちの情報に価値があると思う?
何度そんな事を言われたか。
トイレで、食堂で、玄関で、非常階段で。
たいてい一対数人という、取り巻きガールに。
本人を後ろにして、ただの好奇心旺盛な猫女たちだろう。
同情するふりして、批判するふりして、その実、楽しんでる化け猫女たち。
絶対裏で私と当人の噂で盛り上がってると思える。
他人の不幸は蜜の味だ。
横並びの友達なら、一層優劣が分かりやすいってものだ。
ちょっとだけ抜かし抜かされ、一番に勝猫になりたい!
つい自分の手が握りこぶしを作っていた。
いけない、人の事人の事、一般論。
だけど私も一般人だ。
「でもさあ、リトマス試験紙代わりに利用するってパターンあるかも。『噂の鈴鹿さん』の誘いを断って彼女との愛を優先した男、なんて称号がその内売れるかも。」
「それは私が誘うのが条件じゃない?」
「まあ、そうなるね。」
「絶対誘わない。会社は仕事をするために来るところです。彼氏は外で見つけます。暇だからご飯の誘いにのっただけです。現地駅集合、ランチを二時間、現地解散、全部で三時間弱です。ただそれだけ。」
「そう言い切るには今までの噂の蓄積が大きすぎて無理。男も自分こそは噂の悪女を靡かせたい、ひざまずかせたいとか思ってる輩がいるかも。」
絶対なし。ご飯も本当にやめる。
「しょがないなあ、有名人はつらいなあ、自業自得だしな。」
「林、その口ホッチキス止めしてあげようか?細かく綺麗に止めてあげるけど。」
「サディストの噂が立つぞ。」
ムカつく。
無視、隣の席だけど、無視。
ポンポンと言いたいことを言ってくる。
最初からって訳じゃないはずなのに、いつの間にかこうなった。
その林とのかかわりは同期、でもそれ以上に深くもある。
自分が動くと何となく視線が動く気配。
そしてこそこそヒソヒソと声を潜めるように、でも明らかに察知できるレベルでの内緒話の雰囲気。
別にそんなにコソコソ噂しなくても、どう見られてるかは自覚あるし。
わざと『あんたの悪口囁いてるよ感』出して悪口言うのはどう?
人の恋愛に口だす前に自分の身の回りを固めればいい。
簡単に取られる方が脇が甘いし。
カツカツと足音を立てるように大股で歩き、ドンと荷物を置いて席についた。
その一瞬だけは静かになったけど、その後の囁きを逆に大きく感じてしまう。
「相変わらずのご活躍で。」
隣の席から声がした。同期でもあるが、ちょっと縁のある男、林 真木だ。
睨んで黙らせたつもりなのに少しも懲りずに話しかけてくる。
「だいたい、最初から好みじゃなかったなんて、一日遊んで言うか?誘われた時に断れよ。」
「誰が一日遊んだなんて話をしてるのよ。ご飯を食べた二時間一緒にいただけよ。移動時間いれても三時間弱。」
だいたい、そんなものだ。
そう言い放ったら少し驚いた顔をされた。
もしかして、あいつは話を大きく伝えたのか?
一体何をして遊んだと言うのだ!!
本当に食事の時に同じテーブルにいただけの存在の癖に。
つい、暇だったからご飯くらいいいと思っただけで。
結果、想像通りつまらなかった。
ある意味期待を裏切らない男だった。
「だいたい、与えられた二時間で自己アピールできないようじゃ、営業は無理でしょう。」
別に聞く気もなかったけど。
それは別にどうでもいい。
一緒に行くことに同意したのは自分だから、ただ、ご飯くらいいいじゃない?
行こうと誘われれば、たまには誘われる。・・・・だって暇だから。
誰もお付き合いするなんて言ってないし、だから彼女がいるとかいないとか、考えたりもしない、彼女いても食事くらい別にさほど悪くないと思うのに。
ほぼ現地集合、現地解散。どこに怪しさを感じるんだ!
単なる会社の『仲間』だし。
仲間なんて思ってないけど、関係性としてはそんな感じ。
別に取ろうなんて思ってないし、トイレの貯水タンクの中の汚れほども気にならない、よく知りもしないカップルを破壊したいなんて思ってない。
なのに被害者面して女の子が騒ぐと、こうなる。
むしろ隠したくない?
彼氏がよそ見するなんて、プライドあって誰にも言いたくないのに。
誘った方も誘った方だし。
そんな男だってよくわかったはずだから、感謝してもよくない?
「誰も近寄ってこなくなるぞ。流石に悪評高すぎ。」
「なんで社内限定で恋愛するのよ。外にもいっぱいいるし。」
「彼氏が?」
今度こそ睨んだ。さっきより鋭く、突き刺すように。
たとえ一人でもいたら、あんなのとご飯には行かないし。
「おはよう~、亜弓。ついでに林君も。」
「おはよう、浩美。何でそう、ご機嫌なの?」
同期で仲のいい、大迫浩美が朝から笑顔満面でやってきた。
「なんだか久しぶりに活躍したみたいで、楽しいねえ、社内のゴタゴタ。」
後半は、かなり声を絞ってご機嫌の理由を教えてくれた。
「何を聞いたの?」
「『別れさせ屋として名高い鈴鹿さんが出来立てラブラブカップルの男にちょっかい出して、結果後輩を泣かしてしまいました。』って噂。ラブラブカップルならちょっかい出されないはずなのに、そこは敢えて気がつかないふりで、皆が楽しみつつ、同情しつつ、やっぱり心の中では面白がってるみたい。」
そう言いながらニコニコと話した。
「噂があっという間に広まるのがその証拠。」
浩美がそう言った。
噂を広めてるのに一役買ってそうな浩美が言ってどうする・・・・。
どうせなら、ちゃんと正しく広めて欲しい。
でも、そう言えばそうか。
本当に落ちこんでたら友達も内緒にするだろう。
友達にすら同情票が少なかった女の子だった・・・とか。
「有名なカップルだったの?」
「さあ、普通の男と地味目の女の子って感じだけど。知らない人も多かったんじゃない?何でバラしたんだろう?」
「そうでしょう?」
そうそう、知らないって。
誘われた後に『彼女がいるって分かってて、なんで・・・。』とか『よく人の物に手を出そうなんて思えますね。』とか。
知るか!!
何でそんなに自分たちの情報に価値があると思う?
何度そんな事を言われたか。
トイレで、食堂で、玄関で、非常階段で。
たいてい一対数人という、取り巻きガールに。
本人を後ろにして、ただの好奇心旺盛な猫女たちだろう。
同情するふりして、批判するふりして、その実、楽しんでる化け猫女たち。
絶対裏で私と当人の噂で盛り上がってると思える。
他人の不幸は蜜の味だ。
横並びの友達なら、一層優劣が分かりやすいってものだ。
ちょっとだけ抜かし抜かされ、一番に勝猫になりたい!
つい自分の手が握りこぶしを作っていた。
いけない、人の事人の事、一般論。
だけど私も一般人だ。
「でもさあ、リトマス試験紙代わりに利用するってパターンあるかも。『噂の鈴鹿さん』の誘いを断って彼女との愛を優先した男、なんて称号がその内売れるかも。」
「それは私が誘うのが条件じゃない?」
「まあ、そうなるね。」
「絶対誘わない。会社は仕事をするために来るところです。彼氏は外で見つけます。暇だからご飯の誘いにのっただけです。現地駅集合、ランチを二時間、現地解散、全部で三時間弱です。ただそれだけ。」
「そう言い切るには今までの噂の蓄積が大きすぎて無理。男も自分こそは噂の悪女を靡かせたい、ひざまずかせたいとか思ってる輩がいるかも。」
絶対なし。ご飯も本当にやめる。
「しょがないなあ、有名人はつらいなあ、自業自得だしな。」
「林、その口ホッチキス止めしてあげようか?細かく綺麗に止めてあげるけど。」
「サディストの噂が立つぞ。」
ムカつく。
無視、隣の席だけど、無視。
ポンポンと言いたいことを言ってくる。
最初からって訳じゃないはずなのに、いつの間にかこうなった。
その林とのかかわりは同期、でもそれ以上に深くもある。
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