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3 挑んだ勝負の相手。
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夕方、終業少し前に資料課に行った。
明日からの挨拶をするためだ。
仕事は仕事、きちんとやってる。
仕事はきちんとしている印象はあると思いたい。
下の階の奥の奥。
それでも初めて訪ねた資料課は、思ったほど穴蔵感はなかった。
入り口の人にこっそり名前を教えてもらおうと思ったけど、分かった。
覚えがある、覚えてる、いたいた、そうそう、あれあれ。
自分の記憶を引き出せたことに、思わず満足した。表情が緩んだ気がする。
タイミングよくこっちを向いた佐々木さんに怪訝な顔をされたのに気がついて、急いで表情を引き締めた。
軽く会釈をして、ゆっくり近寄って行く。
「佐々木さん、こんにちは。調査部の鈴鹿です。明日からこちらでお世話になります。詳しく聞いてないのですが、何をすればよろしいでしょうか?」
同期だと知ってても、当然向こうも知ってると分かってるけど、それでも丁寧に話しかけたのに。
「俺の補助。資料の整理、とりあえず仕分け分類打ち込み、取り込み、保存。以上。」
単語を並べられた。
『お願いします。』とか『よろしく。』とかないわけ?
こっちが下手に出れば・・・・、と思ったが、分かったは分かった。
実にシンプルだっただけに。
「自分のパソコンを持参しますか?」
「当然。」
「了解しました。他には何か必要なものは?」
「思いつかない。」
「・・・・・。」
考えたのか?即答だったぞ。
「それでは明日からよろしくお願いします。この席でいいですか?」
「そうだね。よろしく。」
何とかその言葉は引き出せた。
感情も表情も伴ってはいなかった気がするが。
「それでは失礼します。」
お辞儀をして、あくまでも丁寧に仕事をするOLの見本のように、そして部屋を出た。
既に顔が引きつっている。
急いで上の階の自分の席に戻り、林に言いつけた。
「あいつ、やな奴。」
すぐに通じた。
「だからお互い様だって。」
それは向こうにも毛嫌いされてるということ?
別に何もしてないのに。
噂と評判だけじゃない。
まあ、それでもいい話はないだろう。
「本当に嫌な奴。最後の最後に殴りそう。」
「それ、笑える。どんな尾ひれがつくか楽しみ。」
ヘラヘラと笑う。
「知ってるんでしょう?どんな奴よ。」
「普通だって。無駄に愛想がないくらいで、でも冷静だし、慎重だけど処理能力は高いと思う。お前と合わないだけで、俺とは合うから。だから普通の奴。決してやな奴じゃない。」
研修中がどんなだったかは思い出せず。
同期なんて思ってやらない。
本当に他人だ。
仕事を教わったら必要以上に口なんてきかない。
黙々と仕事をして、さっさと終わらせてやる。
明らかに目標が変わった。
林を見返すよりも、本人を見返すことに全力を使ってやる。
明日からが憂鬱にならないように、ものすごく敵意を燃やし続けよう。
ギリッと奥歯が鳴った。
「亜弓、・・・・笑顔が怖い。」
隣の浩美が怯えた声で言ってきた。
私、今、笑ってた?
笑顔だったとは、無意識の闘士は怖い笑顔とともに。
よし、やってやろうじゃないか!!
ふんっ、鼻息を荒くしたら、両隣からはうっすらと距離をとられた。
仕事は終わってる。
椅子をガンと押し込んで仕事をお終いにした。
今、勝負のゴングが鳴った。
明日からの挨拶をするためだ。
仕事は仕事、きちんとやってる。
仕事はきちんとしている印象はあると思いたい。
下の階の奥の奥。
それでも初めて訪ねた資料課は、思ったほど穴蔵感はなかった。
入り口の人にこっそり名前を教えてもらおうと思ったけど、分かった。
覚えがある、覚えてる、いたいた、そうそう、あれあれ。
自分の記憶を引き出せたことに、思わず満足した。表情が緩んだ気がする。
タイミングよくこっちを向いた佐々木さんに怪訝な顔をされたのに気がついて、急いで表情を引き締めた。
軽く会釈をして、ゆっくり近寄って行く。
「佐々木さん、こんにちは。調査部の鈴鹿です。明日からこちらでお世話になります。詳しく聞いてないのですが、何をすればよろしいでしょうか?」
同期だと知ってても、当然向こうも知ってると分かってるけど、それでも丁寧に話しかけたのに。
「俺の補助。資料の整理、とりあえず仕分け分類打ち込み、取り込み、保存。以上。」
単語を並べられた。
『お願いします。』とか『よろしく。』とかないわけ?
こっちが下手に出れば・・・・、と思ったが、分かったは分かった。
実にシンプルだっただけに。
「自分のパソコンを持参しますか?」
「当然。」
「了解しました。他には何か必要なものは?」
「思いつかない。」
「・・・・・。」
考えたのか?即答だったぞ。
「それでは明日からよろしくお願いします。この席でいいですか?」
「そうだね。よろしく。」
何とかその言葉は引き出せた。
感情も表情も伴ってはいなかった気がするが。
「それでは失礼します。」
お辞儀をして、あくまでも丁寧に仕事をするOLの見本のように、そして部屋を出た。
既に顔が引きつっている。
急いで上の階の自分の席に戻り、林に言いつけた。
「あいつ、やな奴。」
すぐに通じた。
「だからお互い様だって。」
それは向こうにも毛嫌いされてるということ?
別に何もしてないのに。
噂と評判だけじゃない。
まあ、それでもいい話はないだろう。
「本当に嫌な奴。最後の最後に殴りそう。」
「それ、笑える。どんな尾ひれがつくか楽しみ。」
ヘラヘラと笑う。
「知ってるんでしょう?どんな奴よ。」
「普通だって。無駄に愛想がないくらいで、でも冷静だし、慎重だけど処理能力は高いと思う。お前と合わないだけで、俺とは合うから。だから普通の奴。決してやな奴じゃない。」
研修中がどんなだったかは思い出せず。
同期なんて思ってやらない。
本当に他人だ。
仕事を教わったら必要以上に口なんてきかない。
黙々と仕事をして、さっさと終わらせてやる。
明らかに目標が変わった。
林を見返すよりも、本人を見返すことに全力を使ってやる。
明日からが憂鬱にならないように、ものすごく敵意を燃やし続けよう。
ギリッと奥歯が鳴った。
「亜弓、・・・・笑顔が怖い。」
隣の浩美が怯えた声で言ってきた。
私、今、笑ってた?
笑顔だったとは、無意識の闘士は怖い笑顔とともに。
よし、やってやろうじゃないか!!
ふんっ、鼻息を荒くしたら、両隣からはうっすらと距離をとられた。
仕事は終わってる。
椅子をガンと押し込んで仕事をお終いにした。
今、勝負のゴングが鳴った。
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