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2 こうして仕事には『やりがい』が出来るのです。
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だから無名のカップルの噂なんて数日で消えるのだ。
結果がどうなったのか、囁かれもしないらしい。
両方が騒がなければ、あの三時間は何の意味も持たなかったのに。
騒がれても何の意味も持たなかったとしたら、私もマダマダだ。
なんて思うより、あいつがかなりマダマダだ。
あ~、そうは言っても、実際暇な週末を過ごしてる私は、どうなんだろう?
誰か誘ってくれないだろうか?
もちろん社外のイケメンでお願いしたい、出来ればスペックも高めの、年の頃のバランスのいい方希望。
金曜日の夜。
誘われない日はふらふらと途中でどこかに行ってしまう。
一人で少し飲んだり、ちょっと食事をしたり。
そして土日の連休を思う。
何をしようか?
誰でもいい訳じゃないけど。
でも、本当に誰もいないの?
浩美の彼氏の写真を見たことがある。
ラブラブツーショットを見せつけてきた。
普通だった。
やはりたいていの人は普通なのだ。
普通のレベルが高いのは、テレビと漫画と妄想の中だけだ。
こうしてまた今週も週末を無駄に過ごしてしまうのだろう。
月曜日。
大嫌いだ、月曜日。
仕事に行きたくないとか、早起きしたくないとか、それもあるにはあるけど、そんな子供っぽい理由じゃない。
ただただ誰もが週末を楽しく過ごして余韻を引きずった顔をしてる・・・・ように見えるのだ。
見えるだけじゃなくて、あちこちでそんな話が繰り広げられてるのも聞こえてくる。
浩美もそうだ。
毎週のように愚痴とも惚気とも、ただの報告ともつかない週末の出来事を展開してくる。
羨ましい限りだ。
そろそろ本気を出そう、なんていつも全力を出してるのに、私はなかなか披露できる話題がない。
種もなければ芽も出ない。
蒔くほどの土壌すら見えない。
つい数か月前まで、仲のいい学生時代の友達とあちこちの飲み会や出会い系イベントに顔を出していた。
数人は連絡先を交換したり、二人で会ったりしたのに。
何となく、何もなしだった。
でもそうだったのは私だけで、見事に友達がカップルになり、私の週末の予定だけが白紙になった。
連絡もあまり来なくなった。
なんで?
別れたらまた連絡してくるだろう。
そうしたら今度こそ。
浩美の話を半分以上聞き流しながら、そんな事を思っていた。
午後課長に呼ばれた。
「急で悪いんだけど、明日から資料課の手伝いに行けるかな?」
よその部署の手伝いを打診された。
何故私なんだろう?
そう思ったが、ちょうどタイミングとして今一番空いてるのは私かもしれない。
「どのくらいですか?」
「ニ、三週間という予定で。頑張ればもっと短くなるだろうけどね。」
「はい。分かりました。(悪評高い)私で良ければ、(私は)大丈夫です。(相手先がどうかは知りませんが)。」
やや自虐的に答えそうになった。
ものすごく集中してビックリするくらい予定を短縮してやる。
そう思った。
仕事と性格とプライベートが別物だって分かってもらう、期待を裏切ってやる。
俄然、やる気が出てきた。
「じゃあ、明日から、そっちへ出勤で。詳しくは担当者に聞いて。」
そう言われた。
担当者の名前を聞いて、席に戻る。
「どうしたの?」
隣の二人の視線が興味深そうで、浩美にそう聞かれた。
「明日から、よそへ貸し出しされるから。しばらくいません。ランチは無理かも。」
「どこに?」
「資料課」
「地味・・・・。」
浩美がつぶやいた。
「どのくらい?」
「ニ、三週間だって。黙々とこなして、すごく短縮して戻ってくるから。」
「資料課のササキ コウヨウさんって知ってる?その人と一緒にやるみたい。」
浩美が黙った。
背後でため息が聞こえた気もする。
「ねえ、さすがに失礼。同期だよ。覚えてないの?」
知らないはずだが。
「『紅葉』って書いて『コウヨウ』って読む人いたじゃない。」
「うん、『モミジ』は覚えてる気がする。確かにいたけど、男子?女子?結局どっちだったんだっけ?」
「男子。」
ふ~ん。
「佐々木が聞いたら・・・・、まあ、冷たく見られるくらいか。同期の性別も覚えられないキャパなんだねって、思われるくらいだな。」
林が口を出した。
「個性が死んでるんじゃない?まったく記憶にないし。」
「向こうもそう言うよ。まったく価値観が違うからな。」
林がそう続けた。
「仲いいの?」
「普通だけど。普通に話しをしたり、時々一緒に飲んだり。」
ふ~ん。
「そういえば、社内でも有名な『噂の悪女』の新着情報を聞いてくる奴が多いのに、あいつからは一度もないかも。話題がないときは適当なつまみに話してるから、向こうは評判を知ってるよ。それでも、まったく興味持たれてないだろうから、安心して手伝って来い、なんなら隠してる魅力を総出しして食事でも誘ってもらえばいいんじゃないか?まあ、無理だと思うけど。」
そう言って笑う。
どんな人だか興味がわいてきた。
くつくつと笑う林を殴りたくなったけど、ちょっとだけ見返したい気持ちも出てきた。
誘ってもらおうじゃないか、食事。
この際好みは無関係で、『一緒にどうかな?』くらい言ってもらおうじゃないか。
『コウヨウ君に食事に誘われましたが。(どうだ、見直しただろう!!)』
絶対そういう報告をしてやる。
『それは普通にお礼だろう?』
そう言われないくらいの、自慢できるほどの食事を奢ってもらおうじゃないか・・・・・。
何かが間違ってる気がしたけど、深くは考えまい。
しばらく貸し出されて、最終的に新しい噂を作ってやる。
林を黙らせてやる。
やっぱり、何かが違う気もするけど、やりがいにすり替えた。
もちろん仕事へのやりがいだ。
結果がどうなったのか、囁かれもしないらしい。
両方が騒がなければ、あの三時間は何の意味も持たなかったのに。
騒がれても何の意味も持たなかったとしたら、私もマダマダだ。
なんて思うより、あいつがかなりマダマダだ。
あ~、そうは言っても、実際暇な週末を過ごしてる私は、どうなんだろう?
誰か誘ってくれないだろうか?
もちろん社外のイケメンでお願いしたい、出来ればスペックも高めの、年の頃のバランスのいい方希望。
金曜日の夜。
誘われない日はふらふらと途中でどこかに行ってしまう。
一人で少し飲んだり、ちょっと食事をしたり。
そして土日の連休を思う。
何をしようか?
誰でもいい訳じゃないけど。
でも、本当に誰もいないの?
浩美の彼氏の写真を見たことがある。
ラブラブツーショットを見せつけてきた。
普通だった。
やはりたいていの人は普通なのだ。
普通のレベルが高いのは、テレビと漫画と妄想の中だけだ。
こうしてまた今週も週末を無駄に過ごしてしまうのだろう。
月曜日。
大嫌いだ、月曜日。
仕事に行きたくないとか、早起きしたくないとか、それもあるにはあるけど、そんな子供っぽい理由じゃない。
ただただ誰もが週末を楽しく過ごして余韻を引きずった顔をしてる・・・・ように見えるのだ。
見えるだけじゃなくて、あちこちでそんな話が繰り広げられてるのも聞こえてくる。
浩美もそうだ。
毎週のように愚痴とも惚気とも、ただの報告ともつかない週末の出来事を展開してくる。
羨ましい限りだ。
そろそろ本気を出そう、なんていつも全力を出してるのに、私はなかなか披露できる話題がない。
種もなければ芽も出ない。
蒔くほどの土壌すら見えない。
つい数か月前まで、仲のいい学生時代の友達とあちこちの飲み会や出会い系イベントに顔を出していた。
数人は連絡先を交換したり、二人で会ったりしたのに。
何となく、何もなしだった。
でもそうだったのは私だけで、見事に友達がカップルになり、私の週末の予定だけが白紙になった。
連絡もあまり来なくなった。
なんで?
別れたらまた連絡してくるだろう。
そうしたら今度こそ。
浩美の話を半分以上聞き流しながら、そんな事を思っていた。
午後課長に呼ばれた。
「急で悪いんだけど、明日から資料課の手伝いに行けるかな?」
よその部署の手伝いを打診された。
何故私なんだろう?
そう思ったが、ちょうどタイミングとして今一番空いてるのは私かもしれない。
「どのくらいですか?」
「ニ、三週間という予定で。頑張ればもっと短くなるだろうけどね。」
「はい。分かりました。(悪評高い)私で良ければ、(私は)大丈夫です。(相手先がどうかは知りませんが)。」
やや自虐的に答えそうになった。
ものすごく集中してビックリするくらい予定を短縮してやる。
そう思った。
仕事と性格とプライベートが別物だって分かってもらう、期待を裏切ってやる。
俄然、やる気が出てきた。
「じゃあ、明日から、そっちへ出勤で。詳しくは担当者に聞いて。」
そう言われた。
担当者の名前を聞いて、席に戻る。
「どうしたの?」
隣の二人の視線が興味深そうで、浩美にそう聞かれた。
「明日から、よそへ貸し出しされるから。しばらくいません。ランチは無理かも。」
「どこに?」
「資料課」
「地味・・・・。」
浩美がつぶやいた。
「どのくらい?」
「ニ、三週間だって。黙々とこなして、すごく短縮して戻ってくるから。」
「資料課のササキ コウヨウさんって知ってる?その人と一緒にやるみたい。」
浩美が黙った。
背後でため息が聞こえた気もする。
「ねえ、さすがに失礼。同期だよ。覚えてないの?」
知らないはずだが。
「『紅葉』って書いて『コウヨウ』って読む人いたじゃない。」
「うん、『モミジ』は覚えてる気がする。確かにいたけど、男子?女子?結局どっちだったんだっけ?」
「男子。」
ふ~ん。
「佐々木が聞いたら・・・・、まあ、冷たく見られるくらいか。同期の性別も覚えられないキャパなんだねって、思われるくらいだな。」
林が口を出した。
「個性が死んでるんじゃない?まったく記憶にないし。」
「向こうもそう言うよ。まったく価値観が違うからな。」
林がそう続けた。
「仲いいの?」
「普通だけど。普通に話しをしたり、時々一緒に飲んだり。」
ふ~ん。
「そういえば、社内でも有名な『噂の悪女』の新着情報を聞いてくる奴が多いのに、あいつからは一度もないかも。話題がないときは適当なつまみに話してるから、向こうは評判を知ってるよ。それでも、まったく興味持たれてないだろうから、安心して手伝って来い、なんなら隠してる魅力を総出しして食事でも誘ってもらえばいいんじゃないか?まあ、無理だと思うけど。」
そう言って笑う。
どんな人だか興味がわいてきた。
くつくつと笑う林を殴りたくなったけど、ちょっとだけ見返したい気持ちも出てきた。
誘ってもらおうじゃないか、食事。
この際好みは無関係で、『一緒にどうかな?』くらい言ってもらおうじゃないか。
『コウヨウ君に食事に誘われましたが。(どうだ、見直しただろう!!)』
絶対そういう報告をしてやる。
『それは普通にお礼だろう?』
そう言われないくらいの、自慢できるほどの食事を奢ってもらおうじゃないか・・・・・。
何かが間違ってる気がしたけど、深くは考えまい。
しばらく貸し出されて、最終的に新しい噂を作ってやる。
林を黙らせてやる。
やっぱり、何かが違う気もするけど、やりがいにすり替えた。
もちろん仕事へのやりがいだ。
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